「スリルドライブ」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

スリルドライブ - (2020/03/27 (金) 01:49:21) の編集履歴(バックアップ)


本項では『スリルドライブシリーズ』のうち『1』『2』『3』について紹介しています。
判定は全て「良作」です。


スリルドライブ

【すりるどらいぶ】

ジャンル レースゲーム
対応機種 アーケード
販売元 コナミ
開発元 1~2 コナミ
3 ポリゴンマジック
稼動開始日 1 1998年
2 2001年
3 2005年*1
判定 良作
ポイント 交通事故をレースに
事故と隣り合わせのスリル
過激な演出も抜群
BURNOUT』の始祖


概要

1996年の『ミッドナイトラン』から始まったコナミの3Dポリゴンレースゲームの1つとして、1998年に1作目が発売された『スリルドライブ』。
「一般車両や歩行者だらけの公道や高速道路を、「交通事故」を起こさないようにひた走る」という、タイトルの通りの内容が最大の特徴である。
当たり前のことだが、筐体上部やレース開始前には「 このゲームに登場する過激な表現は全てフィクションです。実際の運転では、絶対に真似をしないでください 」という注意書きが掲げられている。

続編は『2』が2001年、『3』が2005年にリリースされており、当ページでもそれぞれ『1』、『2』、『3』と表記する。


ゲーム内容

  • 基本ルールは一般的なレースゲーム同様、自分含め4台の車でレースを行い、制限時間内にゴールを目指す。
    制限時間はチェックポイント通過である程度回復し、タイムアップになった場合はその時点でゲームオーバー*2

事故

  • 本作で最も特徴的な要素。公道を走る故、一般車両のアザーカーが多数走行している。そのアザーカーに自分の車が衝突してしまうと「事故」となり、強烈な悲鳴とともにそのシーンがリプレイされる。
    また、田んぼ・海への転落や、側壁に衝突といった自損でも事故となる。事故を起こした時のショックも大きいが、ゲーム的にもタイムロスとなるため出来る限り事故を起こさずに進めることが重要となる。
    • リプレイは「警察24時」のような重い雰囲気で救急車のサイレンも鳴る。因みに1人プレイ時のリプレイ中は時間が止まるが、マルチプレイ時は時間が減る為にゴールは1人プレイよりも難しくなっている。
    • 事故時は『1』では事故の悲惨さ*3、『2』以降は損害賠償額により「事故発生」「重大事故発生」「大惨事!」、『2』以降は更にもう一つ上の「検挙」にランク付けされる。
      • なお、バイクや警察車両との接触で事故となることはなく、CPU操作のライバル車も『1』『2』では一切事故を起こさず、逆にプレイヤーの事故に巻き込まれる事もない。
  • また、内部的にはランクシステムが採用されており、ランク上昇と共に事故が発生しやすくなる(事故と判定される基準が厳しくなる)。
    • 具体的には『いかなる事故が起きず崖にも見えない壁ができる無敵状態>大型車・電車との接触、崖からの落下や壁への衝突のみ事故>小型車との接触でも事故>壁に軽く触れただけで事故』という具合。
      逆走を一定距離行うと赤い三角形の並んだ透明な壁が行く手を阻むが、高ランクである程度以上の速度を出しているとこの透明な壁との衝突でも事故と判定される。
  • 事故発生後はBGMが変化する。また、『1』に限り、事故を起こす毎に天気が悪くなり、最終的には雷鳴まで発生するようになる。
  • 『3』では筐体にシートベルトが備え付けられ、装着しないと事故が起こった際に画面が見づらくなる*4という、安全運転を推奨するシステムが追加された。
    • それに加えてCPU操作のライバル車も事故を起こすように変更され、1人プレイ時でもライバル車に巻き込まれての事故を警戒する必要性やアドリブ性が生まれた。

損害賠償金

  • 『2』から本格導入*5された、本シリーズのもう一つの特徴的システム。アザーカーと接触した場合その度合いによって損害賠償金が加算される。
    現在の損害賠償金の総額は画面下に常時表示*6されており、特に事故を起こした場合は多額の損害賠償金が加算、事故状況によっては数百、数千万の損害賠償金になってしまうこともある*7
    • なお、警察車両や『1』『2』のライバル車は事故に巻きこむ事が不可能な為、損害賠償金が発生することはない。『3』のライバル車の事故に巻き込まれた場合も損害賠償金0円の事故となる。
    • 『3』では三角コーンや踏切の遮断桿等の器物破損、下記のドライブルスルー店舗の利用による代金も損害賠償金として計上される。

