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メタルスラッグ5 - (2019/09/01 (日) 09:20:36) の編集履歴(バックアップ)


メタルスラッグ5

【めたるすらっぐふぁいぶ】

ジャンル アクションシューティング
※画像はPS2移植版
対応機種 アーケード(MVS)
発売・開発元 SNKプレイモア
稼働開始日 2003年11月
プレイ人数 1~2人
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント シリーズに新風を吹き込むと思われたが…
蛇足なスライディング
運次第で絶対に回避できないボスの弾幕
超展開なストーリー
背景の流用も健在
メタルスラッグシリーズ・関連作品リンク


概要

人気横スクロールアクションシューティング『メタルスラッグ』のシリーズ6作目。
前作の『4』はSNK倒産直後のゴタゴタ等の事情もあり、開発はノイズファクトリーによる外注となったが、本作から開発がSNKプレイモアとなった。
MVS/ネオジオで製作された最後のシリーズ作品であり、同時に『X』より使われてきた大迫力のナレーションボイスと『2』からの状態異常(デブ化)が登場した最後の作品でもある。


ストーリー

次世代メタルスラッグを開発していた研究所が何者かによる襲撃を受け、メタルスラッグの機密事項が記されたディスクを強奪される事件が発生。
マルコとターマは機密ディスク奪還の指令を受け、機密ディスクを強奪した犯人の行方を追う一方で、かねてから遺跡盗掘を行っていた武装集団「プトレマイック・アーミー」の捜査をしていたエリとフィオは、追跡の末に辿り着いた古代遺跡「火の回廊」に突入するも、原住民と巨大メタルスラッグによって行く手を阻まれ、撤退を余儀なくされる。
これにより機密ディスクを強奪した犯人が「プトレマイック・アーミー」と判明。正規軍はマルコ・エリ・ターマ・フィオの4人に組織壊滅の指令を命じた・・・。


基本システム

従来と同じく8方向レバー+4ボタン(ショット、ジャンプ、手榴弾、メタスラアタック)の4ボタンで操作。
新要素として下+Bで新アクション「スライディング」が使用可能。
全5面構成。

前作「4」で新登場したトレバーとナディアが削除され、おなじみの二人(ターマ・エリ)が復活し、これまで同様の面子に戻った。 以後、追加キャラを除いて本編でのキャラの入れ替えは行われていない。

本作初登場のスラッグは最新鋭の二足歩行機能付き戦車「スラグガンナー」、高速道路を走り抜ける小型自動車型の「スラグワーゲン(モービルスラッグ)」*1、トンネル内を覆い尽くす程の巨大な四足戦車「アオゲンシュテルン」の3種類。
うち本作の目玉の「スラグガンナー」は「通常は二足歩行、しゃがみ状態で戦車形態に変形」「ブーストによる二段ジャンプ」「パイルバンカーで接近戦もこなす」と多数の特殊なギミックを備えた強力なスラッグであり、登場するエリアではこれの乗りこなしが重要となる。
タイトルロゴでも姿が堂々と描かれていたり、デモプレイでも登場したりと本作の顔とも言える存在となっている。


