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Zill O'll - (2013/10/14 (月) 00:27:09) の編集履歴(バックアップ)


Zill O'll

【じるおーる】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 コーエー
発売日 1999年10月7日
定価 7,140円
分類 良作


主人公を選んだらもう後には引けない。
君の前にはいくつもの迷路が待ち受けているだろう。
どの道がどこに通じているか、未来のことは誰にもわからない。
運命に従うも逆らうも君次第なのだ。
数奇な運命との巡り会い、そして旅立ち
君は冒険者。自由なのだ。
ギルドの仕事、モンスターとの戦闘、好きなことをやるがいい。
選ばれし者よ。無限の可能性を持つ者よ。
たくましく成長した君をどんな将来が待ち受けているのか。
未来を掴み取るのは君だ。
主人公に魂を吹き込め



概要

  • コーエーから発売されたフリーシナリオRPG。歴史ゲーでも乙女ゲーでもないファンタジーRPGということで同社のゲームの中でも異色の存在である。
  • バイアシオン大陸という剣と魔法の正統派西洋ファンタジー世界が舞台。
  • メーカーイメージとはかけ離れたゲームジャンル、日本人受けがしづらいゲームデザインながらその奥深い世界観や魅力的なキャラクター、自由度の高いプレイスタイルにどっぷりはまり込むコアなファンが生まれた。

評価点

高い自由度

  • プレイヤーはゲーム開始時に幾つかの質問に答え、それによって主人公の性別、初期ステータス、スタート地点などを決定する。
    • スタート地点によって導入イベントや初期パーティが変わり、ものによっては一部のエンディングの条件になっていたりする。
  • 導入イベントが終わった後は基本的に主人公がどこへ行こうと自由。旅先で巻き込まれた事件に首を突っ込むも、ひたすらギルドの依頼をこなしてお金やソウルパラメータを稼ぐも、各ダンジョンに潜って宝探しやキャラ強化に没頭するも全て自由。
    • 一部のイベントはプレイヤーがこなさないと時代が進まないが、ほとんどの場合長期間放置することでも時代が動き、国や街、NPCの動きにも影響していく。
    • 時には国同士が戦争したり、貴族同士の政争に巻き込まれたり、各地で暗躍する秘密結社の陰謀を目の当たりにしたりする。
      • プレイヤーはそれに参加するのも、無視するのもよい。戦争の場合対立する双方の勢力のどちらにでも味方につくことができる。ただしとあるイベントで貴族の地位を得ている場合など、それまでプレイヤーが起こしたイベントの経緯によっては参加できる勢力が限られることはある。
  • 多くの場合戦争の大まかな結果や大きな事件などはプレイヤーの行動に関わらず勝敗があらかじめ決まっている。
    • では他のRPGなどと同じく結局は一本道なのかといえばそうではない。加担した勢力やその事件への関わり方によって人物との交流や起きるイベント、仲間やエンディングへのフラグといったものに大きく関わる。
      • 主人公が関わったことで生死が分かれる人物や、主人公との接し方次第で後々に対立・協力することになる人物も多い。
      • また好感度システムが存在し、イベントに関わるとそこに登場するNPCへの好感度が上下する。基本的には上がる方向性だが敵対することになったり悪い印象を与える選択肢を選んだ場合はもちろん下がる。
      • そのため「歴史を個人単位で動かしていく」「プレイするたびに変化する人々の生き様」という醍醐味が味わえる。
  • イベントの数は非常に多く、人物の好感度やイベント進行によるちょっとした会話の変化も行き届いている。そのためこの手のゲームに多いマンネリが少なく済んでいる。
  • エンディングも仲間だけでなくNPCを含めたほとんどのキャラクターとの個別エンディングが用意されており、中には敵キャラとのエンディングまで存在する。
  • キャラクターの成長システムはレベルの他ソウルという概念があり、これは他のゲームでいう職業やジョブのようなものである。
    • ギルドの依頼を達成するなどすると得られるソウルパラメータをBrave(勇敢さ)、Kind(優しさ)、Search(探究心)、Belief(信仰)、Wild(野生)、Cool(冷静さ)のどれかに振り分けることで新たなソウルを獲得する。
      • 例えばBraveを重点的に上げれば戦士系のソウルを得られ、Beliefを上げればヒーラー系のソウルを得られる。ただほとんどの場合新たなソウルを入手するには複数箇所にパラメータを振り分ける必要がある。
    • ソウルを獲得し、変更することでレベルアップの際のパラメータ上昇率を変化させたり、ソウルに応じたスキルを覚えられたりする。成長の自由度も高く、キャライメージから真っ向から相反する成長のさせ方も簡単にできる。
    • 武器や防具も汎用のものなら鍛冶屋でお金と錬剛石というアイテムを消費することで強化やデザインを変更することができる。更には名前まで変えられる。
      • ただし仲間キャラの武器や防具はキャラごとに特定の種類のものでないと装備し直せない。また一部を除いて専用の武器を持っているキャラは他のものを全く装備できない。
    • それに対して戦闘はごく一般的なコマンド式戦闘システム。変わったところはデフォルトで他のキャラを庇えたり、隊列変更は前衛後衛の他前衛よりも前の飛び出し位置というポジションがあったりするくらいでオーソドックス。

