FRONT MISSION
【ふろんとみっしょん】
ジャンル
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ドラマチックシミュレーションRPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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24MbitROMカートリッジ
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発売元
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スクウェア
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開発元
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スクウェア ジークラフト
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発売日
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1995年2月24日
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価格
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11,400円(税抜)
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分類
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良作
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FMシリーズ 作品リンク
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ストーリー
21世紀初頭、共同体化の波が世界各地に押し寄せる。そして20年余りの時を経て、南北アメリカ大陸が統一された「ニューコンチネント合衆国(U.S.N.)」と、日本、オセアニア、東南アジア諸国による「オシアナ共同連合(O.C.U.)」という二大勢力が誕生し、世界再編に大きな影響力を持つこととなった。
その中で、アクチュエーターを用いた二脚歩行兵器「WAW(ヴァンダー・ヴァーゲン)」が登場し、性能を期待される。そして後にコスト削減のため、機体各部のパーツやコンピューターの換装を可能にした新規格が採用され、"ヴァンツァー"こと「WAP(ヴァンダー・パンツァー)」が実用化された。
2065年。1995年に太平洋上に確認され、隆起が沈静化したばかりの島「ハフマン島」にUSNとOCU両国が入植を開始。やがて豊富な地下資源を巡り、領有権の争いが始まる。
2070年から2年間続いた紛争は、島中央のメール川より東側をUSNが、西側をOCUが統治することで停戦。ハフマンは二大勢力が唯一陸上で国境線を接する緊張地帯となった。
2090年。ハフマン島でUSNとOCUの小競り合いが度々発生し、再び両国間の緊張が高まる。
そんな中、OCU陸軍のヴァンツァー乗りであるロイド・クライブ大尉は、ハフマン島のUSN領ラーカス地区に存在するUSN軍施設の極秘偵察を命じられる。部下であり婚約者でもあるカレン・ミューア少尉らと任務に当たるロイドだったが、待ち伏せしていたUSN軍機の攻撃を受け、カレン機は大破。そして工場は突如爆発し、カレンは行方不明となってしまう。
USNはこの「ラーカス事件」をOCUの策略だと主張。一方のOCUは「事件はUSNの狂言である」と反論し、同時にロイドら事件に関わったパイロット達を「作戦行動中に行方不明」と処理した。両国の主張は平行線をたどり、遂にUSNが戦端を開く。第二次ハフマン紛争の勃発である。
紛争勃発から一年後。軍を追われ、島のヴァンツァー闘技場で日々の糧を得るロイドの元に、OCU軍傭兵部隊「キャニオンクロウ」の指揮官であるオルソン大佐が現れ、ロイドを同隊の隊長にスカウトする。
カレンの消息がつかめるかもしれない、そうオルソンに諭されたロイドは依頼を承諾し、再び戦いに身を投じる決意を固める。
かくしてハフマン島の各地を転戦することになるロイド。カレンを探す戦いの中で彼は、やがてこの紛争に隠された悪夢と、無残な真実を知ることとなる……。
概要
1995年にスクウェアがジークラフトと組んで世に送り出した、それまでの同社のイメージからは想像もつかない、鉄と硝煙の臭いが立ち込めるシミュレーションRPG。
当時としてはマイナーなジャンルだったロボットもののSRPG、それも「自由にパーツを組みかえたロボット兵器による、現代世界の延長線上で描かれるリアル路線のミリタリーSRPG」という異色作だった。
緻密な設定に裏付けられた重厚な世界観、良質なドットグラフィック、天野喜孝デザインの魅力あふれるキャラクター達、下村陽子・松枝賀子による高クオリティの音楽、
そして旧大国と軍需企業の暴走を主軸に据えた、戦場の異常性を熾烈に描き出したストーリーが反響を呼び、約50万本のセールスを記録。後のシリーズの礎を築いた。
略称は「FM」「フロミ」「1ST」。
システム
ゲームはヴァンツァーのカスタマイズや情報収集、ヴァンツァー闘技場への出場が行える「インターミッション」と、敵味方のターン制シミュレーションの「ミッション」が交互に展開され、進行していく。
ミッション
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一般的な敵味方ターン制シミュレーション。マス目状のフィールドを駆けまわり、敵部隊を撃破せよ。
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ヴァンツァーはボディ、右腕、左腕、脚部の四つのパーツから構成されている。各部位にはそれぞれHPと防御力が設定されており、ボディのHPが0になると戦線離脱(ロイド機のみゲームオーバー)、腕が破壊されるとその腕に装着した武器が使用不能となり、脚部が破壊されると移動力が著しく低下する。
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当時はあまり例が無かった部位破壊システムだったが、本作のそれはうまく戦略性を高める要素として成功していた。