評価点 新要素の多さ

本作はシリーズのマンネリ化を打破したかったのか、多数の新要素が登場した作品となっている。

敵のデザイン

  • 本作の敵は従来の「モーデン軍」から「プトレマイック・アーミー」という新たな組織に代わっている。本作のスクショを見たファンは驚いた筈。
    • そのためシリーズの顔役と言えるモーデン元帥やアレン軍曹といった名脇役が登場せず、シリーズのお約束*2が存在しない。
  • 主な兵士の種類はマスクとゴーグルをつけた一般兵の「ゲリラ兵」、ガスマスクをつけたエリート部隊「エリート兵」の2種類が登場。これらはステージによってメインのタイプが異なっており、ガスマスクタイプの方が攻撃が素早いため本作のプレイヤーは苦戦することになる。ただしバズーカ、盾、迫撃砲を持っているのは通常タイプだけなので2種類が混じって出てくることも多い。
    • ナイフによる攻撃が素早くなった、迫撃砲の動作が早くなった、近づくといきなりマシンガンを撃ってきたりナイフを投げてくるタイプがいるなど、全体的にモーデン兵よりも強化されていると言える。一方で凶悪な攻撃手段だったイカミサイルは使わなくなり、ガトリング砲持ちの兵士が登場しなくなったという点も。
  • その他に、ステージ1では仮面をつけた「原住民」も登場。2面以降は味方を引き連れて登場する「司令官*3」、ライフルで攻撃してくる「スナイパー*4」も登場し、最終面で登場する「仮面兵*5」など敵のバリエーションは割と豊富。
  • シリーズ恒例の敵である「ギリダ・O」「ジィ・コッカ」「サルビア」「ブラッドレー」「マクスネル」「R・ショーブ」「フライング・タラ」といった戦車や戦闘ヘリもデザインが変更。なお、デザインは変わっているが戦車、戦闘ヘリの種類は減っている。
    • 「メタルスラッグのデータが強奪された」という設定から「ブラックハウンド」なる黒いメタルスラッグもどきや、メタルスラッグのデータを元にした戦車「プトレマイックスラッグ」も登場。1面ではボスとして赤く巨大なメタルスラッグもどき「METAL REAR」が登場する。
    • ほか、『3』の「レベルアーマー」にそっくりな二足歩行戦車「ガンナーユニット」が登場。接近戦特化型の「クローユニット」や遠距離戦特化型の「マシンガンユニット」、装甲強化型の「アーマーユニット」と複数のバリエーションが存在し、出番も多い。

従来とは異なる楽曲群

  • BGM担当は『4』に引き続き田中敬一氏だが、本作のBGMは従来シリーズとは違い、ヘビメタ調のBGMが中心となっている。もちろん操作説明やステージクリア、ゲームオーバーといったお馴染みの楽曲もヘビメタアレンジされている。
    • これらの楽曲は賛否両論。熱くてカッコいいと評価する賛成意見もあれば、こんなん俺の知っているメタスラの曲じゃないという否定的な意見もある。
      • 前作では使用されなかったシリーズ恒例のラスボス戦BGM*6「Final Attack」のヘビメタアレンジについては後に『コンプリート』でのOPムービーやゲーム選択画面のBGMで使用されたりと、ファンからの評価は高い。

ステージ毎の捕虜のデザイン

  • 本作ではステージ毎にいつもの老兵の捕虜が登場する面と、新たにサラリーマンが捕虜として登場する面の2種類が存在する。
    • 外見が違うだけで、行動パターンや登場の仕方は通常の捕虜と同じ。さすがにアイテムを出すのはパンツではなく鞄となっているが。
    • 本作で追加された捕虜のサラリーマンはステージクリア時のリザルトでは階級の代わりに「ドクター」「巡査」「先生」「議員」といったような役職になっている。
      • ちなみに続編『6』の最終面ではマーズピープルが捕虜として登場するが、そちらではステージクリア時の階級名が完全に意味不明となっている。