深みのある世界観

  • 一言で言ってしまえば剣と魔法のファンタジーだが、大陸の歴史、ダンジョンや都市の来歴、キャラクターの過去や因縁などが事細かに設定されており、重厚な世界が築き上げられている。
    • 中世ヨーロッパ史やギリシャ神話からモチーフをとっているとみられ、架空の世界ながら現実感のあるものに仕上がっている。
    • 街の背景やモブの台詞、イベントの内容からそれらの設定の深さをほのかに垣間見ることができ、プレイを進める度にプレイヤーはジルオールの世界へぐいぐいと引っ張られていく。
    • 大陸に君臨する七匹の竜、破壊神に仕える十二人の闇の円卓の騎士と彼らの守護する闇の神器、6つの属性の禁呪などプレイヤーが挑みたくなるような強大な存在が多く、それらを倒したり入手することがゲーム上のメリットに直結している。
    • 音楽はこれらの世界観やイベントを盛り立てるにふさわしい壮麗で優美なものが多い。特に強敵との戦闘曲である「激闘」は人気が高く、『無双OROCHI2』などでアレンジされている。

魅力的なキャラクターたち

  • このゲームは一部でRPGの皮を被った乙女ゲーと称されるほどキャラクター造形が深く、魅力的。
    • 好感度システムがあり、ほとんどのキャラに個別エンディングが用意されているのだからなおさらである。
    • 何十人という人物がこのゲームに登場するが、いずれも人間臭くて個性豊か、それぞれの見せ場においては名言や名エピソードを披露してくれる。
    • キャラのラインナップも豊富で男キャラでは「頼りになる先輩冒険者の兄貴」「イケメン俺様系貴族」「軽口を叩く元気な弟分」「美形のシスコン剣士」、女性キャラでは「褐色肌のボクっ娘」「幼馴染の姉御分」「ツンデレお嬢様」「クールな女将軍」「ドジっ娘魔法少女」「ロリババア」など実に多彩。
  • ただ単にキャラ付が良いだけでなく、時系列に応じてそれぞれの立ち位置や主人公に対する当たり方がどんどん変わっていくところがより一層彼らに人間味を与えている。
    • 大陸に名だたる英雄としてもてはやされプレイヤーを何度も助けてくれるが、やがて己の運命に立ち向かうために覇道を邁進し、結果対立するに至るネメアがその良い例。
    • 他にも最初は主人公に対して殺意を抱いていたキャラが絆を深めるにつれ好意を持つようになったり、非道な悪役として登場したキャラが次第に愛を芽生えさせていったりと、時代の流れや主人公からの影響がNPCの内面に反映されていく描写がしっかりなされている。
  • テキストも秀逸で、名言といって差し支えない印象深い台詞が多い一方で、時にはコミカルなやりとりも交わされる。
    • 仲間キャラへ相談をしたり装備品を外そうとしたりするときにキャラクターに応じて独自のコメントを言ってくれるところも芸が細かい。
  • 末弥純氏による美麗なキャラクターデザインも非常に人気がある。

キャラクターそれぞれの思いや策略が交錯するシナリオ

  • ジルオールのシナリオは一般的なRPGのように主人公を中心に据えた一本の大きなシナリオがあるのではなく、様々なNPCたちが複雑に絡んでくる群像劇というべきもの。必然的にイベントに応じたNPCが中心になることが多い。
  • NPCたちは悲痛な過去や重大な秘密、望みや野心、コンプレックスといった強い思いを抱いていることが多い。それらはキャラクターとの交流や時代の進行に応じて明かされ、主人公に関わっていく。
    • 初見では全く関係のないと思われるキャラ同士に深い接点や過去の因縁があったりすることも多く、それらが複雑に絡み合い、解かれていく群像劇は見ごたえ抜群。
  • 強敵に立ち向かったりNPC同士の協力の果てに大事件を解決したりする熱いイベントがある一方、家族愛や贖罪を中心に置いた感動的なイベントも数多い。また¥¥
    • 初見ではギャグキャラのようにしか見えない自称勇者ガルドランやゴブゴブ団ですら、関連イベントを進めていくとほろりと泣かせてくれる展開が待ち受けているあたり侮れない。
  • その一方で、フラグ立てやイベントに失敗したりすると死亡してしまうキャラも多いため、鬱イベントもなかなかの数。
    • とはいえ、あるキャラをやむを得ず殺してしまったキャラクターがその後のイベントで相手との生前の思い出を語るイベントといった、特定のキャラが死亡しないと発生しないイベントも豊富にあり、あえてキャラを見殺しにするといったプレイでも楽しみ方が見出せるのは流石といったところ。

