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ミシシッピー殺人事件」を以下のとおり復元します。
*ミシシッピー殺人事件
【みししっぴーさつじんじけん】
|ジャンル|アドベンチャー|&image2(MISSISSIPPI.jpg, width=150,http://www.amazon.co.jp/dp/B000068H11)|
|対応機種|ファミリーコンピュータ|~|
|発売元|ジャレコ|~|
|開発元|トーセ|~|
|発売日|1986年10月31日|~|
|定価|5,200円|~|
|判定|BGCOLOR(lightsalmon):''クソゲー''|~|
|ポイント|タイタニックより危険な船=理不尽な即死トラップ&br;無能な助手=実はトラップ犯?&br;あまりにお粗末なシナリオとトリック=実は全員グル?&br;捜査ミス=即詰み≠死亡|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
アメリカでApple IIとコモドール64用ソフトとして開発された推理アドベンチャーゲーム。『MURDER ON THE MISSISSIPPI』を、ライセンスを得たジャレコが日本語版としてローカライズした上でFCに移植したもの。つまり''洋ゲ''ーである。

偶然その場に居合わせた探偵「チャールズ・フォックスワース卿」とその助手「ワトソン」が、ミシシッピ川を下るリバーボートで発生した殺人事件を解決する、という内容。~
このあたりは探偵モノとしてはベタな展開であるのだが、そもそも「ゲーム開始時既に事件は起こっている」という設定のため事件の第一発見者にならないと話が始まらない妙な仕様となっている。

**クソ要素
-豪華客船が舞台の海上ミステリー! …と言えば聞こえはいいが、その正体は『[[スペランカー]]』と並び語られる「死にゲー」。

-理不尽なトラップが仕掛けられている。
--特定の客室で''落とし穴''が仕掛けられており、落ちるとゲームオーバー。しかも''どう見てもバラエティ番組によくある落とし穴''にしか見えない。
---船の中の落とし穴とは、下は一体どうなっているのだろうか? 一応『[[BIOHAZARD GAIDEN]]』にも、そこら中に穴が開いてる船があるわけなのだが…。
---「強度不足という欠陥によって穴ができ、それに落ちて川で溺れ死んだからゲームオーバー」と強引に解釈したい所だが、ワトソンが「誰かの罠だったんだ」と断定している。
---そもそも冷静に考えると下の階の部屋へ落ちるだけのはずである。落とし穴のある部屋の下の部屋に続けて落とし穴がある…わけでもないので川に落ちるはずがない。1階下の部屋に落ちれば怪我はしてもおかしくは無いが、それだけで簡単に死亡するチャールズ卿はスペランカーや[[しんのゆうしゃ>シャドウゲイト]]並の虚弱体質とでも言うのか。
--特定の客室の壁から飛んできたナイフに刺され、やはりゲームオーバー。
---部屋に入った途端、主人公目掛けて一直線に飛んで来る。すぐに避けなければ即死である。
--これらトラップの所為で、''死体発見前に死体と化す''などとは本作ではよくある事。しかし事件が解決しても、これらのトラップを用意した人間は謎のまま。
--そしてワトソンの台詞「あぁ もし さいしょから やりなおす ことが できれば なんとか なるのに…」がプレイヤーを脱力させる。
---穴に落ちた時だけ「''なんんとか'' なるのに…」となっている。

-推理もののようではあるが、カンか総当りでしか進められない捜査。
--特定の証言をワトソンに「メモ」させないと、他の人への聞き込みで活用できず、そのメモは証人1人につき3つまでしかキープしておけない仕様が曲者となっている。どれが重要な証言かが分からないと先へ進めない。
--しかも「ああっ、メモし忘れた」と思って同じ人間に同じ事柄を聞いたところで、どんなに重要な証拠をしゃべっていても「''もういいました''」しか言わなくなる。
--証言のメモし忘れへのペナルティがゲームオーバーではなく「''手詰まり''」というのも洒落にならない。同じADVでも選択ミスがほぼゲームオーバーで同じ場面をすぐやり直せる『[[シャドウゲイト]]』の方がまだ良心的である。こうなると電源を入れなおすか落とし穴やナイフを使ってわざとゲームオーバーになるなどしてゲームを最初からやり直すしかない。

-そしてセーブもパスワード機能も存在せず、プレイの度に最初からやり直さなければならない。
--捜査も中盤に差し掛かった頃あたりに、ついうっかり部屋を間違えて飛びナイフに刺されることも。''もう嫌だこの船''。
--原語版にはセーブ機能があるので死んでも途中からやり直せた。死亡時のセリフ「やり直すことができれば」は、恐らく「セーブ地点からやり直すこと」を指していたと思われる。

