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ONE ~輝く季節へ~ - (2017/11/03 (金) 16:32:50) の最新版との変更点

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注意:このページでは、『四八 ~輝く季節へ~』とPS移植版『輝く季節へ』を扱っています。 ---- #contents() ---- *ONE ~輝く季節へ~ 【わん かがやくきせつへ】 |ジャンル|アドベンチャー|&amazon(B000PIQOTI)&image(http://unoya.net/photo/00504_1.jpg,height=160)| |対応機種|Windows 95(初版)&br;Windows 95/98(廉価再販)&br;Windows 98~XP(フルボイス版)&br;Windows 98~Vista(Vista動作確認版)|~| |発売・開発元|Tactics(初版/再販)&br;ネクストン(フルボイス版/Vista動作確認版)|~| |発売日|1998年5月29日(初版)|~| |定価|7,800円(初版)|~| |レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~| |廉価版|メモリアルセレクション:2000年9月14日/3,800円(税別)|~| |ポイント|恋愛ゲームの転換点とも言われている&br;「泣きゲー」の元祖と呼ばれている作品&br;一部癖が強いものの後発の名作に劣らぬ、魅力的なシナリオとキャラ|~| |判定|なし|~| |>|>|CENTER:''[[Key関連作品リンク>Key作品]]''| ---- **概要 株式会社ネクストンのアダルトゲームブランド「Tactics」の3作目にあたる恋愛アドベンチャーゲーム。~ 「心に届くADV第2弾」として企画、開発された(ちなみに第1弾にあたる『[[MOON.]]』は表面上は鬼畜系やカルト系の作品になっている)。~ 後に「Key」を立ち上げることになるスタッフ達が作った作品であり、特にその方面で有名。~ 当時人気を博していた『[[To Heart]]』(Leaf)の後追い的な要素を持っていて、~ いわゆる学園物でシステムはテキストを読みつつ、時折発生する選択肢を選んで分岐するものになっている。 **あらすじ #blockquote(){1998年、冬。~ 普通の学生であったオレの中に、不意にもうひとつの世界が生まれる。~ それはしんしんと積もる雪のように、ゆっくりと日常を埋(うず)めてゆく。~ そのときになって初めて、気づいたこと。~ 繰り返す日常の中にある変わりないもの。~ いつでもそこにある見慣れた風景。~ 好きだったことさえ気づかなかった、大好きな人の温もり。~ ~ すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。~ ~ ~ その絆を、そして大切な人を、初めて求めようとした瞬間だった。~ 時は巡り、やがて季節は陽光に輝きだす。~ そのときオレはどんな世界に立ち、そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか。 } (公式サイトから引用) **キャラクター ***メインキャラクター #region(close,クリックで開閉。) -折原浩平((名前の変更が可能。))(おりはら こうへい) --主人公。両親と妹を亡くしており叔母と二人暮らしだが、叔母は忙しいのですれ違いの生活をしている。 --授業は真面目に受けていない上にかなりの変わり者(平然とやばいこともする)だが、世話焼きでもある。 --ほとんど活動していない軽音部に所属しており、自身も幽霊部員。 -長森瑞佳(ながもり みずか) --浩平の幼馴染でクラスメイト。叔母と暮らすようになって以来の付き合い。 --毎朝浩平を起こしに来ては彼の奇行に呆れるのが日課。 ---自身を顧みない程ではないが非常に人が良く、無茶な思い付きや急な頼み事にも基本的に付き合う。 ---浩平と一緒に登校することが多いが、真面目に部活動をしているので一緒に帰宅することは少ない。 --捨て猫を保護してしまう無類の猫好きでもある。 -七瀬留美(ななせ るみ) --時期外れの転校生でクラスメイト。 ---転校前の制服を気に入っており、新しい制服を手に入れてもそのまま着ている。 --乙女らしくなることを目標にしているが、元が男勝りな上に浩平や繭がいたずらするせいでよく地が出てしまう。その代わり面倒見が良い一面もある。 -椎名繭(しいな まゆ) --年齢不詳((テキストをよく読むとある程度の年齢が推測できるのだが、その辺をつっこむとどうにも年齢的にマズイ事になるため。))の登校拒否児で、死んだペットのフェレットを埋葬しようとしていたところ浩平達と出会う。 --癇癪持ちで躁鬱が非常に激しい上に精神的にも幼い。 -里村茜(さとむら あかね) --雨の日に買い手のない空き地で佇んでいたクラスメイト。 --非常に寡黙で他人の関わりを拒絶している。お節介な浩平に対しては「嫌です」が口癖のようになっている。 --かなりの可愛い物好きと極度の甘党(料理は得意なので味覚がおかしい訳ではない)でもある。 -川名みさき(かわな みさき) --事故により視力を失った上級生だが、それを感じさせないくらいに明るくお茶目。 --一見おしとやかに見える外見だがかなり社交的で、人並み外れた大食い((ファンからは(「カレー先輩」と呼ばれた『月姫』のシエルに先駆けたカレー好き先輩キャラなので)「元祖カレー先輩」とも呼ばれている。))でもある。 -上月澪(こうづき みお) --生まれつき口が利けない(喋ろうとしても声が出ない)後輩で演劇部に所属している。 --喋る代わりにスケッチブックの筆談と身振り手振りで意思疎通を図る。ドジ気味だが元気っ子。 --設定をよくよく考えると、目の見えない川名みさきとは会話が成立しない事になってしまう。 #endregion ***サブキャラクター #region(close,クリックで開閉。) -柚木詩子(ゆずき しいこ) --茜の友人で別の学校に通っている。 --茜と最近会っていないのが心配で学校にやってきたというかなりの友達思いではあるが、浩平のクラスにも平気で入ってくるなど強引なところがある。 ---浩平とは喧嘩友達みたいなやりとりを繰り広げることになる。 -深山雪見(みやま ゆきみ) --みさきの幼馴染で演劇部部長。 --自由奔放なみさきに手を焼く苦労人だが、彼女を度々心配したり澪も劇に参加出来る様に配慮するなど、気配りの出来る女の子。 -広瀬真希(ひろせ まき) --クラスで人気のある留美に嫉妬しているクラスメイト。 ---根っからのロクデナシというほどでは無いが、あまり良い性格とは言えない。 -住井護(すみい まもる) --浩平の悪友でクラスメイト。 --頭が悪い上にロクなことをしておらず、特に重要なポジションでもないが、彼が関わってくることで物語が動き出すこともある。 -氷上シュン(ひかみ しゅん) --軽音部の幽霊部員で浩平の事も知っているが、浩平は彼の事を覚えていない。 --謎が多く、不思議な言動も多い。 #endregion **評価点 -当時としては珍しくシナリオ重視の作品で、キャラクターも十分掘り下げられている。共通ルートもおまけ的な物では無く、個別ルートに大きく関わっている。 --浩平は一見無個性な主人公に見えるが、変わり者の範疇では収まらないほど個性が強く、大きな魅力になっている。 --ヒロインも全て曲者揃いなものの印象的な描写が多く、キャラを魅力的に描けている。更に、情緒不安定・事故による失明・先天性唖障害…と、ヒロイン6人中3人がハンディキャップの所有者(更に他の2人と浩平も健常者とは言いがたい)と異色のラインナップ。 ---しかも一人は別の学校の生徒(そもそも1つか2つ教育課程が違うと思われる)だが、転入したり学校外のみで会う訳では無く、途中で浩平達がしれっとクラスに入れている。 ---ただし、盲目のヒロインについては「そんな盲目者が本当にいるのか」的な描写も多く(例えば白杖要らずで普通に学校の中を歩いているところ)、作中で浩平も疑問に感じている。 ---ハンディキャップの重さ等もしっかり描いており、日常との落差も後の「Key」ブランドに受け継がれる魅力の一つと言える(前作『MOON.』