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428 ~封鎖された渋谷で~ - (2017/01/11 (水) 16:12:55) の編集履歴(バックアップ)


428 ~封鎖された渋谷で~

【よんにーはち ふうさされたしぶやで】

ジャンル サウンドノベル



対応機種 初出:Wii
移植:プレイステーション3、プレイステーション・ポータブル
開発元
発売元【PSP・DL】
チュンソフト
発売元(他機種) 【Wii】セガ
【PS3/PSP】スパイク
発売日 【Wii】2008年12月4日
【PS3】2009年9月3日
【PSP】2009年9月17日
【PSP・DL】2011年3月9日
定価 【Wii/PS3】7,140円
【PSP】5,040円
【PSP・DL】2,000円
廉価版 【Wii】みんなのおすすめセレクション:2010年2月25日/2,800円
Spike The Best:2010年12月2日/【PS3】3,444円、【PSP】2,940円
判定 良作
ポイント 実写の渋谷を舞台にしたアクションサスペンス大作
良くも悪くも『街2』ではない
TYPE-MOONによるゲストシナリオ「カナン篇」は不評
チュンソフトサウンドノベルシリーズリンク


概要

名作と名高い『』の流れを汲む、チュンソフトのサウンドノベルゲーム第7作。脚本は同社の『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』『忌火起草』に携わっていた北島行徳。
「実写」「渋谷が舞台」「複数主人公」「ザッピング・TIPS」などの共通点が多いが、続編というわけではなくあくまで独立した作品である。
しかし小ネタとして『街』に言及している部分もある。
クリア後のボーナスシナリオが2つあり、片方に『かまいたちの夜』の我孫子武丸、もう片方に『Fate/stay night』等で有名なTYPE-MOONを起用している。

特徴・システム

5人の主人公が1つの事件をめぐる物語

  • 200X年4月28日、渋谷で起きた誘拐事件に端を発する大規模な物語に、偶然居合わせた複数の登場人物が巻き込まれていくというストーリー。プレイヤーは、5人の主人公が午前10時から午後20時まで体験した10時間の出来事をプレイする。
    • 主人公たちは、元チーマーで現在はゴミ拾いに勤しむ「遠藤亜智」、正義感の強い新米刑事「加納慎也」、製薬会社の研究所長「大沢賢治」、フリーライターの「御法川実」、そして謎の猫のきぐるみ「タマ」の5人。

システム

  • オーソドックスなサウンドノベルと同様、画面全体に横書きの文章が出て、選択肢によって物語の展開が変わるシステム。
    • 『街』同様、主人公たちの行動はお互いに影響し合う。ある主人公の選択肢によって、他の主人公が「BAD END」を迎えてしまうことがある。その時は正しい選択を選び直して物語を進める必要がある。
      • BAD ENDへ誘う落とし穴は終盤になればなるほど増え、時には3人以上の登場人物を同時に正しく動かさなければならないことも。
  • プレイ中はいつでもタイムチャートから全主人公の自由な時間まで移動が可能である。
  • 文章の中に青色で書かれた部分が出てくる。これは「Tip」と呼ばれるもので、青色で書かれた単語のより詳しい解説が見られる。
  • 物語を読み進めていくと「KEEP OUT」と表示され先に進めなくなる場面がある。その際は他の主人公のストーリーを進めて、特定の場所からKEEP OUTされているキャラクターに「JUMP」をすると先に進めるようになる。
  • 物語の流れは1時間ごとに区切られていて、5つのストーリーが全て正しい続き方(「To be Continued」に辿り着く)をすれば次の時間に進める。

評価点

ストーリー

  • 本作のメインストーリーは、誘拐事件に端を発し、やがて細菌兵器や陰謀などスケールの大きな物語へ展開していく、壮大なアクションサスペンスと呼ぶべきもの。
    • 序盤から謎や先が気になる展開が散りばめられており、早く続きを読みたいと思わせるものになっている。中盤以降もストーリーの展開は二転三転し、驚きのどんでん返しが数多くあるシナリオの評価は概ね良好。
    • スピード感を重視し、文章を出来る限り短くしたり、描写を背景写真に任せて必要最低限に留めるなどして、早く読める工夫がなされている。
    • 総じて万人受けの方向に近いストーリーになっている。そのため『街』であげられていた「シナリオに興味を惹かれない」「ノリや世界観にクセがある」といった問題が解決されている。
      • 後述のように、両作品は本質的に違いも多い。
  • 開発者によればストーリーの内容や雰囲気は、アメリカのドラマ『24 -TWENTY FOUR-』を意識したとのこと。

