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Might and Magic (FC) - (2014/12/07 (日) 12:14:54) の編集履歴(バックアップ)


Might and Magic(FC)

【まいとあんどまじっく】

ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 学習研究社
発売日 1990年7月31日
定価 8,500円
分類 ゲームバランスが不安定
劣化移植
賛否両論
ポイント 超々高難易度
攻略本必須
難し過ぎて1年遊べる


概要

 かつて「世界三大RPG」と謳われた「Might and Magic(以下、M&M)」。当時としては膨大な謎とボリューム、ダンジョンどころかフィールドまで全て3D表示されたグラフィック、プレイヤーによってシナリオ進行が変化する「小クエスト並立制」などがM&Mの特長である。
 本作はそのシリーズ第一弾『Secret of The Inner Sanctum』のFC移植版である。
 発売元はまさかの「学研」。そのため、児童学習誌『○年の科学』『○年の学習』などで大々的な宣伝がなされ、多くの小学生が騙されて購入した。元々高難易度で人を選ぶPCゲームをライトユーザー中心のFCに移植し、そして子供向けの学習雑誌で宣伝するというハチャメチャな販売方法は、当時の人々に強烈なインパクトを残した。*1

  • 尤も「学研の科学と学習」と言うイメージに騙されがちかもしれないが、ファミコン登場以前からLSIゲームを開発していたり、三大アニメ雑誌の一角である『アニメディア』を出版していたり、(後年にだが)総合萌え専門誌の奔り*2である『メガミマガジン』を出版したりと、昔からこの方面にも力を入れている会社である。

問題点

 しかし、多少アレンジしつつもゲームシステム、バランスはオリジナル版に近い形で移植してしまったため、ファミコンのメインターゲットである小・中学生がサジを投げる事態が続出してしまった。

厳し過ぎるゲームバランス

  • ゲーム開始直後の戦闘バランスが異常
    • ゲームスタート直後、町なのに平気で敵が出てくる。宿屋や教会の中でも敵が出たりする。
    • 低レベル帯では敵に物理攻撃がほとんど当たらず、当たれば御の字というレベル。命中率が気持ち高い魔法でちまちまと削るしかない。町の中で経験を積み、平均レベル8位になったらようやく外を安心して旅することができる。
      • しかし簡単にレベル8~と言うが、序盤はキャラの成長が遅いので、コツをつかんだ人で1週間、RPGに不慣れな人だとさらに時間がかかる。果たしてそこまでプレイヤーが耐えられるかどうか。
  • アイテムの詳細データを確認することができない
    • ステータス画面で視認できる効果は、防御力とステータスアップくらいで、あとは「自分で試せ、使って覚えろ」という仕様。当時のRPGではこれが当たり前であったのだが、さすがにアイテム総数が数百に達すると、解析の手間は計り知れないものになる。また、最も知りたいであろう「武器の性能」がわからない、という点が痛すぎる。*3
  • 敵の数がやたらと多い
    • ただでさえ敵が強いのに、最大15匹まで出現する。
    • 幸いエンカウント率は低く、戦闘前の逃走も高確率で成功する。ただし、その場合はエリア内の特定ポイント(ダンジョンの入り口など)に強制的に戻されるが。
    • 戦闘中の「にげる」コマンドは、ほぼ100%の確率で失敗する。なら入れるな。
  • レベルアップの効果が微妙
    • レベルアップしても上がるのはHPとMP、攻撃回数だけ。*4重要である特性値は全く上昇しない。特性値を上げるには各地に点在する泉を使用する必要があるのだが、初プレイ時にはその仕様がわからず、泉の場所もほぼノーヒント。
    • また、レベルアップの際にはお金を要求される。ただでさえ戦闘バランスが厳しいのに出費はかさむ一方である。
  • 探検は常に死と隣り合わせ
    • 別の町にテレポートするポイントが存在する。上手く使えば便利なのだが、序盤で利用してしまうと帰りで苦労することも…。*5
    • ダンジョンには危険な罠が多数存在しており、ゲーム序盤から即死、全滅になる罠が続出する。全滅したらセーブしたところからやり直し。対策は「引っ掛かって覚えろ」。
    • やっとの思いで敵に勝利し宝箱を入手しても、盗賊が罠解除を結構な確率で失敗する。運が悪ければ全滅もありうる。
    • フィールド、ダンジョンでは休息が可能なのだが、休息中に突然モンスターに奇襲されることも。
       要するに、全てにおいてテーブルトークRPG風味なのである。しかし、そのことは説明書で一切解説されておらず、コンピュータRPGしか知らない子供達に理解しろと言っても無理な話であった。

