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ウィザードリィ外伝IV ~胎魔の鼓動~ - (2016/04/09 (土) 22:48:55) の編集履歴(バックアップ)


ウィザードリィ外伝IV ~胎魔の鼓動~

【うぃざーどりぃがいでんふぉー たいまのこどう】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 32MbitROMカートリッジ
発売元 アスキー
開発元 アスキー、アクセス
発売日 1996年9月20日
判定 なし
ポイント 異色風にしてベーシックなWIZ
全体的に低難度
Wizardryシリーズリンク

概要

WIZシリーズを移植・販売していたアスキーがオリジナルシナリオの作品として、GBで独自展開してきたWiz外伝シリーズ。
4作目である「胎魔の鼓動」はプラットフォームをSFCに移して発売した。

特徴

東洋風の世界観

  • もともとWIZシリーズにはサムライ、ニンジャなど和風の風味が盛り込まれていたが、外伝IVではその部分をさらに強調。舞台を「緋蓮」と呼ばれる日本風の国に移し、迷宮も畳に障子など和風に。刀系統の武器も大幅に増えた。
    • ただし、おおむね「アメリカ人の見た勘違い日本」の世界観である。当時のゲームは和製でもそういうのが多かったが。
    • 敵も和風のもの(侍、忍者、妖怪など)がメインに。とはいえ洋風の敵やモンスターも普通に出る。というか太ももを露出したセクシーくノ一が大幅に増殖。東洋うんぬんよりお色気が勝る異色の世界観に。
  • プレイヤーの職業や種族はBCF(#6)の通り。

イベントの大幅増加

  • 序盤で探索する3つの塔には、これまでの作品とは比べものにならないほどのイベントが待ち受けている。たいていは「施錠された扉を開けるためのキーアイテムを持ってこい」という内容なのだが、ある扉を開けるのに別の塔で拾うアイテムが必要になったりと、その組み合わせは複雑怪奇。
    • 和風Wizを謳っているだけあって、女のすすり泣きやしゃべる生首など、日本の怪談風の演出がてんこ盛りである。

本編(ナンバリングタイトル)へのリスペクト

  • ゲームを進行すると出てくる古の迷宮。これが#1の迷宮に酷似しており、同一の迷宮ではないかと思わせるのだが、なぜそれが東洋の国にあるのかという説明は無し。
  • さらにゲームを進行すると舞台はリルガミンに移る。こうなるともはやいつものWizである。外伝IIIから引き続き、ダイヤモンドナイトも友情出演(?)。
  • 後半、唐突に前作『ウィザードリィ外伝III ~闇の聖典~』のキーパーソンであったアガン・ウコーツが出てくる。しかも、後半部の2回目のスタッフロールでは「SCRIPTURE OF THE DARK2」と表示され、本作が外伝IIIの前日譚であったことが明かされる。