演出

  • 全編通して、演出面のレベルが高い。
    • 全主人公のシナリオを1時間分消化すると、ドラマさながら、次のセクションの「予告編」ムービーが挿入されるがこの評価が高い。
      • 重厚で盛り上がるメインテーマをバックに、印象的なシーンを断片的に繋ぎ合わせたハイスピードな演出は格好良く、次をプレイしたいという気持ちにさせる。
  • 実写映像も高画質で高品質。
    • 俳優の演技も印象的。これは静止画の撮影のため、今まで演技経験者では無い素人や日本語の不自由な外国人も起用できるためキャスティングの自由度の高さも影響していると思われる。特に格好良い中年~初老の男性が多い。
      • 当時12歳の謎の少女役ティギー・ウィリアムスや、「電波少年」にて「懸賞生活」にチャレンジしたなすびがアフロヘアで登場、圧倒的存在感を魅せてくれる。
      • また、ある場面には脚本担当の北島氏まで出演している。

システム

  • サウンドノベルの老舗チュンソフトだけあって、システム面やUIはレベルが高く、不備点はほとんど無い。
    • 序盤のチュートリアルが丁寧なので、サウンドノベル初心者でも安心してプレイできる。
  • Wiiリモコン片手持ちは、複雑なボタン操作を必要としないサウンドノベルと思いの外相性が良い。

『街』の小ネタ

  • 登場人物「頭山花」の名前の由来、コーヒー牛乳が好きな刑事、梶原刑事のTIPであった、自分にそっくりな美容師、伝説となっている軍人、キャベツ教団など多く隠されている。

エンディング

  • 『街』で評価が高かった、エンディングにメイキング動画が流れる演出を踏襲している。
  • これまで静止画でしか見られなかった俳優たちが、楽しそうに撮影をしたり会話している姿は、シリアスな本編とのギャップに心が温まる。

批判点・賛否両論点

TYPE-MOONによる隠しシナリオ「カナン篇」

  • 隠しシナリオの一つ「カナン篇」は『Fate/stay night』等で知られるTYPE-MOONが制作を担当し、アニメ絵に声優陣が台詞をボイスつきで読み上げるという形でシナリオが進んでいくが、これに対しては批判意見が多い。
    • 『街』でも同じく「アニメで描かれる隠しシナリオ」である「青ムシ抄」は賛否が別れる評価であり、同じ部分を受け継いでしまった。
  • 傭兵である重要キャラクターの過去(本編での大きなどんでん返しに関わる因縁の発端)を掘り下げるために「プロによる紛争地域における工作活動」を描く内容であり、舞台も渋谷ではなく異国、「バトル展開」ややたらと小難しい台詞回しなど、アニメ絵であるという見た目も合わせて、本編とあまりに雰囲気が異なる部分が問題となっている。
    • 実写ドラマを見ていたらいきなりライトノベルになっていた、というような作風の急激な変化に戸惑ったプレイヤーが多かった。
    • 本編の物語とも直接関係がない話なので、ほとんど「奈須きのこ作」のオリジナル作品を唐突に読まされているという印象になってしまう。
  • このボーナスシナリオのライターである奈須きのこは、非常にクセのある文章で知られている。無個性的で読みやすさを重視した本編と比べるとそのあまりに強い個性と読みにくさは歴然であり、拒否反応を起こすユーザーを大量に発生させた最大の要因となった。
    • 個性的な作風からファンも多い作家ではあるのだが、「奈須きのこのゲーム・小説」を手に取るのは多かれ少なかれ作者の作風と文章を知って許容できると考えている層であり、今回はそのような「覚悟」が出来ているわけではない別作品のプレイヤーに有無を言わさず見せつける形になってしまった。
    • 前述のとおり、本作はどちらかと言えば万人受けを狙った作風であり、TYPE-MOON・奈須きのこの作風とは対極に位置するとすら言える。作品に合っていない強引なコラボレーションとして批判された。
    • 翌年夏にアニメ版が放送されるなど、既にメディアミックスが決定した上での展開だったのだろう、といろいろ大人の事情も伺える。
  • シナリオの分量もかなり長い。読み終えなければ他の隠し要素が開放されないため、嫌でも読む必要がある。
    • 幸いにも、というべきか、選択肢は存在しないので、オートモードにして放置しておけば読まなくてもクリアすることは可能。
  • もう一つのボーナスシナリオの作者は『かまいたちの夜』のライターでもあるミステリー作家の我孫子武丸で、こちらは特に問題視されていない。
    • 本編と直接関係ない話なのは同じだが、こちらは文章のクセも無く、なにより短くてすぐに読み終わる。