レーダーチャート

  • レース中のプレイヤーの行動は「運動神経」等の6項目で分析されており、リザルト画面で六角形のレーダーチャートとして表示、それを元に一言コメントやランク表記で運転テクニックが評価される。
    6項目の内、『1』『2』の「モラル」と『3』の「体調」のみスタート時から満点で、「モラル」は事故を起こす度に減少していくが、それ以外の5項目や「体調」はレース中の行動次第で増減する。
    • 『2』以降はレース中でも画面右上に常時表示され、各項目が変化すると「(項目名)が上昇/低下しています」、上限に達すると「(項目名)が満点になりました」とアナウンスされるようになった。
    • 『3』のみこれとは別に違反点数のシステムがあり、「暴走行為」や「一方通行違反」等で点数が引かれ、リザルトでは点数に応じて免許取り消し期間がランク付けされる。
+ 各作品毎のチャート要素 一番上から時計回りに記載
  • 『1』
    • 『運動神経』『大胆さ』『かっこよさ』『IQ』『向上心』『モラル』
  • 『2』
    • 『モラル』『向上心』『カッコ良さ』『大胆さ』『運動神経』『IQ』
  • 『3』
    • 『運動神経』『体調』『大胆さ』『カッコ良さ』『好奇心』『I.Q』

コース

  • コースはアメリカ・日本・ヨーロッパの中から選ぶ。ゲーム中でコースの難易度は明記されていないが、原則としてヨーロッパが最も難しいとされる*8
    各コースとも一本道であり、『スタートは道幅の広い都会→高速道路→崖のある山道や海沿い→道幅が狭く死角も多い都会でゴール』というルートを通る。
  • 『1』では全コースの時間帯は昼間(事故で背景の天候が悪化)であったが、『2』は走りに影響が出る状況下でのレースがメインとなった。
    • 『2』では隠しコマンド・『3』ではデフォルトで、各コース毎に異なるシチュエーションを選択可能となり、難易度選択の幅が生まれた。
      『2』はより滑りやすく・視界不良となる高難度の「陽炎」「雨」「濃霧」、更に『3』では低難度の「昼」「曇り」「朝」が選択可能。
    • 『2』以降は左右が逆となったミラーコースも隠しコマンドで選択可能。高難度のシチュエーションも組み合わせる事もできる。
+ コースの特徴一覧
コース名 特徴
アメリカ 道幅がかなり広い直線を主体に構成された比較的走りやすいハイスピードコース。走行距離も長い。
『2』でのシチュエーションは夕方で、夕日と高層ビル等の影による眩惑が非常にいやらしい。
日本 道幅はそこそこながら、直角交差点だらけの街・田んぼや踏切のある郊外とバラエティに富んだコース。
『2』でのシチュエーションは夜で、距離感やコースの先が読みにくい暗闇がプレイヤーを焦らせる。
ヨーロッパ 日本以上に狭い道に、ロータリー等の交差点だらけの街中・死角だらけの山道と悪意に満ちた難コース。
コース名は大雑把だが、『1』『3』は右側通行のフランス風・『2』は左側通行のイギリス風である。
『2』でのシチュエーションは霧がかかった日中で、その面でも他コースより見通しが悪くなっている。
  • 『3』では「チェックポイント」が「ガソリンスタンド」に変更された他、コースの各所の道路脇にドライブスルー方式の店が追加された。
    これらは店の横を通る事により効果を発揮し、損害賠償金が増える代わりに大抵の店でプレイヤーに有利な効果が働くようになっている。
+ ドライブスルーの店と効果一覧
店名 効果
修理工場 プレイヤーの車が修理される。夜間コースや車内視点でのプレイ時は特に有効。
パーツショップ プレイヤーの車のエンジン・タイヤ・ブレーキの何れかがチューンアップされる。
エンジンは最高速・タイヤはグリップ力・ブレーキオイルは制動力が向上する。
飲食店 プレイヤーのレーダーチャート内の「体調」が一定量回復する。
カーディーラー プレイヤーの車が同一クラス内の別の車に変わる。
洗車機 プレイヤーの車が事故を起こした際に付く汚れが取れる。

