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ファイアーエムブレム 暁の女神 - (2017/08/11 (金) 17:02:11) の編集履歴(バックアップ)


ファイアーエムブレム 暁の女神

【ふぁいあーえむぶれむ あかつきのめがみ】

ジャンル ロールプレイングシミュレーション
対応機種 Wii
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 2007年2月22日
定価 6,800円(税5%込)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 強すぎる&多すぎる救済ユニットによる大味なバランス
シナリオ重視の結果、育成や編成の自由度が低い
強引・駆け足な後半のシナリオ
ファイアーエムブレムシリーズ関連作品リンク


概要

2005年4月20日、GC専用ソフトとして発売された『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』(以下前作)の続編。
前作の3年後を舞台としており、前作の登場キャラはほぼ全員、引き続き再登場する。全四部構成の壮大なボリュームで、部・章ごとに主人公や視点人物が異なる点が大きな特徴である。
基本システムも前作を踏襲しているが、「高低差」の概念や「最上級職」と言った新要素が追加。その他、武器に鉄系の下位種の青銅系、魔法の三すくみが「理→光→闇→理」とGBA版のものに回帰(炎→風→雷→炎もある)、獣ユニット「ラグズ」の化身システムの改善(専用ゲージが満タンであればいつでも任意で化身できるようになった、パラメータにボーナスが付いた)など、既存の要素にも手が加えられている。


賛否両論点

ストーリー・演出重視のゲームデザイン

  • 今作は全4部構成であり、部ごと(場合によっては同じ部の中でも章ごと)に主人公やメインとなる部隊、出撃メンバーが大きく異なるというシステムになっている。
    • 従来のシリーズでも『外伝』のように複数の隊を同時進行で操作したり、『烈火の剣』のように部ごとに主人公が異なるという試みはなされていたが、本作はそれらを混ぜ合わせたような形式になっている。
    • 具体的には、第1部はミカヤをリーダーとする「暁の団」の面々を操作する。
      • 一方、第2部は全5章のうち一章毎に出撃メンバーが大きく異なり、かつ固定。
      • 第3部では前作の主人公であるアイクをリーダーとする「グレイル傭兵団」をメインに使うが、章によってはミカヤ隊や他の隊を操作することになる。
      • そして第4部では結集したすべてのユニットを3つの隊に振り分け(一部ユニットは配属が固定)て別々にマップを攻略。その後、再び合流し終章突入メンバーを選ぶというのが大まかな流れ。
  • 故に、マップごとに出撃できるユニットの種類が大きく固定されており、強制出撃枠も多いため、出撃メンバー選択の自由度が非常に低い
    • また一度加入したユニットでもシナリオの都合で出撃メンバーから外れることも多いため、ユニット育成の自由度もシリーズ最低レベルに低い。
  • 一方で出撃ユニットが(半ば)限られている章も多いため、多くのユニットを広く浅くではあるが、腐らせることなく幅広く使えるという点はメリットとも言える。
  • その他、ストーリー上の展開や演出がそのままマップやユニットの能力に反映されている点が多い。
    • ラグズ王族など「設定上強い」ユニットは実際の能力も高く、軍隊を引き連れて戦うマップではNPCとして同盟軍(黄色ユニット)が大量に登場し、足手まといではなくちゃんと戦力として戦ってくれる等。
    • 後述するようにゲームバランスを崩す一因にもなっているが、良くも悪くもこれまでのシリーズにはない新たな表現を試みていると言える。

問題点

シナリオ・キャラクター

後半の強引なストーリー

  • 上記のように今作はシナリオに重点を置いているが、特に終盤のシナリオは問題点として上げられることが多い。
    • それまではオーソドックスな国家間の戦争が描かれるのだが、第3部後半ではサインしただけで国民の命を根こそぎ奪う事すら可能な呪いをかける「血の誓約」といったご都合主義的な設定が登場したり、第4部では「神」が降臨し、それまでの流れをリセットする「裁き」を行うといったかなり強引な展開になってしまう*1
    • 特に「血の誓約」については散々第3部で登場人物を苦しめたにもかかわらず、上記の裁きが起きた後の第4部では、まるで思い出したかのように軽く触れられるだけの軽い扱いにとどまるなど投げっぱなし感が否めない。
      • 第4部は世界が特殊な状態になっているものの誓約の効力自体は残っており、誓約を結ばせた人物も敵側について生き残っているため、言うまでも無くすぐにでも発動されておかしくない状態である。しかし作中ではそのあたりが完全にスルー。

