※注意:
このページは『テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX(クロス)』に同時収録されている『テイルズ オブ ファンタジア クロスエディション』に関しての紹介になります。
メインとなる『なりきりダンジョンX』に関してはこちらのページをご覧下さい。
テイルズ オブ ファンタジア クロスエディション
【ているず おぶ ふぁんたじあ くろすえでぃしょん】
ジャンル
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ロールプレイングゲーム
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※こちらのタイトルに同時収録
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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メディア
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UMD 1枚
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発売元
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バンダイナムコゲームス
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開発元
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クライマックス
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発売日
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2010年8月5日
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定価
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5,219円(税別)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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384KB以上(1ファイルあたり)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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コンテンツアイコン
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セクシャル、犯罪
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廉価版
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PSP the Best:2013年2月21日/2,667円(税別)
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配信
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【PSP/PSV】2013年11月28日/2,381円(税別)
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判定
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劣化ゲー
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ポイント
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戦闘システムの上っ面だけを変更、そのせいでバランスが歪に 出番的な意味では空気、しかし妙な存在感で異物感が強い橋渡し役 戦闘における味方AIの大幅な劣化 ゲーム全体に漂う手抜き感 なぜか移植される度に劣化が進む惨状
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テイルズオブシリーズ関連作品リンク
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※本作は『テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX』に同時収録されているため、一部を除いて『なりきりダンジョンX』とセットでの情報になっています。
概要
『テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX』(以下「なりダンX」)に同時収録されている『テイルズ オブ ファンタジア』(以下「ファンタジア」)の移植作。
移植・リメイクはPS版、GBA版、フルボイスエディション(以下「FVE(Full Voice Edition)」)、携帯アプリ版と来て5度目となる。
今回は『なりダンX』とのセットで、立場としてはおまけに位置する作品となるためか、基本的なところはFVEの流用となっており、本作ならではの要素や変更点は主に戦闘システムと『なりダンX』で追加されたキャラクターである「ロンドリーネ・E・エッフェンベルグ」にまつわる要素に集約される。
変更個所
シナリオ関連
ロンドリーネ関連
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ロンドリーネが追加されたことで彼女に関するイベントが追加され、過去と未来で一時的に仲間に加わる。
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更に、ストーリーの進行上必ず加入および離脱を行うため、イベントには新録ボイスがある。
既存ストーリーにおける変更
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冒頭の現在編において、ストーリー上でクレスが単独行動するようになるまでユークリッドの都の方に行くことが出来なくなった。