謎仕様、バグ&不具合

  • ゆるーいフラグ管理
    • 基本的に、各種クエストは何度でも受けられる。ただし、クエストの進行状況、オファー状況をゲーム中に確認できず、イベント(モンスターやスイッチなど)によってはエリアチェンジすると復活するため、今どのフラグが立ち、どのクエストが進行中なのか全く判別できない。クエストを受けたら一気にクリアしてしまうのが基本。
    • さらに、セーブ&ロードをすると、進行中のクエストのフラグが消える「フラグ消失バグ」が存在する。発生条件は不明。初期のバッテリーバックアップROMにはよくあることではある。
  • このゲームにおけるアイテムは全てマジックアイテム扱いであり、例え「やくそう」や「たいまつ」であっても同能力の魔法を行使するというシステム(例:やくそうは僧侶1レベル魔法「てあて」の効果)。そのため、魔法が使えない場所ではアイテムも使えない。
  • クリアに必須となる重要アイテムでも捨てることができる。また、敵に盗まれることも。その場合はもう一度同じところに行けば入手できる。
    • 鍵などのアイテムは、先頭のキャラが持っていないと効力を発揮しない。だが先頭のキャラは最も敵から狙われやすく、「世捨て人と持ち物を全て交換する」というイベントもあるため、常に気を付けていないといけない。
  • 序盤の冒険「兄弟のクエスト」は、最後に犬の石像を壊すことで重要アイテムと経験値が手に入るのだが、その石像は何度でも壊すことができる。ということは、それを利用して無限に経験値を稼ぐことも可能なのだが、レベルアップには経験値だけでなくお金も必要。世の中甘くない。
  • とあるダンジョンにて、クリアするために「ダンジョン内で得たパスワードをある装置に入力する」事が求められるのだが、アルファベットで示される答えをカタカナに直して入力しないといけないため間違えやすい。PC版だとどちらでもよかったのだが。
    • ちなみにそのダンジョンは、「クリアしないと絶対に脱出できない」という設定なのだが、僧侶魔法の「まちへ」を使うと出ることができてしまう。クリア扱いにはならないが。
  • 戦闘中のメッセージスピードが異様に速く、不安定
    • 読めない。何をやっているか分からない。当然、コンフィグで変更などできない。
    • というか、全体的に挙動不審。敵に色が付いたり消えたり点滅したり震えたり…。例えるなら、パチ屋のネオン。
      • さらに、敵が説明書にも攻略本にも載っていない謎の行動をすることがあり、最早何が何だか。「かすかなまりょくをかんじた」って何?
  • 戦闘のAUTOコマンドを解除する方法は、「Bボタン押しっぱなし」。だが説明書には一言も書かれていない。初心者がまず最初に遭遇する挫折ポイント。
  • 海は本来僧侶レベル3の魔法「うきしま」を使って浮遊して歩くのが前提となっているのだが、Bボタンを押して一歩前へ進む「突進」では普通に進めるため、「うきしま」の魔法が死に魔法となっている。
  • 各種オーバーフロー
    • GEM(魔法をかけるのに必要な宝石)は256個に達すると0に戻ってしまう。また、キャラのレベルを86以上に上げると内部的にはレベル1に戻る。
  • その他、細かいバグの数々(一部)
    • 「おおたて+2」と「ゴクリのおおたて(呪いの品)」の性能が逆になっている。
    • 各地の王から「いくつかのアイテムを集めてきてほしい」というクエストを受注できるのだが、要求されるアイテムを王に渡してもなぜか手元から無くならない。
      • ある王*6はすべての依頼をこなした後でもう一度会うと全員の荷物を没収された上に遠くに飛ばされるというメチャクチャな事をやってくる。さらにもう一度会うと何食わぬ顔をして前にクリアした依頼をもう一度最初から出してくる。他の王も依頼がループするのは同じだが、こんなひどい真似はしてこない。
    • 特性値アップの泉のうち、知性の泉だけは一度しか使えない(他の泉は条件を満たせば何度でも使える)。
    • 非売品の弓が入手できない。データ上には存在するので、設定ミスと思われる。
    • 教会に寄付をすると時々おまけでキャラを強化してくれるのだが、同時に敵が異常なパワーアップを遂げてしまう。そのため意味がないどころか寄付厳禁となってしまっている。
    • レリーフに書かれている「コリンブルッフ洞穴の位置情報」が間違っている。