快適な仕様

  • どこでもセーブができる。この仕様は場合によってはハマってしまうという欠点があるものの、このゲームの場合ボス以外の敵は必ず逃げられる他に敵から身を隠す魔法もあるためそう言った場面がほとんどない。
  • 戦闘中はボタンを押しっぱなしにすることで演出を省略できる。このため戦闘開始時のロード時間の問題を除けば戦闘は高速で終わる。
  • 仕事相談のコマンドで仲間からそのイベントでやるべきことを助言してくれる。またとあるNPCから話を聞くことで次に何をすれば時代が進むのかわかるようになっている。そのため自由度が高い内容の割に次に何をすればいいかわからないといったことも少ない。
  • パーティーから外しておいた仲間は、主人公が得た経験値やソウルパラメータ、スキルポイントに応じてそれらを貯めていくため再びパーティーに入れた時にわざわざ育てる必要がない。ただしソウルパラメータについては後述の問題点が発生するので注意。

賛否両論点

  • どうやっても死亡するキャラがいる。
    • 仲間にできないキャラの中にはシナリオの都合でどうしても死んでしまう者も多い、敵や悪役ならまだしも一部の善人も死亡回避できない。
    • 主人公が肉体の維持に必要なアイテムを奪い取ったせいで死んでしまうフレアや、高慢で敵を多く作る性格ながらも国や家族、幼馴染を案じる男だったが心の闇に付け込まれて闇の王と化してしまうレムオンなどがその一例。
      • 他にも「一方のキャラの死亡ルートを回避するには別のキャラが死亡する必要がある」といったケースも幾つかある。
      • リメイク版のインフィニットやその追加移植版のインフィニットプラスでは、そういったキャラも最後まで生き残るルートが作られている(上記の二人がまさにそれ)。逆に無印では必ず最後まで生き残っていたキャラの死亡イベントも追加されている。
  • 一部のキャラクターを生存させたり仲間にするためのフラグ立てがかなり複雑。
    • ゲームコンセプト上ほとんど全てのイベントが期間限定であるため気を抜くとフラグ立てに失敗してしまいやすい。またのんびりしているとプレイヤーの意思に反して勝手に時系列が進んでしまうこともあるためフラグ回収ができなくなってしまうこともままある。
    • その他好感度、主人公のレベル、特定キャラとの面識の有無、特定のイベントに参加したかの有無といった一般的なRPGでよく見られるフラグ条件だけでなく普通に戦えば余裕で勝てる戦闘にわざと負ける一見して関わりの薄い組み合わせの仲間同士を連れて特定の場所に行くといった攻略本などを見ないとまず気づかないことがフラグになっているイベント・エンディング条件も少ないながらも存在する。
    • 特に老将アンギルダンは、主人公が介入しないと処刑されたり戦死したりするイベントが非常に多く、生存させるためには常にフラグの世話を焼かなければならないため、要介護老人と揶揄されていたりする。
  • 好感度を上げるのがやや作業。
    • 仲間になっているキャラはパーティーに入れたまま主人公のレベルを上げていけば勝手に上がっていくのだが、問題は仲間にならないNPCの好感度を上げる場合日付を変えてから話しかけることで上昇する仕様であるため宿屋とそのNPCの場所への往復作業になりがち。更に一部のNPCがいる場所はモンスターが徘徊する場所を抜けて行かなくてはならなかったり、特定の期間でしか話しかけられなかったりする。もっとも作業が気にならなければ短時間で最高値まで上げられるのだが。

