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セプテントリオン - (2022/03/15 (火) 06:00:16) の編集履歴(バックアップ)


セプテントリオン

【せぷてんとりおん】

ジャンル アクションアドベンチャー
高解像度で見る 裏を見る
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
販売元 ヒューマン
発売・開発元 フィールド
発売日 1993年5月28日
定価 8,500円(税別)
判定 良作
ポイント 斬新な演出
制限時間はリアルで60分
ハード性能を活かしたゲーム性
権利問題ゆえに配信は絶望的
セプテントリオンシリーズ
SFC / ~Out of the blue~


概要

映画の迫力と臨場感をゲームに持たせることを目的とした、シネマティックライブシリーズの第1弾。他には『クロックタワー』が有名。
かつてヒューマンが経営していた業界初のゲーム開発専門学校「ヒューマンクリエイティヴスクール」が展開していた、在学生の優秀なアイデアを商品化する『生徒作品商品化プロジェクト』によって生まれた作品である。

プレイヤーは4人の乗客・乗員のうち1人を操作するキャラクターとして選び、海上で転覆し沈みつつある豪華客船から、他の生存者を助けつつ脱出する。

特徴

  • タイムリミットは“実際の時間で”60分。(ゲームプレイの実時間では沈没まで1時間だが、設定上では沈没まで6時間経過している)
    • 落下や火に触れるなどして操作キャラが死亡してもゲームオーバーにはならないが、タイムリミットから5分が引かれてしまう。
    • 60分経過すると船の完全な沈没が始まり……。起こっていること自体は単純なのに、操作しているキャラクターと連れている救助者の死への過程を生々しく見せつけられる演出の評価は高い。
  • あくまで一般人としての登場人物
    • 操作キャラや生存者たちは一般人にすぎないため、あまり長いこと歩き回れば疲れるし、高いところから落ちたり疲労が限界に達したり溺れたりすれば死ぬ。
      • 前述のように操作キャラは時間と引き換えに復活できるが、他の生存者は死んでしまったら復活することは無い。
      • 各乗客には個別のポイントと体力が設定されており、怪我・病気持ちであったり女性であれば、死にやすい代わりにエンディング時の評価が高い。
      • なお主人公が医者のジェフリーの時のみ怪我・病気持ちのキャラの体力が僅かに上がり、若干有利になる。
  • 定期的に船が傾いて地形が変化する。
    • 傾きの方向はランダム。またゲーム開始から30分が経過すると船内で爆発が起こり、傾きの度合いが増し、更に地形が変化しやすくなる。
      • 例えば地面が突然壁もしくは天井になり、通路を歩いていたはずが垂直落下、なんて事態が起こる。移動先が高所かつ足場が無い状態で連れていた生存者が全員落下死……というのも特定の場所かつ船の傾き次第では発生しうる。プレイを重ねることで危険な場所や通行可能な場所が分かるようになり、攻略ルートの構築ができるようになってくる。
  • 救助やその他多くのイベントは全て会話による説得で行われる。
    • プレイヤーは相手の特定の台詞に対して返答するか、無視するかを選択可能で、これにより展開が変化していく。
  • マルチエンディング
    • ベストエンディングを迎えるにはプレイヤーごとに決められた重要人物を生きたまま助け、且つ体力のない女性や子供を優先的に救助した上で脱出する事。
    • しかし重要人物を死なせてしまった場合やそもそも救助しなかった場合のエンディングも味のあるものになっているため、敢えてそちらのエンディングを狙うプレイングをする意義もある。

評価点

  • スーパーファミコンのオブジェ回転機能をゲーム性に取り入れたアイディア。
  • 要所に盛り込まれた人間ドラマ
    • 妹の介護疲れで周囲にも刺々しい態度を取る建築士キャプリス、自暴自棄の狂人一歩手前の者すら説得する豪快な牧師レドウィン、若さ故に侮られて熱くなることも多い航海士ルーク、温和な性格と職業から周りから信頼を勝ち取る医師ジェフリーと主人公ごとに救助者の反応も異なり、しかもそれぞれが違った味を持った人間ドラマとして成立している。例え救助できないキャラ相手でも会話パターンがとにかく豊富で、主人公毎に会話を発見していく楽しみがある。
  • 曲数こそアレンジ含めて12,3曲ほどだが映画さながらの緊迫したBGM。
    • ゲーム中は特定の部屋に入ったりイベントが起こらない限り1曲のみ流れ続けるが、この1曲が船が転覆して周囲が死屍累々という絶望感とそこからの脱出に臨む焦燥感を表している秀逸なもので、ずっと聴いていても飽きないようになっている。
  • 沈没船という極限状況に説得力を持たせたゲームシステムなどの点が評価され、ベストエンドに至った時の達成感は例え難い。