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脚部には二脚、戦車などのバリエーションがあり、それぞれ地形への対応力が変ってくる。うかつにミスマッチな足を選ぶと移動に苦労することになる。
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遮蔽物による射線妨害はないが、地形効果による命中率の変動要素が存在。立ち位置にも気を配ろう。
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命中率を下げるスモーク、遠距離攻撃を妨害するチャフ、動きを止めるフラッシュなど、要所要所でのアイテムの使用も重要。アイテム使用時はそこでターンが終了するため、見極めが重要となる。
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キャラクターは攻撃を仕掛けたり、防御に成功すると経験値を獲得し、レベルアップしていく。
また成長すると「スキル」を習得することが出来、戦闘を有利に運ぶことが出来る。
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格闘スキル三種(先制、スタン、連続攻撃)、射撃スキル三種(部位狙い、連射数アップ、連続攻撃)、遠距離スキル一種(部位狙い)。
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同一武器系統のスキルは併用可能で、連続攻撃は発動確率に基づいて運が良ければ何度も攻撃を叩きこめる。
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格闘連続攻撃による全部位破壊や、連射数アップしたバルカンなどは爽快感が抜群。
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これらはそれぞれ習得時はスキルレベル1であり、スキル発動時に一定確率でレベルアップして、発動率や命中率が上昇する。
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通常プレイの範囲内ではレベル2や3だが、1/2000という極低確率でレベル「3」からレベル「LAST」にレベルアップする。
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キャラクターによって得意下手な攻撃方法の傾向があり、習得できるスキル数も違うため、育成時には明確なコンセプトを立てる事が必要。
インターミッション
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町や野戦基地など、作戦の拠点で準備を整えるパート。ストーリー進行は主にこのパートで行われる。
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セットアップ:手持ちのパーツでヴァンツァーを構築し、装備の選択を行う。
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ショップ(ハンガー):ヴァンツァー用品の売買を行う。セットアップしながら購入することも可能。
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なお本作のみ、パーツ購入時に店主が「Thank You」とボイス付きで話す。水玉模様の服を着た、律義なこの親父が好きだというプレイヤーも多いとか。
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酒場:マスターや一般人から情報収集が行える。
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一般人には例外なく「気の荒い~」「うそつき~」などの呼称が付いており、妙な親近感とリアリズムを持たせている。この生活感溢れる描写はシリーズの伝統となった。
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コロシアム:ヴァンツァーでの一対一の賭け勝負が行える。
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資金を増やすだけでなく経験値も取得できるので、キャラクターの強化が可能。ただし、負ければ金をとられる。
ヴァンツァーのセットアップ
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前述の通り、ヴァンツァーはボディ、右腕、左腕、脚部の四つのパーツと、性能を補正するコンピュータ、腕部・肩部武装、バックパックから構成される。
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ボディに設定された「出力」パラメータ。各部位の重量がこの数値を超えないように組み上げる必要がある。装甲をとるか武装をとるか。
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武装の種類は豊富であり、マシンガンやミサイル、シールドはもちろん、火炎放射器や格闘用のトンファも登場。腕自体が武器となっている武器腕も存在する(武器腕は重量を削ることが出来るが、肩武器を装備できない)。
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機体カラーの指定も可能であり、バリエーションは多彩。ヒロイックな機体を組むもよし、ネタ機を組むもよし。
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ROMカセットということでロードなどはなく、ストレスフリーな機体構築が出来るのもポイント。
グラフィック・サウンド
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当時のスクウェアらしい美麗なドット絵が映える。戦闘マップは草原、基地、都市、港湾地区などと多彩。インターミッションの一枚絵(特に都市)はかなり緻密に書き込まれている。
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戦闘デモのアニメーションも良好。一部ミサイルの機動や爆発、そして超大型機体「ミール・オルレン」はなかなか凝ったものとなっている。