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それ以前に行こうとするとチェスターに行く場所が違うことを指摘されて引き返してしまうため、これによってPS版およびFVEで見ることの出来たフェイスチャット(後のシリーズ作品における「スキット」)が見られなくなってしまった。
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ストーリー上のテキストの一部変更。
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ストーリー全体の流れは変わらないが、細かい変更が施されている個所がある。
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一例として、ミッドガルズ空中戦の直前でセーブ出来るが、本作では準備が不十分の場合はセーブをしないように忠告が入った。
システムなど
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FVEに比べて、FVEおよび本作新録ボイスとPS版からの流用ボイスの音量差が是正されたことで、音量の調整がしやすくなった。
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FVEの段階で指摘されていた経年による声質変化による違和感に関しては本作も過去作が流用されているため、是正されていない。
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戦闘中のパーティキャラクターのドットと、リリスのドットの修正。
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FVEでは無理矢理引き延ばした2頭身ドットだったため違和感が強烈だったリリスも3頭身のドットになり、違和感は軽減。
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反面、元々系列の他の敵は3頭身化しているのに一部2頭身のまま(ミスと思われる)である敵の修正は行われていない。
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また、モンスター図鑑のグラフィックも相変わらずPS版の流用のため、3頭身化した敵も2頭身のまま。
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カスタムの設定項目の変更。
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フィールドマップ上で背景(山など)にキャラクターが被ったときの処理をどうするかに関する項目が無くなり、無条件でプレイヤーキャラクターが隠れてしまうようになった。
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FVEまではキャラクターが見えるように背景を透けさせることも出来、位置が解るようになっていた。
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新しく「ジャンプ待ち時間」に関する項目が追加され、マニュアル時に十字キーの上を押した後、実際にジャンプするまでのラグを調整することが出来る。
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FVEまでのマニュアル操作時は十字キーの上を入れるとすぐにジャンプしてしまうために対空攻撃や十字キーの上に登録した技が出しづらく、使いづらいという問題があったための処置と思われる。
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アイテム説明欄などのテキストの一部変更。
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主なところでは売ったり捨てたりしてしまうと後々大変なことになってしまう装飾品である「デリスエンブレム」の説明文の基本的なところは変わらないが、文末に「売らずに取っておこう」と一言付け加えられた。
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注意文を加えられたとはいえ、売ることも捨てることも依然可能となっているため、あまりフォローになっていないとも言える。
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フォローになっているのかいないのか解らないような中途半端な措置をする位なら、いっそ捨てることも売却することも出来なくした方が親切ではないだろうか…。
戦闘関連
基本的な事項
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戦闘がスピーディーになり、敵味方共に様々なアクションの速度が従来に比べておよそ2倍の速さになっている。
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FVEまではすずしか出来なかった通常攻撃3段が術者キャラクター含めて全員出来るようになった。
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FVE以上に敵が攻撃的になった。
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些かやりすぎのレベルになってしまっており、物理攻撃を得意とする敵に挟まれようものなら間断なく両サイドから攻撃されるため、HPが0になるまで動くことも出来ず、手も足も出せずに力尽きるなんてことも起こりうる。
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FVEまでは指示を最大ふたつまで出しておくことが出来たが、アイテムの使用指示に限り、そのアイテムの使用が完了するまで次の指示が出せなくなった。
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術技の使用指示に関してはFVEまで同様に最大ふたつまで指示を出せる。
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「術の使用→アイテムの使用」という順番での指示であれば両方出せるが、「アイテムの使用→術の使用」という順番で指示を出す場合はまず最初に指示したアイテムの使用が完了するまでは術技の指示を出す相手やアイテムの使用者としてそもそも選択出来なくなっている。