も根本では類似点があるものの、作風が大きく異なる。) -茜、みさき、澪の久弥氏担当のシナリオは、癖が少ない上に展開の見せ方が上手く、基本的に高評価。 --逆に瑞佳、留美、繭の麻枝氏担当のシナリオも久弥氏に劣る訳ではないものの、癖が強いシナリオなので賛否両論が激しい。同様に浩平の性格もより癖の強いものになっている((ただし、浩平は共通ルート時点から癖が強い上に世話焼きでもあるので、麻枝氏と久弥氏の浩平の両方を比べて違和感を覚えるほどのものではない。))。 -BGMについても評価が高い上に、当時としては珍しいことに各キャラのテーマ曲がある。 --この時代の18禁作品としては珍しく、アレンジや耳コピ等による二次創作も比較的多い。 -時々どこともつかない場所における、「ぼく」と「少女」の謎めいた会話が挿入される。 --これが何を表しているかは物語を進めると分かるが、本作がどういう話であるかの謎にもなっており、上手く表現されている。 #region(close,ネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉。) -本作の流れは最愛の妹を亡くして喪失感を抱えている浩平がヒロインと仲良くなった後、浩平の存在が次第に希薄になってヒロインのみが覚えている状態になった後に、「えいえんのせかい」と呼ばれている別の世界に行ってしまい、最後にヒロインとの絆のおかげで戻ってくるというものと言うもので統一されているが、没入しやすい様にシナリオや設定が随所で工夫されている。 --「えいえんのせかい」と呼ばれている謎があって、物語の読み応えも増しているが、浩平やシナリオに対して説得力を増す要素にもなっている。 ---上述の「ぼく」と「少女」の話は「えいえんのせかい」での話とされている。 -浩平は奇行(基本的にギャグとして描かれる)が多い上に好きでやっている様子も伺えるが、全くの狂人という訳でも無い。 --独白から今までの経験(トラウマを紛らわす為のもの)が影響しているのが伺える。かなりの世話焼きなのもこれが影響していたりもする。 #endregion **賛否両論点 -樋上いたる氏の絵は当時から賛否両論な上に、本作は作品内で絵柄が不安定になっている。 --まだ若手の頃で腕が甘く、ある意味で伝説となっているCGもある。 --その一方で、本作より前の『同棲』や『MOON.』の頃から印象的な絵柄で知られており、好意的に受け止めるファンも多い。 #region(close,ネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉。) -繭シナリオのみ一時的に繭の身柄を預かり彼女の心の成長を見守るという、特殊な流れになっている。 --エロでも恋愛でもなく、当時としては異色のシナリオなので戸惑う人も多い。 --『MOON.』でもそうだったが、麻枝准氏が後の作品でもこだわることになる擬似家族コミュニティの原型とも言える。 -「えいえんのせかい」関連の設定はいくつか解釈が出来て面白い代わりに、分かり辛い。 --上述しているが謎の会話は「えいえんのせかい」での会話とされている。内容は主に浩平が本編開始時~エンディング前までを思い返しているという形(明言されてはいないが、そうでないと物語との関連性が薄い)。 ---つまり、本作はゲーム開始時点から一貫して、浩平がヒロインとの絆を頼りにして戻ってこれるかどうかという物語である。その為、(思い留まっても「えいえんのせかい」へ強制的に行ってしまうという設定もあるが)「えいえんのせかい」に行くのは逆説的に必然である。 ---但し、えいえんのせかいの時間の流れが現実世界と同じとは限らない上に、相互に影響しあってる可能性もある(浩平の独白に俯瞰してるような気持ちになるというものがあったり、「えいえんのせかい」へ行く予感があったりする)。 --ちなみに誰とも深く関わらなかったBADエンドでは、ある日いきなり「えいえんのせかい」に行ったところで終わる。 --浩平が「えいえんのせかい」に引き込まれる(元は浩平自身が望んだことなので正確な表現ではない)のは、浩平の妹を亡くしたトラウマと瑞佳の言動が要因になっている。作中のキャラが理由もなく「えいえんのせかい」に行く訳では無い。 ---浩平が「えいえんのせかい」に引き込まれる原因は主に瑞佳シナリオで語られるが、茜や氷上シュンも「えいえんのせかい」に関わりが有り、設定を補間する要素になっている。 #endregion **問題点 -基本的にはヒロインを追いかけていけばいいのだが、時々意地悪な選択肢が発生する。 --留美シナリオへの分岐が顕著。初見だと判断材料が無い上に、大抵は選び間違えてアウトになる、いわゆる初見殺し。 ---具体的には「カンニング込みで漢字の読み試験を解く」というシーンで、選択肢の形式が「読みを当てる」のではなく「正解を書いていそうな人の答案を盗み見る」というややこしい物になっている。誰が正答で誰が誤答しているかは固定だが、誤答を1問以下にしなければ留美シナリオは詰みになるため、対応表の作成がほぼ必須である。 ---その代わりにユニークな解答が楽しめる。 --他のヒロインも「一件関係のなさそうな行動を取ったら目当てのヒロインに会えた」というようなことがよくある(特にみさき)。意地悪な選択な上に最後の辺りになってBADエンドになるものも多く、間違うと即BADエンドになるゲームが優しく見える。 ---里村茜シナリオの「右の道」と「左の道」のノーヒント2択は印象が強すぎて伝説となっている。一応S&Lで見比べたら何となく分かるが、見比べなかった場合は完全に分からない上に結構先に進んだ後でBADエンド。 --留美と異なる意味で瑞佳シナリオでの選択肢も問題。詳細はネタバレになるので後述。 -そっちの意味では実用性がほぼない。全体的に肌の塗りが硬そうでしていることもあっさり気味であるため。 --そもそも、いわゆるエロゲーでありながら、一部のシナリオではエロシーン自体をキャンセルすることも可能にされている。 ---ただし、あまりエロ要素を期待されている作品ではないのと、本作の焦点を考えるとこのゲームジャンルが最も自然ではある。 -何度も動作確認版が新たに発売されているが、古いゲームなだけあって初版はWindows95にのみ正式対応な上に、システムも『MOON.』のものとほぼ同等で良くない。 --内容量もだが、重要な選択肢も多いことからセーブ数30では明らかに数が足りない。しかも日付程度しか情報が表示されないが、共通ルートでの分岐が多いので時間が空くとどういうデータなのかが分からない。 --バックログが無く、非常に不便。 --既読スキップが無いのも非常に不便。ちなみに『MOON.』ではマップを調べる場面が多くてスキップがすぐ途切れるので、不便ではあったが深刻な問題ではなかった。 --当時はまだフルインストールが一般的ではなかったとは言え、BGMがCD-DAのみなのも不便。ゲームの性質上あまり問題ではないが回想モードも無い。 #region(close,ネタバレ要素。クリックで開閉。) -瑞佳ルートでは個別までは好意的に接するだけで入れるが、個別に入るとは好意的に接するか冷たくするかの選択がしつこいくらいに発生し、少しでも甘い顔をすればバッドエンド行きになる。 --これは実際にプレイしても理由が分かりにくく、浩平と瑞佳それぞれの思いと関係性を推測出来ないと、理不尽な浩平と何故か献身的なヒロインにしか見えない。そのせいもあってか瑞佳シナリオは評価が分かれやすい上に色々な解釈がある。 ---瑞佳は一見テンプレ的な無条件且つ自然に世話を焼く幼馴染に見えるが、これはお互いが昔からの関係を大切にしているということが重要視されている(「えいえんのせかい」もこれに関係している)。時折見せる違和感のある態度も大体これが影響している。 ---浩平の内面が分かるシナリオでも有り、別の見方をすると浩平の古傷が大きく抉られる話であることが他ヒロインと大きく違う。(単に戸惑いだけで外道行為をしている訳でも適当なシナリオと言う訳でもない。ちなみに他ヒロインに対しては悪質ないたずら(留美に対して)や戸惑ったり勘違いからの失敗はあっても意図的な外道行為はほとんどない。)そのことが浩平の自己中心的な仕打ちと強烈な自己嫌悪、その後の話へと繋がっている。 --ちなみに共通の時に好意的に接すれば個別に入れるというのも、一見「単に瑞佳の好感度を稼いだ結果や浩平が意識している」様にも見えるが、そうではないことがテキストをよく読むと分かる。選択肢を少し間違えるとルートに入れなくなるのもこれが関係している。 -「みずか」と呼ばれている少女については特に明言されていないので具体的なことは不明なものの、幼い頃の瑞佳とその思い出に浩平自身の思いと亡くなった妹との記憶が関係している。 --曖昧に表現されている上にどれか一つでも欠けると成立しないので、分かりやすい様でいて分かり辛い存在になっている。 --このキャラは瑞佳シナリオや「えいえんのせかい」だけでなく、浩平の内面に深く関わっている。気にしなくてもストーリーの大筋には影響しないので問題無いが、理解しようとすることで納得出来る部分が増える。 #endregion **総評 本作の様なギャグを交えた日常パート、ヒロインとの絆を深めるパート、破局の予感を漂わせながらも最後にはハッピーエンドという構図は「泣きゲー」あるいはシナリオ重視型恋愛ゲームの基礎となった。~ 普通の現代世界を舞台にしたエロゲーでありながら、そっち方面どころか日常や恋愛以外の物事に焦点を強く当てているという面が特徴的((主人公とヒロイン達の設定に至っては安易に真似出来るものでは無いせいか、未だに埋没していない。))で、『ToHeart』の存在も大きいが恋愛以外のシナリオを重視したエロゲー・ギャルゲーの先駆け的存在とも言える((そういうのが全く無かった訳では無いし『MOON.』でも似たことが言えるのだが、『ONE』『Kanon』以前はあまり勢いがなかった。))。~ 推理物では無い通常の物語で謎を作り、想像の余地を多く残す手法(※手抜きではない)についても同様のことが言え、直接間接問わず業界に与えた影響は大きいと思われる。(この点は特にKanonで話題となった)~ 「泣きゲーの元祖」と呼ばれるだけあって、当時としては珍しい発想だけが評価されている訳ではなく作品自体の評価も高く、根強い人気がある。~ 例えば「Key」の作品やシナリオ重視型のADV、他にもキャラゲーなどが好きなら安定してお勧めできる作品である。 ---- **余談 -その後、本作の主要スタッフのほぼ全員がネクストン上層部との対立から退社。スタッフの1人だった樋上いたる氏の紹介で株式会社ビジュアルアーツに入社し、彼らが新ブランド「Key」を設立している。そのため、ファンの間では『MOON.』と『ONE』も「Key」の関連作品とみなしている。 --本作は「Key」作品の『Kanon』の人気から特に注目された経緯がある。 --その一方で、後述の移植版や本作のメディア展開は、版権の都合もあって大半は原作スタッフを介さずに行われているため、これらのメディア展開で追加された人物や設定等は公式として認めないファンが多い。また、サントラ・ドラマCD・OVA化・OVAのサントラなどがそれぞれ複数出ており、エロゲ―原作としては異例な程多岐に渡っている。 ---メディア展開もだが、Windowsのバージョンアップの度に新パッケージを出していた。ある程度は仕方ないと言えるが、その余りの頻度(バージョンアップ時に修正パッチが不要なバージョンも多い)から節操が無さ過ぎるという批判が多い。 --ネクストン傘下の「[[BaseSon>BaseSon作品]]」というブランドが『ONE2 ~永遠の約束~』という作品を出しているが、原作スタッフは全く関わっていないのでファンからは完全に別物という扱い。本作との繋がりもほとんど無い。 ---本作の人気から制作・注目された経緯がある上に、本作を意識している作品でもあるので、当然本作との出来を比較されて低評価になることが多い。ある意味で不遇な作品とも言える((一介のゲームとして見るとそこまで悪くはないが特に良いという評価もされていない。ONE2という非常に話題性に溢れたタイトルを使っても埋没気味なので他のタイトルにしていたら完全に他作品の中に埋没していたと思われる、そんなゲーム。))。 --この様な経緯があるため、熱烈な「Key」ファンは『MOON.』と『ONE』のメディア展開について過敏になっている(「Tactics」の本作以後の作品についてはスタッフと完全に無関係なのでノータッチ)。 -本作は上層部に『ToHeart』みたいなのを作れと指示されて(これが悪いことという訳ではないが)作られた作品である。 --製作当時から上層部と制作スタッフとの間に根深い意識の差があったと思われ、「タクティクス設定原画集」に書かれている内容((企画段階での「えいえんのせかい」は「クライマックスを演出するための舞台装置である」という言い回しやスタッフの退社の経緯など。))を全て額面通りに受け取って良いかはかなり微妙。「えいえんのせかい」は各所にしっかりと設定や伏線が為されており、退社の経緯もネクストンが悪いと限った話ではない((第三者からすると確たる証拠がない為。))が、後にKeyスタッフやVAの馬場社長が語ったものとは表現が全く異なる。 ---一部の設定や展開が『ToHeart』にかなり似ているが、中身が別物になっているのはこれも影響していると思われる。 -18禁版と全年齢版のOVAが出ている。 --18禁版は原作を元にしており、描写不足などからあまり良い評価を受けていないが無難な作品とは言える。 --全年齢版は完全なオリジナル展開…は良いとしても、重要な設定も無視している。更にそれらを受け入れても非常に理解しがたい電波な内容になっているので評判が悪い。補足すると、原作プレイ・未プレイに関わらず意味不明。 ---描写も全体的にあっさりしすぎていたり、曖昧なものになっていて空気を見ているかの様な作品になっているので演出的にも評価が悪い(作中のキャラと言うより、視聴者に対して存在の希薄感を表現しているのかもしれないが)。 ---結果として何をやりたかったのか、何を狙っていたのかすら分からない作品になっている。 -CG鑑賞モードに「主」という名前のでぶった猫(?)らしきマスコットキャラがいるが、彼(彼女?)が何者なのかは本作最大にして永遠の謎である。そもそも読み方も「あるじ」なのか「ぬし」なのかすらわからない。 -いわゆる「知ってるがお前の態度が気に入らない」のAAで、スケッチブックを持っているキャラクターが上月澪である。ただしゲーム中にこのままのシーンや発言は存在しない。彼女が筆談を行うことだけなら事実だが。 --他にも「乙であります!」で有名なAAがあるが、これは後に『[[CLANNAD]]』の公式コミックを描いたみさき樹里氏の柚木詩子のイラストが元(台詞部分は原作やイラストとは無関係)である。 -PCのフルボイス版・PS版・ドラマCD版・OVA版、それぞれの声優はバラバラで全く統一されていない。 --ちなみにPCフルボイス版とPS版の声の評価は悪い。 -「泣きゲーの元祖」とも呼ばれるだけあって話題に挙がることが多い。 --ライトノベル作家の本田透氏やシナリオライターの奈須きのこ氏は影響を受けたと言及している。シナリオライターの元長柾木氏は存在自体が奇跡でありコピーできるような代物ではないと評している。 ---- *輝く季節へ 【かがやくきせつへ】 |ジャンル|恋愛アドベンチャー|&amazon(B00005OVTB)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|KID|~| |発売日|1999年4月1日|~| |定価|6,800円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|蛇足で微妙な追加CG&br;黒歴史の追加ヒロイン&br;元シナリオの改変はほぼない|~| **概要(PS版) ファンから「Key」関連作として扱われている『ONE ~輝く季節へ~』のPS移植版。~ ただし、移植時に「Tactics」に残っていたのはプロデューサーのYET11(吉沢務)氏のみであり、他の主要スタッフは全員「Key」に移っている。~ タイトルが変更されたのは、PSにおいて既に『ONE』というゲームが発売されていた為である。 **変更点 -シナリオ関係 --新ヒロイン「清水なつき」の追加 --コンシューマ移植に当たって、規制に引っかかりそうなシーンの削除 ---当然ながらエロ関係はかなりの量が削除されており、直接的なシーンは当然ながら、18禁とまでは言えないヒロインのパンツを下ろすシーン等も削除。 ---自主規制らしく、飲酒シーンは当然としてもこんなものまで?と言う様なものまで多数変更されている。 -音声・BGM関係 --音声の追加 --効果音の追加 --CD-DAからPSの内蔵音源に変更。 -新規CGの追加 --ただし、Hシーン等が削除された関係でそれらのCGもカット。 -その他 --メッセージウィンドウ方式からビジュアルノベル方式へ変更。 --OPムービーの追加。 --セーブ数の増加。 --バックログ機能の追加。 **評価点(PS版) -原作部分は規制部分を除いて無難にベタ移植されている。 --消極的な理由だが、原作スタッフが関わっていない上に後述のように追加シナリオとCGに問題がある為、原作部分が概ねそのまま移植された事は、原作の代わりやエロゲーに抵抗がある人が買う分には十分と言える。 -セーブ数増加とバックログ機能の追加 --バックログはADVとしては基本的な機能で、無いと非常に不便。 --内容に対して明らかにセーブ数が不足していたので、セーブ数増加も大きな長所。 -音声の追加 --演じているのは有名声優が多く、PC版プレイヤーによってはイメージに合わないなどの好き嫌いはあっても棒読みなどはない。 //声の追加は賛、演技ミス否で完全に分けられること **賛否両論点(PS版) -SEの追加 --追加された事自体は良いが、追加が相応しい場面の多さに対して量が少なすぎるせいで、逆に中途半端や手抜きといった印象を受けやすい。 //気になる人も少ないなら、ちょっと問題のある評価点レベルでは? //効果的・評価出来ると言えるSEもほとんどないので(ついでに言うとこちらも気になる人が少ない)、中途半端や手抜き感を加味すると賛否両論かと。 -OPムービー(アニメ)の追加 --アニメということも考えると、可も不可も無くと言った出来。 ---しかし、描写的にも原作設定的にも違和感の強いみさきや、ネタバレ回避の為かちぐはぐな留美や繭など、出来とは無関係なところで不自然な描写がある。 ---原作ファンからすると原作のデモムービーの方がよほど印象的で良いといった評価が多いが、アニメによる話題作りやデモはポップな曲では無い等の事情も考えられる。 **問題点(PS版) -追加CGが微妙。 --イラストレーターが変更されている為、追加CGが浮いてしまっている。独特の絵柄を似せようと意識したのは理解出来るが、お世辞にも成功してるとは言い難い。 ---そもそも樋上氏の絵柄自体が賛否両論で、その樋上氏の絵の印象的な部分を他人が真似ようと強調して歪になっており、単独で見ても見比べても違和感を覚えるものになっている。 --「シリアスな場面が台無し」という意見に加えて、「何でこのシーンに追加した?」と首を傾げたくなる追加もあって、残念としか言いようがない追加になってしまっている。 -新ヒロイン「清水なつき」の存在。 --いくら原作シナリオライターが関わっていないとは言え、''原作を否定しているだけのシナリオ''になっており、フォローのしようがないものになっている。 --新キャラなので当然なつきのCGも追加CG担当の人であり、CG全体が他キャラと比較すると浮いてしまっている。 --原作と関係無しに考えても感情移入が難しいキャラな上に、話が強引過ぎていまいちと言う評価が多い。更に他のヒロインと比べて進展も駆け足になってしまっている。 ---原作や諸々の設定とは切り離した上で、一応評価する声や許容出来るといった声も存在する。 #region(なつきシナリオ詳細(ネタバレ有り)) -前述しているが元々の本作は浩平が「えいえんのせかい」から戻ってくる話で、本編はその絆(思い出)という形式なのだが、なつきシナリオでは結局''浩平が元の世界に戻ってこない''。 --ちなみにちゃんとした絆が無ければ戻ってこれず(あるいは何としてでも戻ろうとはせず)にBADエンド。 --このシナリオにも「えいえんのせかい」が関わっているのだが、独自設定をふんだんに追加していてなつきの為だけに改変されている。 ---新規シナリオとして方向性の違うものを追加したかったのかもしれないが、結果としてシナリオ自体がゲームから浮いており、スルーしない場合は原作部分の改悪に繋がっている。 -なつきは浩平と出会い頭に、それも執拗に「お兄ちゃん」と呼んでまとわりついてくる上に、「お兄ちゃん」と浩平とを不自然且つ頻繁に混同したりしなかったりする。 --当の浩平は比較的平然と接するのだが、ユーザーから見てどう頑張っても感情移入出来る様なテキストでは無い。言い換えると「アホな子にお兄ちゃんって呼ばせておけばお前達は萌えるんだろう?感動しろよ」とユーザーがライターから馬鹿にされていると邪推されるのも当然なテキストである。 ---更に浩平はなつきと接して、何故かすぐに妹のみさおや「えいえんのせかい」について明確に思い出す(あるいは知る)、原作ファンにとって強い違和感を覚える展開もある。 #endregion -声追加の際の演技ミス --言い回しが明らかにそぐわない場面が多数存在するという、演技面での致命的な問題がある。 ---完全に別の場面と勘違いしていると思わしきものが多い為、声優の問題というよりは台本や演技指導段階(余りの酷さから監督による修正の類は無しだと思われる)の問題と思われる。 -何も考えずにウィンドウ方式からビジュアルノベル方式に変更されている為、改悪にしかなっていない。 --元がウィンドウ形式だったものを単にずらっと並べただけであり、絵もテキストも見づらくなっただけである。ウィンドウ形式を生かした文章演出もあったので尚更。 --本来は表示が切り替わるからこそ同じ人物の台詞でもウィンドウごと「」で区切っていたのだが、これを「」そのまま縦に並べている。~ その為、同じ人物の台詞が「」で区切って連続して一つの画面に表示される。会話の流れによっては、別人の台詞と勘違いしやすい。 --立ち絵が変わる度に一度テキストがリセットされるので、違和感とともにテンポも悪くなっている。 -PS内蔵音源になった事で、BGMが若干劣化。 --仕方ないと言えば仕方ない部分だが、少しでも良くしようと工夫した形跡は見られない。 -規制への配慮と考慮しても、おかしな表現が多い。 --Hシーンの削除自体は問題点ではないが、追加シーンは妙に回りくどくて長い上に変なものが多くて浮いている。好みにもよるが削除だけの方がマシなものが多い。 --原作のとある中傷台詞を「誰にでもついて行く」にする変更が有り、中傷台詞であることは変わらないが、重要な場面にも関わらず受ける印象が大きく変わっている。 ---他にも飲酒をあることに変えた結果、いけない薬でも使ってるのか?としか思えないほど異常な光景が発生している。 --変更個所だけを見ると自然でも、実際は前後のテキストとつじつまが合っておらず、矛盾していたり違和感を受ける適当な変更が多い。 **総評(PS版) バックログ機能追加とセーブ数の増加は大きな長所なのだが、表示方式変更の改悪が響いて(ハードの違いを考慮しても)利便性が増しているとは言い難い。~ それら以外は大小は別として劣化要素となっているものが多い。~ 中でも「原作CGから浮いている追加CG」と「清水なつき」はその最たるものであり、完全になかった物とされることが多い。~ 追加CGと清水なつきの事情、自主規制部分があるということを分かっているなら、ベタ移植に近いまずまず無難な出来なので、PS版から入るのも悪くはないだろう。 ---- **余談(PS版) -本作のビジュアルファンブックには、PC版製作スタッフのインタビューも掲載されている。 -追加CGの件やそれがどのCGなのか知らない人からすると、絵柄を似せようとしただけあって「樋上氏が描いた下手なCG」等の様に誤解されやすく、主に樋上氏に対して余計な悪評の原因となっている。 --その一方で追加CGの原画家にとっても、原作の絵が不安定なので逆の形で誤解される場合がある。要するに両者にとって余計な悪評の原因になってしまっている。 ---- //書いたは書いたが歯切れが悪いです。後で手直しするかも。