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天野画を良く表現したキャラの顔グラフィックも瞬逸。
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アルファベットの文字フォントは本作独自の物が使用されている。独特の曲線が特徴的なフォントは、本作の世界観の構築に一役買った。
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下村陽子・松枝賀子によるBGMは高い評価を受けている。
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勇壮な行軍、緊迫感に満ちた戦闘、どこか退廃的な街、物悲しい恋など、多彩なシチュエーションの曲が用意されており、そのいずれもが「戦争」というテーマ性をよく表現している。
シナリオ
「俺は本当のことを知ってから死にたい。それだけだ」 ――ロイド・クライブ――
そして本作を何よりも名作たらしめた要素が、「トラウマゲー」「鬱ゲー」とも評される衝撃的なストーリー展開である。
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話はOCUの反攻作戦と、それに伴うロイドのカレン捜索を軸に展開する。傭兵部隊キャニオンクロウのメンバーとその関係者、USN軍の謎の男ドリスコル、テロリストや軍需企業など様々な立場の人物が絡みあうが、あくまでキャニオンクロウ視点から語られるため、話の筋は非常にわかりやすく、誰でも楽しむことができる。
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ロイドの右腕となり、彼のカレンへの愛を知りながら思いを寄せるナタリー、実の家族の行いに苦悩するサカタ、ひたすら金を稼ごうとするキースとJ.J.の傭兵コンビ、取材のためならヴァンツァーをも駆る従軍記者フレデリック、生き別れた弟を探す少女ヤン、スポット参戦ながら圧倒的な強さを見せるUSNの強豪部隊「地獄の壁」など、魅力的なキャラクター達も物語に深みを与える。
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とりわけ敵役のドリスコルは、その冷たくも高貴な外見からは想像もつかない数々の所業によって、当時のプレイヤー達にエンディングの文字通りの「激しい怒りと深い悲しみ」を植え付けた。また、彼の愛機である大型ヴァンツァー「レイヴン」の人気も高く、後のシリーズで限定的に再登場している。
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『ロイドの「今の俺にはお前を殺すことしか考えられない!」にシンクロしたプレイヤーは多いはず。ドリスコル自身は母国のために動いていた一個人に過ぎないのだが、そんじょそこらの魔王や邪神など比べ物にならない絶望と怒りを与えてくれた。むしろトラウマになったプレイヤーも少なくない。』
(RPG大辞典より抜粋。リンク先ネタバレ注意)
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主人公ロイドの人気もシリーズでは群を抜いて高い。悲劇的な設定と寡黙で死に急ぐような雰囲気もさることながら、終始冷静に自分を見失うことなく部隊を指揮し続けた優れたリーダーとしての描写と、人格者であることがうかがえる普段の言動が人気の要因だろう。最後の最後で飛び出した上記の「今の俺には~」という主人公らしからぬ台詞も、彼を強く印象付けている。
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生命に満ちた美しい島を巡る二大勢力の醜い争い、戦火の中に葬り去られた町、理想に燃えるテロリスト達の暗闘、企業倫理を忘れた軍需企業の非人道的行為、私欲と栄光のために紛争を引き起こした黒幕達など、後半に進むにつれてストーリーは重苦しくなっていく。
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極めつけはカレンの行方であろう。軽いネタバレとなるが、最終的にカレンは「悲劇のヒロイン」となり、二人の恋は非恋に終わる。だがそのあまりにショッキングで救いのないカレンの末路は、当時のプレイヤーに絶大なインパクトを与えた。
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その直後のロイドの行動を始めとして、最終ミッションでのラスボスとの舌戦、カレンと別れるエンディングと悲劇的な展開が続く。この結末に対して一部のプレイヤー達が「リメイク等で何か救済措置が与えられないか」と嘆願したほど。
「悪夢は終わらない! またどこか別の場所で 必ず始まる!」 ――ドリスコル――
問題点・賛否両論点
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キャラクターが強くなるにつれてヌルゲー化していくゲームバランス
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序盤は対空ミサイル車両破壊や、先述の「地獄の壁」との戦いなどきついミッションが続くのだが、順当に進めると終盤、育成のコツをつかめば中盤辺りから一気にヌルゲー化する。敵軍のレベルはステージごとに固定されているため、単純なRPGのようにレベルさえ上げれば楽になってしまうのである。また、遠距離用兵器の使用制限が「弾数」以外にないため、最終的に「適当に弾を補充しながら遠距離精密砲撃を連発」する戦法でどんなシナリオも楽ちんになってしまう。
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敵のAIも単純で行動パターンも決まっているため、狙いをつけて攻撃できるDUELまたはGUIDEスキルで簡単に無力化できてしまう。
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ただし、この難易度を「初心者向け」と評価する向きもある。
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戦闘時のストレス
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敵軍の移動完了に時間がかかる、戦闘デモのアニメーションが少々とろい、デモ自体飛ばせないと、若干テンポが悪い。