各キャラクターについて ミカヤ

  • 第1部では主人公らしく存在感を発揮するのだが、第3部以降は前作の主人公のアイクに主役の座を奪われていく。
  • 「私は戦いたくない→でも戦うしかない→本当は戦いたくない→やっぱり戦う」と、目の前の戦いに対する態度が定まらず、根本的な行動原理がブレている。
    • 1部で様々な奇跡を起こしてデインを救ったため、3部以降は兵士たちに崇められる形でデイン王国の将軍となる。
      • 立場上、王の命令には従わなければならないので彼女が起こした戦闘自体に非はないが、戦う意味を王に問いただしたりはしない。
        つまり「何故戦うのかは聞いてないけど、王はいい人だから何か考えがあるんだわ」という事で、その結果が血の誓約というなんとも締まらない結果。
  • 第3部終盤での展開が駆け足気味で、彼女の真意がわかりづらい。
    • 進撃開始前、血の誓約の事を知ったため、ミカヤはデインのために戦うと言う覚悟をはっきりと見せる。
      そしてマップクリア後、標的となっている神使を乗せた天馬を攻撃しようとした時に、ティバーンがミカヤにとって家族同然のサザを人質にとって脅し、ミカヤは攻撃をやめる様に指示。
      しかし、その直後に降伏を命じられると、「戦う理由(血の誓約)は話せないけど、どんなことがあろうと立ちふさがり続ける(要約)」とサザがまだ人質にとられた状況で言っている。せめて助かってからでもよかったのではないだろうか。
  • 第4部では、イベント中は殆どの間別のキャラに憑依された状態となり、ミカヤ自身の出番は相槌を打つ程度しかなくなってしまうため見せ場に乏しい。

サザ

  • 前作には脇役として登場。本作ではパッケージにもミカヤと共に描かれている主要人物の筈なのだが、ゲームの能力的には妙に冷遇されている。
  • 第1部では序盤に上級職で登場。他のキャラより一回り高いステータスを誇る序盤お助けユニット(いわゆるジェイガン)であり、前半は壁役に削り役に強敵の対処に盗み・宝箱回収にと、順当な活躍を見せてくれる。成長率も悪くない。
    • しかし第1部後半からは、ニケや漆黒の騎士と言った桁外れの能力を誇るユニットが登場するため、お助けユニットとしての影は薄くなっていく。
    • また再登場する第3部の中盤からは敵が強くなることもあり、前線で戦うのは段々と苦しくなってくる。それでもミカヤを操作するマップは自軍の戦力が乏しく、強制出撃なことも含め活躍の機会はある。
    • だが第4部になるとラグズ王族を始めとする超強力ユニットが続々登場、他の隊の主戦力とも合流するため、意図的に育てていないと戦力として使うのは厳しい。
    • そして第4部1章クリア時にはイベントによって強制的に最上級職にクラスチェンジするのだが、そのクラスは汎用職の「密偵(エスピオン)」。専用の奥義等も無い。
    • 更に第4部5章で条件を満たすと仲間に加入するフォルカは専用職の「暗殺者(アサシン)」であり、性能的にもほとんどの面でサザの上位互換というあんまりな仕様。
  • にも関わらず終章突入メンバーには強制選出となる(ただし実際のマップに出撃させるかどうかは任意)。このせいでお荷物扱いされたり、ストーリー上の立ち位置や言動と実際の能力が釣り合っていないことをネタにされてしまうことが多い。
    • ただし以上の要素は、あくまで特別な血筋や飛び抜けた能力を持たない「凡人」というキャラ付け*2のため、あえて控えめな性能に止めたという演出の一環と捉えることもできなくない。