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術の発動・演出で戦闘が止まらなくなり、更に中級以上の術の同時発動も可能。
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これに伴って一部の術はエフェクトが変更されている。
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操作モードの「マニュアル」が最初から選べるようになった。
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これに伴い、FVEまであった「テクニカルリング」が「ステップリング」に変更された。
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「コンボコマンド」が消滅し、「ステップフォース」が登場。
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これに伴い、クレスの称号「コンボマスター」が「ステップマスター」に変更。
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クレスとクラース、そしてロンドリーネに秘奥義が追加された。
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クレスには従来の「
冥空斬翔剣
」の他に「
緋凰絶炎衝
」と「エターナルブレイド」が追加された。
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クレスの称号「おうぎでんしょう(奥義伝承)」を獲得し、戦闘中にHPが最大から1/4以下まで減少かつTPが100以上残っていることが最低条件となり、更に秘奥義毎の条件を満たすと使うことが出来るが、冥空斬翔剣以外は使えるようになったアナウンスがされないため、条件を把握しておくことが必要になる。
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クラースには「丸くて黄色いすごいヤツ」が、ロンドリーネには「デモンズランスレイン」が用意されている。
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それ以外のキャラクターには秘奥義が用意されていないが、『なりダンX』での秘奥義がそもそも『ファンタジア』本編では普通に出せる術技扱いなので致し方ないところもある。
クレスの秘奥義
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技名
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個別条件
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冥空斬翔剣
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上記最低条件を満たして「○+×+□ボタン」同時押し。
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緋凰絶炎衝
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鳳凰天駆系の奥義を全て修得し、かつ上記最低条件を満たして「右 or 左+○+×+□ボタン」同時押し。
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エターナルブレイド
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全ての時空剣技をマスターし、かつ上記最低条件を満たして「下+○+×+□ボタン」同時押し。
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他のキャラクターの秘奥義
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技名(使用者)
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使用条件
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丸くて黄色いすごいヤツ (クラース)
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全ての精霊と契約した時に獲得出来る称号「サモンマスター」を名乗りつつ、 戦闘中にHPが最大から1/4以下まで減少し、かつTPが100以上残っているときに「○+×+□ボタン」同時押し。
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デモンズランスレイン (ロンドリーネ)
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彼女に関するサブイベントを全てこなすと入手出来る武器「ドラグノフ」を装備し、 戦闘中にHPが最大から1/4以下まで減少し、かつTPが100以上残っているときに「○+×+□ボタン」同時押し。
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戦闘中の敵味方キャラクターの位置が解るレーダーが追加、大まかな状況が掴めるようになった。
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敵味方共に術の詠唱中のキャラクターにはエフェクトが発生するようになっている。
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ただし、あくまで味方と敵がどこにいるかというのが解るという程度で、操作キャラクター以外は味方は青、敵は赤で統一されており、アイコンには敵味方以外の情報がないため、混戦状態になってしまうと常にホウキで飛行しているアーチェ以外は「誰が」どこにいるかが解らなくなってしまう。
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せめて味方だけでも隊列で表示されている番号をアイコンに付与してくれれば混戦状態でも状況を把握出来るのだが…。