その他の問題点

  • あって、ないようなメインストーリー
    • 本作のあらすじをぶっちゃけると、「よその世界から脱走してきた囚人がとある国の王様に化けて悪さをしていたが、主人公達がそれを見破ったので別の世界へ逃げました」というお話。諸悪の根源が逃げてしまい、続編の『Might and Magic:Book2』にて彼を追いかけるという展開となるため、本作だけではストーリーが消化不良気味。
      • エンディングもなく、スタッフロールという名のオープニングムービーが流れるだけ。また、クリアすると引き継ぎ用のパスコードを教えてもらえるのだが、Book2がSFCで出たのは3年後。覚えている人は少なかった。
  • 登録できるキャラクターは主人公を含めて16人いるのだが…
    • 彼らデフォルトキャラクターには気合の入った設定イラストと深みのある背景が用意されているのだが、そのキャラ設定がストーリーに活かされることは一切ないため、あまり意味がない。
    • そもそもM&Mはキャラメイクが可能であり、転職所「ギルド総本部」にてキャラの名前や職業だけでなく種族や性別まで自由に変えられるので、この手のゲームに慣れた人なら自分で思い思いのキャラを作成する。

賛否両論点

  • 厳しい世間の荒波
    • ゲームを開始した直後、突然広い世界に一人、無一文で放り出される。その後はほぼノーヒント。どこに行って、何をするかは全て自分自身で判断しなければならない。この時点でゲームを投げ出すプレイヤーも多い。
      • だが、今のRPGの様に「定められたストーリーをなぞる」のではなく、広い世界を自分の足で歩き回り、少しずつ謎を解いていくという「冒険その物に意義を見出すゲーム性」こそがM&M最大の醍醐味なのである。攻略本は使わず、腰をすえてじっくりと解いて行くのが正しい楽しみ方である。
      • なお、嘘か誠か、平均クリアタイムは「数百時間」。冗談抜きで1年遊べる。*7
  • チート魔法「テレポート」「つうか」の存在。
    • 「テレポート」はエリア内の任意の場所に飛ぶことができる。「つうか」はバリアーや壁を通過することができる。これらの魔法を使えば、ダンジョンの仕掛けや謎解きをすっ飛ばすことができるということだ。
    • ただし、ゲームの難易度自体がチート級なのであまり気にする人はいない。ラストダンジョンではちゃんと対策が取られている点も考えると、開発者の想定バランス内だと思われる。

評価点

  • 小クエスト並立制
    • (FC版に限った事ではないが)このゲームの最大の特長の一つ。各地には大小さまざまなクエスト(=「おつかい」のようなもの)が存在し、「別の街に手紙を届けてほしい」とか「無くしてしまったとあるアイテムを探してほしい」といった頼みごとを聞いてあげると、報酬としてお金や経験値がもらえる。連続クエスト以外は自由にオファーできるため、攻略する順番はプレイヤーによって千差万別。本作の自由度は非常に高い。
  • 緻密で美麗なグラフィック
    • 特に3Dダンジョンの完成度はファミコンの域を超えており、そのヌルヌル動く3D描写は、数年後のSFCのソフトにも決して引けを取らない。少なくとも、Book2よりは良い。
    • オートマッピング完備。店や入り口などのシンボルがないのは残念だが、非常に精細で見易い。
      • フィールドではマッピングできず周辺の地図が表示されるだけだが、そのメリハリが良いアクセントになっている。また、PC版同様付録に「世界地図」がついており、冒険のヒントが書かれている。*8
  • モンスターや魔法・アイテムはいわゆるD&D系で、日本人向けにアレンジされている。ファミコンRPGしか知らない子供達に、本物のファンタジーを教える良い教材となった。
  • 高難易度ゲーではあるが、その分救済処置もしっかりしている。例えば、アイテムを使わずしてラストダンジョンに飛べる魔法があったりする。フラグ管理の緩さもその一環であろう。
  • BGMが良い
    • あまり知られていないが、BGN担当は後に『伝説のオウガバトル』『バロック』などを手掛けることになる岩田匡治氏である。
      + 参考動画
      オープニング曲は、パッヘルベルの『カノン』のフルコーラスである。
      ファミコン音源3和音のカノンというのも、また乙なもの。