アイク

  • 前作主人公。今作でも第3部主人公になるなど重要人物の一人である。
    • だが、中盤からストーリーの中心となり、ラスボスはアイクでしか倒せないなどミカヤを差し置いて物語をジャックしてしまっており、シナリオのバランスを崩しているとも言われる。
  • アイクは前作でテリウス大陸史上重要な功績があるとはいえ、全体的にアイクに対する態度が甘いキャラクターが多く、持ち上げられすぎだという指摘も。
    • 一応第4部終章ではアイクも前作っぽい性格を取り戻すのだが、後日談で唐突に傭兵団から脱し旅に出るという結末が描かれる。それに至るまでの経緯には触れられていない。
      • 理由の推察こそ可能だが前作プレイ済み前提の推察である上、アイクは父から受け継いだ傭兵団の団長と言う設定があったり、伏線のないあまりの唐突さから後味の悪さを感じるプレイヤーも。
  • 前作で特定の条件を満たしていると発生する会話では、「アイクがいきなりセネリオ*3に抱きつく」というやや人を選ぶシーンがある。しかも、この会話を発生させていると後日談が「傭兵団をやめてセネリオと2人で旅に出る」というものになる。

その他の面々

  • 後述のように支援会話システムが実質的に削除されたことや、ストーリー上での出番の少なさも相まって、今作初登場のキャラのバックボーンの描写が薄い。
  • EDも前作に無かった後日談が追加されたが、分岐の幅も数も少ない。第1部で登場する面々は主人公除いて何一つペアエンドが無い(友情エンドすら無い)という始末。

ゲームバランス

多すぎる・強すぎるお助けユニットによるバランス崩壊

  • 今作はFEシリーズ最多のマップ数*4であることも含め、ユニットを大量にロストしてしまいクリア不可能な「詰み」状態に陥ってしまわないようにという配慮からか、いわゆるお助けユニット・救済ユニットの数が非常に多く、その能力もずばぬけて高いことがゲームバランスを大きく崩す要因になっている。
  • 例えば第1部では中盤からラグズ王族の「ニケ」や、前作で敵して登場した「漆黒の騎士」が仲間として使える。いずれも敵からダメージを受けることはまずなく、攻撃すれば一撃で倒してしまうため、これらのユニットをメインに使えば負けるほうが難しいという状況になる。
  • 3部ではアイクを始め、ティアマト、シノン、ガトリーといった(漆黒の騎士ほどではないが)最初から強いユニットが多い。さらに第4部にかけてはラグズ王族が続々と加入する。
    • 普通のラグズは、化身状態になるとステータスが人状態の倍に上昇するが、代わりに戦闘に参加するごとに化身ゲージが減り、0になると人に戻るというシステムを持つ。従って本来は「化身すれば強力だが人状態だと脆いため、化身ゲージの管理が重要」というリスクとリターンを併せ持ったユニットとしてデザインされているはずなのだが……。
    • ラグズ王族は「王者」という常時化身が可能で人状態に戻ることがないという反則級の固有スキルを所持している。このためたいていの場面は適当に敵陣に突っ込ませるだけで敵を壊滅状態にできてしまうほどのお手軽バランスブレイカーとなってしまっている。
      • もっともラグズはいずれも間接攻撃ができず、いずれも何らかの被特効を持つなど弱点が皆無というわけではない。弓などの特効や魔法を連続して浴びると倒されることも十分あり得る。
  • 従来のシリーズでは、典型例のジェイガンを始め「お助けユニットは初期値は高いが成長率は低いため、頼りすぎると他のユニットが育たず、むしろ後で苦労し、最悪詰む」というのがお決まりのパターンであったが、本作ではとにかくお助けユニットが強すぎる上、次から次へと加入するため、これらの最初から強い救済ユニットだけを使ってゴリ押ししても問題なくラスボスまで倒せてしまうというバランスになっている。
    • 初心者でもクリアできるようにハードルを下げたというのはというのは良い点でもあるが、強すぎるユニットで敵を無双するばかりのプレイは戦略性も緊張感もあったものではなく、戦略SLGとしては大きな問題点と言わざるをえないだろう。
    • ゆえに強ユニットを意図的に使わない(縛る)プレイをしない限り、低レベルで加入する初期ステータスが低いユニットをわざわざ育てる意味がかなり薄い。
      • 特に第1部の「暁の団」の面々は初期レベルが低いこともあって、普通にプレイしていると殆ど育たないまま戦力外になることが多い。
      • ただしその場合、第3部でミカヤ隊を操作するマップではまともに戦力として使えるユニットがかなり少なくなり難易度が上がるので、この点においては弱いユニットを育成するメリットはある*5

