「サバッシュ」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

サバッシュ - (2013/11/09 (土) 00:44:42) の編集履歴(バックアップ)


ZAVAS

【さばっしゅ】

ジャンル RPG
対応機種 PC-8801mkIISR以降、PC-9801VM/UV以降、X68000
発売元 ポプコムソフト(小学館)
開発元 グローディア
発売日 【PC88】1988年12月
定価 【PC88】7,800円

概要

  • 三遊亭圓丈氏がシナリオを手がけたRPG。氏はゲームフリークとしても知られ、その彼が本格参加している。ただの話題作りのための芸能人参加とは訳が違う。
  • 開発は後に『エメラルドドラゴン』を生み出したグローディア。
  • そして出来上がったゲームは…微妙に同人っぽい…。

ストーリー

今から数百年前。突如、ドルゲスタン大陸に魔王ダルグが現れる。ダルグは神王オルムズトに闘いを挑むが、破れ地中深くに封じ込められた。しかしやがて目覚め、その強大な魔力で、地上に魔物を解き放った。魔物は方々で暴れ、殺戮の嵐が吹き荒れる。
ある日、トマという村が魔物に襲われる。その襲撃で、村の若者マーディは二人の姉と両親を失った。やがて彼は神に復讐を誓う。それを受けた遊神プートスは彼に不死身の体を与えダルグ討伐を手助けする。そして助言を与えた、カーラマン、グレッシ、ビリンチ、サージの四つの職種の者を集めよと。マーディは復讐を胸に旅立った。

システムと特徴。

  • 正統派寄りのRPG。ただし戦闘システムは独特。
    • フィールドで町や砦、洞窟を巡り、情報を集め、宝を集め話を進めていく。まさに正統派。ただ情報は断片的なものが多い。頭を働かせないといけない場面が結構ある。
    • 戦闘システムはターン制のタクティクスタイプだが、操作そのものはなんと全自動。主人公すら自由に動かせない。プレイヤーができるのは、逃げる、目標を定める、薬を使うの三つだけ。
    • パラメーターは最小限だが、変わっているのがCTMというもの。これは主人公との親密度で、これが低いと指示に従わなかったり全力で戦おうとしない。
  • パーティの構成は自由。
    • ストーリーでは四種の職種でパーティを組むように言っているが、偏っててもかまわない。途中でメンバーを変える事もできる。しかしサージだけは、ストーリー上、最低一人は必要。
    • ただし、やっかいなのはメンバーに日当を払わないといけない事。5人揃ったパーティでは、稼ぎの半分が日当として持っていかれる。しかも日当貰っているくせにパーティの装備や薬などは、主人公の支払い。
      • 「だったらHPの回復にだけ気をつけてれば、キャンプを張らなくてもいいのでは?」と思うかもしれない。しかし、戦闘回数を重ねるとパラメーターの「AGI」が一時的に下がっていってしまい、最終的には敵に攻撃が全く当たらなくなってしまう。このため、嫌でもある程度戦ったらキャンプを張って、AGIを回復してやらねばならないのだ。
  • 稼ぎはすぐに自分のものにならない。
    • モンスターを倒しても、稼ぎは主人公のものにはならない。一時的にプールされ、キャンプの時に分配される。このキャンプ時、体力も復活する。またキャンプコマンドではいろいろと遊び要素もある。
    • 食料システムがあり、キャンプの時、人数分の食料が消費されていく。食料が足りないとキャンプによるHP回復がなくなる上、先述のCTMが大幅に下がってしまう。
  • 通貨が三種類もある。
    • 人間の間で流通しているのが「ティラ」、魔物の間では「ダルグ」、そして他に「ゴールド」がある。これらは換金が可能。そして実はダルグ、ゴールドを稼いだ時は分配する必要がなく、全て主人公のものとなる。
  • 物価が結構高い。またモンスターのパワーインフレもなかなか激しい。
    • とは言っても物価が響くのは序盤だけで、中盤以降はそうでもない。実は宝物のほとんどがお金なので、十分とはいえないものの、稼ぎに必死にならないといけないというほどでもないのだ。
  • 一風変わった会話コマンド。
    • キャラクターと話しているときに、会話コマンドを実行できる。相手に食べ物をあげたり、闘いを挑んだりできる。お遊びっぽいが、実は話を進めるため要所々で使うもの。使い所に一工夫必要。

評価点

  • 正統派らしく取っ付きやすいシステム。戦闘が自動なため、覚える事はわずか。
  • 広いフィールドに冒険要素盛りだくさんのボリューム。
    • とにかくダンジョンや砦がかなりある。実はストーリーを進める上では、回るのは半分程度でいい。だが、とにかく制覇してやろうという気になってしまう。
  • モンスターのパワーインフレと同じく、武装のインフレも結構あり、より強い武器を手に入れたときの収得感はなかなか。
  • 当時にしてはキャラ性が出ている。キャンプやホテルでのイベントや、フィールドCTMが下がるイベント、モブキャラとのかかわりなどショートイベントが結構ある。キャラクター性というには少々弱いが、それまでのRPGの形式的なキャラよりは色濃いものがある。また、モンスター側も多彩でやる気のない連中、敵である主人公を見逃す者などもおり、こちらも一辺通りではない。
  • BGMメロディーはなかなかいい。