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攻撃速度の高速化および通常攻撃3段が標準となった絡みか、物理攻撃によるダメージに減少補正がかかるようになった。
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戦闘終了後のTPの回復量が増加し、FVEまでの全キャラクター一律で最大TPの5%分だったものから変更された。
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クレス・チェスター・すず・ロンドリーネの4人は、隊列の先頭(1番)に置いてプレイヤー操作であった場合は最大TPの15%分、それ以外の場合は5%分。
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ミントは最大TPの10%分、クラース・アーチェのふたりは最大TPの5%分回復する。
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戦闘非参加キャラクターは上の個別の設定を無視して一律最大TPの10%分回復するようになった。
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ただし、戦闘非参加キャラクターにTPの最大値が上がる装飾品を装備させていた場合は元々のTP最大値以上は回復せず、それどころか元々のTP最大値より多くなっている分は戦闘終了後に減らされるという意味不明な処理が行われる。
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レベルアップした際にそのキャラクターのHPとTPが完全回復するようになった。
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ラストダンジョンでランダムで出現する死神から経験値を購入してレベルアップした場合はHPもTPも一切回復しないので、あくまで戦闘によるレベルアップ時に限っての話となる。
操作系統の変更
※操作系統は主にPS版・FVEからの変更点を挙げている。
SFC版・GBA版は戦闘システムや操作周りに大きく異なる部分があるため、比較対象としては不適切となるので考慮していない。
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FVEまではマニュアルか「ダッシュリング」を装備した上で左か右に同じ方向に2回入力で行っていたダッシュ移動が本作では基本仕様となった。
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右か左に入力するだけでダッシュ移動をするようになったため、歩きでの移動が出来なくなった。
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これによって存在意義が全くなくなったダッシュリングが削除され、ダッシュリングが入っていた宝箱は一律で「ライフボトル」の入った宝箱に差替えられた。
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ダッシュ移動中は敵に引っかからずに移動することが出来るが、本作のダッシュ移動もこれに準ずるため、敵に引っかからずに移動出来る。
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突き攻撃が「下+○」から「左 or 右+○」に変更、「下+○」はその場で飛び上がりながら斬り上げて敵を浮かせる浮かし攻撃になった。
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「□+左 or 右」でステップ移動が出来るようになった。
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ステップリングを装備していれば、通常攻撃を出した後にステップ操作で出せる「キャンセルステップ」で攻撃の隙を消してステップ移動が可能になる。
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ステップフォースを装備していればキャンセルステップが出来るだけでなく、そもそものステップ自体がTPを消費する代わりに完全無敵でステップ移動が出来る「パッシングスルー」となる。
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ジャンプと違って術者キャラクターも使用出来るが、飛行しているアーチェだけは乗っているホウキによる前進・後退になっている。
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一部キャラクターは通常の移動速度がかなり遅く、ステップ移動を繰り返した方が早く移動出来る。
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隊列の向き入替が「R+上」になり、待機(STAY)が「R+下」で行える。
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隊列の向きの基準は操作キャラクターが入替指示を出した時に向いている方向になるため、隊列の向きを入れ替える時は操作キャラクターの向きを一旦逆向きにする必要がある。
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操作キャラクターの向きを変えないで向き入替を行った場合は単純に散らばっていたパーティメンバーを隊列で設定している形に整列させるといった案配になる。
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FVEまで任意ジャンプが出来なかったセミオートでも元々ジャンプ自体が出来ない術者キャラクター以外は「□+上」でジャンプが出来るようになった。
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ショートカットの登録が「R+○×□△それぞれ」の4つ出来るようになった。
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プレイヤー操作およびショートカットで味方の回復などの術を行う時は、Lボタンでターゲットを切り替えることが出来るようになった。