評価点

  • ハードをSFCに移したことによるボリュームアップ。グラフィック、音質、アイテム総数など全てにおいてパワーアップした。
  • システム面は良好なアスキーWizそのものなのでプレイは快適。
    • 周囲の踏破済みマップをワンボタンで表示するミニマップの追加でより快適、かつ迷わずに探索可能。もちろん使わないことも可能。
  • 外伝IIIで外されていた種族「フェルパー」(猫頭人間)、職業「サイオニック」、「モンク」が再び選択可能になった。これによりBCF以降で追加された種族&職業が勢揃いした。サイオニック呪文も従来のウィズ形式の名前で登場した。
  • シナリオ自体の難易度が低い上に、序盤のレベル上げも容易。キャラクターの育成、レアアイテム集めに専念できるようになった。
    • キャラメイク時にボーナスポイントが10以下だと道場主から3年間の修行を提案される。修行した場合はそのキャラは3歳年齢が増加するが、Lv4の状態で登録できる。3年でわずかLv3上昇と考えると一見見合わなそうだが、最も困難な序盤を楽に乗り越えることができるメリットは大きい。修行したキャラで序盤の冒険を楽にする・修行で能力値を上げてから本命の職業に転職して冒険開始するといった方針も一考である。
      • 修行には加齢(高齢になるほど能力が伸びにくく、下がりやすくなる)というデメリットがあるが、新規キャラクターの年齢が過去作より少し低めになっている面もあり、終盤は若返りの手段を手に入れることもできるために悪影響は少ない。
  • 職業や種族、装備関連の改善点多数。例を挙げると、「ドラコンが戦闘中逃走が可能になり、Lv9からブレスの効果範囲が1グループに拡大」「二刀流が可能になった」など。
  • 敵出現の際には、不確定名グラフィックがアニメーションして登場する。テンポを崩すこと無く凝った動きをするため見応えがある。特にマーフィーズゴーストは必見。
    • また、正式名のグラフィックが、1つの敵に対し数種類用意されているのも特徴。単なる色違い・細部違いの場合もあるが、敵によっては全面的に別物の絵になっていたり、人型の(職業名で呼ばれているような)敵は同名でも種族違いの絵が用意されていたりと、そこそこバラエティ豊か。

問題点・賛否両論点

ストーリー、世界観

  • 従来までとは違いすぎる世界観。それでいて出てくる敵やアイテムが今までのシリーズのデータに和風の妖怪やアイテムなどを当てはめているようなものが多く、違和感がぬぐえない。さらに、和風にもかかわらずテキストが海外小説の翻訳風(つまりいつものウィズ)であるため、ますます違和感が増大する有様。
  • 「ボイラー」という単語が一度だけだが当然のように使われる。しかもただの状況説明でふざけた場面ではない。終盤にはなぜか「電話」がありメッセージも「なぜこんな所に電話があって、いったい誰がかけてきたのかという問題はとりあえず置いておいて」と投げやりなギャグである。wizardry原典にもカエルの置き物が踊り続けるようなギャグはあったが。
  • 本編前半は、個々のイベントに力が入っている割に本筋のストーリーはいまいち良く分からないまま終わる。3つの塔をクリアすると、唐突に名前も分からない黒幕が初登場して最終ボスを復活させる。黒幕が一体何をやりたかったのか、そのラスボスは何者なのか、全てプレイしても何ら明らかにならず、さっぱり分からないまま。
  • 後半は後半で、上記の通り「外伝IIIのエピソードゼロ」であるため、前作を知らない人間がプレイすると、「操られていたためやむなく PCが殺した街娘ダリアを、アガンが突如吹き込まれた「アガンにのみ聞こえた声」に従ってどうにかしようとどこかへ去る(その後儀式を執り行う一枚絵)」という非常に後味が悪い上にぶつ切りなエンディングで終わる。
    • もっとも外伝IIIをプレイしていた場合でも、 この儀式の末路を知っているため、なおさら後味が悪い。

戦闘バランス

  • 本編クリアくらいまでの間、敵が弱い。前述の通り最初からある程度強いキャラを作り出せる上、序盤でも楽に経験値を稼ぐ方法があるため、戦闘に苦労するのはごく最初だけ。店に「まっぷたつのけん」など中盤まで通用する強い武器が最初から並んでいる事も低難度化に拍車をかけている。
  • 塔の神器を取る際のボスの一体は、二度戦うことになるが、二度目は敵も味方も呪文が封じられた状態で戦うことになる。それなのに敵は術攻撃しかしてこないので(無意味)、絶対に負けることはない。戦闘前のメッセージとは裏腹のガッカリなイベントである。
    • 恒例の隠しダンジョン「ドラゴンの洞窟」では敵の強さが高騰するが、即死や状態異常になることが少なく、出現数・攻撃力も大幅に抑えられている。高レベルのパーティならうっかり死ぬ確率は低い。
  • 攻撃呪文のダメージはレベルに関わらず固定(しかも、高位呪文の威力が下がっていたりもする)なのに、敵のHPは高騰しているため相対的に攻撃呪文が弱体化。また、敵1グループ辺りの数が少なめなので、グループ攻撃の必要性も薄い。ドラコンのブレスが強化された事も攻撃呪文の冷遇要因の一つ。
    • ドラコンのブレスは必中ではないが自分の現在HPの半分(ただしブレスのダメージ上限は160)と強力なダメージである。しかも上述したようにわずかLV9で対象が1グループに。その際は一戦闘に一度しか使えなくなるが、十分である。ドラコンが初登場したBCF(#6)ではスタミナの要素があり、デメリットがあったのだが今作ではその心配がない。
  • キャラの性別が選べるが、専用職業、専用装備で女性が優遇されている。