問題点

ゲーム本編の問題点

  • スライディング
    • 今までに無かった「普通のしゃがみよりもさらに姿勢を低くしながら高速移動できる」アクションなので、ガンガン使えると思いきや…。
    • スライディング中に銃攻撃こそできるものの、軌道や移動距離は「スライディング中に、↑+ジャンプボタン」でキャンセルしない限り固定であるため、小回りが効きにくく意外と使いにくい場面が多い。動作終了後にも僅かに隙がある。
      • しかも、(動きが遅くなるので)一番使いたい「デブ化」時には使用不可能となっており、このデメリットは痛い。
    • コマンドが「↓+ジャンプボタン」と、「しゃがんでいるときにジャンプしようとして」「連続でジャンプ下撃ちをしようとすると」暴発することが多くミスに非常に繋がりやすいため、快適なプレイを妨げる要因となってしまった。
    • あまりに不評だったので今作限りで廃止となり、『6』以降ではスライディングは実装されていない。
  • ゲーム本編のボリューム
    • 前作より面が1つ減り、ボリュームが薄くなった*7。ルート分岐もあるが、1面と3面にしか存在せず、しかも分岐ルートに行ったところでさほどプレイの幅を拡げるものではなかった。
  • ゲームの難易度
    • 本作はシリーズの中でも高い難易度を誇り、1面冒頭から画面上から降りてきて斬りつけてくる敵兵、耐久力の高い仮面を付けた敵、特定の場所でいきなり吹き上がる炎の罠、と初見殺しのシーンが多い。
    • 武器アイテムの配置数も少なく、しかも「ヘヴィマシンガン」「ショットガン」「ダブルマシンガン」の比率がやけに高く、非常にバランスが悪い。また、復活したBIG系武器を入手出来るのは5面のトンネル内のみであり、出番が少ない*8
      • 更に本作では『初代』から登場し続けていた「フレイムショット」がゲーム中一度も登場しない。
    • 本作のボスの攻撃はシリーズ最大の弾量である。しかも弾のバラ撒き方や軌道等に多大なランダム要素まで加わるせいで、時折「絶対回避不能な攻撃」と化すため回避出来るかどうか自体が既に「攻撃された時点の運次第」である点が本作最大級の非難の対象となっている。
      • 2面ボス「ShootingRay」のUターン機銃・4面ボス「サンドマリン」の垂直落下弾・ラスボスの狙撃光弾乱射、といった攻撃の弾が「迷路の行き止まり」や「コ」の字や「>」の形のような、どうやっても回避できない固まり方で飛んでくる可能性が少なからず存在する為である*9
        特に4面ボス「サンドマリン」は上述の垂直落下弾以外にも、ボス自身がランダムで動くため、安全な地上で攻撃を避けようとしても、ボスの動きで回避スペースを狭められ、それによって攻撃の回避が困難になる事がある。ボスの耐久値が700と作中のボスでもトップクラスに硬く、道中で溜め込んだ強化銃やボムで速攻を仕掛けようにも開幕で必ず撃たれる垂直落下弾までに倒すことは出来ず、弾幕を回避しないといけない等の理由から『3』の「ソル・デ・ロカ」と並ぶ凶悪ボスとして名が挙がる事が多い。
      • このような攻撃の激しさにもかかわらず、1面と2面以外のボス戦は生身で挑まなければならない*10
      • なお、この事態は本作の標準難度である「LEVEL-4」*11で既に発生している点に留意。
  • スコア稼ぎにおける問題
    • 本シリーズではスコアアタックも一つの魅力なのに無限稼ぎが存在する。
    • とはいえ、無限に得点を重ねることができるポイントは5以前のシリーズ作でも確認されてはいる。スコアアタックが熱いゲームなのにスコア関係のスキが多いというのは皮肉である。
      • しかし、過去作における無限稼ぎはいずれも効率・効果の面で実用的でない物、再現性の低いバグによる物であるのに対し、今作では単なるテストプレイの不足によるパターン見逃しと思しきものであり、また効果についても、マジメにプレイした結果に比べ相当量のスコアを上乗せできる。

演出上の問題点

  • 後半のあまりに説明不足な超展開
    • ゲーム展開についての本作の評価はシリーズ中最悪である。
    • 4面:道中(陸上~水中~海底トンネル)まではほぼ順当な展開だが、海底トンネルから何の前触れも無しに砂漠に出てボス戦(潜砂艦)となる。
      • ちなみに4面のストーリーはアルカディアによると海底に存在する敵基地に侵入するというストーリーとなっているが…
    • ラスボス:「死神型の巨大生命体」。全くもって意味不明な展開。百歩譲って「敵組織(遺跡発掘を行う武装組織)によって復活させられた古代の怪物」と解釈できないこともない。
      • だが、ラスボスに到達するまでの敵の兵器はほとんどが人間・近代兵器であり、ラスボスだけ謎の生命体というのは、いかに本作がストーリー展開を追う必要のないアクションゲームだからといっても、あまりに唐突である*12
      • そして撃破すると、派手に爆発したり消滅したりするでもなくこちらに背を向けて静かに飛び去っていって終わり。第二形態などもなく、どうにも消化不良な感が強い。
    • 『3』までは特にセリフなどがなくてもプレイヤーが理解できるように無声映画のような工夫がされており、同じく評価の悪い『4』でもあまりに唐突な展開は無く、各面のつなぎでも自機が輸送されていく描写があるため、雰囲気の流れを見失うような展開にはならなかった。その点はファンにとって非常に気になるポイントとなった。
    • また前作に引き続き、タイトルでもあるメタルスラッグでラスボス戦に挑む事が出来ない。
  • エンディングはキャラが小型自動車型のスラッグ『モービルスラッグ』に乗って高速道路を走っている場面が映し出されるのみ。
    • 今作で初登場した敵組織の真の目的・奪われたメタルスラッグのデータの行方は謎のままであり、その後について全く描写されない。「組織は壊滅・データディスクは奪還成功」と捉えるのが妥当だと思われるが、そうであったとしても説明不足である。
      • マンネリ打破のために新たな敵組織を設定したはいいが、ゲーム中の敵組織の説明・描写はいつも通り(ほぼ皆無)だったため、上記のような問題が出てしまった。
  • 他に『4』ほど露骨ではないものの、過去作からの背景の流用も目立っている。