このページでは、『ONE ~輝く季節へ~』とPS移植版『輝く季節へ』を紹介する。(判定は共に「なし」) ---- #contents() ---- *ONE ~輝く季節へ~ 【わん かがやくきせつへ】 |ジャンル|恋愛AVG|&amazon(B000PIQOTI)| |対応機種|Windows 95(初版)&br;Windows 95/98(廉価再販)&br;Windows 98~XP(フルボイス版)&br;Windows 98~Vista(Vista動作確認版)|~| |発売・開発元|Tactics(初版/再販)&br;ネクストン(フルボイス版/Vista動作確認版)|~| |発売日|1998年5月29日(初版)|~| |定価|7,800円(初版)|~| |レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~| |廉価版|メモリアルセレクション:2000年9月14日/3,800円(税別)|~| |配信|2010年6月15日/2,880円|~| |判定|なし|~| |ポイント|恋愛ゲームの転換点とも言われている&br;「泣きゲー」の元祖と呼ばれている作品&br;一部癖が強いものの後発の名作に劣らぬ、魅力的なシナリオとキャラ|~| |>|>|CENTER:''[[Key関連作品>Key作品]]''| ---- **概要 株式会社ネクストンのアダルトゲームブランド「Tactics」の3作目にあたる恋愛アドベンチャーゲーム。~ 「心に届くADV第2弾」として企画、開発された(ちなみに第1弾にあたる『[[MOON.]]』は表面上は鬼畜系やカルト系の作品になっている)。~ 後に「Key」を立ち上げることになるスタッフ達が作った作品であり、特にその方面で有名。~ 当時人気を博していた『[[To Heart]]』(Leaf)の後追い的な要素を持っていて、~ いわゆる学園物で、システムはテキストを読みつつ、時折発生する選択肢を選んで分岐するものになっている。 **あらすじ #blockquote(){1998年、冬。~ 普通の学生であったオレの中に、不意にもうひとつの世界が生まれる。~ それはしんしんと積もる雪のように、ゆっくりと日常を埋(うず)めてゆく。~ そのときになって初めて、気づいたこと。~ 繰り返す日常の中にある変わりないもの。~ いつでもそこにある見慣れた風景。~ 好きだったことさえ気づかなかった、大好きな人の温もり。~ ~ すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。~ ~ ~ その絆を、そして大切な人を、初めて求めようとした瞬間だった。~ 時は巡り、やがて季節は陽光に輝きだす。~ そのときオレはどんな世界に立ち、そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか。 } (公式サイトから引用) **キャラクター ***メインキャラクター #region(close,クリックで開閉。) -折原浩平((名前の変更が可能。))(おりはら こうへい) --主人公。両親と妹を亡くしており叔母と二人暮らしだが、叔母は忙しいのですれ違いの生活をしている。 --授業は真面目に受けていない上にかなりの変わり者(平然とやばいこともする)だが、世話焼きでもある。 --ほとんど活動していない軽音部に所属しており、自身も幽霊部員。 -長森瑞佳(ながもり みずか) --浩平の幼馴染でクラスメイト。叔母と暮らすようになって以来の付き合い。 --毎朝浩平を起こしに来ては彼の奇行に呆れるのが日課。 ---自身を顧みない程ではないが非常に人が良く、無茶な思い付きや急な頼み事にも基本的に付き合う。 ---浩平と一緒に登校することが多いが、真面目に部活動をしているので一緒に帰宅することは少ない。 --捨て猫を保護してしまう無類の猫好きでもある。 -七瀬留美(ななせ るみ) --時期外れの転校生でクラスメイト。 ---転校前の制服を気に入っており、新しい制服を手に入れてもそのまま着ている。 --乙女らしくなることを目標にしているが、元が男勝りな上に浩平や繭がいたずらするせいでよく地が出てしまう。その代わり面倒見が良い一面もある。 -椎名繭(しいな まゆ) --年齢不詳((テキストをよく読むとある程度の年齢が推測できるのだが、その辺をつっこむとどうにも年齢的にマズイ事になるため。))の登校拒否児で、死んだペットのフェレットを埋葬しようとしていたところ浩平達と出会う。 --癇癪持ちで躁鬱が非常に激しい上に精神的にも幼い。 -里村茜(さとむら あかね) --雨の日に買い手のない空き地で佇んでいたクラスメイト。 --非常に寡黙で他人の関わりを拒絶している。お節介な浩平に対しては「嫌です」が口癖のようになっている。 --かなりの可愛い物好きと極度の甘党(料理は得意なので味覚がおかしい訳ではない)でもある。 -川名みさき(かわな みさき) --事故により視力を失った上級生だが、それを感じさせないくらいに明るくお茶目。 --一見おしとやかに見える外見だがかなり社交的で、人並み外れた大食い((ファンからは(「カレー先輩」と呼ばれた『月姫』のシエルに先駆けたカレー好き先輩キャラなので)「元祖カレー先輩」とも呼ばれている。))でもある。 -上月澪(こうづき みお) --生まれつき口が利けない(喋ろうとしても声が出ない)後輩で演劇部に所属している。 --喋る代わりにスケッチブックの筆談と身振り手振りで意思疎通を図る。ドジ気味だが元気っ子。 --設定をよくよく考えると、目の見えない川名みさきとは会話が成立しない事になってしまう。 #endregion ***サブキャラクター #region(close,クリックで開閉。) -柚木詩子(ゆずき しいこ) --茜の友人で別の学校に通っている。 --茜と最近会っていないのが心配で学校にやってきたというかなりの友達思いではあるが、浩平のクラスにも平気で入ってくるなど強引なところがある。 ---浩平とは喧嘩友達みたいなやりとりを繰り広げることになる。 -深山雪見(みやま ゆきみ) --みさきの幼馴染で演劇部部長。 --自由奔放なみさきに手を焼く苦労人だが、彼女を度々心配したり澪も劇に参加出来る様に配慮するなど、気配りの出来る女の子。 -広瀬真希(ひろせ まき) --クラスで人気のある留美に嫉妬しているクラスメイト。 ---根っからのロクデナシというほどでは無いが、あまり良い性格とは言えない。 -住井護(すみい まもる) --浩平の悪友でクラスメイト。 --頭が悪い上にロクなことをしておらず、特に重要なポジションでもないが、彼が関わってくることで物語が動き出すこともある。 -氷上シュン(ひかみ しゅん) --軽音部の幽霊部員で浩平の事も知っているが、浩平は彼の事を覚えていない。 --謎が多く、不思議な言動も多い。 #endregion **評価点 -当時としては珍しくシナリオ重視の作品で、キャラクターも十分掘り下げられている。共通ルートもおまけ的な物では無く、個別ルートに大きく関わっている。 --浩平は一見無個性な主人公に見えるが、変わり者の範疇では収まらないほど個性が強く、大きな魅力になっている。 --ヒロインも全て曲者揃いなものの印象的な描写が多く、キャラを魅力的に描けている。更に、情緒不安定・事故による失明・先天性唖障害…と、ヒロイン6人中3人がハンディキャップの所有者(更に他の2人と浩平も健常者とは言いがたい)と異色のラインナップ。 ---しかも一人は別の学校の生徒(そもそも1つか2つ教育課程が違うと思われる)だが、転入したり学校外のみで会う訳では無く、途中で浩平達がしれっとクラスに入れている。 ---ただし、盲目のヒロインについては「そんな盲目者が本当にいるのか」的な描写も多く(例えば白杖要らずで普通に学校の中を歩いているところ)、作中で浩平も疑問に感じている。但し、物語後半である程度の説明が為される。 ---ハンディキャップの重さ等もしっかり描いており、日常との落差も後の「Key」ブランドに受け継がれる魅力の一つと言える(前作『MOON.』も根本では類似点があるものの、作風が大きく異なる。) -茜、みさき、澪の久弥氏担当のシナリオは、癖が少ない上に展開の見せ方が上手く、基本的に高評価。 --逆に瑞佳、留美、繭の麻枝氏担当のシナリオも久弥氏に劣る訳ではないものの、癖が強いシナリオなので賛否両論が激しい。同様に浩平の性格もより癖の強いものになっている((ただし、浩平は共通ルート時点から癖が強い上に世話焼きでもあるので、麻枝氏と久弥氏の浩平の両方を比べて違和感を覚えるほどのものではない。))。 -BGMについても評価が高い上に、当時としては珍しいことに各キャラのテーマ曲がある。 --この時代の18禁作品としては珍しく、アレンジや耳コピ等による二次創作も比較的多い。 -時々どこともつかない場所における、「ぼく」と「少女」の謎めいた会話が挿入される。 --これが何を表しているかは物語を進めると分かるが、本作がどういう話であるかの謎にもなっており、上手く表現されている。 #region(close,ネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉。) -本作の流れは最愛の妹を亡くして喪失感を抱えている浩平がヒロインと仲良くなった後、浩平の存在が次第に希薄になってヒロインのみが覚えている状態になった後に、「えいえんのせかい」と呼ばれている別の世界に行ってしまい、最後にヒロインとの絆のおかげで戻ってくるというものと言うもので統一されているが、没入しやすい様にシナリオや設定が随所で工夫されている。 --「えいえんのせかい」と呼ばれている謎があって、物語の読み応えも増しているが、浩平やシナリオに対して説得力を増す要素にもなっている。 ---上述の「ぼく」と「少女」の話は「えいえんのせかい」での話とされている。 -浩平は奇行(基本的にギャグとして描かれる)が多い上に好きでやっている様子も窺えるが、全くの狂人という訳でも無い。 --独白から今までの経験(トラウマを紛らわす為のもの)が影響しているのが窺える。かなりの世話焼きなのもこれが影響していたりもする。 #endregion **賛否両論点 -樋上いたる氏の絵は当時から賛否両論な上に、本作は作品内で絵柄が不安定になっている。 --まだ若手の頃で腕が甘く、ある意味で伝説となっているCGもある。 --その一方で、本作より前の『同棲』や『MOON.』の頃から印象的な絵柄で知られており、好意的に受け止めるファンも多い。 #region(close,ネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉。) -繭シナリオのみ一時的に繭の身柄を預かり彼女の心の成長を見守るという、特殊な流れになっている。 --エロでも恋愛でもなく、当時としては異色のシナリオなので戸惑う人も多い。 --『MOON.』でもそうだったが、麻枝准氏が後の作品でもこだわることになる擬似家族コミュニティの原型とも言える。 -「えいえんのせかい」関連の設定はいくつか解釈が出来て面白い代わりに、分かり辛い。 --上述しているが謎の会話は「えいえんのせかい」での会話とされている。内容は主に浩平が本編開始時~エンディング前までを思い返しているという形(明言されてはいないが、そうでないと物語との関連性が薄い)。 ---つまり、本作はゲーム開始時点から一貫して、浩平がヒロインとの絆を頼りにして戻ってこれるかどうかという物語である。その為、(思い留まっても「えいえんのせかい」へ強制的に行ってしまうという設定もあるが)「えいえんのせかい」に行くのは逆説的に必然である。 ---但し、えいえんのせかいの時間の流れが現実世界と同じとは限らない上に、相互に影響しあってる可能性もある(浩平の独白に俯瞰してるような気持ちになるというものがあったり、「えいえんのせかい」へ行く予感があったりする)。 --ちなみに誰とも深く関わらなかったBADエンドでは、ある日いきなり「えいえんのせかい」に行ったところで終わる。 --浩平が「えいえんのせかい」に引き込まれる(元は浩平自身が望んだことなので正確な表現ではない)のは、浩平の妹を亡くしたトラウマと瑞佳の言動が要因になっている。作中のキャラが理由もなく「えいえんのせかい」に行く訳では無い。 ---浩平が「えいえんのせかい」に引き込まれる原因は主に瑞佳シナリオで語られるが、茜や氷上シュンも「えいえんのせかい」に関わりが有り、設定を補完する要素になっている。 #endregion **問題点 -基本的にはヒロインを追いかけていけばいいのだが、時々意地悪な選択肢が発生する。 --留美シナリオへの分岐が顕著。初見だと判断材料が無い上に、大抵は選び間違えてアウトになる、いわゆる初見殺し。 ---具体的には「カンニング込みで漢字の読み試験を解く」というシーンで、選択肢の形式が「読みを当てる」のではなく「正解を書いていそうな人の答案を盗み見る」というややこしい物になっている。誰が正答で誰が誤答しているかは固定だが、誤答を1問以下にしなければ留美シナリオは詰みになるため、対応表の作成がほぼ必須である。 ---その代わりにユニークな解答が楽しめる。 --他のヒロインも「一件関係のなさそうな行動を取ったら目当てのヒロインに会えた」というようなことがよくある(特にみさき)。意地悪な選択な上に最後の辺りになってBADエンドになるものも多く、間違うと即BADエンドになるゲームが優しく見える。 ---里村茜シナリオの「右の道」と「左の道」のノーヒント2択は印象が強すぎて伝説となっている。一応S&Lで見比べたら何となく分かるが、見比べなかった場合は完全に分からない上に結構先に進んだ後でBADエンド。 --留美と異なる意味で瑞佳シナリオでの選択肢も問題。詳細はネタバレになるので後述。 -そっちの意味では実用性がほぼない。全体的に肌の塗りが硬そうでしていることもあっさり気味であるため。 --そもそも、いわゆるエロゲーでありながら、一部のシナリオではエロシーン自体をキャンセルすることも可能にされている。 ---ただし、あまりエロ要素を期待されている作品ではないのと、本作の焦点を考えるとこのゲームジャンルが最も自然ではある。 //-何度も動作確認版が新たに発売されているが、古いゲームなだけあって初版はWindows95にのみ正式対応な上に、システムも『MOON.』のものとほぼ同等で良くない。 //95対応で出したソフトが95にしか対応してないのは後から遊ぶのに不便ではあっても問題とはいえないだろう。OSの違いってそういう物だし -その他システム面 --内容量もだが、重要な選択肢も多いことからセーブ数30では明らかに数が足りない。しかも日付程度しか情報が表示されないが、共通ルートでの分岐が多いので時間が空くとどういうデータなのかが分からない。 --バックログが無く、非常に不便。 --既読スキップが無いのも非常に不便。ちなみに『MOON.』ではマップを調べる場面が多くてスキップがすぐ途切れるので、不便ではあったが深刻な問題ではなかった。 --当時はまだフルインストールが一般的ではなかったとは言え、BGMがCD-DAのみなのも不便。ゲームの性質上あまり問題ではないが回想モードも無い。 #region(close,ネタバレ要素。クリックで開閉。) -瑞佳ルートでは個別までは好意的に接するだけで入れるが、個別に入るとは好意的に接するか冷たくするかの選択がしつこいくらいに発生し、少しでも甘い顔をすればバッドエンド行きになる。 --これは実際にプレイしても理由が分かりにくく、浩平と瑞佳それぞれの思いと関係性を推測出来ないと、理不尽な浩平と何故か献身的なヒロインにしか見えない。そのせいもあってか瑞佳シナリオは評価が分かれやすい上に色々な解釈がある。 ---瑞佳は一見テンプレ的な無条件且つ自然に世話を焼く幼馴染に見えるが、これはお互いが昔からの関係を大切にしているということが重要視されている(「えいえんのせかい」もこれに関係している)。時折見せる違和感のある態度も大体これが影響している。 ---浩平の内面が分かるシナリオでも有り、別の見方をすると浩平の古傷が大きく抉られる話であることが他ヒロインと大きく違う。(単に戸惑いだけで外道行為をしている訳でも適当なシナリオと言う訳でもない。ちなみに他ヒロインに対しては悪質ないたずら(留美に対して)や戸惑ったり勘違いからの失敗はあっても意図的な外道行為はほとんどない。)そのことが浩平の自己中心的な仕打ちと強烈な自己嫌悪、その後の話へと繋がっている。 --ちなみに共通の時に好意的に接すれば個別に入れるというのも、一見「単に瑞佳の好感度を稼いだ結果や浩平が意識している」様にも見えるが、そうではないことがテキストをよく読むと分かる。選択肢を少し間違えるとルートに入れなくなるのもこれが関係している。 -「みずか」と呼ばれている少女については特に明言されていないので具体的なことは不明なものの、幼い頃の瑞佳とその思い出に浩平自身の思いと亡くなった妹との記憶が関係している。 --曖昧に表現されている上にどれか一つでも欠けると成立しないので、分かりやすい様でいて分かり辛い存在になっている。 --このキャラは瑞佳シナリオや「えいえんのせかい」だけでなく、浩平の内面に深く関わっている。気にしなくてもストーリーの大筋には影響しないので問題無いが、理解しようとすることで納得出来る部分が増える。 #endregion **総評 本作の様なギャグを交えた日常パート、ヒロインとの絆を深めるパート、破局の予感を漂わせながらも最後にはハッピーエンドという構図は「泣きゲー」あるいはシナリオ重視型恋愛ゲームの基礎となった。~ 普通の現代世界を舞台にしたエロゲーでありながら、そっち方面どころか日常や恋愛以外の物事に焦点を強く当てているという面が特徴的((主人公とヒロイン達の設定に至っては安易に真似出来るものでは無いせいか、未だに埋没していない。))