本編の終わり方がすっきりしない

  • エンディング自体は大団円なのだが、スタッフロール後に挿入されるエピローグでは黒幕と呼べる人物が一定の成果を手に入れたことやその暗躍が続くことが示される。渋谷の人々のドラマから離れたところで戦いが続いていくことが暗示されており、せっかくの良い読後感が最後の最後で釈然としないものに変わってしまう。
    • 下記にあるように続編のアニメ展開もあるが、アニメを見てみるとこの終わり方に言及はされていない。
  • むしろこれは『街』のスタイル(渋谷で起こるドラマは永遠につづいていく「終わりがない物語」というもの)を踏襲したからではないかとも思われる*1。『街』よりも主軸のストーリーを強固にしたため、逆に「終わりがない物語」の部分が違和感として感じやすくなった。
  • また隠しシナリオに進むための難易度が相変わらず高い。

ボリュームがやや物足りない

  • 多彩なバッドエンドやボーナスシナリオ、スペシャルエピソードなどメインストーリー以外にも様々に用意はされており、一作品としてのボリュームは十分ある。
    • しかし『かまいたちの夜』などに比べると、異なるルートに分岐しない点、『街』に比べると主人公が減って一日で完結してしまう点など、いささか物足りなさを感じるプレイヤーもいた。

『街』の続編ではない

  • 本作はゲームのシステムや舞台等、『街』との共通点が非常に多いため、『街』の実質的続編と見られる・期待される事が多かった。しかし一見同じような見た目に反して、ゲームとしてのコンセプトは根底から異なる点に留意が必要である。
  • 『街』は「一見無関係な主人公たちの運命が、実は裏でつながっている」というコンセプトのオムニバスだが、『428』は「同じ1つの大きな事件を、様々な主人公たちがそれぞれの立場から奮闘して解決する」という物語である。
  • 従って本作を「10年後の『街』」としてプレイすると、前作にあった「裏で登場人物がつながっている」面白さや、同じ街を舞台にしながらまったく異なる雰囲気の物語が進行するという魅力を感じられず、不満に感じる可能性がある。
  • どちらが良いというわけではなく、コンセプト時点ではっきり異なり、むしろ『428』は『街』と異なるコンセプトの作品として方向性がブレていないという点で優れているし、単体で見れば『428』は良質なノベルゲームとして成立している。しかし『街』のファンとしてはどうしても、「『街2』がやりたかったのに『428』はちょっと違うなあ」と残念に感じてしまうのも人情である。

TIPSが減った

  • 『街』で好評だったTIPSはその数が大幅に減ってしまい、内容も面白みのあるものが減ってしまった。
    • 画像や動画が挿入されるなど進化はしている。

JUMPの演出が弱い

  • 『街』のZAPと同様、ゲームの進行に不可欠な重要なシステムだが、特に演出無く進めてしまう。
    • 全体的に演出に凝った点が評価されている作品であるだけに残念。KEEP OUTのテープをバリバリと剥がすなどの演出が見たかった。

主題歌が作中で何度も流れる

  • 上木彩矢による主題歌『世界はそれでも変わりはしない』が作中でしつこくムービーとして流される。登場人物が上木彩矢のファンである、という設定も作中で語られる。
    • 主題歌なので当然ではあるのだが、何度も流されるとゴリ押しされているように感じられ、何度流さないといけないという契約かとも邪推してしまう。曲としても別に悪くない普通のポップスなのだが、ゲームの雰囲気にピッタリあっていると言えるかどうかは微妙。
  • また『世界はそれでも変わりはしない』というタイトルや歌詞は「選択肢によってグッドエンドを導く=世界は変えられる」というノベルゲームの本質を真っ向から否定してしまっている。なぜわざわざこんなタイトルを…。
    • もちろん逆説的な表現と捉えることもできるし、「ウイルスだらけの世の中じゃ眠れない」といったゲーム内容に関連した歌詞もあるが、かなり唐突な表現なので無理やり入れたような印象を受けてしまう。