強力すぎる最上級職と奥義

  • 本作では、ベオクは上級職が更にクラスチェンジした「最上級職」になると強制的に「奥義」を習得する。
    • ラグズ王族は全員習得しており、それ以外の一般のラグズは一定のレベルに達した状態で「悟りの符号」というアイテムを使用することで習得する。
    • 奥義の発動率は全体的に高い上に、効果の大半は「通常の3~5倍のダメージを与える。そして追加効果を与える」となっている。しかし大抵は3倍ダメージの時点で敵は倒れてしまうため追加効果の殆どが形骸化してしまっており、要するにどれも「発動すると相手は死ぬ」というなんとも大味なバランスになっている。
      • ただしHP回復効果がある「天空」「太陽」「陽光」あたりは数少ない追加効果の恩恵が受けられる性能であるため、奥義の中では一段階高い評価を受けている。逆に言うと、それ以外は実質的にほぼ違いが無い。
    • 後半は敵将も奥義を取得しているため、奥義を含めた相手のスキルを封印するスキル『見切り』『能力勝負』がないと少々きびしい。
      • さらに進むと、敵将も『見切り』持ちがほとんどとなり、互いに奥義やスキルは発動不可となる。

地雷無双が可能な大味なマップ構成

  • また今作では総じて敵の火力が低目で、終盤では恒例と化していた高威力である銀系統の武器や強力な魔法を装備した敵が非常に少ない。一方で敵の数は増援含めてかなり多い。
    • さらに、こちらも終盤のお約束である遠距離魔法や状態異常杖を持った敵も少数なため、搦め手による戦術が少なく、単に物量で押しつぶしてくるというマップが多い。
    • 対して自軍のユニットは、ある程度育てた固いユニットなら、雑兵からの攻撃はかすり傷程度しか食らわなくなるまでパラメーターがインフレする。
    • 以上のバランスを考慮すると、少数の強いユニットに間接反撃可能な武器を持たせて敵陣に突っ込ませ、反撃で敵をひたすら倒していく、いわゆる「地雷無双」がもっともお手軽で効率的な戦術として通用してしまう*6
      • そのため、仮にお助けユニットの使用を縛ったとしても、最終的にはやはり強いユニットによる(前述の奥義も含めた)無双という大味な展開に帰着する点は同じで、やはり戦略性は薄い。
  • また今作はHP回復アイテムが豊富で、今作は全体的に敵も味方もHPが低め(上級で40くらい)なのだが、最も低価格な「傷薬」ですら20回復で8回も使用可能と性能が高い。
    • ゆえに回復役の杖ユニットを無理に出撃させなくても、敵陣の真っ只中でひたすら薬を使い続けることで回復が間に合ってしまうことも多く、地雷無双の推奨に拍車をかけている。
  • またスキルの着脱が自由になったことも、「2軍や1.5軍のユニットからスキルを剥がし、少数の主力を特化して強化」という無双戦術の追い風になっている。