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プレイヤー操作キャラクターのショートカットは今行っているコンボが途切れたところで初めて繰り出すため、コンボに組み込むことは出来ない。
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FVEではLとRボタンに任意のキャラクターの術技を登録出来、状況によっては同じキャラクターの異なる術技を使い分けることも出来たが、本作は仕様上、ひとりのキャラクターの複数の術技をショートカットに登録することは出来なくなった。
ロンドリーネについて
『なりダンX』との橋渡しとして追加されたキャラクター。
『なりダンX』ではディオ達に並んでメイン級の扱いを受けているが、こちらではちょい役と言わざるを得ない扱いとなっている。
一応、彼女の背景が見えるイベントなどもあるが数自体は多くなく、おまけに『なりダンX』との橋渡しありきのキャラクターなために本作だけでなく、『なりダンX』もプレイして初めてキャラクターの背景を掴めるという状態になっている。
加えて、仕様として料理を実行させることは出来ず、彼女に関するフェイスチャットはひとつも追加されておらず、勿論それ以外の雑談にも全く加わってこない。
極めつけに、既存イベントには全く関わってこず、おまけに闘技場などの一部のイベントを除いてグラフィックすら用意されていないこともあり、純粋な出番的な意味では空気と言わざるを得ない。
とはいえ、下手に既存イベントに関わらせると、場合によっては原作の雰囲気を損ねる可能性も出てきてしまうが。
だが、戦闘に関してはクレスに負けず劣らずの前衛としての活躍が見込めること、今までの『ファンタジア』のキャラクターには無い、強い個性を持っているために総合的な存在感という意味では空気ではない。
戦闘以外でのキャラクター付けという意味でもこれまた他のキャラクターとは一線を画すキャラクター付けをされているところもある。
それ故肝心な存在感は薄いのに、鼻にはつくという一見すると矛盾した状態となってしまっている。
改めて言うことではないが、彼女が存在していなくとも『ファンタジア』はひとつの物語として完成しているのである。
そんな物語に新たな手を加える時点で、異物感という不評と隣り合わせの状態となってしまう。
だからこそ、作品の世界観や趣旨から浮いたり矛盾しないよう、描写のひとつひとつにかけてまで作品への充分な知識と細心の注意を払って描いていく必要がある。
しかし、彼女の場合はストーリー上の絡みも余りにいい加減であり、やりたい事だけやってササっと消えた…と言わざるを得ない内容故に結果として物語から浮いている感が際立ってしまった。
更にタチの悪いことに、ロンドリーネの存在自体が世界観に対する矛盾を抱えている状態となってしまっている。
詳しくは『なりダンX』のページを参照してもらうとして、掻い摘んで言うとロンドリーネという存在が人間・エルフ・その混血のいずれでも作中の設定と矛盾が生じる箇所があるため、説明がつかないというものである。
結果として、一部のファンが「制作陣が『ファンタジア』のことをまるっきり解っていない」「こんな基本的な設定も知らない連中に作品のリメイクや移植を作らせていたのか?」と見てしまうのもやむなしである。
問題点
戦闘以外
FVEの修正すべき点を全くと言って良いほど修正していない
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一応、音量差の違和感自体は解消されているものの、グラフィック周りは戦闘中のリリスのグラフィックが3頭身化したくらいであり、手抜き感が強い。
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キュービストより発売されている攻略本のスタッフインタビューにおいて、本作に関しては「バンダイナムコゲームスから提示された納期が非常に短かった」などの制作元であるクライマックスのスタッフの発言から、いかに短納期で仕上げるかが最優先事項であったようだが、それがそもそもおかしいと言わざるを得ない。
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本作が『なりダンX』のおまけ扱いであるとしても、『ファンタジア』自体もまたひとつの作品である以上は時間を費やして作り込んでおくべきではないだろうか。
ましてや今回は戦闘システムの変化や新キャラクターの追加等、従来の『ファンタジア』の抜本的な部分へのテコ入れも行われている為尚更であろう。
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いくら手早く完成させようと、客層からの評価が得られなければ結局は「失敗」なのだ。
作り込みが甘い
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ストーリーを無視した行動をしないと聞けないフェイスチャットがあるにもかかわらず、そもそもその行動を出来なくしてしまったり、FVEのミスや手抜きなどもほとんど手が加わっていないなど、「見事なまでの突貫工事で作った」と言わざるを得ないものになっている。
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そのため、細かいところで不満が溜まっていくような作りになってしまっている。
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また、ラストダンジョンのとある場所にある石版には元々あった「この階に隠し通路あり」の一文とセットで新たに「この部屋に隠し宝箱あり」の一文が追加されているが、そんなものは存在していない。
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後に発売されたファミ通・キュービストいずれの攻略本でもこれに関する記述がなく、完全にないものとして扱われている。
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実際にネット上などではこの追加された一文のせいで延々と存在しない宝箱を探し続けたという人もいるようで、そういう意味ではミスであったとしても悪質であると言わざるを得ない。
ロンドリーネ
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詳細は上に書いたが、彼女に関するイベントは『ファンタジア』の世界観や物語的に浮いていたり違和感を覚えさせるような内容になっているものが多い。
