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グランツーリスモ - (2021/11/04 (木) 13:42:20) の編集履歴(バックアップ)
GRAN TURISMO
【ぐらんつーりすも】
ジャンル
リアルドライビングシミュレーター
対応機種
プレイステーション
メディア
CD-ROM 1枚
発売元
ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元
ソニー・コンピュータエンタテインメント ポリフォニー・デジタル サイバーヘッド
発売日
1997年12月23日
定価
5,800円(税抜)
判定
良作
ポイント
リアルなカーライフ 精巧な物理エンジン 今作は架空コースのみ 一作目ゆえ不親切気味 極悪なライセンス
グランツーリスモシリーズリンク
概要
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SEC)が1997年12月に発売した3Dレースゲーム。通称は『GT』。
収録車両は100車種146グレード。パッケージに使用された車両は「トヨタ スープラ(A80)」と「日産 スカイライン GT-R(R33)」。
開発は以前『モータートゥーン・グランプリ』を手掛けた山内一典氏率いる、SCE内部の「Poly's Entertainment」チーム(現ポリフォニー・デジタル)が担当。
山内氏は次世代ゲーム機で様々な新機軸のゲームが出現する中、当時のレースゲームの「『ゲーム』として「デフォルメしたレース」を表現する」という立場に不満を持ち、
徹底してモータースポーツの再現を追求したリアル志向のレースゲーム「ドライビングシミュレーター」として、5年もの歳月をかけて本作を誕生させた。
「リアリティ」を追求したレースゲームは本作が初めてという訳ではないが、当時としては珍しい環境マッピングの搭載、専用物理エンジンによる非常にリアルなマシンの挙動、
多数の実在車種を登場させた本作は国内だけでも250万本、世界的には1000万本以上の大ヒットを記録し、「GTの登場がレースゲームの在り方を一変させた」とも言われるまでの作品となった。
特徴・評価点
「リアル」な挙動
独自開発された物理エンジンにより、クルマの挙動は現実の物理現象を忠実に再現している。
従来のレースゲームでは、事前に車種毎のプログラムを組んで疑似的に車両の挙動を再現していたが、本作はそれ以上、97年当時において最も「リアルな挙動」を獲得する事に成功した。
同ハードで発売されたナムコの『リッジレーサー 』は大ジャンプや無茶なドリフト等、リアリティ無視の爽快感がウリの作品だったが、本作ではそんな芸当はできない。 アクセル全開でコーナー進入は当然不可能であり、更にブレーキやアクセル操作も雑な操作ではタイヤのグリップを狂わせてしまいコースアウト、場合によってはスピンしてしまう。
本作の登場は所謂PCゲームのみの存在であった「リアル系レースゲーム」というジャンルを家庭用ゲーム機たるPlaystation系列で確立する事となり、後発の作品群にも少なからず影響を与える事となった。
「リアル」のクルマ
登場するクルマは全て実在するもので、その数なんと100種以上。「実車を操作できる」という事も当時は珍しかったのだが、その圧倒的な収録数はユーザーの度肝を抜いた。 本作以前にも「それっぽい車」が出るゲームはあった。しかし本作は「トヨタ・日産・ホンダ・マツダ・三菱自動車・富士重工・ゼネラルモーターズ・クライスラー・アストンマーティン・TVR」と正式に契約、ゲーム制作面でも連携している。
厳密にはこれらのメーカー直属のチューニングメーカーや、タイヤメーカーのブリヂストン、オイルメーカーのカストロールも協力している。
前述した専用物理エンジンにクルマの寸法・重量等の性能を入力すれば、それぞれのデータ毎にほぼ現実に近い挙動が簡単に再現できる仕様になっており、収録車数増加に一役買った。 クルマのセッティング内容も多岐に渡り、ギア比やブレーキの利き方、サスペンション等数値による細かい設定が可能。空力等、素人目には分からない部分の違いも再現されている。
クルマのモデリングはもちろん、エンジン音等も緻密な取材によって「グレード・年式の差」も再現されており、ほぼ全車に全4ページの解説テキストも用意されている。
特にTVRは当時、他のレースゲームには殆ど登場しておらず、グリフィスに至ってはゲーム初登場であった。
国産車種中心のラインナップとなっているが、作品の大ヒットに伴い「この作品で日本国内専売のスポーツカーは世界的な知名度を上げた」とまで言われた。
一部レースを優勝した際に入手できるプライズカーは、非純正のカラー・ホイール・エアロパーツを纏ったものがあるが、一部は当時のチューンドカーがモデルとなっている。