兵種や武器のバランス

  • 短所が埋められて死角がなくなり、単純に強力になった兵種がある。
    • 射程1~2である弩(価格は少し高いが)の登場により近接攻撃不可という最大の弱点を克服した弓兵(スナイパー)や、従来の弱点であった速さ・魔防の成長率が大幅に補強された重歩兵(アーマー)、弓による特効がなくなった竜騎士(ドラゴンナイト)などがあげられる。
  • その煽りを受け、長所が長所でなくなった兵種がある。
    • 魔導士系は「魔法による直接・間接両方の攻撃を行える代わりに守備面に不安がある」というユニットだった。従来作ではその利便性ゆえに最強レベルのクラスとして君臨しており、その結果前作では大幅な下降調整を施された。
      • そして今作では「敵の魔法防御を蒼炎よりも更に全体的に底上げ」「物理攻撃系統の兵種の直間両用武器を数・質ともにかなり補強」「魔法に弱い敵があまり登場しない」「遠距離魔法の弱体化」と前作に続いてさらに弱体化調整がなされ、前述のような強兵種との差がかなり広がってしまった。

ボーナスEXに関する問題

  • 前作で闘技場に代わって下級レベルユニットの育成用に導入されたボーナスEXは無限育成によるパワープレイが容易に出来なくなったなど一定の意義はあったものの、セーブとリセットにより多人数のパラメータの吟味が可能になるなど別の手段でパワープレイが出来るという問題があった。
  • 今作ではその対策にボーナスEXによるレベルアップ(拠点成長)ではパラメータがちょうど3つだけ上がるようになっている。
    • この「ちょうど」というのが曲者で、成長率が高かろうが低かろうが、一部分のパラメータがカンストしてようがしてまいが、一律で3つ上がるように設定されている。
    • しかし本作のユニットは平均して、1回のレベルアップで3~5つ分パラメータが上がる位の成長率であるため、ボーナスEXによるレベルアップは普通にマップでレベルを上げるよりも損になる可能性がある。
  • このため成長率が高いユニットを育てたい場合は、拠点成長ではギリギリレベルが上がらないEXP99で止めておき、次のマップの頭で経験値を与えてレベルを上げ成長吟味する、という手段が取られることが多い。
  • またこの仕様を逆手に取り、既に複数のステータスがカンストしてしまったユニットをレベルアップさせれば、カンストしていないステータスを確実に3つ伸ばせる、という活用法もある。

指揮システム

  • 『トラキア776』以来久しぶりに復活した「指揮システム」だが、「第1部が異様に難しい」「第3部からの難易度が極端」といった不安定なバランスの大きな要因になっている。
    • 今作の仕様は、指揮官ユニットの指揮レベルの星の数(最大数5)だけ味方全員の命中回避が+5%されるというもの。指揮官ユニットはシナリオ展開に合わせてマップごとに固定であり、指揮官でないキャラの星の数は意味が無い(製作期間の問題で削除していないと思われる)。
    • 基本的にマップ自体の難易度が高い面ほど味方の指揮官の指揮レベルは低く、逆に敵の指揮レベルは高いという傾向がある。つまり、面の難易度をマイルドに調整するのではなく、むしろ極端にする役割を果たしている。
    • ただし、ストーリーにおける「敵側の指揮系統の実状」と敵側の指揮レベルの設定値はほぼ一致しており、演出としては噛み合っている。

