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LSD - (2019/10/27 (日) 16:54:23) の編集履歴(バックアップ)
LSD
【えるえすでぃー】
ジャンル
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ドリームエミュレーター
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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アスミック・エース エンタテインメント
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開発元
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アウトサイドディレクターズカンパニー
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発売日
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1998年10月22日
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定価
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4,800円(税別)
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配信
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ゲームアーカイブス:2010年8月11日/572円(税別)
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判定
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賛否両論
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怪作
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ポイント
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そもそもゲームかどうかも疑わしい
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概要
ゲーム界の中でも他に類を見ない奇怪な作品。
というか、ソフトの帯に「こんなのゲームじゃない」というキャッチフレーズが堂々と書かれている。
コンセプトをはじめとするこのゲームを構成する要素はとにかく奇怪で、どこか病的なものすら感じる。
ジャンルの「ドリームエミュレーター」というのも、このゲーム唯一のジャンルであろう。
この記事ではこの奇怪なゲームに付いて掘り下げていく。
ゲームの目的
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このゲームには、目的はない。クリア、スコアなどといった要素はことごとく排除されている。
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プレイヤーは一人称視点で「夢の世界」を理由もなくさまよい、夢を構成するサイケで病的、かつ不気味な色合いで彩られた空間、そしてそこにあるオブジェや人々(?)を観察して日々を過ごす。
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プレイヤーに向かってアクションを起こしてくる人々(?)もいる。
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オブジェや人々は日にちが経過するにつれ変化する。
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プレイし始めは普通の町並みや自然の風景だが、プレイ日数を重ねるうちにポリゴン表面のテクスチャが意味不明な画像に変わっていく。一部キャラクターの姿も意味不明なものに変わっていく。
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地面以外の何かしらにプレイヤーが接触すると他の場所にワープさせられる(説明書ではLINKと呼ばれる)。一部のオブジェクトに触れると特定の場所にワープし、それ以外のオブジェクトは不特定の場所にワープする。LINKでなければ移動出来ないマップも存在する。
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プレイヤーは「夢を見ている」だけなので、ゲームの内容に干渉することは出来ない。
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ゲームをプレイするごとに現実世界の日にちが経過し、日にちの経過によって夢の内容が変化する場合がある。
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また、夢にはランダム性があり、短い詩のようなものが出現したり、不思議なムービーが流れるなど、ゲーム以外の内容が混じる場合もある。
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ごく稀に「触れると全ムービーが連続で再生され続けるオブジェクト」が出たりもする。が、規則性も再現性も不明であり「単なるバグ」である可能性も否定できない。それもまたこのゲームの一部と言えるのかもしれないが……。
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STARTしてから一定時間歩き回る、または崖などに転落することで一日の夢が終了する。その後四方に"UPPER" "DOWNER" "STATIC" "DYNAMIC"と描かれた黄色い方眼の図のどこかひとマスが赤く表示され、その日のプレイは終了となる。
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この図が何を意味しているのか、赤くなるマスはどう決まるのかはよくわかっていない。言葉からして大脳の図であろうか。
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この図のマスがその後の風景やムービーを決めているようで、DYNAMIC寄りのマスを多く埋めるとより意味不明な風景になる。
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前日までに赤くしたマスは白で表示され蓄積されていくが、日が経つごとに徐々に黒くなり黄色に戻ってしまうので、全てのマスを埋めることはできない。
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このゲームにも唯一敵と呼べる存在として、黒紳士(通称)と言うキャラクターがいる。真っ黒な紳士のシルエットのようなキャラクターであらゆる場所で遭遇する。
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このキャラクターと接触してしまうと、今までの記憶を抹消され、フラッシュバック(今までの記憶のリプレイ)を見ることができなくなる。見かけたら接触されないように逃げるべし。
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ちなみにゲームオーバーも存在しない。
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一応ゲーム時間で365日ぶんプレイするとエンディング(?)らしきムービーが流れる。が、それだけである。
評価点
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奇天烈かつ独特な世界観
