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ウィザードリィエクス ~前線の学府~」を以下のとおり復元します。
*ウィザードリィエクス ~前線の学府~
【うぃざーどりぃえくすぜんせんのがくふ】
|ジャンル|3DダンジョンRPG|&amazon(B0006JHQJI)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|販売元|コナミ|~|
|開発元|マイケルソフト(Team Muramasa)|~|
|発売日|2005年2月24日|~|
|定価|7,140円(税込)|~|
|ポイント|ウィザードリィ史上初の「学園RPG」|~|
|>|>|CENTER:''[[Wizardryシリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1088.html]]''|

*概要
 3DダンジョンRPGの元祖である『[[ウィザードリィ>http://www23.atwiki.jp/ggmatome/pages/827.html]]』は、FC版の移植以降、「シリアスな世界観と高難度」がウリのRPGとして認知され、その後日本で製作された外伝シリーズやBUSINシリーズなどもその特徴を受け継いでいた。
 しかし、このXTHシリーズはそこに「学園物の要素をブチ込む」という暴挙をやってのけてしまった。キャッチコピーは「ウィザードリィ史上初、学園RPG!」この時点ですでに怪しさ満点。古参ファンは「ハァ!?」と思わず声を上げた。
-開発スタッフである「チームムラマサ」は、かつて『ウィザードリィエンパイア(PS版1&2)』を作ったスタッフが中心となって結成された。そのせいであろうか、魔法の名称や全体のゲームバランスなどはエンパイアシリーズが元となっている。

*ストーリー
水と緑の惑星オリンピア。この星では「エンパイア文明」と呼ばれる高度な文明が栄えていたが、 
システムの暴走した「空中都市イカロス」の砲撃により壊滅的な打撃を受け、 
エンパイア文明は終焉の時を迎えた。 
わずかに生き残った人類と魔族は、海を隔てた2つの大陸においてそれぞれ復興していくこととなる。 

空と海はエンパイア文明の生み出した「竜」によって支配されており、
人類魔族無差別で攻撃を加えて船を沈めるため、航海はほぼ不可能だった。 
そのため人々は危険な海路を避け、古代人の遺産である魔法の道「ロード」を使って世界を行き来した。 
だがそれは人類と魔族の邂逅を招き…そしてロードの支配権をめぐって争いが始まった。 

人類と魔族が相争うようになってから数十年が経った。 
戦力的に劣る人類は、国家間連合「クルセイド」を結成。さらに大陸各地に人材を育成するための 
機関「聖戦学府」を設立。優秀な学徒を士官登用し、戦線に投入していた。 

北半球西部に位置するクライス王国の一都市、アーレハイン。 
この地には英雄サウロ・アンダルシアが校長を務める「アーレハイン聖戦学府」が存在した。 
さまざまな思いを胸に秘め、鍛錬に励む学徒達。
そんなある日、「学徒達の間で不思議な夢を見る者が続出する」いう現象が起こる。
夢には決まって少女が現れ、「聞こえますか?私はここにいます」と謎のつぶやきを残していった。
サウロ校長は新米学徒達にこの不思議な現象の調査を命じるのだが、
それは人類と魔族、そしてエンパイア文明全てを巻き込む大事件へと発展するのであった…。

*長所
-プレイが非常に快適。
--ステータス画面の切り替えに多少もたつくものの、操作性はかなり良好でキーレスポンスの反応もよい。また、ディスクメディアながらローディングがほとんどない。例えばソフトリセットの場合、入力後すぐタイトル画面が表示されるほど早い。
--戦闘も決定ボタン押しっぱなしでエフェクトをキャンセルしつつ高速でメッセージが表示される。物理攻撃を行うと打撃エフェクトが表示されるのだが、FF3のように連続ヒットしつつメッセージは早送りされるため快適かつ爽快感がある。

-キャラクターメイキングにおける自由度が高い。
--顔グラをモンタージュ形式(福笑いの要領で各パーツを入れ替える)で作成可能。
--装備品にはローポリながらグラフィックがつき、ステータス画面のマネキンに表示される。グラフィックこそショボイがバリエーションは豊富で、同じ装備でも男装備時/女装備時で若干変わったりする。
---装備品には鎖帷子やプレートメイルといった普通の品から、ジャージ、ブルマといったネタ装備まで揃っている。また、シリーズ定番の武器「カシナートの剣」がミキサー型のグラフィックとなっている(これはウィザードリィ原作者の設定通り)。
---後述の「錬金」で装備品に属性をつけると色が変化する。ブルマに光属性を付けて白く染めるのはお約束?