問題点

  • クリアに時間がかかる。
    • ボリュームがあるのだから、時間がかかるのは当然だろう。が、問題なのはそれ以外の部分で膨大に時間を食うのだ。その原因の一つが歩くのが遅い事。とにかく遅い。お使いイベントで行ったり来たりするようなものは、かなり苦痛。そして次はレベル上げ。タクティクスタイプなため全自動とは言っても時間がかかる。さらにAIの頭の悪さ加減がこれに拍車をかけている。モンスターの中には足の速いものがおり、それと追っかけっこし続け戦闘がなかなか終わらないなんてのもよくある。
    • 断片的なヒントも多く、回答が思いつかないと総当り的な攻略をせざる得ない。結果時間がかかる。1980年代半ばまではその手の要素は当たり前だったが、本作の時期では少々不親切。
  • 世界観がちぐはぐ。
    • 魔物の暴力が席捲した世界。のはずなのだが、どこかのんびりした雰囲気に包まれている。魔物が跋扈しているはずのフィールドには、宝探しや嫁探し、職探しをしている暢気な人々多数。アドバイスをくれるモブキャラもいるが、それもポツリといるのではなくフィールのあちこちに。魔物の砦の中にすら、一般人が入り込んでいる。重要拠点にただのおばあさんがうろうろしているなんて、よくある光景だったりする。
    • さらに世界観を微妙にしているのが、スタッフが出張ってしまっている点。お遊び的な場所にだけならいいのだが、他にもいる。しかも重要アイテムを渡すキャラの一人だったりする。さらにモブキャラの中には、メタい事を言うキャラもチョコチョコと。
    • キャラ絵がバラバラ。CGは三人が担当している。その一人はエメラルドドラゴンのキャラ絵を担当した木村明広氏。だがそれぞれが担当のシーンで自分の絵を使っているので、同じキャラなのに絵がまるで違う。
  • 頭の弱いAI。
    • 戦闘が全自動なのだが、このAIが微妙。アルゴリズムが単純で、モンスターの多彩さについていけない。そのせいで死亡する事も度々。よく死ぬので生き返り薬は必須。戦闘に時間がかかってしまうのも、この単純なアルゴリズムのせい。
    • さらに戦闘を悪化させているのが、仲間であるはずのビリンチ。足を引っ張る所ではない、獅子身中の虫。基本パラメーターは低く、武装の種類も少ない。指示にも従わない。だがそれ以上に問題なのが、テレポートというビリンチだけの魔法。敵味方をワープさせる魔法なのだが、まず味方が不利になるようにしか使わない。そしてビリンチが使えないと気づいた時には、かなりレベルが上がってしまっているのだった…。
    • 魔法に弱いプレイキャラ達。モンスターの魔法で一番恐ろしいのは混乱の魔法。かかると味方を攻撃しだす。鍛えに鍛えた味方の攻撃は、レベルに関わらず脅威。これで死ぬ事もよくある。その混乱の魔法だが、モンスターとのレベル差関係なく、かかり易いのだ。これだけではなく非攻撃系の魔法によくかかる。これがまた戦闘時間を延ばす。
  • ステータスのうち、「AGI」の影響が非常に極端。
    • 戦闘システム上この値がある程度高くならないと、攻撃をヒットさせることがほぼできない。わずか数ポイントの差でもその影響は大きく、雲泥の差がある。このため、「全然攻撃が当たらなくて勝てない」と感じたら、攻撃が当たるようになるまで経験値を稼いでレベルを上げないと、まず戦闘に勝つことができない。しかもレベルアップに必要な経験値がかなり多目のゲームであるため、これがなかなか面倒臭くて苦痛な作業なのである。
    • サージが「SLOW」の魔法を使えるなら、敵のAGIを落とすことができるため、僅かながら勝ち目が出るが…このゲームの魔法習得システムは独特で、「SLOW」が使える期間が最終盤以外だとごく限られがち。結局、レベル上げを避けて通ることは難しい。
  • 手間がかかるだけの三種類の通貨。
    • ティラ、ダルグ、ゴールドの三種類の通貨は、使う都度それぞれ換金する事となる。この換金が手間。序盤はそうでもないが中盤以降はただの苦痛。というのも換金の額面単位が小さいのだ。後半になると何百回と換金するハメになる。
  • シナリオの印象が弱い。
    • ヒントが断片的なようにシナリオも断片的。いろんなショートイベントをこなしていると、ふとストーリーが始まったりするので、出てきた名前が誰だか忘れていることも。ただシナリオそのものは悪くない。

総評

いろんな意味で荒削りなゲームだ。十分なボリュームやAI戦闘、三遊亭圓丈氏のシナリオなどがの要素が、その荒い作りのせいで魅力が減っている。また、そのシナリオも、まだまだストーリー性やキャラクター性が強くなる途上の頃のRPGらしく、煮詰まりきれていない。世界観の構築も不十分。言ってしまうと、全体的に成長期の同人ゲームくさい雰囲気が漂っている。これを本作の独特の空気と見るか、未成熟と見るかは微妙な所。
一方で、ゲームとしては破綻しているという訳ではない。また、PCのRPGはARPGやWizardryタイプのものが中心に発展したため、正統派スタイルはそれほどでもなかった。その意味では本作はPCで遊べる正統派RPGの一つであった。

余談

  • 遊神プートスの像があちこちに立っているのだが、その顔はもろに三遊亭圓丈氏。