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パーツの性能格差
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武器
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最大の問題はマシンガン&バルカンの一強。発射回数を増加させるSPEEDスキルと合わせれば一薙射で大きく敵機のHPを奪えるし、1発だけではないのでミスしても影響が少ない。逆に単発発射式のライフル、ショットガン、火炎放射器は後半に進むにつれどんどん影が薄くなっていく(おまけに火炎放射器は命中が、ショットガンは威力がライフルに劣っている)。ただし隠し武器のツィーゲライフルはいろいろな意味でバランスブレイカーなので除く。まあ外しさえしなければ、序盤以外は部位狙いで一発で腕や脚を破壊できる攻撃力はあるので、弱くはないが。
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バズーカはミサイルと違って何回でも遠距離攻撃できるが、命中率が低過ぎて活用しづらい。
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強い格闘武器がない。まあ武器を何も持ってない場合の格闘性能が腕部パーツにあるので、腕部パーツ自体が格闘武器とも言えるが。格闘攻撃自体が、敵ターンにこちらが先制できる可能性がある以外は、使い勝手で銃器に見劣りするという面もある。特に、部位狙いできないのは大きなデメリット。
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武器腕が使いづらい。内臓火器はけして手持ちの火器に比べて見劣りしないが肩武器が積めないので両手を武器腕にすると遠距離攻撃が出来なくなってしまう。なお、最終盤出の「テラーン」系列の腕部はこの限りではなく肩武器を積める。
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脚部は人間型の2脚中心で、それ以外のデザインが少ない。特にタイヤ(車両型)に至っては1種しかない。
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HPや防御力などよりも移動力が重要な部位であるため、使用期間では逆関節やホバーなどの出番は多い。
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「シミュレーションRPG」というジャンル上仕方のないことではあるが、後発のパーツほど性能が高いため、「自分が本当に組みたい機体で戦う」要素が少々薄い。
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最終盤の店売り機体「ゼニスV」は他の全てのヴァンツァーを軽くぶっちぎる文句なしの最強機体。純粋な性能を求めるなら他のパーツを選ぶ必要性が皆無となってしまう(ちなみに10年後を描いた続編『2nd』では主人公の初期機体となり、型落ちしているのが分かる)。
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ゼニスVより高HPなボディ、命中率は少し良い腕、格闘性能がある腕など、完全に全部位ゼニスV一択とはならない。ただし脚はゼニスVが優秀すぎるため、ゴツくてデカいボディや腕の下に小さいゼニスV脚という不恰好な姿になってしまう。
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多すぎる味方キャラクター
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シナリオを進めるにつれ多くのキャラクターを加入させられるが、中~終盤に加入するキャラはそれまで育ててきた一軍メンバーとの経験値差が大きく、あまり満足に生かせない。多くのミッションでは出撃機体数が制限されているため、中々起用し辛いのも難。
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おまけに修得できるスキル数でも冷遇気味で、「近距離3種+遠距離1種」や「格闘3種+遠距離1種」という完璧なスキル構成にできないキャラも多い。得意なはずの系統のスキルが1つしか習得できないボビー、イーヒン、ゲンツは特に悲惨。
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部隊への勧誘が任意であるキャラは総じてシナリオ的に影が薄い。任意である以上仕方ないだろうが、それなら最初からいなくてもよかったのでは…
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エンディングの後日譚。
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希望を感じさせる明るい展開ではあるのだが、「純粋な悲劇のまま終わらせたほうが良かったのでは」と、蛇足に感じるプレイヤーもいる。一方で「余りに辛すぎて泣けなかったが、これで一気に涙があふれた」などと評価するプレイヤーもいるなど、プレイヤーの好みが分かれる。
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パスワードによる対戦
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おまけのような要素だが、問題点が多い。
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各キャラのステータス画面でパスワード表示が可能で、それを入力することでプレーヤーキャラ同士の対戦が可能。セーブデータに依存しないので友達のキャラとも戦える。しかしこのパスワードがとても長い。しかも対戦するなら2キャラ分のパスワード入力が必要になる。
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1P先制なので、先制スキルを持つ格闘でなければ1P側が圧倒的に有利。しかし1Pと2Pの交代も面倒。一応、格闘同士なら先制スキルがある上に攻撃が単発なのでそれなりにマシ。
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ちなみにゲーム雑誌『Hippon Super!』でこのシステムを使って、部門分けした大会が行なわれていた。