-学科(職業)の特徴の明確な差別化。
--各学科(職業)には固有スキルが備わるなど従来作よりも特徴が差別化され、上級職、下級職といった括りは無くなった。本作ではどの学科も最後まで使えるように調整されている。
---例えば戦士は従来作では侍、ロードといった上級前衛職の下位互換でしかなかったが、本作の戦士はレベルアップが全学科中最も速い上に連続攻撃スキルを所持しているため、「同じ経験値のキャラ」という条件で比較すると、物理攻撃力、耐久力が頭一つ抜けて高い。もちろん他の学科も負けてはいない。侍はノーコストの範囲物理攻撃が可能だし、君主(ロード)は仲間への攻撃を身代わりとなって受け止めることができる。

-アイテム集めが楽しい。
--サギまがいの売り文句の中で、唯一「アイテム総数約600種」は本当であった。
--合成で廃品を修理したり、装備品を強化する「アイテム錬金」が登場。戦う敵に合わせて属性付与を行ったり、装備品の色を変えてマネキン観賞を楽しむ、といった新たな楽しみが生まれた。

-予備パーティに明確な役割が与えられた。
--本作には「『ロード』と呼ばれる魔法の道の支配権を賭けて、人類と魔族が争っている」という設定が存在し、各中継点にパーティを駐屯させることでロードの支配率を維持、上昇させることが可能。駐屯しているキャラには少しずつではあるがお金と経験値が自動かつ安全に手に入る。また、ロードの支配率を上げるとこちら側が有利になるような(エンカウント率が下がる、周辺の中継基地の物価が下がる)特典もつく。

-ストーリー、設定は結構しっかり作られている。
--MMOなどで見られる「小クエスト並立制」を取っており、ゲームをクリアするのに必須のメインクエストと、気が向いた時に行えばよい無数のサブクエストが存在する。
---メインクエストは結構シリアスだが、サブクエストはおバカなノリのものも多い((例えば「寄宿舎のおばちゃんの愛用ミキサーが壊れてしまったので何とかしてほしい」とか。ウィザードリィでミキサーと言えばアレだが…))。
---ゲーム序盤のクエストは「カリキュラム」という形でのチュートリアルを模したものが多く、無理なく基本を身につけられるようになっている。

-BGMが良い。
--[[『アストロノーカ』>http://www23.atwiki.jp/ggmatome/pages/240.html]]などを手掛けた神保直明氏が作曲を担当。「曲だけは良い」という声もよく聞く。
---これ以降、チームムラマサ作品の曲は一貫して神保氏が担当するようになった。

*短所、賛否両論な点
-誇大広告。
--パッケージ裏には「キャラクターのフェイスパターンは3万種以上!!」「ランダム生成によって変化する迷宮!!」「レベルや属性が変化する数万パターンのモンスター!!」といった大層な文句が並んでいるが、実際はそれらは全て掛け算によって水増しされた文面であった。
--マップに至っては半分が「あるマップの座標をずらしただけ」という有様。ただし水増し分を除いても50フロアはあるし、後半のマップはかなり歯ごたえのある難易度ではある。

-グラフィックがPS2とは思えないほどショボイ。
--キャラクターやモンスターがアニメ調のイラスト。パターンもあまり豊富ではない。
--マネキンははっきり言ってPS1レベル。BUSINとかと比べちゃいけません。
--ただしイラストに関してはシンプルな絵柄であるが故に、モンタージュ形式でも違和感なく様々なキャラが作れるようになったともいえる。上述のBUSINの場合は、絵柄が凝っている代わりに一種族につき男女一種類ずつ(しかも濃い)しかイラストがなく、キャラメイキングの幅が狭い。ウィザードリィには自分でキャラのイメージや設定を作る事を重視するタイプのプレイヤーが多いため、この問題は致命的である。
--迷宮内のグラフィックも単調かつ殺風景。もっとも、「ダンジョン」ではなく「先人の遺産である魔法の通路」なのだから仕方がない、と言えなくもないが…。

-独特な世界観、従来作とは明らかに異なる設定
--「グラフィックがアニメ調で、しかも学園物」という前情報から、反発的な層からは「萌えオタに媚びてんじゃねぇ」という声も挙がったが、実際にはグラフィックのしょぼさもあり、そういった層は釣れなかった。
---ただアニメに近い絵になったとはいえ萌えに走っているというほどの絵柄でもなく、萌えを前面的に出していたわけでもない。あくまでこのゲームの売りは「快適なハック&スラッシュ」なのである。
--「ドワーフ=犬人間、ノーム=人形に憑依する霊体」、「シリーズ常連キャラのマーフィー((敵として登場する「マーフィーズゴースト」と、ストーリーにかかわるNPCが存在する。ここで挙げられているのは後者でシリーズ常連なのは前者。))が眼鏡ッ娘」、といったぶっとび設定も存在する。これらは従来作とは明らかに異なる設定であり、ウィザードリィ=硬派なファンタジーという認識のファンから失笑を買ってしまった。
--念のため解説するが、ウィザードリィ=硬派ファンタジーというイメージはローカライズの過程で生じた日本独自のものであり、元々は欧米圏のギーク的な発想に溢れたパロディ要素の強いゲームである。ウィザードリィシリーズは作品ごとの作風の差が大きく、それぞれに良さがあるので、「どれが上か」「正当なウィザードリィの定義とは」などといった事を決めるのはナンセンスである。