その他の問題点

  • 支援会話の大幅な簡略化・テンプレ化
    • 『封印の剣』以降導入されている従来の支援会話システムは、本編では描かれないキャラの掘り下げをサブエピソードとして行うという重要な役割を持っていたが、それゆえキャラクターごとに支援を組める相手が数人に固定されて決まっていた。しかし本作では、自軍のユニットであれば、ほぼ誰とでも支援を組めるようになり、攻略面での自由度は向上した。
    • だがその代償として、戦場で隣接した際に「会話」コマンドを選ぶことで発生する支援会話の内容が、会話とすら言えないような簡単なコメント(相手によらず内容はテンプレート)の応答のみに大きく簡略化されてしまった。実質的に既存の支援会話システムは削除されたと言っていい。
    • これは支援の組み合わせが膨大になったがゆえの措置だとスタッフも公式サイトのQ&A(BACKGROUND)で弁明している*7
  • マニアックモードの雑な調整
    • 前作のマニアックモードは非常に練り込まれた作りになっていて大好評であったが、今作のマニアックは敵能力値の単純な上昇の他、「マップ属性廃止」、「3すくみ廃止」、「敵行動範囲表示廃止」、「取得経験値減少(ボーナスEXも含む、ボーナスEXの消費量増加)」と、既存のシステムを削除・弱体化させただけの雑な調整になっており評価が低い。
    • 特に敵の行動・攻撃範囲が表示されないのは、単にいちいち個別に範囲を調べる必要が生まれるだけの、難しいというよりも面倒で手間がかかるだけの要素であり、戦略性の向上には全く寄与していない。
    • 難易度的にも、一部のマップが非常に難しいだけで、全体としては前作のマニアックより下。
  • ノーマルモード時のテキストの簡略化
    • 難易度ノーマルと、ハード・マニアックでは章間のシナリオのテキストが変化する。大筋の内容は同じだが、ノーマルだと表現が単純化・簡略化されていたり、前作未プレイだとわかりにくい要素が省略されていたりする。
    • 前作未経験のプレイヤーへの配慮と思われるが、全体的に省略しすぎて味気ない内容になっていたり、表現を簡略化しすぎてシナリオ間の繋がりが逆にわかりにくくなっていたりと弊害が大きい。
  • 初回プレイではすべての要素を解禁できない
    • 初回をクリアしたデータを引き継いだ2週目でないと仲間にできないユニットや、観ることができないイベントが存在する。
    • 『烈火の剣』や『聖魔の光石』でも周回プレイ推奨の仕様だったが、そちらは1周目とは異なる主人公・ストーリー・マップ構成でプレイ出来た。
      • しかし本作は追加要素以外に異なる点は無く、ゲームデザイン的に育成の自由度が低いこともあって周回プレイを強いる仕様との相性は良くない。
  • すべてのマップで隠しアイテムがある
    • 前作では砂漠だけだった特定の場所で待機するとアイテムが手に入る発掘要素だが、本作ではほとんどのマップで存在する。
    • どこにアイテムが埋まっているかは基本的にノーヒント*8であり、さらに質が悪いことに該当するマスに待機しても入手できるかは運次第であるため、虱潰しに調べようとすると多大な手間がかかり、逆に攻略情報を見てしまえば単なる作業でしかなくなる。
  • 中立軍・友軍フェイズが長い
    • 救済処置としての役割も果たしているのか、味方となるNPCユニットの中立軍・友軍(緑・黄色ユニット)が登場するマップが多く、数も多いため、マップによってはプレイヤーフェイズが回ってくるまでにかなり時間がかかりテンポが悪い。
    • 特に第3部3章の友軍である「馬」は数が多い上、柵の中で動き回るためカメラが動いて酔いやすい。
    • また自軍ユニットとして使っていたキャラが、他の章で友軍として登場する場合があるが、その際に貴重な武器を持たせていると、勝手に使われて使用回数が減ってしまうという一種の罠がある。
  • ムービーにおける声の演じ分けが分かりにくい
    • 第四部における重要キャラ達の回想シーンは最たる例。この場面では顔グラなどの人物を確認する要素が殆んど無いため、誰が喋っているのかわからなくなる可能性が高い*9
  • 初期Verにおけるフリーズ・バグの存在
    • 徹底防御育成で戦闘アニメーションオン状態のまま遊んだ後、敵に攻撃すると戦闘アニメーションがオンなのにオフ状態に変わる、既にカンストしたパラメータが上がるなどの細かいバグがある。特にフリーズは中断機能がリセットでパーになる今作では回避不可能。
    • バグは初期Verだけなので後から出荷されたものはフリーズだけ修正がかかっている。
      • しかし、前作でジルが寝返ったデータを引き継ごうとするとフリーズするバグだけは治っていない。

評価点

グラフィック、演出

  • 前作より格段とクオリティの向上したグラフィック。
    • 戦闘シーンのアニメパターンが多彩になり、躍動感溢れるアクションを見せてくれる。また、キャラの固有グラフィックが非常に多くなった。
      • ただし、奥義ヒット時のエフェクトと効果音が前作と比べて地味になった点は惜しい点として指摘されている。
    • また演出を簡易的な「マップ戦闘」にした場合のアニメもかなり出来が良い。
    • 今作は美術スタッフが全スタッフの半分を占めていることやWii登場初期の作品ということでWiiの性能を見せるということもあり、グラフィックに重点を置いた作りになっている。
+ ←戦闘アニメの動画