賛否両論点

  • ゲームとしてハードルが高い
    • パニックの再現の一環ではあるが、以下のような理由から慣れるまではゲーム自体にかなり翻弄される。
      • それに加えマップの理解も不可欠であり、そして何より船内の傾きを有利に運ぶ運が重要になる。
    • 状況説明もそこそこに、開始から少し経ったらすぐに船が転覆し、脱出を迫られる。
    • 客船の中はかなり広く、一度の探索で全てを把握するのはまず不可能。
      • 地図をくれる人はいるが、パイプラインなどの構造まではさすがに載っていない。初見ではまず、どこに行けば良いのか分からず迷い死ぬだろう。
    • 定期的なランダム地形変化のため脱出ルートが特定しづらかったり、傾きに生存者が引っかかって誘導に悪影響が出たりする。
      • この点は、タイミング次第でまさに映画でよく見る「運命の悪戯」になり得る。何のことは無い隙間を跳び越えようとしたらちょうど船が傾いて……と言う、ただのアクションゲームの経過でしか無いのに、どんなイベントよりもドラマティックな展開が生まれる。
      • 逆にマップの傾きによって通常のジャンプでは届かない箇所に行けるなど、進行を手助けする場合も多々ある。
    • 生存者を連れていくには会話による説得が必要なため、せっかく生存者を見つけてもすぐに連れて行けるわけではなく、更にゴール近くのイベントで起こる別の生存者グループとの対話では、言い負かされると仲間が全員連れて行かれ、救助不可能になってしまう。

問題点

  • 生存者の行動パターンがあまり賢くない
    • 慣れない内は思うように誘導できない。ちょっと複雑な地形にすぐに引っかかったり、溝を飛び越えさせようとしたらしくじって転落死したり……なんてザラ。
  • 思わせぶりで救助できないキャラが居る
    • ある場所にエレベーターに閉じ込められたので助けてほしいという船員2名が居るが、プレイヤーがどう足掻いてもこの2人を救助することはできない*1。更に救助できないからと言って無視していると罵倒してくる。通行するだけなら罵倒される前に部屋移動出来るので分かっていれば罵倒を聞くことは無いが……
      • この2人を救助しようとエレベーターの柵を焼き切るバーナーやすぐ隣の部屋で瀕死になっている技師を助ける方法を探したプレイヤーも居たのでは。
  • 主人公に選ばなかった場合の他の主人公キャラの扱いが雑
    • 主人公の一人であるルーク、ジェフリーは他の主人公で救助する機会があるが、何故か得点が設定されておらず救助しても0点扱いで全くメリットが無い。特にジェフリーは得点が高いキャラと同時に救助することになるので場合によってはプレイヤーにわざと始末されることも……
  • 進行に関わる重大なバグがある(特にジェフリー)
    • キャプリスで重要人物を救助せずエンディングを迎えるとBGMがバグってフリーズすることがある。
    • レドウィンがエイカーズを連れた状態でアランを説得しようとすると説得の途中でエイカーズがアランと重なるような位置に移動して会話がそれ以上進まなくなる会話ルートがある。*2
    • ジェフリーではとある部屋の死体に話しかけると不自然なメッセージが表示される、他の主人公では救助できるスミス一家との会話が途中から進行しなくなり救助不可能*3、アンジェリカの得点が他の主人公で救助した時と比べて低い、丁寧口調の男性キャラが疲労時に台詞を話さない*4などやたら不具合が多い。

総評

難しさを持つゲームシステムだが、ベストエンドに至った時の達成感の凄まじさはSFCのゲームでも随一。
プレイヤーの中にはスーファミの最高傑作として本作の名を挙げる者も少なくはない。


余談

  • 本作は1972年の海洋パニック映画『ポセイドンアドベンチャー』のオマージュであるとされる。
    • 海上で転覆した豪華客船、民間人が生存者を率いて脱出を図る、などのシチュエーションもさることながら、プレイヤーの一人であるレドウィン牧師が、映画の主人公であるスコット牧師と類似した特徴を持っていることからもそれが分かるようになっている。
    • またエンディングでは実際の映画のスタッフロールを思わせる「架空の出演俳優の紹介」が挿入される。ちなみにレドウィン牧師役俳優の名前は、スコット牧師役の俳優ジーン・ハックマン(Gene Hackman)をもじったJean Hickman。
  • 時代設定は、1912年の「タイタニック沈没事件」を意識してか1921年となっている。
  • 本作にはストーリー・設定を一新した同名、サブタイトルつきのPSリメイク版が存在する。
    • しかし、ゲーム性を無視したポリゴン化がなされた上にストーリーもグダグダになってしまい、ファンからは黒歴史と見なされている、
  • 本作の版権は、ヒューマン倒産ののち株式会社ハムスターに引き継がれたが、本作のゲームデザインを手がけた木邨圭太氏が著作権を主張しており、キナ臭い事態になっている。
    • 「ゲームセンターCX」で本作に挑戦しているが、以前から挑戦候補に挙がってたものの中々許可が下りなかったらしい。またCS放送分ではハムスターと木邨の名が並んで載っていたが、DVD収録分では木邨の名前のみが載っていた。
    • こういった事情があるため、原作の現行機への移植は絶望的かもしれない。
  • 没要素が意外と多い。没生存者1名*5と多くの没台詞が存在し、特に後者は船内の状況を生々しく実況するキャプリスやプレイヤーの生存者を連れ去ろうとする未登場の人物、一向に脱出できない主人公に悪態をつく救助者など開発初期の構想を垣間見ることができる。
    • 重要人物のエイミー、イスメイにも船底を棒で叩く通常範疇では見ることが出来ないモーションが用意されていたりする。特にイスメイのあまりにやる気の無い叩き方はある意味必見。