総評
ゲームバランスの粗さが気になる作品ではあったが、それ以外の要素は概して高い評価を受け、何より異色の内容と末期に差し掛かろうとしていたSFC市場を考えれば十分なセールスを記録したこともあり、FMシリーズはナンバリングタイトル5作と、幾つかの外伝作品がリリースされるスクウェアの一部門となった。
しかし、後にPSでリリースされた『2nd』はAPシステムの導入によるゲームバランスの改善を図りながらも、プレイを放棄したくなるような膨大なロード時間が、『3rd』はロード問題を解決しシステム関連を更に洗練させたものの、前1作とは異なるロボアニメ的なシナリオ展開が、それぞれ(旧作ファンから)批判を受けることとなった。
FMシリーズは作品ごとの長所と短所がはっきりしている分、各作の信者とアンチの抗争が激しい傾向にある。とりわけ、ハフマン島という架空の島をうまく生かした完成度の高い設定と衝撃的なシナリオ、そしてテンポの良いシステムを併せ持ってデビューした本作は、ある意味、後のシリーズ作品に楔を打ち込んでしまったと言えなくもない。
現在の目で見てもプレイしごたえのある重厚な世界観を体験しない手はない。
また、後の『5 Scars of the War』は本作の第二次ハフマン紛争がストーリーの重要な部分を占めることこともあり、合わせてプレイしてみるのも一興だろう。
ぜひともハフマン島を訪れ、「戦いの歴史」の原典に触れてみてほしい。
「私? 大丈夫よ。私はこの島が好き。ここには20年前の戦争の傷を消し去ってしまうほどの生命力があるもの……」 ――カレン・ミューア――
移植版
本作はWSC、PS、DSと、シリーズで最もリメイク回数の多いタイトルである。なお、PS版はゲームアーカイブスで配信されており、PS3とPSP両方でプレイ可能。
移植版はWSC以外はタイトル末尾に『1ST』(1stではない)が追加されて区別されている。
どれも基本的には充分名作の部類には入るが、SFC版のファンからは細部の劣化が指摘されている。
ワンダースワンカラー版
メディア
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64Mb+256ksRAMカートリッジ
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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2002年7月12日
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価格
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5,200円(税抜)
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分類
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良作
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基本的にはSFC版の移植だが、以下の追加要素がある。
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戦闘演出をカットできる簡略戦闘モードの追加。
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通信ケーブルを使っての対戦モードの追加。
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ユニットの移動の際にはマップが暗転し、ワイヤーフレームで表示される。
プレイステーション版
発売・開発元
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スクウェア・エニックス
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発売日
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2003年10月23日
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価格
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3,800円(税抜)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)※ゲームアーカイブスで付与
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備考
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ゲームアーカイブス:2008年11月12日/600円
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分類
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良作
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移植に当たり、以下の様な追加・変更要素がある。
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U.S.N.編シナリオの追加
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命令違反を犯し、緊張高まるハフマン島へ左遷された元特殊部隊隊員のケビン・グリーンフィールド少尉を中心として、USN側から見た第2次ハフマン紛争の裏側と、ミステリアスな女パイロット、マリア・パレデスとケビンのほろ苦い交流が描かれる。
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あっさりしたラストに苦言を呈するプレイヤーもいるものの、全体的な評価は良好。
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人員過多なOCU編とは異なり、登場キャラを絞ったことで部隊員に愛着がわきやすくなっているのは改善点と言えるだろう。