で、『ToHeart』の存在も大きいが恋愛以外のシナリオを重視したエロゲー・ギャルゲーの先駆け的存在とも言える((そういうのが全く無かった訳では無いし『MOON.』でも似たことが言えるのだが、『ONE』『Kanon』以前はあまり勢いがなかった。))。~ 推理物では無い通常の物語で謎を作り、想像の余地を多く残す手法(※手抜きではない)についても同様のことが言え、直接間接問わず業界に与えた影響は大きいと思われる。(この点は特にKanonで話題となった)~ 「泣きゲーの元祖」と呼ばれるだけあって、当時としては珍しい発想だけが評価されている訳ではなく作品自体の評価も高く、根強い人気がある。~ 例えば「Key」の作品やシナリオ重視型のADV、他にもキャラゲーなどが好きなら安定してお勧めできる作品である。 ---- **余談 -処女作『同棲』が1万本売れた実績から、本作の初回限定版は1万本出荷された。通常版も販売され、最終的には5万本を超えた。(BugBug「NEXTON vs BugBug 30周年記念クロストーク」より) -その後、本作の主要スタッフのほぼ全員がネクストン上層部との対立から退社。スタッフの1人だった樋上いたる氏の紹介で株式会社ビジュアルアーツに入社し、彼らが新ブランド「Key」を設立している。そのため、ファンの間では『MOON.』と『ONE』も「Key」の関連作品とみなしている。 --本作は「Key」作品の『Kanon』の人気から特に注目された経緯がある。 --その一方で、後述の移植版や本作のメディア展開は、版権の都合もあって大半は原作スタッフを介さずに行われているため、これらのメディア展開で追加された人物や設定等は公式として認めないファンが多い。また、サントラ・ドラマCD・OVA化・OVAのサントラなどがそれぞれ複数出ており、エロゲ―原作としては異例な程多岐に渡っている。 ---メディア展開もだが、Windowsのバージョンアップの度に新パッケージを出していた。ある程度は仕方ないと言えるが、その余りの頻度(バージョンアップ時に修正パッチが不要なバージョンも多い)から節操が無さ過ぎるという批判が多い。 --ネクストン傘下の「[[BaseSon>BaseSon作品]]」というブランドが『ONE2 ~永遠の約束~』という作品を出しているが、原作スタッフは全く関わっていないのでファンからは完全に別物という扱い。本作との繋がりもほとんど無い。 ---本作の人気から制作・注目された経緯がある上に、本作を意識している作品でもあるので、当然本作との出来を比較されて低評価になることが多い。ある意味で不遇な作品とも言える((一介のゲームとして見るとそこまで悪くはないが特に良いという評価もされていない。ONE2という非常に話題性に溢れたタイトルを使っても埋没気味なので他のタイトルにしていたら完全に他作品の中に埋没していたと思われる、そんなゲーム。))。 --この様な経緯があるため、熱烈な「Key」ファンは『MOON.』と『ONE』のメディア展開について過敏になっている(「Tactics」の本作以後の作品についてはスタッフと完全に無関係なのでノータッチ)。 -本作は上層部に『ToHeart』みたいなのを作れと指示されて(これが悪いことという訳ではないが)作られた作品である。 --製作当時から上層部と制作スタッフとの間に根深い意識の差があったと思われ、「タクティクス設定原画集」に書かれている内容((企画段階での「えいえんのせかい」は「クライマックスを演出するための舞台装置である」という言い回しやスタッフの退社の経緯など。))を全て額面通りに受け取って良いかはかなり微妙。「えいえんのせかい」は各所にしっかりと設定や伏線が為されており、退社の経緯もネクストンが悪いと限った話ではない((第三者からすると確たる証拠がない為。))が、後にKeyスタッフやVAの馬場社長が語ったものとは表現が全く異なる。 ---一部の設定や展開が『ToHeart』にかなり似ているが、中身が別物になっているのはこれも影響していると思われる。 -18禁版と全年齢版のOVAが出ている。 --18禁版は原作を元にしており、描写不足などからあまり良い評価を受けていないが無難な作品とは言える。 --全年齢版は完全なオリジナル展開…は良いとしても、重要な設定も無視している。更にそれらを受け入れても非常に理解しがたい電波な内容になっているので評判が悪い。補足すると、原作プレイ・未プレイに関わらず意味不明。 ---描写も全体的にあっさりしすぎていたり、曖昧なものになっていて空気を見ているかの様な作品になっているので演出的にも評価が悪い(作中のキャラと言うより、視聴者に対して存在の希薄感を表現しているのかもしれないが)。 ---結果として何をやりたかったのか、何を狙っていたのかすら分からない作品になっている。 ---ちなみに監督はその独特すぎるセンスでネットを中心にカルト的人気を博したアニメ版『[[DYNAMIC CHORD>https://dic.nicovideo.jp/a/dynamic%20chord]]』の影山楙倫氏(杜野幼青名義)。氏のファンなら楽しめる…かもしれない。 -CG鑑賞モードに「主」という名前のでぶった猫(?)らしきマスコットキャラがいるが、彼(彼女?)が何者なのかは本作最大にして永遠の謎である。そもそも読み方も「あるじ」なのか「ぬし」なのかすらわからない。 -いわゆる「知ってるがお前の態度が気に入らない」のAAで、スケッチブックを持っているキャラクターが上月澪である。ただしゲーム中にこのままのシーンや発言は存在しない。彼女が筆談を行うことだけなら事実だが。 --他にも「乙であります!」で有名なAAがあるが、これは後に『[[CLANNAD]]』の公式コミックを描いたみさき樹里氏の柚木詩子のイラストが元(台詞部分は原作やイラストとは無関係)である。 -PCフルボイス版・18禁版OVAはもとより、後述のPS版・ドラマCD・全年齢版OVAですら、それぞれの声優はバラバラで全く統一されていない。 --18禁版OVAのみ、声優は非公表となっている。 -「泣きゲーの元祖」とも呼ばれるだけあって話題に挙がることが多い。 --ライトノベル作家の本田透氏やシナリオライターの奈須きのこ氏は影響を受けたと言及している。シナリオライターの元長柾木氏は存在自体が奇跡でありコピーできるような代物ではないと評している。 -2020年4月23日に定額ゲームプラットフォーム「OOParts」がサービス開始。本作は初期から収録されたタイトルの一つである。 --PCだけでなくスマートフォンにも対応している。 -NEXTON 30th Anniversary PROJECTとして『ONE.』が発表され、2023年12月22日にSwitch/Win向けに発売された。 ---- *輝く季節へ 【かがやくきせつへ】 |ジャンル|恋愛アドベンチャー|&amazon(B00005OVTB)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売元|KID|~| |発売日|1999年4月1日|~| |定価|6,800円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|蛇足で微妙な追加CG&br;規制部分の改変・追加部分も微妙&br;黒歴史の追加ヒロイン&br;元シナリオの改変はほぼない|~| **概要(PS版) ファンから「Key」関連作として扱われている『ONE ~輝く季節へ~』のPS移植版。~ ただし、移植時に「Tactics」に残っていたのはプロデューサーのYET11(吉沢務)氏のみであり、他の主要スタッフは全員「Key」に移っている。~ タイトルが変更されたのは、PSにおいて既に『ONE』というゲームが発売されていた為である。 **変更点 -シナリオ関係 --新ヒロイン「清水なつき」の追加 --コンシューマ移植に当たって、規制に引っかかりそうなシーンの改変・削除 ---当然ながらエロ関係はかなりの量が削除されており、直接的なシーンは当然ながら、18禁とまでは言えないヒロインのパンツを下ろすシーン等も削除。 ---自主規制らしく、飲酒シーンは当然としてもこんなものまで?と言う様なものまで多数変更されている。 -音声・BGM関係 --音声の追加 --効果音の追加 --CD-DAからPSの内蔵音源に変更。 -新規CGの追加 --ただし、Hシーン等が削除された関係でそれらのCGもカット。 -その他 --メッセージウィンドウ方式からビジュアルノベル方式へ変更。 --OPムービーの追加。 --セーブ数の増加。 --バックログ機能の追加。 **評価点(PS版) -原作部分は規制部分を除いて無難にベタ移植されている。 --消極的な理由だが、原作スタッフが関わっていない上に後述のように追加シナリオとCGに問題がある為、原作部分が概ねそのまま移植された事は、原作の代わりやエロゲーに抵抗がある人が買う分には十分と言える。 -セーブ数増加とバックログ機能の追加 --バックログはADVとしては基本的な機能で、無いと非常に不便。 --内容に対して明らかにセーブ数が不足していたので、セーブ数増加も大きな長所。 -音声の追加 --演じているのは有名声優が多く、PC版プレイヤーによってはイメージに合わないなどの好き嫌いはあっても棒読みなどはない。 //声の追加は賛、演技ミス否で完全に分けられること **賛否両論点(PS版) -SEの追加 --追加された事自体は良いが、追加が相応しい場面の多さに対して量が少なすぎるせいで、逆に中途半端や手抜きといった印象を受けやすい。 //気になる人も少ないなら、ちょっと問題のある評価点レベルでは? //効果的・評価出来ると言えるSEもほとんどないので(ついでに言うとこちらも気になる人が少ない)、中途半端や手抜き感を加味すると賛否両論かと。 -OPムービー(アニメ)の追加 --アニメということも考えると、可も不可も無くと言った出来。 ---しかし、描写的にも原作設定的にも違和感の強いみさきや、ネタバレ回避の為かちぐはぐな留美や繭など、出来とは無関係なところで不自然な描写がある。 ---原作ファンからすると原作のデモムービーの方がよほど印象的で良いといった評価が多いが、アニメによる話題作りやデモはポップな曲では無い等の事情も考えられる。 **問題点(PS版) -追加CGが微妙。 --イラストレーターが変更されている為、追加CGが浮いてしまっている。独特の絵柄を似せようと意識したのは理解出来るが、お世辞にも成功したとは言い難い。 ---そもそも樋上氏の絵柄自体が賛否両論で、その樋上氏の絵の印象的な部分を他人が真似ようと強調して歪になっており、単独で見ても見比べても違和感を覚えるものになっている。 --「シリアスな場面が台無し」という意見に加えて、「何でこのシーンに追加した?」と首を傾げたくなる追加もあって、残念としか言いようがない追加になってしまっている。 -新ヒロイン「清水なつき」の存在。 --いくら原作シナリオライターが関わっていないとは言え、''原作を否定しているだけのシナリオ''になっており、フォローのしようがないものになっている。 --新キャラなので当然なつきのCGも追加CG担当の人であり、CG全体が他キャラと比較すると浮いてしまっている。 --原作と関係無しに考えても感情移入が難しいキャラな上に、話が強引過ぎていまいちと言う評価が多い。更に他のヒロインと比べて進展も駆け足になってしまっている。 ---原作や諸々の設定とは切り離した上で、一応評価する声や許容出来るといった声も存在する。 #region(なつきシナリオ詳細(ネタバレ有り)) -前述しているが元々の本作は浩平が「えいえんのせかい」から戻ってくる話で、本編はその絆(思い出)という形式なのだが、なつきシナリオでは結局''浩平が元の世界に戻ってこない''。 --ちなみにちゃんとした絆が無ければ戻ってこれず(あるいは何としてでも戻ろうとはせず)にBADエンド。 --このシナリオにも「えいえんのせかい」が関わっているのだが、独自設定をふんだんに追加していてなつきの為だけに改変されている。 ---新規シナリオとして方向性の違うものを追加したかったのかもしれないが、結果としてシナリオ自体がゲームから浮いており、スルーしない場合は原作部分の改悪に繋がっている。 -なつきは浩平と出会い頭に、それも執拗に「お兄ちゃん」と呼んでまとわりついてくる上に、「お兄ちゃん」と浩平とを不自然且つ頻繁に混同したりしなかったりする。 --当の浩平は比較的平然と接するのだが、なつきの挙動が異常過ぎるせいでユーザーから見てどう頑張っても感情移入出来る様なテキストでは無い。言い換えると「アホな子にお兄ちゃんって呼ばせておけばお前達は萌えるんだろう? 感動しろよ」とユーザーがライターから馬鹿にされていると邪推されるのも当然なテキストである。 ---更に浩平はなつきと接して、何故かすぐに妹のみさおや「えいえんのせかい」について明確に思い出す(あるいは知る)、原作ファンにとって強い違和感を覚える展開もある。 #endregion -声追加の際の演技ミス --言い回しが明らかにそぐわない場面が多数存在するという、演技面での致命的な問題がある。 ---完全に別の場面と勘違いしていると思わしきものが多い為、声優の問題というよりは台本や演技指導段階(余りの酷さから監督による修正の類は無しだと思われる)の問題と思われる。 -何も考えずにウィンドウ方式からビジュアルノベル方式に変更されている為、改悪にしかなっていない。 --元がウィンドウ形式だったものを単にずらっと並べただけであり、絵もテキストも見づらくなっただけである。ウィンドウ形式を生かした文章演出もあったので尚更。 --本来は表示が切り替わるからこそ同じ人物の台詞でもウィンドウごと「」で区切っていたのだが、これを「」そのまま縦に並べている。~ その為、同じ人物の台詞が「」で区切って連続して一つの画面に表示される。会話の流れによっては、別人の台詞と勘違いしやすい。 --立ち絵が変わる度に一度テキストがリセットされるので、違和感とともにテンポも悪くなっている。 -PS内蔵音源になった事で、BGMが若干劣化。 --仕方ないと言えば仕方ない部分だが、少しでも良くしようと工夫した形跡は見られない。 ---初回版に付属した後述のスペシャルディスクを使う事でPS本体からでも高音質なBGMを聴くことが出来るという形で一応フォローはされている。 -規制への配慮と考慮しても、おかしな表現が多い。 --Hシーンの削除自体は問題点ではないが、改変・追加シーンは妙に回りくどくて長い上に変なものが多くて浮いている。好みにもよるが削除だけの方がマシなものが多い。 --原作のとある中傷台詞を「誰にでもついて行く」にする変更が有り、中傷台詞であることは変わらないが、重要な場面にもかかわらず受ける印象が大きく変わっている。 ---他にも飲酒をあることに変えた結果、いけない薬でも使ってるのか?としか思えないほど異常な光景が発生している。 --変更個所だけは普通でも前後のテキストとはつじつまが合っておらず、矛盾していたり違和感を受ける適当な変更も多い。 **総評(PS版) バックログ機能追加とセーブ数の増加は大きな長所なのだが、表示方式変更の改悪が響いて(ハードの違いを考慮しても)利便性が増しているとは言い難い。~ それら以外は大小は別として劣化要素となっているものが多い。~ 中でも「原作CGから浮いている追加CG」と「清水なつき」はその最たるものであり、完全になかった物とされることが多い。~ 追加CGと清水なつきの事情、自主規制部分があるということを分かっているなら、ベタ移植に近いまずまず無難な出来なので、PS版から入るのも悪くはないだろう。 ---- **余談(PS版) -初回限定版にはCG・BGM鑑賞モードに特化した内容のDISC2「スペシャルディスク」が付属していた。 --CDの音源を直接再生するCD-DA形式ディスクなので本編では内蔵音源で劣化していたBGMを高音質で聴くことが可能。CDプレイヤーで再生することでサントラ代わりにもなる。 --CG鑑賞モードも本編より高画質。また本編のクリアデータを読み込ませることでエンディング後のちょっとしたおまけイベントを見ることが出来る。 -本作のビジュアルファンブックには、PC版製作スタッフのインタビューも掲載されている。 -追加CGの件やそれがどのCGなのか知らない人からすると、絵柄を似せようとしただけあって「樋上氏が描いた下手なCG」等の様に誤解されやすく、主に樋上氏に対して余計な悪評の原因となっている。 --その一方で追加CGの原画家にとっても、原作の絵が不安定なので逆の形で誤解される場合がある。要するに両者にとって余計な悪評の原因になってしまっている。 ----

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