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グランツーリスモ」を以下のとおり復元します。
*'''GRAN TURISMO'''
【ぐらんつーりすも】
|ジャンル|リアルドライビングシミュレータ|&amazon(B000069SQ1)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|メディア|CD-ROM 1枚|~|
|発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~|
|開発元|ソニー・コンピュータエンタテインメント&br()ポリフォニー・デジタル&br()サイバーヘッド|~|
|発売日|1997年12月23日|~|
|定価|5,800円(税抜)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[グランツーリスモシリーズリンク>グランツーリスモシリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が1997年12月に発売した3Dレースゲーム。通称は『GT』。~
収録車両は100車種146グレード。パッケージに使用された車両は『[[トヨタ・スープラ A80>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9]]』と『[[日産・スカイライン GT-R R33>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3#9.E4.BB.A3.E7.9B.AE_R33.E5.9E.8B.EF.BC.881993.E5.B9.B4-1998.E5.B9.B4.EF.BC.89]]』である。

開発は以前『モータートゥーン・グランプリ』シリーズを手掛けた山内一典氏率いる、SCE内部の「Poly's Entertainment」(現:ポリフォニー・デジタル)チームが担当。~
山内氏は次世代ゲーム機で様々な新機軸のゲームが出現する中、当時のレースゲームの「『ゲーム』として「デフォルメしたカーレース」を表現する」というスタンスに満足できず、~
自ら称する「リアルドライビングシミュレーター」の文字に違わない、徹底してモータースポーツの再現を追求したリアル志向のレースゲームとして本作を誕生させた。

「リアリティ」を追求したレースゲームは本作が初めてという訳ではないのだが((セガの『バーチャレーシング』『セガラリーチャンピオンシップ』等))、当時としては珍しい環境マッピングの搭載、専用物理エンジンによる非常にリアルなマシンの挙動、~
多数の実在車種を登場させた本作は国内だけでも250万本、世界的には1000万本以上の大ヒットを記録し、「GTの登場がレースゲームの在り方を一変させた」とも言われるまでの作品となった。
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**特徴・評価点
''「リアル」な挙動''
-独自開発された物理エンジン((物理演算エンジンとは質量・速度・摩擦・風に関する古典力学的現象のシミュレートを行うソフトウェアの事。自動車で例えるなら、カーブでの遠心力や路面のグリップ力を計算する。))により、車の挙動は現実の物理現象を忠実に再現している。
--従来のレースゲームでは、事前に車種毎のプログラムを組んで疑似的に車の挙動を再現していた((端的に言うなら「それっぽく車体を傾けて挙動を重くしていた」。))のだが、本作はそれ以上、97年当時において最も「リアルな挙動」を獲得する事に成功している。
---ただし、''細かい点では実際とは異なる「ゲームらしい部分」はもちろん存在する。''例えばレース中に他の車や壁に接触してもペナルティやダメージが発生しないのは他のレースゲーム同様。
--同ハードで発売されたナムコの『[[リッジレーサー>リッジレーサー (PS)]]』は大ジャンプや無茶なドリフト等、リアリティ無視の爽快感がウリの作品だったが、本作ではそんな芸当はできない。~
アクセル全開でコーナー突入は当然不可能であり、更にブレーキやアクセル操作も雑な操作ではタイヤのグリップを狂わせてしまいコースアウト、場合によってはスピンしてしまう。
--本作の登場は所謂PCゲームのみの存在であった「リアル系レースゲーム」というジャンルを家庭用ゲーム機で確立する事となり、後発の作品群にも少なからず影響を与える事となった。

''「リアル」の車''
-登場する車は全て実在するもので、その数なんと100種以上。「実車を操作できる」という事も当時は珍しかったのだが、その圧倒的な収録数はユーザーの度肝を抜いた。~
トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車、富士重工、ゼネラルモーターズ、クライスラー、アストンマーティン・ラゴンダ、TVRと契約、ゲーム制作面でも連携している。
--前述した専用物理エンジンに車の寸法・重量等の性能を入力すれば、それぞれのデータ毎にほぼ現実に近い挙動が簡単に再現できる仕様になっており、収録車数増加に一役買った。
-車のモデリングはもちろん、エンジン音等も緻密な取材によって「グレード・年式の差」も再現されており、ほぼ全ての車に全4ページの解説テキストも用意されている。
--特にTVRは当時、他のレースゲームには殆ど登場しておらず((あるにしても、『Test Drive 4』といった海外製のゲームにしか登場していなかった。))、グリフィスに至ってはゲーム初登場であった。
--国産車種中心のラインナップとなっているが、作品の大ヒットに伴い、「この作品で日本国内専売(当時)のスポーツカーは世界的な知名度を上げた」とまで言われた((現に映画『ワイルド・スピード』では、劇中で本作をプレイしているシーンが存在し、同映画の初期3部作の主役車両も『トヨタ・スープラ A80』、当時は日本国内専売の『スカイライン GT-R』『三菱・ランサーエボリューション』であった。))。