セーブデータ破壊バグの存在

初期ロットでは、「アイテムの呪いを解く「ジルフェ」という呪文を使うと、セーブデータが破壊されてしまう」という致命的なバグがある。修正版への交換、修正されているニンテンドーパワー版の入手など今となっては不可能。
呪いを解くのは従来通り店で行えばよいので、ジルフェはほとんど使う必要のない呪文だったのが不幸中の幸い。

前半戦「三種の神器編」のイベントフラグ管理

  • 序盤で探索することになる3つの塔。イベントや仕掛けは豊富に用意されているのだが、適当にゲームを進めると容易にそれらが破壊されてしまう。これは説明書でも警告されている。
    • キーアイテムで解錠できる扉は「高レベルの盗賊で無理やりこじ開ける」ことが出来てしまう。これを行った場合、解錠した扉に関するイベントが連鎖的に消滅するため、謎解きが中途半端に終わってしまい、腑に落ちない気分になる。
    • また各塔に分散しているクリアアイテム「三種の神器」をどれか一つでも持ち帰ると、3塔とも謎解きやトラップの大部分が破壊されてしまう。塔内のNPCもほとんど消滅する。最終的には「三種の神器」を全て持ち帰ることになるが、進め方によっては残り2つは単に拾ってくるだけ、ということにもなりかねない。
      • 進め方によっては、強力なアイテムの入手が不可能になる。またイベントが全て「未完」となる為、結末がわからないままのクリアを余儀なくされてしまう。
      • しかも「幻術の塔」は、神器獲得後に全ての罠がスイッチONになるため、転移呪文「マロール」がないと攻略がかなり面倒になる。本作のマロールでは未踏破箇所へは移動できないので、事前に塔の奥地へ踏み込んでいない場合は大変なことに。(ちなみに、一つの塔をクリアできるレベルなら一般的な編成では魔術師が含まれ、マロールを習得している。)
    • ただし、これはバグや不具合の類ではなく、「キーアイテムが無くても扉をこじ開けまくってさっさと先に進めることができるように」意図的に組み込まれた仕様である。早く先に進みたい場合はイベントをすっ飛ばしまくり、全てのイベントを網羅したい場合はイベント扉をこじ開けることの無いようにフローチャートを完璧に組んで進めればよい。
      • その証左、というわけではないが、全てのキーアイテムはボルタック商店に陳列することができず、「転生の書」(アイテムコンプリートを達成するともらえるアイテム)の取得条件からも外されている。