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加えて料理をさせられない、名前も変更できない、フェイスチャットには参加しない、イベントではほとんど姿も見せないといった要素のせいで元々いた6人の中に混ざっていること自体に違和感を覚えるという意見が少なくない。
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それでいて、彼女絡みのイベントは明らかにサブイベントであるものまで全てボイス付きであるため、本編中での空気具合に釣り合わず上記の「異物感」を促進させる事となった。
それ故彼女の存在感をポジティブに伝える事が出来ず「(単純に)鬱陶しい」・「スタッフの思惑(ロンドリーネ推し)が透けて見えて鼻につく」といった具合に捉えられてしまった。
戦闘周り
『ファンタジア』の戦闘システムをただ止まらなくした以外の調整が満足にされていない
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当たり前のことだが、『ファンタジア』の術のエフェクトにしても処理にしても、あくまで戦闘中に発動すると一旦戦闘が止まることを前提にして組み、バランスを取っているのである。
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つまり、その前提となる大元の要素を排除した段階で戦闘システムを根幹から組み直さなければいけないはずだが、これも短納期で仕上げることを優先しすぎたせいか、ただ止まらなくしただけになってしまっており、それ以外の調整が全くと言って良いほどされていないため、戦闘バランスが壊滅的になってしまっている。
術関連の問題
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術のエフェクトの中で多段ヒットするタイプの術はまだ誤魔化せているのだが、単発タイプの術は全てエフェクトと同期が取れていない。
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例えば、一定範囲に大爆発を起こしてダメージを与える魔術(「エクスプロード」)の場合、普通ならば爆発が起こった段階でその術の攻撃範囲にいる対象はダメージを受けるはずだが、本作の場合は爆発してもダメージが発生せず、爆発のエフェクトが消えた段階でその時に術の攻撃範囲内にいた対象がダメージを受ける。
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これもFVEまでは一旦停止し、そして術のエフェクトが終わった後で行動再開と共に対象がダメージを受けていたためにタイミングとしては何らおかしくなかったのだが、何故か戦闘中に止まらなくなった本作までもこの処理がされているためにおかしなことになっており、その煽りでエフェクトが長めの術が扱いづらいものになってしまった。
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エフェクトに関連して術ではないが、クレスの技である「襲爪雷斬」も落雷を発生させて更に空中から斬りつけるのだが、この落雷の部分も術同様に元々は一旦止まっていたため、雷に触れているのにダメージを敵が受けず、消えてからおもむろにダメージを受けるようになってしまっている。
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また、プログラムのミスとしか思えない強化をされたため、「ファイアストーム」という術の性能が凄まじいことになった。
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この術は本来、7~8発ほどの小さな火炎弾(ダメージはほんの少しだけ)が飛んできて、その後に炎の波のエフェクトが表示されてダメージ(大体1,500位のダメージになる)を与えるのだが、本作では炎の波は当然として、小さな火炎弾ひとつひとつも全てが炎の波と同等のダメージである。
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このせいで合計ダメージは12,000にも迫ることとなり、こちらが使う分にはいいが、敵に使われると術一発で全滅する可能性もある。他作品のような魔法攻撃を防御するコマンド等も無い。
一部の発動時に止まる演出がある技が隙が大きすぎて使い所が狭められた
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クレスの「殺劇舞荒剣」やチェスターの「屠龍」、すずの「五月雨」などの一部の技は、FVEまでは発動時に一時暗転すると同時に戦闘が止まったところでキャラクターが光るエフェクトが入っていたのだが、本作でもそのエフェクト自体はあるが、一時停止するのは発動者のみで敵はお構いなしに動くためにコンボに組み込めなくなってしまった。
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一応、そのエフェクトが発生して技を繰り出すまでは無敵になっているが、チェスターの屠龍はまだしも他のふたつはむしろコンボパーツとして使われることが多い技であったため、コンボのレシピを組み直す必要に迫られることに。
入力が過剰に効き過ぎる上、歩き移動が出来なくなったことで微調整も難しくなった
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敵との距離が近い時は歩きで、遠い時はダッシュで間合いを調整することも『ファンタジア』の戦闘では重要であったが、一律でダッシュ移動になってしまったため、間合いの微調整が難しくなってしまった。
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更に突き攻撃の操作が変更になってしまったことや、ダッシュ移動はFVEまでは一度ダッシュをさせるとニュートラルでもダッシュするようになっていたものが、本作のダッシュ移動はあくまで歩き移動の代替になっているため、十字キーを入力し続けなければ移動しない上に、移動で左右に押していたものを離した直後で○ボタンを押すと十字キーを離しているにもかかわらず突き攻撃が出てしまうといった仕様が絡んで、移動から斬り攻撃への移行が難しくなってしまった。
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特に、空中にいる相手に間合いを詰められてしまうと操作の癖の影響で攻撃を当てるのも一苦労という意見もある。