車両

  • 車両はレース用車両ではなく、実在する国内外の車を元ネタとした一般車両たちで構成されており、その点での外見的なリアリティもぬかりがない。
    • ハッチバック・ワゴン・セダン・クーペなどで構成された初中級者向けの『コンパクト』『スタンダード』、バス・トラックなどで構成された上級者向けの『ラージ』*9に大別される。
      前者は「加速が良くボディも小さめだが、対車両接触時に事故になりやすい」、後者は「加速も遅くボディも大きく、壁接触時に事故になりやすいが、最高速が高い」という特徴がある。
      • 中にはクレーン車・タンクローリー等の「猛スピードで走れるとは思えない車」や、隠し要素で牛・人間等の「どう考えても車とは呼べないモノ*10」まで選択できる。
    • 『2』以降は事故を起こした後はそのまま壊れた状態で走る事となり、「夜間コースでのヘッドライト故障」「車内視点にガラスの亀裂が入り見づらくなる」というデメリットが起こる。

評価点

  • レースゲームに「交通事故」を本格的に組み込んだ点
    • レースゲームではあってないが如し、あっても自車だけが壊れる「クラッシュ」に留まっていた事故の概念を一新し、レースゲームに「自車と一般車との事故」という概念を持ち込んだ点が画期的。
      非常に現実的な景観の車・コースに独特な重い雰囲気が合わさって、ゲーム上でのデメリットだけでなく「事故を起こしてはいけない」というプレイヤー自身のスリルを高めることに成功している。
  • 幅広いプレイスタイル
    • レースゲームとしては普通にプレイできる為、タイムアタック、1位を目指すといったレースゲームにつきもののプレイはもちろんの事、
      事故、損害賠償金というシステムを生かし無事故プレイ・賠償金0円プレイといったチャレンジもできる。
    • また、ランキング画面には通常のゴール時間ランキングの他に損害賠償金のワーストランキングも存在している為、「どれだけ派手な事故を起こし損害賠償金を稼ぐか」といったプレイも可能。
      • 特に仲間内でのプレイでは難易度の高さゆえうまく進むより事故が起き易いため、事故が起きると大いに盛り上がるだろう。
    • 『3』では先述の罰点の要素から、優良ドライバー(罰点0点)を目指すプレイヤーも存在する。

賛否両論点

  • 客層をかなり選んでいた『1』のシリアスな雰囲気
    • アドバタイズデモは初っ端から悲鳴・強烈な交通事故の演出から最後は対人事故が描写され、BGMも不安を煽るものばかりと、暗い雰囲気を纏っており、かなりプレイする人を選んでいた。
      但し、隠し車両の牛・人間*11やコース内のパロディ看板の存在、ゲーム外では公式サイトの雰囲気*12と笑えるシュールな要素もあり、雰囲気が極端に重くなりすぎてはいなかった。
    • 以降は続編毎にカジュアルな路線が強められていき、BGMはアクション映画の様な派手めなものが主体に、車両性能も扱いやすくなる等、恐怖描写が苦手な客層にもとっつきやすくなった。
      • それでいて『3』では隠し車両で「あひるちゃん*13」「ホバークラフト」と『1』並におバカでブッ飛んだものも用意された。