厳密な意味では「架空車」と言えるクルマも幾つか存在しており、そうしたマシンの大半には解説テキストが用意されていない。
市販車をレースカーに改造する特別チューニング「レーシングモディファイ」(以下RM)もその一つだが、そのデザインの大半には他にモデル・元ネタが存在する。
例えば、国産車種は全日本GT選手権・全日本ツーリングカー選手権(JTCC)・N1耐久(現在のスーパー耐久)・メーカー系ワンメイクレース・WRC・国内ラリーの参戦車、 海外車種はル・マン24時間耐久レース等のFIA-GT(BPR-GT含む)・SCCA・全日本GT選手権の参戦車が主なモデルとなっている。
現在でも有名な車両から、知っている人は思わず声を上げるであろうマニアックな車両もあり、相当な拘りを感じ取れる部分である。
スポーツカーをル・マン24時間耐久レースのGT1規定に沿った体裁で改造した「LMエディション」もある。
なお、これらの車両は「レーシングカー」を示すRマークが付き、一部のレース(レーシングスペシャルモデル不可のイベント)に参加できなくなる。
「リアル」を求めた映像
美術面でもハード性能をフルに引き出してリアリティが追求されており、中でも当時まだ珍しかった「環境マッピング技術」が特徴的。
「環境マッピング」とは、車体に光沢を付け、表面には用意された周囲の背景反射や影を映り込ませる技術。これによって視覚的にも現実感がより伝わりやすくなっている。 -11種あるコースは山間部や森林を切り開いたような様々な本格サーキットコースから、高速道路と周辺道路をサーキットとしたテクニカルコースも用意されている。
景観もPS1のゲームにしては非常にリアルで、コーナー距離標識や縁石は勿論、観客席・トンネル・橋・ビル・スポンサー看板等の巨大建造物、木々や街頭も描写されている。
下記の「クイックアーケード」をクリアすると、「GT HIFI」なる隠しモードが出現する。
オブジェクトを大量削減した特定の3コースのタイムトライアルでしか走れないが、FPSが通常の30fpsから倍の60fpsに向上するという、据え置き機では珍しいベンチマーク的なモードである。
楽しくシビアなカーライフを体感
ゲームモードは「クイックアーケード」と今シリーズのメインモードである「グランツーリスモ」の2つ。
「クイックアーケード 」は予め用意されたクルマと8つのコース(デフォルト4+隠し4)を選び、手軽にカーレースを楽しむモード。
海外車種は初期選択できないが、初期開放の4コースで優勝すると開放される隠し4コースで優勝すると、それぞれ開放されていく。
「グランツーリスモ 」は一人のレーサーとして、クルマ購入・モータースポーツライセンス取得から始まり、最終的に「グランツーリスモ ワールドカップ」優勝を目指すモード。
クルマを購入しライセンスを取得→レースで勝利して賞金やプレゼントカーを獲得→獲得賞金でクルマの売買・セットアップ・チューンを行っていく…という循環が基本システムだが、 クルマの売買では「お金が無い序盤は中古車を買った方が得」「クルマの売却時、クルマと同じメーカーのディーラーに持ち込むと買い取り価格が上乗せされる」等の妙にリアルな描写も再現されている。
ライセンス試験のスタート前には、クルマの基本動作・駆動方式の違い・レースに必要な技術が説明される。これらを一つずつ習得しないと本作を十二分に楽しむ事はできないだろう。
このモードのレースでは「本戦」の前にコースを1周し、ゴールしたタイムで本戦でのグリッド順を決める「予選」が行われる。 予選の参加は自由で、予選を飛ばしていきなり本戦に出場する事も可能だが、その場合は当然ながら最下位スタートとなる。
これらの「プレイヤーがゲームを楽しみながら、現実でも通じうるドライビング技術を段階的に学べる」というゲームデザインは以降のシリーズでも徹底される 事となる。
非常に評価の高いBGM
オープニング・エンディング・レース・オプションBGMの作曲は、F1中継の「TRUTH」でお馴染みの「T-SQUARE」の安藤まさひろ氏が担当。
OP曲の『Moon Over The Castle』はシンセサイザーから静かに始まり、オーケストラとロックが組み合わさった熱い曲調となる名曲で、それにCG&ゲーム映像を合わせた構成は特に印象に残るだろう。 全5曲のレースBGMもロックやフュージョンを押し出した激しめなものがメインだが、サックスをメインとした落ち着いた曲の『Freedom To Win』もあり、その何れもが高く評価されている。
『Moon Over The Castle』はシリーズのテーマソングとなり、作品毎にアレンジがなされたものが日本版のオープニング曲として『5 』まで使用され続けた。