敵にハメ殺される可能性が跳ね上がった
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『ファンタジア』自体、他のシリーズ作品よりも攻撃を喰らって気絶しやすく、その効果も強烈であるにもかかわらず、その辺に手は加えられず過剰に敵を攻撃的にしてしまった上、敵の攻撃速度も上がっているため、一度気絶状態に陥るとそのまま回復も図れずに気絶したままHPが0になるまで攻撃を受け続けることが多くなった。
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加えて『ファンタジア』自体、挟み撃ちやバックアタックの状態で戦闘開始することが多めであったのだが、本作は(体感的なものであって正確なものではないが)更に確率が上がっていると感じさせるほどに頻発するため、更にこの問題が厄介なものになってしまっている。
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気絶周りに限らず、一部ボス戦では挟み撃ちの状態で始まる上にボスとそのお供として出て来る敵のどちらもが強力な術を連発してくるため、事前の準備を怠るとほぼ詰みになってしまう…といった状況も。
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その術が前述のファイアストームなのだが、これのダメージを完全に無効化出来うるのが火属性ダメージを50%の確率で無効化する装飾品「プリンセスケープ」を装備できる女性陣のみで、該当ボス戦では女性陣全員をプリンセスケープをふたつ装備させた上で戦闘に参加させないと、ファイアストームが頻繁に両方向から飛んでくるため、まともな戦いにならない。
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男性陣も「フレアマント」をふたつ装備する事で最大60%の確率で無効化出来るようになるが、確実性という意味では信頼出来る数字ではなく、術の異常な強化もあってリスクの高すぎる運ゲーになってしまう。火属性のダメージを軽減できる装備も実用的なのが指輪の「ガーネット(50%軽減&クラース専用)」くらいで、かなり少ない。
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上のケースのように事前準備でどうにかなるならともかく、雑魚敵でもこういった状況が起こる可能性を孕んでおり、もはやプレイヤーの腕をもってしてもどうにもならないというものも少なくないため、難易度が理不尽に跳ね上がっているところもある。
ショートカットでの術発動待機が出来なくなった
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FVEまではショートカットのボタンを押し続けておくことで、詠唱完了済の術の発動を任意で調節が出来ていたのだが、これが出来なくなってしまい、詠唱完了即発動となってしまった。
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これにより、FVEまでの発動待機を利用しての術を絡めたコンボが成立しなくなってしまい、術による援護を抜きにした…というよりは単独でのコンボレシピを組む必要が出てきてしまった。
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一部のボスは術発動待機が出来ないと満足にダメージを与えられないため、これまた難易度が跳ね上がる要因になってしまっている。
味方AIが劣化している
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プレイヤーの移動もお構いなしに敵に当たらない位置から延々と矢を放ち続けるチェスターが目立つが、それ以外のキャラクターも作戦を適宜入れ替えるのは勿論、術も使って欲しい術以外の悉くを使用禁止にするなどしないと満足に戦力にならないことも少なくない。
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本作の術による回復手段を一手に担うミントも、下手に回復以外の補助をさせようとすると回復して欲しい時に限って敵への妨害の術の詠唱を始めたりなどするので、どうしても回復術のみを使う作戦に固定せざるを得ないことも。
クラースの秘奥義のネタにしても酷すぎる性能
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クラースの秘奥義の効果は「戦闘に参加している味方全員のHPを765回復する」だけという、厳しい発動条件や消費TPに対して余りにも見合わないものとなっている。
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発動条件が相当厳しいにもかかわらずのこの性能では、いくらネタ技であるとしても余りにも酷すぎると言わざるを得ない。せめて回復量が7,650ならば、ネタを保ちつつ強力な秘奥義として重宝したのだが。
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ちなみに『なりダンX』においてもクラースは秘奥義の性能上、不遇であると言われることもあったりする。
評価点
秘奥義の演出
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戦闘の高速化もあってテンポも良く、秘奥義は敵の重量の影響も受けずに敵に攻撃が出来るようになったことで使い勝手も良好。
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従来より敵からダメージを受けて瀕死になる場面が多いため、HPを減らさなければ発動できない秘奥義自体を使う機会も大幅に増えた。
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更に秘奥義のエフェクトや演出も非常に派手になっており、まさしくとっておきの一撃とも言え、加えて、そもそもの威力が大きく跳ね上がっているのもその印象を与えるのに一役買っている。
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ロンドリーネの秘奥義、「デモンズランスレイン」も『なりダンX』ではただの矢印などと揶揄されていたが、非常に迫力のある見た目にも格好いい技となっており、クラースの秘奥義も実用性はないが一度は見ておいて損はない程度の演出が用意されている。
(戦闘に限って言えば)ロンドリーネが追加された