  • デジタルフロンティア制作によるアニメーションムービーも更にクオリティが高くなっている。
    • ムービーの量は『蒼炎の軌跡』のおよそ倍に増加。特に2部終章のムービーはシチュエーションも相まって評価が高い。
  • 前作より大幅にクオリティの向上した音楽。GBA時代を髣髴とさせる印象深い旋律を奏でる楽曲が中心となった。
    • 戦争の壮大なスケールを感じさせる曲が多く、どれもが非常に高い完成度を誇っている。演出面でもトップクラス。
    • 特に人気の高い「絆永久に」は『大乱闘スマッシュブラザーズX』に「アイクのテーマ」という曲名で採用された。

ストーリー

  • 前作で未回収だった伏線はほぼすべて回収している。
  • 毀誉褒貶著しいシナリオではあるが、個別の見せ場自体は決して過去作に劣らない。
    • 第1部では、FEの王道とも言える国家再興が描かれる。
      • デインの義賊に過ぎなかった主人公たちが、旧臣たちとの出会いなどを経て徐々に勢力を拡大していく様子が、収容所襲撃・ミカヤ奇襲などの劇的な場面を交えて描かれる。
      • 一方で、反乱軍の参謀であり卑劣な手段を使おうとするイズカとミカヤたちの対立など、単純な勧善懲悪の構造にとどまらない要素も描かれている。
      • また、敵大将は民を虐げてきた卑劣漢だが、一方で部下から絶大な信頼を寄せられる程軍人としての優れた気概を持っており、なかなか憎めない相手となっている。
    • 第2部では、前作を単純な大団円では済まさない、クリミア王国の内紛が描かれる。
      • 少ない話数ながら、前作では陰に隠れがちだったエリンシア女王の芯の強さや、身を持って彼女を支える臣下の忠義をはっきりと感じられる。
      • また、敵大将は野心こそ秘めているが、単なる奸臣ではなく国を思っている面もある。そして従来は保護の対象であることが多かった自国民に刃を向けられることもあるなど、敵の描写も単純ではない。第1部同様、同じ国家・陣営内での権力争いや反乱がテーマになっていると言える。
    • 第3部前半では、前作からの重要なテーマであるベオクとラグズの対立が国家間戦争という規模で描かれており、その中で章ごとにプレイヤーの視点が変わるという群像劇のような演出を採用している。
    • 第3部後半からは、前述の「血の契約」や裁きによってストーリーが大味なものになってしまっているものの、隠されたテリウス大陸史が明かされていくなどの見所も存在する。
    • 以上を含めてシナリオ面の評価は賛否両論であり、2部まではよかった、最後まで楽しめた、全編通して駄目、など人によって評価は様々である。
  • 前作で死んだはずなのに何故か続投のオリヴァー。
    • これに対しては専用戦闘BGMや戦闘会話などでかなり優遇されているが、今回は本筋に一切かかわらないキャラである上、加入が最終盤だということもあるのか、「綺麗な贔屓」と言われるなどファンからは喜んで受け入れられた。
    • ちなみに、前作のトライアルマップでは条件を満たせば使用可能になるユニットだった。