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類を見ない、前衛的かつ意味不明な世界観だが、ある意味で非常にアーティスティックな要素を内包している。毒を含んだサイケデリックな世界に惹かれる感性の持ち主であれば、本作に魅力を感じ取れるだろう。
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また、「ゲームの目的」の項目で触れられている通り、本作は非常にランダム性が高く、プレイする度に内容が変化していくといっても過言ではない為、ハマった人なら延々と遊ぶ事もできる……かもしれない。
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ゲーム部分の破綻の少なさ
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前述の通り、「もはやゲームと呼んでいいのかすらわからない」作品だが、「ゲーム部分」の体裁は整っており、目立った問題点や、進行不能になるバグなどは存在しない。
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一人称視点での移動も、ダッシュはもちろん、視点を上に向けて「見上げる」事もできる。行動自体の自由度は高いので、その気になればこの珍妙な世界にどっぷり浸れる。
問題点
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あまりに実験的かつ前衛的な内容
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とにかく、徹頭徹尾、奇天烈な世界しか広がっていない為、理解できない人間にとってはただの意味不明な映像作品にしか映らない。そういう意味では選ぶ人の対象がものすごく狭い。
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ある意味切っても切り離せない要素と言えるかもしれないが、一部グロテスクで怖い表現があり、現在のゲームアーカイブス版ではCERO:D指定となっている。
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破綻はないが完成度が高いとも言えないゲーム部分
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評価点にて述べられている通り、ゲームとしての破綻は少ない。とはいえ、決して親切で進めやすいという訳でもない。
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操作はこの頃の一人称視点ゲームでは普通なのだが、移動と方向転換を同時に行う事ができない。方向転換のスピードも鈍く、自由に歩き回るにはちょっとストレスが溜まる。
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オブジェクトの関係なのか、場所や立ち位置によって、ダッシュの移動速度が激変する。遅い時は歩きよりマシ程度だが、何もない所ではそれはそれで速過ぎる速度で動く。速い時のダッシュは足音もシュールなレベル。
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もっとも、ちょっとやそっとのバグではバグと気づけないゲームでもある為、これも夢現を再現するための仕様なのか、それとも単純に処理の問題なのかは全く断定できない。どこかおかしくても、それをおかしいと断言できないのがこのゲームなのだ。
総評
ゲームと言うよりも「映像実験」「PSの表現精度の試験」のフィルムなどに近く、実験要素が非常に色濃い。内容も非常にサイケデリックかつどこか前衛芸術的である。
受け手の感性によって評価は「神作」にも「ゴミ」にもなりえる。
内容は芸術性に依るところが大きく、一概に優劣の評価を下すことは出来ない。
この記事を読んで少しでも興味がわいた方は、ぜひ手にとって、このゲームが『神作』か『ゴミ』かを確かめてみて欲しい。
断言できるのは、「能動的に操作し歯応えを感じるゲーム」「愛と感動」といった要素を求めている人には誇張や比喩抜きで絶対におすすめ出来ないという事である。
豪華スタッフ
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注目すべき点として、音楽に関わったスタッフは、いずれも業界のツワモノ・キワモノぞろい。
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他にも、主に海外から多くのミュージシャン・アーティストが集結してこのゲームの音楽を手がけている。
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また、グラフィックやムービーのモチーフはスタッフが10年間書き留めた夢日記が元である。彼は無名だが、ある意味相当なキワモノである。
余談
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ゲームアーカイブスで配信されるまでは、そのレア度は非常に高く、価格の高騰もあって入手は非常に難しかった。
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2010年8月11日よりゲームアーカイブス(PS3/PSP)での配信を開始したので、容易に遊べるようになった。お値段据え置きの600円。というわけでメディアにこだわらないならこちらをオススメする。
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開発の中心人物の佐藤理(さとう おさむ)は以前にもMac用ソフト『東脳(とんのう)』などを手がけており、LSD同様にサイケなものとなっている。
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が、このゲームの開発元、佐藤理とアウトサイドディレクターズカンパニー(OSD)は一流企業の広告やプロモーション動画、美術展のポスターデザインなどサイケじゃない仕事をもこなす凄いデザイン事務所だったりする。公式ホームページ
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タイトルのLSDがなんの略なのかもわからない。オープニングムービーでL,S,Dで始まる英文が表示されるのだが、一定していないのだ。ゲームの外でも、書籍などの記載も一定していない。ただDは必ずDreamの頭文字となっている。
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例1:in Limbo, Silent Dream.
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例2:in Life, Sensuous Dream.
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余談だが、LSDと聞けば多くの人は
麻薬取締法で規制(禁止)されている幻覚剤
を連想するのではないだろうか。
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ちなみに正式名称は"LySergic acid Diethylamide"。1960年代に欧米のミュージシャンやヒッピーの間で流行し、ここからPsychedelic musicやPsychedelic artが発生した。
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夢を見る「ドリームエミュレーター」という体裁の本作だが、このタイトルから考えると「幻覚症状シミュレーションゲーム」とでも言うべき裏のテーマが隠されていると言える…かもしれない。
OP付きプレイ動画
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OPや映像は非常にかっこよかったり超サイケだったりする。
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