-レーシング仕様ではない実車をレーシング仕様に改造してペイントを加えた、厳密な意味では架空車といえるマシンもいくつか存在している((そうしたマシンには解説テキストが用意されていない。))。~
 また、市販車を完全なレースカーに改造できる「レーシングモディファイ」(通称「RM」)という特別なチューンアップも用意されている。
--レーシングモディファイした車両は、ゲーム的には『架空のクルマ』という位置付けだが、実は殆どの車でモデル(元ネタ)が存在する。~
例えば、国産車種は全日本GT選手権・全日本ツーリングカー選手権・スーパー耐久・メーカー系ワンメイクレース・世界ラリー選手権(WRC)・国内ラリーの参戦車、~
海外車種はル・マン24時間耐久レース等のFIA-GT(BPR-GT含む)・SCCA(アメリカのツーリングカーレース)・全日本GT選手権の参戦車が主なモデルとなっている。
---そのデザインは現在でも有名なものから、知ってる人は思わず『あっ!』と思うであろう資料が少ないマニアックなものもあり、相当な拘りを感じ取れる部分である。

''「リアル」を求めた映像''
-美術面でもハード性能をフルに引き出してリアリティが追求されている。中でも当時まだ珍しかった「環境マッピング技術」が特徴的。
--「環境マッピング」とは、車体に光沢をつけ、表面には事前に製作した周囲の背景反射データを映り込ませる技術。これによって視覚的にも現実感がより伝わりやすくなっている。~
元々レベルの高いポリゴンとテクスチャーと合わさって、ただでさえレベルの高かったグラフィック描写がより美しいものとなり、ユーザーから絶賛された。
---更には「映像でのみ車両のホイールが逆回転に見える現象」である「ワゴンホイール効果」も再現されている。
--どんな走り方でも格好良く見えてしまうほど、レース後のリプレイ映像のカメラワークが洗練されているのも特徴。この点も幾多の車好きを魅了した。
--テーマソング「Moon Over The Castle」をBGMに、実機のゲーム映像を組み合わせたオープニングも特徴。

''楽しくシビアなカーライフを・・・''
-ゲームモードは「クイックアーケード」と「グランツーリスモ」の二つ。
--「クイックアーケード」はあらかじめ用意された車を選んで、手軽にカーレースを楽しむためのモード。
--「グランツーリスモ」はモータースポーツライセンスを取得して一人のレーサーとなり、レースに参加して賞金を獲得し、そのお金で車の売買や車のセットアップ・チューニングを行っていく循環構造を取り入れた、カーライフを楽しむためのモード。
---国内A級など「ライセンス試験」を受けライセンスを取得することでレースに参加できるようになるのだが、その試験課題の前に説明される文章は現実のドライビングテクニックに通ずる内容。~
これらを一つずつ身につけていかないと本作を十二分に楽しむことはできないだろう(逆に言えば、ユーザーが自然にドライブ技術を身につけながらゲームを楽しめるように作られている)。
---車のセッティング内容も多岐に渡り、ギア比やブレーキの利き方、サスペンション等数値による細かい設定が可能。空力・バンパー等、素人目には分からないような部分の違いも物理エンジンで表現されている。
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**問題点
-とにかく「リアリティ」を追い求めた結果、あらゆる面で難易度が高い。
--操作・レース・カスタマイズ・セッティング・ライセンス、いずれにおいてもハードルは相応に高い。レースゲーム初心者は購入に覚悟が必要。
---特に今作のライセンス試験の難易度は、今でも「ブロンズ取るだけでも全シリーズ中最高難易度」と言われるレベルである。~
国内B級3つ目が初心者の心をいきなりへし折り、中級者は国内A級の3つ目で行き詰まり、国際A級の7つ目は殆どのプレイヤーに絶望を与えた。
--その割に物理エンジンの再現度にはまだまだ及ばない点が在るというのも今作の特徴。恐らくは第1作目から敷居を高くしすぎるとプレイヤーに受けず、売れないという商業的な側面もあるものと思われる。
---チューニングを進めていくと最終的に「300キロ前後でヘアピンに進入し、アクセルオフ+ドリフトで曲がる」等、それこそ『リッジレーサー』と見間違うような挙動も可能((当然ながら最善ではない走り方ではある。))である。

-「実車」に拘っている為、ライセンス許可が下りた自動車会社のスポーティな車種しか登場していない。
--プレイヤーからの不満点でよく挙げられた為か、『GT2』以降はどうみてもレース向きではない一般乗用車も収録されるようになり、「夢の愛車と現実の愛車を一緒に楽しめる」と話題を博す事となった。~
もう一つの不満点であった自動車会社の少なさも、続編毎に用品系スポンサーともに数が増えていき、『GT5』では遂にスーパーカーメーカーが大量収録((フェラーリ、マセラティ、ランボルギーニ、マクラーレン、ブガッティが追加。))されるまでになった。

-コースは全て架空のものである。
--この点は『GT2』でリアルサーキットが1つ登場、『GT4』で大量に追加されていく事となる。
---山内氏は『GT4』にて「''シミュレーションエンジンの再現度の関係で、タイムが現実と同じぐらいにならない''から入れたくなかった。」と、これまた拘りを感じさせる理由を明かしている。