ゲーム性

  • 前述通り、後半を中心に全体的に大味なゲーム性ではあるものの、部分的に見ればバランスが取れている章も存在する。
    • 特に第2部はいずれも出撃ユニットが固定されており、バランスブレイカーと言えるほど強力なユニットもいないため、どの章も力押しではなく戦術性が試される構成になっている。
      • 特に第2部終章は、城を防衛するか、敵将を撃破するか、敵全滅を狙うかによって難易度や戦術が大きく変化し、新要素である高低差も利用した戦略の自由度の高さ、シチュエーションやBGMも相まって本作屈指の完成度を誇ると高い評価を受けている*10
    • 第4部終章area3は、ボスもザコ敵もシナリオ上の設定通りの強さであり、その非常に高いステータスから威厳と緊張感を演出することに成功している。
    • 他にはバランスブレイカーをまだ得ていない第1部の前半や、複数のユニットを同時に動かす必要がある捕虜救出・砦防衛マップあたりも従来と同じく戦術を練る楽しみを味わえる。
  • 武器の三すくみはバランスが取れている。
    • 前作では槍を持った騎兵や重装歩兵が非常に多く「斧優遇剣不遇」だったが、今作では剣の威力を高く是正され、剣騎兵や斧重装歩兵などが豊富に登場するのでバランスがよくなった。
  • クリア条件がバラエティ豊かになった。
    • 従来作では「制圧」「敵将撃破」がほとんどだったが、今作では「2人を指定位置に進軍させる」「所定人数の撃破」など斬新なものが多い。
  • ディスクメディアだと感じさせない、快適なゲームテンポ
    • ロード時間はほとんど無く、レベルアップ時のステータスアップ、経験値取得と言ったシーンまでボタンでスキップ可能となり、全体的なテンポが前作から向上した。
    • 更に2周目以降になると戦闘アニメ完全オフ(マップでの動きすらない)などが追加され更にテンポが良くなる。ただし早すぎてダメージ量がよくわからなくなるという欠点もある。
  • Wiiらしさを撤廃した操作性重視のインターフェース
    • 操作はすべて既存のシリーズと同じくボタンで行う。モーションセンサーやポインティングなどWii独特の操作を強いられることは一切無い。
    • コントローラーはWiiリモコン横持ちの他、クラシックコントローラーやゲームキューブのコントローラーにも対応している。

総評

全4部構成というシリーズ最大級のボリュームを誇り、シナリオや演出面を重視した本作。
しかしその代償として、ユニット選出や育成の自由度は大幅に下がり、従来のような「好きなユニットを育てて自分だけの軍団を作り上げる」といった遊び方は難しくなってしまった。
また大量に登場するバランスブレイカーなお助けユニットや、強力すぎる最上級職・奥義の存在もあり、戦略シュミレーションとしてのゲームバランスもかなり大味な方向に崩れてしまっている。
優れたゲーム性が評価された前作『蒼炎の軌跡』と比べると、全体的にどうしても不安定な面が目立つ。ストーリーが前作から繋がっているという面も含め、少なくともシリーズ初心者には勧め難い一作である。
一方でグラフィックや音楽、演出面の出来は良く、前作のキャラが多く登場すること、2部を中心とした一部のマップ等の評価の高さなど、決して悪い点ばかりではない。クセの強い点をどれほど許容できるかが、本作を楽しむ際のポイントになるだろう。


余談

海外版の追加要素

  • 2007年11月5日に北米版が発売*11されたが、かなり多くの要素が追加されており、実質的な完全版と言っていいほどの内容になっている。そのため「日本版のユーザーがテストプレイヤー扱いされている」といった恨み節も。
+ 海外版における主な変更点
  • システム面
    • ワイド画面(16:9)に対応。
    • 『蒼炎の軌跡』にはあったが日本版『暁の女神』には無かったギャラリーモードが追加。
      • 味方全員と一部の脇役や敵対キャラクターのイラスト(85枚)が閲覧可能(そのイラストはこちら)。
  • ストーリー面
    • 第3部と第4部に会話イベントが追加。特にミカヤとセネリオの台詞やアイクの性格、日本版で批判が大きかった血の誓約関連が大幅に変更されている。アイクのイベントにも修正が加えられている。
    • 難易度に関わらず、テキストは日本版のノーマルに相当する簡略化されたものになっている。
  • 攻略面
    • エディとレオナルドの初期レベル・パラメーターが上昇。
    • エディ・レオナルド・ノイスにそれぞれ強力な専用武器が追加、第3部で入手できる。
    • 日本版では上級職→最上級職へのクラスチェンジは(一部のユニットを除き)マスタークラウンというアイテム*12が必要だったが、海外版ではレベルアップのみでクラスチェンジできるようになった。
  • それ以外の追加要素はこちらを参照。
+ 追加要素をまとめた動画