その他

  • 三本の塔には各種謎解きが張り巡らされていたが、それ以降はもう燃え尽きてしまったのか従来のひたすら潜るだけのダンジョンになる。
    • 敵の配置もバランスが悪く、新しい場所に行けるようになっても前半は戦う意味がほぼ無いような状況になっている(それまで戦っていた敵よりも弱く、経験値も低い、アイテムも良いものが出ない)。
    • 本編のラストダンジョン「SANCTUARY」は、なぜか直前のダンジョンよりも数段弱い敵ばかりが登場する。もちろん苦戦するはずもないので、後半は通路が迷路状に入り組んだダンジョンでスイッチを探し回るだけの作業になってしまう。しかもラスボスまでもが直前のダンジョンのボスよりも格段に弱いので、どうしても調整不足感が否めない。
  • 本編前半のラスボス前にボタンを押して回ることにより像を動かす謎のパズルをやらされる。このパズル、実はルービックキューブと同じシステムで、解法さえ知っていれば3手で完成できるのだが…
    • 一か所で操作できるわけではなく、各階を回る必要がある。転移呪文を使えば少しは楽になるが、それでも面倒である。
    • 面を揃えるといってもルービックキューブとして考えてどこの面でもいいのではなく、悪魔の死体のある最下層に全ての像を揃えないといけない。
    • あまりに意地悪過ぎとスタッフも自覚していたのか、取扱説明書のFAQ欄の端にヒントが掲載されていたものの、ヒント自体が漠然としすぎていたためルービックキューブ方式と判らない人が続出。加えてパズルの操作法(壁のボタンの使い方)がノーヒント(一応、ボタンの配置・色がスーパーファミコンのボタンに対応している。例として緑ボタンであるYはカラーボタンの中では左側にあるので左方向に動く)なので、そもそも何の謎解きなのかさえ分からないまま詰んだプレイヤーも多い。
  • 「練武場」という「キャラクターを育てるため」という触れ込みの、クリアには関係のない簡易ダンジョンが存在する。当初は三階しかなく、四階より下はゲーム進行にともなって解放される…という触れ込みだったのだが、実際に四階より下が解放される条件は、「その階に対応したエリアの敵を全て倒す」こと。
    • つまり、練武場○階を解放するには対象となる敵を全種類倒せ、ということ。対象の敵は出現場所にかなりのばらつきがあるので、当然漏れが発生して延々探し回るはめになる。しかも「あと何匹倒せばいいか」という情報しか教えてくれず、どのモンスターを倒し損ねているか、どこにいるかの情報をまったく得られないので、手当たり次第に敵を倒すしかなくなる。
    • 最後まで掘り進めると隠しボスと戦えるが、その隠しボスも間違いなく先に会うであろうドラゴンの洞窟の裏ボスよりも明らかに弱い。ちなみにこの隠しボスから入手したアイテムを捨てると再出現するので、稼ぎ相手にもできる。
    • 隠しボスから入手したアイテムを持ち帰り、欲しがる人に渡すと、いわゆるモンスター事典を見られるようになる。
      • 登録されるモンスターを全部倒して揃えないと見られないというのが少々残念。またゲームとしての要素は全てやりつくしてるとはいえ、二度と隠しボスと戦えなくなる。稼げなくなるともいえる。
  • 前作以前からのキャラクターの転生で、シナリオクリア称号を引き継げるのは外伝IIIのもののみ。外伝I・IIからのパスワードを使った転生も不能。称号コンプキャラを作ろうとシリーズを追っていたプレイヤーには残念な結果となった。

総評

一見色モノでありながら、実はオーソドックスかつ古参のWizフリーク向けの作品。
ただし難易度が低めでキャラメイクの自由度も高く、初心者入門にも適している。ジルフェバグ以外は重大なバグも無いので、結局のところ初心者でもシリーズ経験者でも遊べる安心のWizだと言える。シナリオが中途半端でバッドエンド気味なのと、戦闘バランスの練り込みが甘い点が残念。

その後

  • 次作としてPSで「ウィザードリィ ディンギル」が発売された。
    • ディンギルには「外伝」と銘打たれていないものの、同じアスキー作品でシステム・主要スタッフ共にほぼ同じなうえに、本作の「転生の書」のパスワードでキャラクターを転生させられることから、ファンからは一般に外伝シリーズの一作品として認識されている。
  • その後Sir-Tech社の崩壊に伴ないWIZの版権が乱売され、各メーカーからシステムも世界観もバラバラなWIZシリーズが乱発される事態に。それに対し、外伝のスタッフは「原点回帰」を掲げ、「戦闘の監獄」「五つの試練」を開発、発売した。