-後半の難易度はシリーズ中でも高いほうに入る。
--エンディング後に戦闘できるボスが何体か登場し、ラスボスをはるかに超える戦闘力を誇っている。特に「エンパス」は撃破する度にレベルが上がり、最大レベルの50に達したエンパスは「RPG中屈指の強ボス」として有名。
---「毎ターン経過時にHP全快」「カンストダメージを拝める物理攻撃力」「複数の状態異常をメンバー全員に与える特殊攻撃」などを所持しており、魔法「マハンマハン((詠唱者自身のレベルと引き換えに、強力な効果を呼び起こす魔法。従来作の「マハマン」に相当する。))」の使用が前提となる強さになっている。ヘタをすればかの「ダイヤモンドドレイク」をも超える強さである。
--PSエンパイアを作ったスタッフが製作しただけあって、後半にはゲンナリする程の高難易度マップが待っている。((PSエンパイアはシナリオ4「ワードナの逆襲」程ではないがマップのデザインがかなり凶悪で、探索の難易度が非常に高かった。))
--エンパイアでも存在した「深水域(浮遊していないキャラが侵入すると即落下→溺れて強制即死)」は本作でも健在。さらにそれが「呪文禁止域(強化呪文を全て打ち消し、かつ呪文が唱えられない。)」と組み合わさって出現するようになった。対策なしに足を踏み入れてしまうと、ノームやフェアリーといった浮遊特性を持つ種族以外のキャラはなすすべもなく死を迎える。そしてこのトラップコンボはランダムで配置されることもあり、「扉を開けたら深水域+呪文禁止域→全滅」といった事態も発生しうる。よほど不評だったのか続編では対策手段が増加し、今作のような理不尽さはなくなった。

*総評
 快適なプレイ環境を整え、やりこみ要素や意欲的な新要素を加えている点は評価できるのだが、その大半が練りこみ不足で、「ここをこうしていればもっと良くなったのに…」と思わせることしきりであった。そのためゲームとしての評価は凡作どまりとなっている。

*その後の展開
-約1年後に、続編の『[[ウィザードリィエクス~無限の学徒~>http://www23.atwiki.jp/ggmatome/pages/88.html]]』が発売された。不評だった部分の修正、さらなる操作性の向上、アイテムや育成要素の追加など徹底的なブラッシュアップがなされており、こちらは良作との評判が高い。但し独特の世界観は受け継がれており、このシリーズに拒否反応を示すファンは決して少なくない。
--本来は3部作の予定であったが、チームムラマサのマイケルソフト離脱や発売元の倒産などトラブルが続き、エクス3は未発売。これからどうなるの?というところでの壮絶な打ち切りエンドとなっている。
---そしてその版権がゴタゴタしている間にかの[[『剣と魔法と学園モノ。』>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1194.html]]が出てしまい、続編製作がさらに絶望的になっていたが、2011年に開発スタッフが現在ウィザードリィの版権を持っている企業と(おそらく続編の)交渉を持っていることを明らかにした。

*余談
-実はこのウィザードリィエクス、超低予算で作られた作品である。そのため開発にゴーサインが出た、ともいえる。正確な販売本数こそ不明だが商業的には黒字であったらしく、NHKの報道番組『クローズアップ現代』でゲームビジネスの成功例として取り上げられた。
--その後、エクス2開発時のゴタゴタを経てマイケルソフトは倒産してしまったのは皮肉と言う他にない。
-マイケルソフトのHPや電撃プレイステーション誌上にて、ハタキチ氏による4コママンガが掲載されていた。絶妙なヘタウマ加減の絵とクスリと笑いを誘う内容から、なかなか好評であった。
-このゲームの開発開始時点では『ウィザードリィオンライン』とも言うべきオンライン作品だったようである(参考・[[開発スタッフの運営ホームページのWebアーカイブ>http://replay.web.archive.org/20050206024122/http://homepage1.nifty.com/BQY00434/index.htm]])。ダンジョン支配率の概念やクエスト制はその名残であったのかもしれない。
--なお『ウィザードリィオンライン』については2006年11月にゲームポット傘下のIPM社がウィザードリィの版権を取得して以降音沙汰がなかったが、2011年春現在も同企業の元で製作されてはいるようである。
//放送時の情報をご存知の方がおりましたら追記をお願いします。

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