-''ゲーム開始時のオートロード機能が無い''為、注意しないとロード前のデータで上書きしてしまう危険がある。
--グランツーリスモモードとアーケードモードのセーブデータが連動しており、両方共いっぺんにせーブロードされる仕様もこの現象を起こしやすい。~
例えば初日はアーケード、次の日にグランツーリスモをプレーした際、2日目に一度ロードしないでセーブした場合、アーケードのデータはまっさらな物が上書きされてしまう。
---この点は『GT2』でオートロード機能が付いて解決した。

-CPUに関する細かな調整不足が見受けられる。
--CPUの車両はいかなる状況でもコースの決められたラインを走行するようになっている。
---これの何が問題かと言えば、例えプレイヤーの車が車線上にいようと必ずラインを厳守して走行する為、後ろからドカドカ体当たりしてくる((こちらが反対の行為を行っても、CPUには一定の補正が働いているようで、あまり効力はない。))。プレイヤーには非常に鬱陶しい。~
これはレースゲームでは頻発する問題であり、別のゲームでは「イン側後方のCPU車に自車のリアサイドを押され、強制的にスピンをさせられる」等が散見される。
--CPUの速さも妙におかしいものがある。
---例えば、イベント『ノーマルカー世界一』の予選では、「ホンダ・NSX」より「スバル・インプレッサ」の方が1秒以上早いのだが、いざレースを開始するとNSXの方が3秒以上速くなる。~
『日米スポーツカー選手権』のハイスピードリングも同様で、高速コースでありながら大馬力な「ダッジ・バイパー RM」より、高速コースは苦手な「インプレッサ RM」の方が遥かに速く、~
更には『GT WORLD CUP』や耐久レースの『グランバレー300km』では「日産・プリメーラ RM」が明らかに格上である「インプレッサ ラリーエディション」よりも速いという事もある。

-一部でバグがある。
--一部の四輪駆動車の駆動形式が前輪駆動とミスプログラムされている。
---具体的には、「三菱・ランサーエボリューション」「トヨタ・セリカ GT-FOUR」「日産・パルサーGTi-R」と言った車がこれに該当する((恐らくはベースとなった車種の駆動方式に影響されている、もしくはデータ製作時にベース車からコピー&ペーストをしたまま駆動方式の変更を忘れた可能性が高い。))。
--これに関連しているのか、''日本版においては4WDの車を壁に密着させて横滑りさせると途方も無いスピードが出るバグがある。''~
98年に出た海外版では修正されているが、海外版の体験版までは同様の事が起こっていた。

#region(参考画像及び参考動画)
#image(1004km/h.jpg,width=400,height=300)
本家
#video(https://www.youtube.com/watch?v=gHSKcxUga_0)
#video(https://www.youtube.com/watch?v=jKj5M0sytJw)
海外版の体験版
#video(https://www.youtube.com/watch?v=WUln7bm6-a4)
#endregion
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**総評
「記念すべき第1作目」だけでは済まない、まさに「リアル系レースゲームの先駆け」「日本を代表するゲームの一つ」としてゲーム史に名を残す名作。~
車好きのスタッフ・各メーカー・現役レーサーが協力し、徹底して作り上げられたリアリティのある内容は他のゲームの追随を許さず、まさに一種の仮想現実を作り出し、~
車や背景の美しさには車好きでない人々も驚愕、ゲーム部分でもモータースポーツの面白さを伝えた一方、現実での「難しさ」までも再現した点は当時は賛否両論であった。~
しかしそのクオリティや内容は、20年を経た現在から見れば粗はあるがそれでも高く評価できるもので、車とゲームが好きならば一度はプレイしてみて欲しい良作である。
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**余談
-「グランツーリスモ」(イタリア語:Gran Turismo)、通称「GT」とは自動車の1カテゴリ。~
もともとの定義は「セダンかクーペタイプで、出力の大きめなエンジンを搭載し、快適なキャビンと大旅行に十分なラケッジスペースを備えている」というものである。~
最近では曖昧となっており、「典型的なスポーツカーからは外されるタイプの車」「普通のファミリーカーよりはスポーティな車」という認識が一般的なものとなっている。

-テレビCMも非常に力が入っており、数パターンの全く異なるCMが製作された。内容も当時のSCEらしい風変わりで妙にインパクトがある、かつ色々な意味で豪華なものであった。
--当初は地味なもの((サラリーマンの何気ない日常(深夜に自宅の鍵を捻る、薄暗い喫茶店で腕時計を見る、トンネル内にある給水機のペダルを踏む)を車の操作に見立て、エンジン音が流れて驚愕する…というもの。))だったが、第2弾から「何故かサーキットの道路ど真ん中に立っている一軒家の玄関に大量の実車が突っ込む」と、車好きにも向けた派手な路線に一新された。~
特に第3弾の「制作に協力した国産自動車会社6社の本物の営業担当者が会議室に集合。それぞれ自社の車を売り込み、GTでもその車で遊ぶ」というものは有名であろう。
---以降のシリーズのCMでも、実車とゲーム画面を組み合わせた派手なものが主流となっている。

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