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Ever17 -the out of infinity-
【えばーせぶんてぃーん じ あうと おぶ いんふぃにてぃ】
ジャンル
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恋愛アドベンチャー
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対応機種
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ドリームキャスト、プレイステーション2
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開発・発売元
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KID
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販売委託
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エレクトロニック・アーツ・スクウェア
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発売日
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2002年8月29日
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備考
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Windows98~XP、プレイステーション・ポータブルに移植 (PSP版はサイバーフロントより発売) Win版はMagino DriveでDL販売もされている (価格は1598円(税込))
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分類
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良作
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infinityシリーズリンク
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概要
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アドベンチャーゲーム「infinity」シリーズの第2作。ただし時系列といくつかの単語の繋がりはあるが直接的な関係はない。
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事故により孤立した海中テーマパーク「LeMU」を舞台に、逃げ遅れ取り残された者達の人間模様を描く。
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プレイヤーはLeMUに遊びに来ていた青年「倉成武」か、LeMUに辿り着いた際に記憶を無くした「少年」のどちらかを選び、それぞれの視点で話を進めていく。攻略できるキャラは武編二人、少年編二人、四人クリア後に解禁されるキャラの計五人。
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本作は
未プレイの者に対してネタバレ回避が広く推奨される
傾向にある。以下はできる限りネタバレに配慮しつつ記述するが、「どのような良作か?」という部分を説明するため、最低限の内容に触れることに留意されたし。
長所
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本作の最大の評価点は、何と言ってもそのシナリオにある。
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SFをベースに、哲学、オカルト、伝奇的なテイストをプラス。当時のコンシューマ用タイトルの中では比較的珍しく、特にSF要素は後に続く同系統作の先駆けとなった。
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SF描写は前作からあったが、その路線を決定づけたのは本作からと言ってもいい。
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前述の通り最初に選べるルートは四つあるのだが、(若干のバラつきはあるものの)押し並べて評価は高い。特に武編の二つは、どれも考えさせられる内容となっている。しかし、本当の肝はこの四つのルートは単体で見ても十分なクオリティであるのに加えて、その全てが後に解禁される最終ルートの伏線となっていることにある。
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そして始まる最終ルートは正に圧巻の一言である。それまで綿密に張り巡らされた伏線がこのルートで次々と明かされ、一つ謎が明かされればそれがまた次の謎を呼ぶという具合に、物語は怒涛の勢いで展開される。時に繊細にパズルを組み立てるように、時に力技で強引にねじ伏せるように、エンディングまで一気にプレイヤーを連れていく。物語がどこにたどり着くのか、それを是非とも確かめてほしい。
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本作の仕掛けはミステリで言うところの叙述トリックと呼ばれるものにあたる。これ自体は比較的メジャーな手法であるのだが、特筆すべきはこの手法を「ゲーム」という画と音で構成され、プレイヤーの能動的な介入を許すメディアに最適化させた事にある。経験者が口を揃えて「ゲームだからこそ成立できたゲーム」と語る所以である。騙される快感がここにある。
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なお、前作に当たる「Never7」をプレイしていると、ミスリードされそうになったりにやりとなる場面もある。
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その為クリアしたプレイヤーから「記憶を無くしてもう一度最初からプレイしたい」「まだプレイしていない人が羨ましい」などと言わしめた。
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この当時のKIDゲーに顕著だったアダルト描写は本作でも健在。テキストのみだが、相変わらずコンシューマーの限界に挑戦している。しかもこの部分がシナリオ上絶対不可欠となっていたりする。
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いわゆる「美少女ゲーム」と呼ばれるジャンルであはあるが、実のところ男女間の恋愛要素は薄目。むしろ家族間の情愛こそが色濃く、幾つもの違った形の家族の絆が描かれている。
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それぞれのキャラクターも個性的。皆が皆背負ったものがあり、嫌味のない造形で親しみを覚えやすい。声をあてる声優も、主人公演じる保志総一郎始め、浅川悠、植田佳奈、笠原弘子ら有名どころを取り揃えていて力が入っている。
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キッド伝統の充実したオプションも当然完備している。
問題点
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本作は上述の通り最終シナリオが肝なのだが、そこまでのシナリオが非常に冗長。
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キャッチコピーなどでは本作を海中の建築物に閉じ込められる「パニック物」として紹介しているが、本当に危機的状況に陥るのは各シナリオの終盤のみ。特に中盤は中だるみが延々と続き、緊張感に著しく欠ける。
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この中盤を乗り切れるか否かで作品の評価が大きく分かれる傾向にあり、これに耐え切れず挫折してしまった者も少なくない。