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OCU編で語られなかった紛争勃発直後の情勢や、「地獄の壁」メンバーの新たな一面等が見られるのもポイントが高い。
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ミッション数は20を超え、マップは新規に作り起こされている。若干高難易度の調整と合わせて遊びごたえは抜群。
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装備品追加
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USN編に限り、バックパックやヴァンツァーのパーツなどが追加されている。補給や修復などの機能を持つバックパック「Riff」はその好例。
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音楽のアレンジ、新曲の追加
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SFC版で使われていた楽曲・効果音には全てアレンジ(新ハードの音質に合わせた微調整レベル)が施された。またUSN編追加に伴い、新曲が5曲追加されている。
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新曲はどれも良曲なのだが、既存曲のアレンジにはSFC版ファンの間で賛否が分かれている。
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とりわけ効果音のアレンジには「劣化した」という否定意見が大半を占めている。ただしアレンジ曲・効果音共に、PS版から入ったファンは余り気にしていないようだ。
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なお、新曲とアレンジ曲は『FRONT MISSION 4 plus 1ST ORIGINAL SOUNDTRACK』に全曲収録されている。
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その他変更点
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戦闘演出をカットできる簡略戦闘モードの追加
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グラフィックの向上(とは言いつつも一部の戦闘演出が劣化しているとの指摘も。)
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一部ゲームバランスの修正(とは言いつつも後半のヌルゲー加減はあまり変わっていない)
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ムービーの追加(数は少ない)
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SFC版にあった武器紹介デモの削除(これには「不可解だ」、というSFC版ファンの声が上がった)
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変更点とは違うが、ディスクという触体上、SFC版よりも読み込みに時間がかかるという面がある。『2』ほどではないもののコマンド選択のレスポンスも鈍く、特にヴァンツァーセットアップで顕著。
ニンテンドーDS版
メディア
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512MbitDSカード
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発売日
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2007年3月22日
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価格
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5,040円(税込)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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分類
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良作
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PS版をベースに、さらに以下のような要素が追加されている。
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新キャラクターの登場
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『4』『5 Scars of the War』の設定をフィードバックし、両作の主要人物達がチョイ役として劇中に登場する。
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チュートリアルの導入
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ハフマン島へ赴任したロイドのテストという名目で操作説明が行われる。ちなみに訓練担当は『5th』に登場するグレン。
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新パーツ・新機体の追加
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やはり後作の設定をフィードバックし、『4th』『5th』『FMO』で登場したパーツや兵器が登場。更にSFC、PS版で自機として入手できなかった大型機動兵器が操作できるようになった。
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新規イベント、ミッションの追加
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OCU編、USN編ともに新たなイベント、ミッションが追加された。
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その他変更点