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前衛にも後衛にも対応できる魔法剣士タイプのキャラクターであるため、操作キャラクターとして他のキャラクターとはまた違った新鮮な感覚でプレイすることが出来る。
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前衛3人を軸にした、従来の『ファンタジア』とは全く異なる戦術も可能になった。
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しかし、加入時期が制限されている上にラスボス戦前に永久離脱してしまうため、ずっと使用出来る訳ではないのが痛い。
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最終離脱イベントはラスボス戦の手前に挟まれるため、あらかじめ把握しておけばやり込みプレイに支障をきたすことはないのが救いか。
ひとつのゲームとしては遊べる
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細かい変更点はあるものの、UIはFVEからほぼそのままなので、基本的には他の『ファンタジア』と同様に遊ぶことができる。
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もちろん、本作が初めてプレイする『ファンタジア』であっても問題なく楽しめる。
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ただし、いずれにしても戦闘周りの様々な理不尽さを「許容」あるいは「対応」出来ればという条件はどうしても付いてきてしまう。
より攻撃的になった戦闘
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戦闘システムは数ある『ファンタジア』の中では最もテンポよく進展し、プレイヤーに息つく暇もなく負担を強いてくる。
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高難易度という意味では大元であるSFC版も同様なのだが、本作の場合は繰り返しになるが完全な調整不足・手抜きの産物であり、戦闘評価の高い作品に見られる細かなバランス調整や緻密な仕様によるものとは全くの別物である事を留意して頂きたい。
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それでは戦闘バランスは完全に崩壊しているのかというとそうでもない。
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「温すぎる」とまで評されたPS版とは打って変わって敵が攻撃的になり、理不尽にハメ殺されることも珍しくないのは問題点にも書いた通りだが、味方パーティは致命的なほど弱体化したわけではなく、やはり十分すぎるほど強い。そのため上手く立ち回って逆に敵をハメ殺してやることも可能。
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結果的にSFC版が持っていた、殺るか殺られるかの尖ったゲームバランスに回帰してしまったと言える。
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PS版準拠の仕様で雑魚戦すら気を抜けば全滅する緊張感が味わえる点を好意的に見る向きもあり、独特の爽快感があるのも確かなのである。
総評
根底からしっかりと作り込んであったものであれば、『ファンタジア』の戦闘システムに大きくテコ入れをしようとした心意気は確かに買うべきものであったかも知れない。
だが、実際は非常に作り込みの甘い…言ってしまえば手抜きの突貫工事による産物となっており、結果として荒削りの試作品に堕ちてしまった印象は拭えないものとなってしまった。
ロンドリーネに関しても他のキャラクターと打ち解けており、単体では特別不快感を煽られるようなキャラクターではないので評価出来るところもある。
だが、彼女に関する設定の看過出来ない矛盾やそもそもの描写が少なすぎるといった要素も相まってストーリー的には空気であるにもかかわらず、異物感が強烈になってしまっている作りは問題である。
そして短期間で開発を終わらせることを重視しすぎた結果、FVEの段階で指摘されていた問題点はおざなり、売りであったはずが調整不足で完全に崩壊してしまっている戦闘システムなど、全体的に手抜き・やっつけ仕事感が強い移植となってしまった。
そもそも、本作の変更点を考えればそれこそSFC版からPS版へのリメイク以上の手直しをする必要があったにもかかわらずのこの姿勢では「『ファンタジア』嫌いのスタッフが仕事だからと渋々作った」という邪推が出てきてしまうのも無理はないだろう。
余談
本作発表直後の反応に関して
本作はFVEをベースに戦闘システムの変更やロンドリーネの追加を売りにしていた。
結果としてFVEの存在価値が完全になくなってしまう移植である上にひとつのゲームとして出されていたFVEと違って、それらが『なりダンX』のおまけ扱いのタイトルで追加されるということが駄目押しして、発表当時は一部で強い反発が巻き起こっていた。
FVE発売から既に3年経過していたために規模こそ大きくなかったが、「カップリングの煽りで『なりダンX』の内容が薄くなる可能性の懸念」という観点から、反発までは行かなくとも疑問を投げかける意見は多く上がっていた。
『ファンタジア』の移植・リメイクについて
概要でも述べた通り、『ファンタジア』は既に本作で5回目の移植・リメイクとなる。
このWikiで扱わない携帯アプリの移植はさておくとして、PS版のリメイクに関してはおおむね高評価を得ているのだが、GBA版以降の評価は順当に下がる一方となっている。
GBA版に関しては純粋な出来の問題もあるのだが、それ以外の移植やリメイク作品も「PS版のベタ移植をベースに小手先レベルの追加要素や変更を施した」程度の代物ばかりで変化に乏しく、それでいて移植回数だけは多い為、飽きが来てしまっていること。
加えて、GBA版から追加された「アーシア」や本作の「ロンドリーネ」に見られる、SFC版やPS版からプレイしているファンにとってはまさしく蛇足と言わざるを得ない追加要素もまた理由となっている。
なお、変化に関しては本作の戦闘システムの変更に見るものがあるはずだったが、上に書いた通り、実際は戦闘バランスが崩壊してしまっただけでかえって酷くなってしまったということを改めて付記しておく。