問題点

  • 戦闘前や画面の切り替えの際にロード時間が5~10秒程度挟まれるためテンポが削がれてしまっている。
  • 戦闘バランスの悪さ
    • ステータス上限が低めのためか、わずかな数値の差で強さの差が大きく出るバランスになっている。このため少しでも敵が味方より弱いと楽勝、逆に敵が味方より少し強いと大苦戦という両極端な戦いを強いられることが多い。
    • またスキルやアイテムが強力かつお手軽なものが多く、低レベルでもソウルやスキルの鍛え方、アイテムの入手によっては強力なボスに勝つことも十分可能。逆にそれら以外のスキルは全く使いどころがなかったりと性能差が大きすぎる。
      • 例えば(ボス含む)敵を高確率で石化させるアイテムや固定ダメージを与えるアイテム、1ターンに二回魔法やアイテム使用ができるスキル、ノーリスクで全体攻撃ができる技、敵の魔法を打ち消す魔法など、非常に強力なものが多い。これらをフル活用すると低レベルで闘技場のチャンピオンに勝ててしまったりする。
    • 終盤には強敵も多く、特に闇の円卓の騎士の一人であるザハクというボスは高速での連続攻撃や全回復魔法を使用することからこのゲーム屈指の壁ボスとして君臨している。
  • 固定装備の問題
    • キャラクターによっては専用の武器を持っているのだが、それらは別の武器に持ち替えることができない上に強化ができないため、ほとんどの場合最終的には強化のできる汎用装備を装備できるキャラクターの方が強くなる。
      • 特にセラという仲間は戦士系のキャラクターにもかかわらず、専用武器の月光の攻撃力が低い上に終盤のボスのほとんどが耐性を持っている闇属性がついているためかなりつらい。
  • グラフィックやモーションが貧弱
    • 特に武器デザインの見た目の悪さについてはよく言われる。設定や能力値が物凄い武器でもバットや鰹節のようにしか見えなかったりする。
    • モーションや演出は汎用のものを組み合わせてイベントを作っているのでかなりぎこちなく見える。慣れないうちは結構気になる。
    • キャラの顔グラフィックやダンジョンの背景などは頑張っている。
  • 容量の都合で削られた没イベントが非常に多い。
    • ゲームとしては十分成立しているのだが、思わせぶりな設定がある割には大したイベントが無かったり、そもそもゲーム内には全く反映されていない設定や要素がちらほらと。
    • リメイク版のインフィニットやプラスで大量に追加されたが、それでもまだ謎な点は多い。
  • パーティーから外しておいた仲間が再び復帰した時、勝手にソウルパラメータが特定のところに割り振られてしまうため、次に手に入れたいソウルに必要なところにポイントが貯まりにくい。ソウルは成長率に大きく影響するため長期間放置している仲間は終盤になるにつれて能力に差が出てきてしまう。
    • ソウルパラメータは入手した直後に即座に割り振らなければならない仕様であるのが原因。インフィニット以降はソウルパラメータがストックされ、そこからプレイヤーが好きな時に割り振る仕様に変わったためこのような問題はなくなった。
  • 複数のキャラクターとエンディングのフラグが立っている場合、明確に優先度が決まっているため見たいキャラとのエンディングが見れなくなってしまうことがある。
    • 仲間になるキャラクターの場合はそのキャラクターをラスボス戦に参加することがエンディング条件になっていることが多いためパーティーを変更すれば対策できるのだが、仲間にならないNPCとのエンディングフラグが立ってしまっている場合そのキャラとのエンディングしか見られなくなる恐れがあり、一部のキャラクターは呪い扱いされている。

総評

  • 一見コーエーらしくないゲームデザインだが、実際は歴史ゲームのノウハウを生かした時代を動かすイベント群や、乙女ゲームのセンスを生かしたキャラクター描写などコーエーらしい強みがふんだんに生かされている作品。
  • システム面では目立つ欠点があるもののシナリオやキャラクター、世界観のよさはその欠点を補って余りある。
  • そのためこのゲームはコアな人気を博し、下記の通りこれまで二回のリメイクがなされている。その他に、このゲームの過去を舞台にした『TRINITY Zill O'll Zero』も発売されている。
  • 時代とともに移り変わっていく世界や人々、そこに介入するのも関わらないのも自由。壮大なドラマや多くのキャラクターが関わる群像劇を堪能したい方に是非遊んでもらいたい一本である。

リメイク

PS2版『Zill O'll ~infinite~』

  • ハードに合わせてグラフィックや演出を強化。多くのイベント、キャラクターが追加されている。BGMやキャラデザインが一部変更された部分も。
  • 新規キャラはもちろん、既存キャラにも多数の新イベントが用意されている。上記の通り、無印では必ず死亡したキャラを助けられたり、逆に死亡イベントが追加されたキャラも。
  • 仲間になるキャラが大勢追加され、エンディング数も無印の倍に及ぶ。
  • リメイクの宿命で無印ファンからは「前の方が良かった」と言われる要素もあるが、全体的に良質なリメイクである。

PSP版『Zill O'll ~infinite Plus~

  • インフィニットをベースに新規イベントや仲間キャラなどを追加した二度目のリメイク。エンディングの選択、いつでもパーティ編成が可能と言ったシステム面の快適さの向上も図られている。しかし改良点を台無しにする問題点が多く、良い評価を得られたとは言い難い。詳細は当該記事参照。