PC版との主な変更点

  • グラフィック・サウンドの強化。オートマッピング。キャラ増加。敵・アイテム・呪文名の再翻訳。
  • ストーリーの簡略化。M&M特有のSF設定は総カット。それに関するメッセージも全廃止し、単純なヒロイックファンタジーとして再構築されている。それに伴い、幾つかのクエストも変更。
    • カットされる前のストーリーはこちら
  • 戦闘難易度の若干の低下。
    • プレイヤー側の先制攻撃で固定。そのため、素早さのステータスがほとんど無価値に。
    • 敵団体の内、攻撃に加わるのは画面に表示される6匹だけ。
    • 「魔法の武器しか効かない敵」は廃止。普通の武器で倒せる。
    • 弱い敵(=レベル差が圧倒的に開いている敵)なら、AUTO戦闘で瞬殺できるようになった。
  • メッセージが簡素化。洋ゲーにありがちな叙述的表現がなくなった分、全体的に説明不足。
    • 例えば、とあるイベントで「死体から影が立ち昇り…」という文章が削られたため、倒したはずの敵が急に話し始めたりする。
    • クエスト中に出されるリドル(謎かけ)も全変更。ゲーム攻略のヒントが書かれた「金の板、銀の板」のメッセージも変更。特にファミコン版の「金の板」にはクリアに必須となる情報が書かれているため、捜索にかかる手間の分難易度が上がっている。
  • 通り抜けられる森とできない密林との違いが見た目で分からなくなり、難易度アップ。
  • 戦闘後だけでなく、 イベント後でも「さがす」コマンドで調べないとアイテムが手に入らない 。通常のゲームでは絶対に考えられないシステムなので、重要アイテムの取り逃しが頻発する。もちろん、一度その場を離れればアイテムは消失する。
    • そのため、モンスター退治のクエストなどでは「敵を倒す→地面を探してドロップアイテムを入手→ 横を向く →もう一度探してイベントアイテムを入手」という極めて歪な行動を取らなければならない。
  • PC版に存在した幾つかの不具合の修正。ただし新たにバグが増えてもいる。

総論

 シリーズファン、PC版経験者にはストーリー関連で批判され、新規ユーザーには難易度でクソゲー扱いされるという哀しき運命を背負った作品。あまりの高難易度ゆえに途中でゲームを投げ出した人は数知れず、気の短い人は最初の町から出ることすらできなかった。懐かしのクソゲーの話題になった時本作の名が挙がることも多く、今の基準で見るなら間違いなく「ゲームバランスが悪すぎるクソゲー」であろう。
 しかしその一方で本作の特長である広大な3Dマップとフリーシナリオが斬新に映った人も多く、異常な難易度もバグも跳ね除けどっぷりとハマる者も続出。そういう意味では典型的な「賛否両論ゲー」である。また、「世界三大RPGの一つを手軽に楽しめる」「アレンジされた部分はおおむね好評価」であることを考えれば、「良移植」とも言えよう。(ちなみに、3年後に続編である『Might and Magic:Book2』がSFCにて発売されたが、こちらは本当の意味での「劣化移植」なので要注意)
 とにもかくにも、宣伝方法はよく考えるべきである。

余談

  • 本来は1988年後半に発売予定だったのだが、実際の発売日の通り予定からかなり遅れている。
    • こちらの21:55~あたりとこちらの2:00~あたりで開発中の映像を少しだけ見ることが出来るが、製品版とは画面構成やサウンドがまったく異なっている。
    • おそらく一度大幅に作り直したためにここまで発売が遅れてしまったと思われる。