-移動速度がとにかく遅い。
--原語版はもっと速く移動出来たのに、FCになって大幅に鈍化してしまっている。

-上述の「なんんとか なるのに…」の他にもテキスト面に粗が見られる。
--プロローグのテキストの時点で、「げんき ''ず''けているかの ようです」という誤字と、それまで「ですます」調で語られてきたのに殺人事件発生を仄めかす部分だけ語尾が「~だろうか」になっているという表現の一貫性のなさが確認できる。
--ある外交的ではない乗客が富豪の乗客から社交界に出るようにとしつこく勧められている話をする際、「私を''社会''に参加させようとしているが」と語っており、引きこもりのような印象を受ける。
---"society"が「社会」と「社交界」の両方の意味を持つことによる誤訳と思われる。

-回収し切れていない伏線がある。

-シナリオやトリック、推理内容も極めていい加減な上に''探偵の推理内容と犯人の言動が噛み合っていない''。
--事件の起きた部屋に銃弾が無かったことに対し探偵は「弾丸は彼の体を貫通し床を転がった。そのうちに''床の隙間から下に落ちたのだろう''」と推理している。加えて助手はそれに対し「だから''弾丸が下の部屋にあったんだ!''」とツッコミを入れている。確かに事件現場の真下の部屋に弾丸はあったのだが、''その弾丸は机の中から発見されている。''自動的に弾丸が机の中に入るのだろうか。
--凶器の行方についても「柵に当たったピストルは''銃身とグリップの2つに折れて''銃身は''海''に落ちたがグリップは柵に引っかかったままになってしまったのだ」と推理しているが柵に当たっただけで壊れるピストルなど耐久性がなさすぎるだろう。そしてこの船は''ミシシッピ川''を下っているのであり舞台は海上ではない。
--銃声が聞こえなかった事に対し探偵は「他の乗客に毎朝鳥を撃つ癖がある人物がおりその時間に持っていた2丁のピストルのうち1丁を箱から出して被害者の部屋へ行き''他の乗客の銃声に合わせて''射殺した」と推理しているが、犯人は「被害者は自分の船室に来るように告げられて部屋に行った後争いになりやむ無く発砲した。殺す気は無かった」と証言している。だとしたら''鳥を撃った乗客の銃声と被害者を射殺した銃声が全く同じ時間に聞こえたのは偶然なのだろうか''。
---更に犯人は「私は''錯乱状態''に陥ってしまった。''ピストルを綺麗にしていると''(以下略)」と発言しているが''錯乱状態に陥りながら証拠隠滅を図れるのだろうか''。

-会話に脈絡が無い。
--例を挙げると、死体を関係者に見せる→「ああ、ブラウンさんですね」と妙に冷静。しかしそのまま被害者について聞いてみると「な、なんですって!? ブ、ブラウンが!?」といきなり驚く。バカにされているようにしか思えない。

-登場人物の人間関係が極めて険悪。
--「あの下品な若い女か。洋服の着方などからわかりますよ」「あいつは人間のクズですよ。下品で無教養で信用できない奴ですからね」「彼のような人の事をお聞きになるなんて侮辱ですわ」。もう2、3人ほど被害者が出てもおかしくない環境である。
---これらが事件解決の鍵や終盤への伏線になっていたのなら仕方ないのだが''そんなことはなかった。''そればかり''かますます不可解な結末を助長している。''

-ようやく犯人を追い詰めても、''他の乗客が一斉に犯人の弁護をし始める。''
--しかもまるで''真相を暴いた主人公が悪いかのように言い出す''ばかりでなく、捜査上で証言しなかった重要な証拠や、事件の背後要因等を今更になって次々口にした挙句、''勝手に犯人を正当防衛の無罪と断定する。''
---殺人の動機に少なからず同情する余地はあるものの、そういった重要事項を探偵に証言せず、だんまりを決め込んでいたのは他ならぬ犯人以外の乗客達である。後出しじゃんけんもいいところであるし、何よりろくに捜査に協力しなかったくせに何様のつもりだ。
---加えて前述の落とし穴や飛びナイフのような凶悪なトラップをあちこちに仕掛けて無関係の探偵まで殺そうとしていたのに、その件については一切追及されない。犯人が仕掛けた者ならば到底無罪とは言えないし、そうでないというのならいったい誰の仕業なのか。
---その犯人も、とても正当防衛で止む無く人を殺めてしまっただけの人間とは思えない行動((被害者から奪ったある書類を自宅に郵送しようとする。など))を取っており、上記のいい加減なトリックからも分かるように、計画性や共犯者を匂わせる要素も多く、無罪と納得するには無理がある。しかしラストの弁護ではそれらについては一切スルーされる。
--ここに来てこの事件の根底には''「所有していた銀山の採掘権を騙し取られ両親を失った娘の復讐劇」''というシリアスな背景があったことを仄めかされるのだが、上述の支離滅裂なシナリオ展開が全てをぶち壊している。
--序盤では事件を悲観したり、死者を憐れんでいたりしたのだが…
---船長「そんな…''彼はこの船の共同経営者なのに''」
---被害者の息子「実はあいつは俺の父親なんだ」
--しかし犯人が確定した途端に…
---船長「彼女は当然のことをしただけです。''被害者は彼女の父親を自殺に追い込んだ奴ですよ''」
---被害者の息子「勝手なことを言うな!''奴は彼女を脅していたんだ!(中略)彼女は自分の身を守るためにやったんだぞ!それなのにひどいじゃないか!''」