総評

サウンドノベルの集大成を作ろうという意気込みのもと製作された本作は、先が気になるしっかりしたメインシナリオ、安定したシステム面、高質な映像と演出など、どの要素も高いレベルで完成されており、好評を受けた。
Wiiの所持層に合うジャンルでは無かったのか発売当初の売上はあまり伸びなかったが、高い評価の口コミでこのジャンルとしては珍しくじわじわと売上を伸ばして行き、2010年末の時点で全機種合計で約16万本を売り上げた。
『街』との相違点は意外に多く、比較も難しいものの、ノベルゲームとして万人に勧められる良作であるのは間違いない。

その後の展開

  • 2009年、講談社BOXより本編脚本を担当した北島行徳氏による小説版が発売された。
    • 新シナリオ「迷天使編」が追加された他、登場人物の心理面の掘り下げ、場面の整理、本編で説明不足と指摘された部分の補完、主人公達の後日談などが追加されている。
    • 北島氏はこれを本作の完全版とし、「428はこれで書き切った」と自身のブログにて述べている。
  • 同年夏、スピンオフアニメ『CANAAN』放送。ちなみにチュンソフト作品初のアニメ化である。
    • ストーリーは独立しており本作を知らなくても十分楽しむことが出来る(時系列は後日談に位置する)。
      • 基本的にはボーナスシナリオ「カナン篇」をベースとしているが、独自要素が多く*2、「428本編とカナン篇」以上に雰囲気の剥離は大きい点には注意されたし。
      • また、『CANAAN』では本作のネタバレ要素が根幹にあるため、『428』をプレイするつもりであるなら先に視聴してしまうのはあまりおすすめできない。
    • 御法川をはじめ、『428』から多くのキャラクターが出演しているのも特徴。
      • 最もスピンオフ故か、一部人物の性格は本編と異なっている。
    • 漫画版、小説版の他、『428』と『CANAAN』を繋ぐ作品『CANAANスフィル』もある。
  • 同年秋、スパイクからPS3/PSP移植版が発売。本編の追加は無いが、スペシャルエピソード等が追加されている。
    • 2010年12月2日に両機種のベスト版が発売された。これに加えて2011年3月9日にPSP版のDL版が配信開始された。
  • Wii「みんなのニンテンドーチャンネル」での「おすすめランク」内において、最も取るのが難しいプラチナランクを獲得。
    • 2010年、「みんなのおすすめセレクション」の一つとして廉価版が発売。
  • 風来のシレン45にこのゲームのタイトルをもじった壷『四二鉢』が登場する。物を入れても何も起こらないが、投げると爆発する。
  • 全くの別タイトルだが『ガチトラ! ~暴れん坊教師 in High School~』には御法川の妹が登場する。兄と同じくジャーナリストであり、その兄についても作中で触れられている。
    • そもそも御法川自体、元々は『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』の登場人物である。
  • 2011年11月、チュンソフトからiOS版(iPhone/iPod Touch/iPad用アプリ)が配信。
  • 2013年3月、スパイク・チュンソフトからAndroid版が配信。

余談

  • ファミ通クロスレビューで40点満点を得たことで話題になった。
    • 開発にファミ通編集部が関わっているため、多少下駄を履かせられていた可能性もある。
    • 満点を取ったことで逆にユーザーの期待感が下がった*3節も。
  • 発売日となる2008年12月には本作の舞台である渋谷の各地で大々的にプロモーションを行い、多くの話題を呼んだ。
    • 渋谷駅西口をはじめ道玄坂やセンター街などの各所大看板、TSUTAYA SHIBUYAのエスカレーター占拠、渋谷109前で主題歌を歌う上木彩矢の野外ライブや作中で使用された建物で抽選会を行うなど、正に渋谷をジャックするほどの規模であった。
  • 「日本ゲーム大賞2008」でフューチャー部門、「日本ゲーム大賞2009」で優秀賞を受賞。
  • 当初は『428(仮)』というタイトルで発表されていた為、あの『四八(仮)?』の続編か?などとネタ扱いされていた。
    • これに関しては開発者も「去年某社さんから発売された『四八(仮)』の2ではありませんよ。お間違えの無いように」と念を押していた。そりゃ一緒にされたくないだろう…
  • タレントの伊集院光も本作を評価するユーザーのひとりであり、ラジオやファミ通の連載で何度も激賞していた。