オプションを除く全メニューBGM作曲はジャズ作曲をメインとする大平勇氏が担当。落ち着いたもの・ピアノを強調した陽気なもの・ロック調のものと、その場面にピッタリとマッチしたBGMとなっている。
特筆すべきが、ディーラーにて各社それぞれで専用のBGMが使用されている点で、どれも各社の特徴を捉えた良質な物となっている。
これらのBGMは後のシリーズでも再アレンジ・流用という形で登場し続けている。 特に2名が本格的な作曲を行った最後の作品である『4 』は、新曲の他に今作のBGMのアレンジ版が新録されている。
問題点
とにかく「リアリティ」を追い求めた結果、あらゆる面で難易度が高い。
操作・レース・カスタマイズ・セッティング・ライセンス…いずれにおいてもハードルは相応に高い。レースゲーム初心者は購入に覚悟が必要。
特にライセンス試験の難易度は、誕生から20年以上が経過した今なお「シリーズトップの難しさ」と悪名高く、「最低ランクのブロンズを取るだけでも苦行」とさえ言われるレベルである。 国内B級3つ目が初心者の心をへし折り、中級者は国内A級の3つ目で行き詰まり、国際A級の7つ目は数多のプレイヤーに絶望を与えた。
セッティングも「コーナー進入で曲がらない時はフロントの車高を下げる、コーナー出口で曲がらない時はリアのスプリングレートを上げる」等の説明が一切無い 。 ダンパーの減衰力を上げすぎるとチャタリングが発生するのだが、これに気づかないとスピードは乗らないし車は安定しないと最悪な状況になる。 最軽量クラスの2車に至っては「10段階のうち3以上」でチャタリングしだすので、もはやダンパーの調整は出来ないに等しい。
挙動というか物理エンジンの煮詰めはまだまだ発展途上で、全体的にオーバーステア、かつ滑らせても横ではなく前に進むという傾向が強い。 MRのNSXのチューニングを全て行うと「300キロ前後でコーナー進入、アクセルオフ&ドリフトで曲がる」等、結果的には遅いながらもそれこそ『リッジレーサー』と見間違う走りも可能。
ついでに言えばクルマの売却手順も「マイホームのガレージで売却したいクルマに乗り換え、ディーラーまで持ち込む」とリアルではあるが些か煩わしい。 買取価格も「自社車の買取は2割増し」と、微妙にリアルな設定があったりする。
続編以降は乗車の是非に関わらず、ガレージ画面から一定の値段で売却できる様に簡易化されている。
プレゼントカーの売値が市販車であろうがレース用車両であろうが一律100万Cr.(基本的にその車のディーラーで売るので実質120万Cr.)で固定。
1レースの賞金が少ない序盤はともかく、賞金とグランプリ内のレース回数が増加する中盤以降の金策としてはやや心もとない印象を受けがち。 続編以降は車両毎に売値が設定されるように改善され、レース用車両は軒並み高額で売却できるようになっている。
「実車」に拘っている為か、ライセンス許可が下りた自動車会社のスポーティな車種ばかりが登場している。
『2 』以降は大半のメーカーで一般車も収録され「『現実の愛車』と『夢の愛車』を一緒に楽しめる」と話題を博す事となるが、第1作目である今作の時点ではそれがかなり希薄である。 明らかな大衆車かつスポーツグレード自体の設定が無い車は「マツダ デミオ」くらいしかなく、続編以降と比べると明らかに少ない。
参加メーカーの少なさも、続編毎に用品系スポンサーともに数が増えていき、『5』では遂にスーパーカーメーカーが大量収録されるまでになった。
サーキットは全て架空のものであり、その点でのリアリティは薄い。
今作時点では一部コースのレイアウトが実在するものに似ている程度である。この点は『2』でリアルサーキットが1つ登場、『4』以降で大量に追加されていく事となる。
山内氏は『4』にて「(当時は)シミュレーションエンジンの再現度の関係で、タイムが現実と同じぐらいにならないから入れたくなかった 」と、これまた拘りを感じさせる理由を明かしている。
ゲーム開始時のオートロード機能が無いため、注意しないとロード前のデータで上書きしてしまう危険がある。
グランツーリスモモードとアーケードモードのセーブデータが連動しており、両方共いっぺんにせーブロードされる仕様もこの現象を起こしやすい。 例えば初日はアーケード、次の日にグランツーリスモをプレーした際、2日目に一度ロードしないでセーブした場合、アーケードのデータはまっさらな物が上書きされてしまう。
この点は『2』でオートロード機能が付いて解決した。
CPU車両はいかなる状況でも、コースの決められたライン上を走行するように調整されている。
これの何が問題かと言えば、例えプレイヤーのクルマが車線上にいようと必ずラインを厳守して走行する為、後ろからドカドカ体当たりしてくるため、非常に鬱陶しい。 これは当時のレースゲームでは頻発していた問題であり、別作品では「イン側後方のCPU車両に自車のリアサイドを押され、強制的にスピンをさせられる」等が散見される。