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クリアデータの引継ぎや難易度選択などのやりこみ要素の追加。
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ゲームバランスの修正
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二画面やタッチパネルを使用したインターフェイスの変更
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高速戦闘モード追加(いわば早送りの様なもの。PS版と異なり戦闘デモはカットできないが、ストレスは感じないようになっている。あっという間に敵機がスクラップになるのは見ていて爽快)
一方、不満点としては以下の要素が挙げられる。
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相変わらず独特の英語フォントを使っているため、更にはDSの画面が小さいこともあってアイコンが小さくなってしまい、タッチペン操作が困難。
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もっとも使わなければいいだけの話ではある(タッチペンを使わないといけない場面はない)。無理やり対応させる必要はなかったのではないだろうか……
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音楽、効果音はPS版準拠であり、更にハードの関係から僅かに音が劣化している。やはり此方から入ったプレイヤーにはそこまで気にならないレベルではあるが。
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PS版でカットされた武器紹介ムービーは変わらず未収録。
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プレイ時間がカンスト(99:59)すると100%ゲームの進行が不可能になるという周回プレイを前提としたゲームでは致命的なバグも見つかっている。スクエニに報告すれば無償でデータの修正(プレイタイムリセット)をしてくれる。
余談
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共同開発のノウハウを欲してスクウェアが「コブラチーム」を子会社化した「ソリッド」の初仕事。
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ロマンシングサガ3に本作が元ネタのチーム「地獄の壁」が登場している。
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漫画化・小説化
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漫画「フロントミッションコミック」
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小説「フロントミッション 最前線報告」
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いろいろと省略されているがだいたいゲームに沿った内容。
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ただしラスボスは、強力なレーザー兵器の独自設定でゲームに比べて圧倒的な強さに描かれている。
設定資料集について
本作をより楽しもうとするならば、アスキーから刊行された旧「ファミコン通信」攻略本『フロントミッション公式ガイドブック 上・下巻』の一読を強くお勧めしたい。
当時多かった分冊形態の攻略本の例にもれず、上巻は(最終盤の数ミッションを除いた)各ステージ攻略と豊富なコラム、下巻には設定資料とスタッフインタビュー、最終ミッションの攻略が掲載されている。
特に下巻『Last stand in Huffman』のボリュームは尋常ではない。天野氏のキャラクター原画(モブキャラの顔グラフィックまで!)やイメージイラストに始まり、『マシーネンクリーガー』や『カルネージハート』で知られ、本作ではパブリシティ用模型の制作を担当した横山宏の23ページに渡るフォトストーリーと特別寄稿、フロントミッションの生みの親である土田俊郎と橋本真司両名のユーモラスな対談が続く。
中盤はハフマン島及びヴァンツァー開発史の設定と、最終ミッションの攻略、エンディング後の考察が掲載されている。ゲーム本編では明示されなかった設定(裏設定というより、作品の世界観を作るために考えられた構想というべきか)はミリオタの心をぎっちりとキャッチする。ちなみに、最終ボスに関しては名前が明かされているものの、その顔グラフィックは一見すると真っ黒に塗りつぶされている。しかしじっくり見てみると、それは本来のグラフィックに黒みを強くかけただけであり、うっすらと顔が浮かんでいることが分かる。暗闇から迫るようなその顔は恐怖そのものであると共に、シナリオの異常性を更に強調している。
後半は各ヴァンツァーメーカーごとのパーツ説明と、幾つかのサンプル機体が並ぶ。100には達する全パーツに設定が記されているのは圧巻。サンプル機体も統一メーカー機を組む時に役立つ。
巻末にはおまけとして、やりこみサポートのための豆知識が記されている。ここだけは純粋なゲーム雑誌風の構成となっており、心を和ませる。
作品の作風を反映してか、この頃の攻略本としては派手な装飾や過剰な煽り文句はほとんどない、実に硬派なタッチでまとめられているところもポイントが高い。
肝心の攻略内容があっさり気味なのは少々残念だが、それでも充分役には立つ。
現在は絶版だが、中古店では一冊100~400円程度で取り扱われていることが多い。薄さとは裏腹の充実の内容を、ぜひ我がものにしてほしい。
蛇足だが、同様の企画を行った攻略本がもう一つ存在する。電撃スーパーファミコン(当時)の付録としてついてきた「フロントミッション傭兵マニュアル(File1,2)」である。
こちらはFile1が設定資料集、File2が中盤までの攻略となっているが、File1の巻末には当時のパソコンショップのような「WAPの広告」が煽り文句付きで大量に掲載されていた。
こちらは雑誌付録ということもあり、オークションでもまず見かけないので、万が一見かけた時は入札を検討してはいかがだろうか。