問題点

  • やや高い難易度
    • 多人数でワイワイ盛り上がる分にはあまり気にならないが、純粋なレースゲームとしてゴールを目指そうとすると難易度の壁にぶち当たる。
      「カーブで外側に膨らんだところにちょうどやってくる対向車」「赤信号で交差点を横切る」「崖の外側に柵がない」などなど、
      あの手この手で事故を誘発するようになっており、初見ではゴールすることはほぼ不可能な死に覚えゲーとしての側面が大きい。
    • また制限時間はゴールに近づくほどチェックポイントの間隔も狭まるが回復量が大きく減り、ゴール付近では3~5秒しか回復しない。
      しっかりと対策を練ればゴールは可能でゲームバランスは決して悪くはないが、死んで覚えていかないといけないのは少々厳しい。
  • うっとうしい警察
    • コース上には警察車両が待ち構えており、目の前を通過すると追いかけてくる。警察車両はこちらのことなどお構いなしにぶつけにくるのでかなり邪魔。
      前述の通り警察車両とぶつかっても事故にはならずデメリットはないが、警察車両を回避しようとして事故になることもあり、うっとうしさが募る。ある程度走れば振り切れるのが幸い。
    • 『3』では先述の通り、信号無視などの違反行為に対して罰点を取られるのだが、パトカーに接触したら、向こうからぶつかってきた場合でも「緊急車妨害」で罰点(1点)を取られる*14
      先述の優良(罰点0点)ドライバーを目指す場合は非常に厄介だが、罰点を気にしない場合はそこまで影響はないのが救いか。
  • 露骨なMT優遇
    • 『2』はATとMTで大した差が無く、『1』はMTの方が最高速度が10km/h速い程度であったが、『3』は目に見えてMTの方が速い。
      • ATよりも最高速度が20km/hくらい高いのに加え、実は最適な回転数でシフトアップすれば加速力でもATに勝てる。
      • というのも、ATではレッドゾーン寸前まで引っ張ってからシフトアップされるのだが、MTではレッドゾーンの遙か手前でシフトアップした方が高い加速力を維持出来る。その為、MTを選択するだけで数秒どころか、2回程度の事故によるタイムロスをカバー出来る程度には差が出る。

総評

レースゲームに事故・賠償金というリアルな表現がスリルと同時に一種のシュールさも醸し出し、多様なプレイスタイルの実現もあって、ゲームセンターでの人気シリーズとなった。
1人プレイならストイックにゴールを目指したり賠償金アタックをするもよし、多人数では事故を起こした様を笑うもよしとどちらも違った楽しさが味わえる。
稼働から年数が経ち、事実上の最終作である『3』でも現役稼働している店舗は非常に少ないものの、見つけたら是非1度はプレイして「スリル」を味わってみて欲しい。


余談

  • 『1』ロケテスト時は対人事故(歩行者やバイクへの接触事故)が存在していたことが『1』の公式サイトのQ&Aで明らかにされていた。
    • 賠償額も人身事故として非常に高額に設定されていたが、本稼動時には歩行者は超高速でプレイヤーたちの車を回避するようになり、バイクはランク上昇状態で接触しても決して転ばない驚異の硬さになった。
      これに関してはQ&Aの回答スタッフが『(あの要素の事は)お願い、忘れて!』と弁明しており、その名残として「アトラクトデモの最後に対人事故が画面がホワイトアウトしながら描写される」のみとなった様子。
    • 唯でさえ一般車両との接触事故という要素自体が生々しい上に、わざと事故を起こして賠償金の金額を競うという遊び方も可能な為、生身に近い状態の人間を意図的に轢けるのはさすがにまずいと判断したのだろう。
  • 2005年に『3』が出た後、2007年に『4』の開発が行われ、ロケテストまで行われていたが結果的には国内稼働は無く、海外のみ『CRAZY STREETS THRILL DRIVE』のタイトルで稼働した。
    新要素として『マリオカート』に似た「コース上に置いてあるアイテムでライバル車を攻撃するシステム」が追加されたが、内容的に深刻なコンセプト破壊があり、国内稼働しなくてよかったという意見も存在していた。
    同社からは2008年に『GTI Club supermini Festa!』、2010年に『ロードファイターズ』が稼働した為、本作の国内未稼働は「日本のACゲーム業界で『交通事故』の表現が難しくなったのでは」とも推測される事となった。
  • 本シリーズのシステムは海外でも影響を与えたらしく、2001年に発売されたイギリスのCriterion Gamesのバーンアウトシリーズ』の初期2作のシステムはかなり本シリーズに酷似したものになっていた。
    • あちらはコースが周回制・ニトロ機能があるといった細かな差異はあるが、特に第1作目は画面上のUIやチェックポイントのデザインもほぼ『1』そのまんまであった。
      それが関係したのかは不明だが、第1作目は日本でもセガから『グランドヒート』との邦題でリリースされる予定が取り消され、日本デビューはサミーから2004年に発売された第2作目となった。
    • 同シリーズは3作目から「ライバル車に故意に接触してクラッシュさせられる」等の独自進化を遂げ、本家(?)といえる『スリルドライブ』を押しのけて世界中で大ヒットを記録する事となる。