一部でバグがある。
一部の四輪駆動車の駆動形式が前輪駆動とミスプログラムされている。
具体的には「三菱 ランサーエボリューション」「トヨタ セリカ GT-FOUR」「日産 パルサーGTi-R」等のクルマがこれに該当する。
「ベースとなったクルマの駆動方式に影響されている」「データ製作時にベース車両から駆動方式の変更を忘れた」等様々な説があるが、ベースモデルが未収録の車までバグがある理由は謎である。
これに関連しているのか、日本版においては四輪駆動車を壁に密着させて横滑りさせると途方も無いスピードが出るバグがある。 1998年に出た海外版では修正されているが、体験版においては同様の事態が起こっていた。
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参考画像及び参考動画
本家
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海外版の体験版
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総評
「記念すべき第1作目」だけでは済まない、まさに「リアル系レースゲームの先駆け」「日本を代表するゲームの一つ」としてゲーム史に名を残す名作。
クルマ好きのスタッフ・各メーカー・現役レーサーが協力し、徹底して作り上げられたリアリティのある内容は他のゲームの追随を許さず、まさに一種の仮想現実を作り出し、
クルマや背景の美しさにはクルマ好きでない人々も驚愕、ゲーム部分でもモータースポーツの面白さを伝えた一方、現実での「難しさ」までも再現した点は賛否両論であった。
しかしそのクオリティや内容は、20年を経た現在から見れば粗はあるがそれでも高く評価できるもので、クルマとゲームが好きならば一度はプレイしてみて欲しい良作である。
余談
テレビCMも非常に力が入っており、数パターンの全く異なるCMが製作された。内容も当時のSCEらしい風変わりで妙にインパクトがある、かつ色々な意味で豪華なものが多かった。
内容は第1弾が「サラリーマンの何気ない日常をクルマの操作に見立て、エンジン音が流れて驚愕する」、第2弾が「何故かサーキットの道路ど真ん中に立っている一軒家の玄関に大量の実車が突っ込む」、 第3弾が「制作に協力した国産自動車会社5社の本物の営業担当者が集合。それぞれ自社のクルマ(実車)を売り込み、GTでもそのクルマで遊ぶ」というもので、第3弾は特に印象に残りやすく、有名でもあろう。
以降のシリーズのCMでも、実車とゲーム画面を組み合わせた派手なものが主流となっている。
「シルエイティ」の存在について。
本作や『2』における「シルエイティ」は、「日産180SXに同社のS13シルビアのフロントを合体させた改造車」であるため、ゲーム上の扱い的にはノーマルカーながら日産ディーラーには登場しない。 当時はプレゼントカーを筆頭に「車種説明が一切無い車種」があり、このクルマもその対象だったため、漫画「頭文字D」やOPTIONやベストモータリングなどのチューニング車雑誌を読み漁っていた人でなければ分かりにくい謎の車種であった。
なお、本作発売後に愛知県のチューナーが製作した車両を日産に委託販売する形で「新車の日産・シルエイティ」が500台限定で販売された。改造車ながらちゃんと日産ディーラーで各種サービスを受ける事が可能だった。
本シリーズにおいても『4』以降の作品では、こちらの新車仕様が「日産 シルエイティ '98」として収録されている。
「コンセプトカー」
ダッジのディーラーに展示されていながらも買えないという謎の車。 実際にはノーマルカーは国内B級ライセンスオールゴールドでしか入手不可、これに加え「英米対抗スポーツカー選手権」のプレゼントカーでレーシングモディファイ版が入手可能。
直球ど真ん中の名称だが理由があり、最初は「カッパーヘッド」という名前で各種ショーに展示されていたが、この名前が既に商標登録されていたのが発覚、仕方なく「コンセプトカー」に変更された模様。 ゲーム内の車種説明の方には「カッパーヘッド」の名前で出ているため、やはり混乱しやすいポイントとなっている。
なお市販予定はあったようだが断念され、名前通りに「コンセプトカー」止まりとなっている。
1998年に発売された海外版は上記のバグ修正のほか、様々な変更がなされている。
一番目立つ点は全BGMの変更。メニュー系は海外のSCEスタッフによるデジタルBGM、レースBGMは各アーティストのライセンス曲となっている。
他にもUIの全体的な手直し、ホンダ車が海外ブランドの「アキュラ」メインに、「アーケード」限定で「1967年式 シボレー コルベット」「1998年式 マツダ ロードスター」が追加されている。