--この他の乗客も前述の通りやたら人間関係が険悪な上に、捜査段階ではやたら他人を疑ってかかっていたのだが、シナリオ終盤で犯人が追い詰められた途端、これまでの不仲ぶりが嘘のように一致団結して犯人の弁護に走っていることや、捜査段階で重要な証拠や事件の背後要因や人間関係を証言してなかったこと、そしてさも最初から犯人を知っていたかのような言い回しをしていることも手伝って、一部のユーザーからは「殺人を起こした犯人の他に罠を仕掛けたりアリバイ工作をしたであろう共犯者がいる」という説、更には''「チャールズとワトソン以外の登場人物が全員グル((ラストの一斉弁護に限らず船の乗客が犯人若しくは被害者と何かしらの関係を持った人物が多いことや、かつて被害者の事件を受け持った判事が乗っていたこと、同時刻に鳥を撃った乗客などの存在がその説を助長している))」''という説が囁かれている。
--また、ゲームシステム上の仕様なのだが、ワトソンは一切トラップに引っかからない事から、''トラップの仕掛け人はワトソン説''まで浮上する始末である。

-やっとクリアしても表示は''ゲームオーバー''。「ゲームは終了した」という広義で捉えれば間違っていない表記((同年発売のスターソルジャーもゲームオーバーBGMで終わるし、当時はクリア画面に「ゲームオーバー」と書かれていること自体はそこまで珍しくはない。))だが、アドベンチャーでやられるとなんとも骨折り損のくたびれもうけである。もちろんスタッフロールなど無い。

-証拠品が意味不明なところに隠されている。まるでいいかげんなFLASH脱出ゲーム的ノリ。
--またいちいち自室に帰らないと証拠品整理や分析が出来ない。

**評価点
-純粋な評価点は''無い''。シナリオもトリックも杜撰そのもの。システムも仕様も理不尽の極みでこう断ずる他無いのが実情である。
-本来の長所ではないが、開始何秒で穴に落ちるかを競ったり、船長室BGM終わりの効果音(''アタック25の早押しボタンの音'')を何度も聞いたりといった楽しみ方を見出す人もいた。そう言った遊びが出来る点はまだ救いがあると言える…かも?ぶっちゃけ本来の遊び方で無いことは言うまでもないが。


**総評
洋ゲーのローカライズではあるが、元々のいい加減なストーリーに加えて、FCになって更に理不尽になった仕様によって、クソゲーと断ずる他無い出来となった。寧ろ、今となっては落とし穴やナイフトラップの方がネタとして有名になっており、その点では愛されるクソゲーと言えなくもない事になっている。

**余談
-原語版におけるワトソンの本名は"Regis Phelps"(リージス・フェルプス)であり、なじみ易い名前に、との判断で有名な推理小説シリーズであるホームズシリーズにおける主役の相方から名前を拝借したようだが、さすがに主人公"Sir Charles Foxworth"をホームズにするのは控えている。
-理不尽なトラップについては、FC版は実はこれでも''緩和された方''だったりする。原語版ではドアを開けようとすると''物が落下してきて首の骨をへし折る''という極悪トラップがあり(しかも、ドアを開けようとした瞬間にランダムで発生する)、確認したら即座にドアから離れないと死んでしまう。…コレはどう考えても無差別殺人ではないだろうか。
--ただし、そちらはセーブ機能がある分、まだ良心的である。
-実は双葉社が出版していた「冒険ゲームブックシリーズ」の一作として本作の続編的作品が存在する。本作の事件の犯人が射殺されると言う衝撃的な幕開けとなっているが、本作で放置された伏線が回収される補完的作品…ではなく、物語そのものは本編とは関連が無いオリジナルのものとなっており、主人公も本作の二人ではなく新キャラの少年達となっている。
-ディジーの部屋に入った時のBGMが某ジブリ映画のオープニングテーマに酷似しているが、その映画の公開は今作発売から20年以上先のことである。
-被害者は横たわった姿の顔グラフィックと辮髪に見える絶妙な血痕グラフィックから「ラーメンマン」と呼ばれることもしばしば。

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