その他の問題点

  • ゲーム本編とは無関係であるが、ボスキャラなどの正式名称が一部を除き、ナンバリングシリーズ初の「完全な非公開」の状態で始まってしまった。その点を惜しむ声が大きい。
    • 本作以降もこの体勢は継続していて、これまで通りの独特の敵ネーミングセンスに期待していたファンをガッカリさせる結果に。
    • 結局、本作以降に登場したボスキャラ達の正式名称や設定が判明するのは、2010年代の『メタルスラッグ ディフェンス』『メタルスラッグ アタック』といったスマホアプリの時代まで待つ事になるのだが、これらアプリタイトルをもってしても全てのボスの正式名称が判明仕切れていないのが現状である。

総評

様々な新要素を取り入れシリーズに新風を吹き込もうとした姿勢は評価できる。
だが、その一方、ゲーム本編での調整不足や演出面・シナリオの雑さが大きく足を引っ張ってしまった。
そのため、本作に対するシリーズファンの評価は『メタルスラッグ4』よりマシ(シリーズ内では低い部類)という位置づけになっている。
もっとも、本作の評価については前作以上に意見が割れているようだが…。


余談

  • 本作の難易度の高騰ぶりにスタッフもさすがにまずいと気付いたのか、6以降は「弾数を減らす」もしくは「弾数が多い場合は破壊可能弾を混ぜて完全な行き止まりを発生させない」という調整がされたボスが多く、5のような「運によっては撃たれた瞬間にミス確定」という理不尽な弾幕は発生しないよう工夫され始めた。
  • サントラでの作曲者コメントによると、「納期直前にステージ順が変更になった」とのこと。
    • 同コメントから元々3→4→1→2→5のステージ順だった模様。本作の稼働時期は当初の予定ではもっと早い時期に稼働する予定だったのだが、諸事情*13により稼働時期を延期することとなった。
  • また本作のROMのデータ内に未使用のキャラデータが残っている。
    • そのうちの一人は本作のポスターに描かれている人物であり、ポスターを見て「誰?こいつ」と思った人も多いはず。
  • 本作のMVS基板は従来作のカートリッジ方式ではなく、同期の『SVC』『KOF2003』と同じく「MV-0」と呼ばれる「専用基板」仕様。
    当時氾濫していたコピーや改造版の最終対策として、カートリッジ方式を止めてROMチップが基板直付けになっている。
    • その為、従来のMVS基板を使う事が出来ず、本作を入荷した店舗は少数だったという。
      • なお、海外版の後期出荷バージョンは従来のカートリッジ方式を採用している。日本語も収録されており、国内のMVSマザーボードで起動すれば日本語版で立ち上がる。

家庭用移植

  • ネオジオ版 2004年2月19日発売
    • MVS版と同等。シリーズ最後の家庭用ネオジオ作品でもある。
  • プレイステーション2(単品)版 2005年4月28日発売 (SNKベストセレクション:2006年3月9日発売)
    • ほぼ前作同様の移植内容だが「戦利品目録」の仕様が以前とは異なる。
    • 1面クリア後のデモがスキップ可能になってたり、ラスボス戦前の象型メカの耐久値が落とされているが、何故かEDがほぼ倍速状態となっており、BGMをフルで聴くことが出来なくなっている。
  • Xbox版 2005年7月28日発売
    • 前作までのXbox版同様ステージでゲームオーバーになるとステージの最初からやり直しとなっている。
  • プレイステーション4/Xbox One/Nintendo Switch(アケアカNEOGEO、2018年12月13日)
    • MVS版の移植。
  • またこれらの他にも1から6までのアーケード版を収録したオムニバスソフト『メタルスラッグコンプリート』にも収録されている。
    • なお、WiiのバーチャルコンソールにてMVS/ネオジオでリリースされたシリーズ作で唯一配信されなかった作品である。