「DRIVING EMOTION TYPE-S」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
DRIVING EMOTION TYPE-S
【どらいびんぐえもーしょん たいぷえす】
ジャンル
|
レース
|
|
対応機種
|
プレイステーション2
|
発売元
|
スクウェア
|
発売日
|
2000年3月30日
|
定価
|
6,800円(税別)
|
判定
|
クソゲー
|
ポイント
|
極悪な操作性 実はバグだらけ、でも結構笑えるものが多い
|
概要
-
PS2が2000年3月4日に発売され、同時発売の『リッジレーサーV』はPS2のグラフィック性能を遺憾なく発揮していた。少し遅れて発売された本作は、PS2では初となる“実在する車によるドライブシミュレーター”として、数々の目玉要素を引っさげて登場した。
-
通称として「ドラえもん(ドライビングエモーション)」なるものが存在する。
カーマニア垂涎の要素
-
国内6メーカー、海外5メーカーの車が実名で登場する。
-
特にフェラーリ、ポルシェは後に出る『グランツーリスモ3 A-spec』(GT3)ですらファンに望まれながらライセンスを獲得できず、ポルシェのシャシーをベースにコンプリートカーを制作しているRUFの車を代わりに登場させていた。
-
これまたGT3で望まれながら実現しなかった要素の、鈴鹿サーキット(東コース・フルコース)・筑波サーキットの国内有名サーキットを収録。90年代のチューニングカーブーム時、チューナー達はこぞって筑波サーキットでのタイムを競い合っており、チューニング雑誌やビデオマガジンにも頻繁に登場するチューニングカーの聖地のような存在であった。
-
コックピット視点ではハンドル、メーター、ミラー等車の内装まで再現している。もちろん操作に合わせて手がハンドルを動かす。
-
『グランツーリスモ』シリーズやXboxでの『Forza Motorsport』シリーズをはじめ、今でこそ車の内装まで描くのも一般的であるが、PS2時代はここまでこだわっているゲームは少なかった。
問題点
-
操作性が悪い。これに尽きる。
-
タイヤの接地感は皆無で、少しステアリングを切るとタイヤが滑り出してしまい、立てなおそうと逆に切ると今度は逆に…と真っ直ぐ走ることすら難しい。FF車が自然にカウンターを当てながらコーナーをドリフトで曲がる姿は、自動車好きには笑いのポイントだろう。
-
ステアリング位置も「ボタンを離すと中立に戻る」一般的なシステムではなく、フォースフィードバック前提の「自ら切った方向と逆へ操作する」タイプを採用したが、ステアリングコントローラー対応でもない(当時PS2対応の製品は存在すらしていない)のにそんな高度なことやらせなくてもいいのでは。
-
PS2では標準となったアナログ入力に対応したため、アクセル操作などは逆に入力がシビアになるといった弊害もある。
-
一方で、昨今のPS向けレースゲームにおいて当たり前になった「スティックでのステアリング・アクセル・ブレーキの操作」には非対応。こちらが可能であればまた評価は変わったのではないか。
-
一方で地道に練習さえすればちゃんと車の制御は可能。一定のスリルを感じながらレースしたい、という人には美点であるともいえる。
-
また、このレースゲームのハンドリング操作のシビアさに慣れ親しんでしまうと、他のリアル系レースゲームの挙動が軒並みぬるく感じられてしまうという場合も。そういう意味では「極端にハードなレースゲーム」ではあるが操作のシビアさが万人における欠点とは言いがたい。
-
登場する車種はカラーリングとホイールの変更やマシンセッティングが可能であるのみで、エンジン・シャシーなどへいわゆるチューニングは一切出来ない。
-
AIが若干馬鹿。特にライバルカー(自車含む)の動きに対する反応が希薄。レース開始時に盛大なクラッシュが起きる場合もある。
-
DVDを使用したゲームに比べるとボリューム不足な感じは否めない。
評価点
-
視点だけでなく、エンジン音やメーターの動きまで、車載カメラのような雰囲気がよく出ている。
-
背景の美しさは当時としては良好。『リッジレーサーV』と比較するとビビッドさに欠けるため、目立ちはしないが。
-
クラッシュすると横転することも(横転したら強制的にポーズがかかり、やり直しさせられる)。
-
横転した状態では当然操作はできないが、放置しておくと別の車が追突したはずみで起き上がり、再びレースに参加できるという冗談みたいなことが起きることも。さらにクラッシュして車が浮いた状態で別の車がぶつかってくると、なんとその車と合体してしまうことがある。2台の車が合体して走る姿はかなりシュールで、他のレースゲームではまず見られない貴重な光景(しかもリプレイの保存もできる)ので、こういった怪奇現象を目当てにプレイしてみるのも面白い。
-
…ただし、そこまでこのゲームの駄目っぷりに耐えられればの話だが。
総評
魅力的な要素は多いが、全て宝の持ち腐れ。それを諦めたプレイヤーの精神的ダメージと怒りはより大きくなった。
PS2発売当初のゲームということもあって、とにかく納期に間に合わせただけという、お粗末な作りの作品の見本のように思える。
余談
-
前述のメーカー、サーキットなどについてGT3では実現できなかったため、本作にライセンスを横取りされたのではないかとGTファンの逆恨みを買うことに。
-
ちなみに当時スクウェアはフェラーリ・ポルシェのライセンスを独占していたエレクトロニック・アーツ(EA)と合弁しており、フェラーリ・ポルシェの収録もその縁で実現した。
-
だが、『ジーコサッカー』で落としていたEAのイメージもさらに悪化することになり、のちに合弁を解消する。後年EAは『Burnout』『Need for Speed』など良質なレースゲームを生み出したので、「開発もEAに任せればよかったのではないか?」とも思うが、当時のEAが発売していたコンシューマ機向けレースゲームも大概の出来だったので、どっちにしろ期待は出来ないだろう。
-
なお、これに懲りたのかスクウェア(・エニックス)は現在に至るまでレースゲームには手を出していない。少数ながら熱心だった『レーシングラグーン』ファンの続編への希望も奪うことに。
-
現在の『グランツーリスモ』『Forza』などは本作が目指し、失敗したことを成功させつつある。本作はドライブシミュレーターの方向性を示した、早すぎた作品なのかも知れない。