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超科学設定を嫌う人にとっては、むしろ最終シナリオが受け付けられない可能性がある。
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テキスト・イラスト・設定などに粗があり、致命的なミス・矛盾や、明らかに(オーバーテクノロジーを差し引いても物理的に)間違った・無理のある描写などが幾つか存在している。また、明らかに投げられっぱなしの伏線も存在する。
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特に致命的なものに関してはWindows版以降で概ね修正されているが、中にはシナリオの根幹を成しているため変更不可能で、結局最後まで残ってしまったものもある。
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ただし、そう言った部分も含め発売当時の公式サイトでは様々な憶測や検証で盛り上がったことは特筆に値するだろう。
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少なくとも1周目は「倉成武」を主人公に選ぶことを前提にシナリオを作っている節があり、先に「少年」視点で話を進めてしまうと、どうしてもシナリオの理解に支障が生じてしまう(プレイヤーが気付くべき違和感に気付けない、など)。
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なお、最適のプレイ順序は【武グッドED1→武グッドED2(→この時点までに武バッドED)→少年グッドED1→少年グッドED2→最終シナリオ】(ヒロインで言えばOPムービーに登場する順)とされている。
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本作はSFアドベンチャーとしての側面が強いが、恋愛アドベンチャーの体裁をとっているため、所謂「ギャルゲー」が苦手な人には敬遠されがち。
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これを受けてか、PSP版ではジャンルが「ミステリアスアドベンチャー」に変更されている。
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かといって「恋愛ADVとして」期待していた場合は上記の通り物足りなく、それどころか本作のシナリオ展開や結末・真相などは、あらゆる要素が理不尽だらけの問題作と化す。素直にSFなり、「ミステリアスADV」なりとして受け入れよう。
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中盤の中だるみ期間も、典型的かつ必要以上にコテコテなギャルゲーのノリ。見た目が受け入れられない人は、素直に回避しておいた方が賢明かもしれない。
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真ヒロイン(?)がよりにもよって凄まじい電波。
その後の展開
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以上の点から、ソフト1本あたり数時間程度しか割けないことが多いゲーム雑誌の発売前レビューにおいて、本作の評価は軒並み低かった。しかし発売後に評価が高まったため、ゲーム雑誌「ドリマガ」では発売前のレビュワー全員が最後までプレイし、改めてレビューを掲載するという異例の事態になった。
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当初発売されたのはDC版とPS2版のみだが、後にCG・イベントの追加や一部ミスの修正などを施した「Premium Edition」がWindows用に発売され、更にこれがDCとPS2に逆移植された(PS2版PEは廉価版も発売された)。また、その後PSP版にも移植された。
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携帯機とアドベンチャーゲームの相性が良く、また作中専門用語の解説が追加されたため、PSP版は気軽にプレイし易い。しかしOPとEDが曲も含めて新規のものに変更されており、これに関しては賛否両論(ただし、最後までクリア済みであれば従来のOP・EDも視聴可能)。
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余談だが「Premium Edition」のジャケットには本作にとって致命的とも言えるネタバレ要素が含まれている。これはPSP版のジャケットでは改善されている。
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後にKID倒産に伴い、本作に関わる版権がKIDからサイバーフロントに譲渡された。
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…のだが、そのサイバーフロントも2013年12月をもって解散してしまった。
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2004年10月にサクセスからPS2版の廉価版が発売された。ほぼ「Premium Edition」と同等の内容であり、価格は2000円。版権所有者はサイバーフロントだが、ユーザーサポートはサクセスが担当となっている。
余談
本作は発売当初の雑誌レビューでは非常に低評価だった。
その為、本作の評判が広がるにつれ、雑誌レビューでの低評価が問題視された事もあった。
ただし問題点にもあるとおり、本作は「中盤がだれる上に、最後までやってこそのゲーム」である。
その為、いくつものゲームをやらねばならない雑誌レビューでは、高評価に値する箇所までプレイする時間はなかっただろう事もあり、仕方ないという意見もある。
(実際、一人~二人のEDを見ていわゆるギャルゲーとして評価した場合、良作とは言い切れない点も多い)
もちろんだからと言って、最大の評価点をレビュアー全員がスルーしてしまった事を、仕方ないと言い切ってしまう事も出来ないが。
Xbox360版
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2011年12月にXbox360でのリメイク版が、5pb.とサイバーフロントとの共同開発で発売された。主な変更点は以下の通り。
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物語の舞台であるLeMUのデザインが変更された
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会話シーンの立ちポーズ絵や一部イベントが3D化
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シナリオ全体を見直し、オリジナル版で発覚した矛盾点や、全体的に冗長だった部分を改善してテンポが良くなった
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声優のボイスを全て録り直し
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新規シナリオ、イベントCG、エンディングを追加
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イベントCGを全て高解像に描き直し
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OP、EDの変更、音楽のリメイク
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初プレイ時は強制的に武視点をプレイするよう変更された
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少年視点でのつぐみの衣装が変更された
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用語集が削除された
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Xbox360版最大の特徴である3Dポリゴンだが、正直言って評判はあまり良くない。出来は決して悪くは無いのだが、アニメ調のイベントCGと比べるとどうしても違和感が生じてしまい、極端な賛否両論が分かれる結果となってしまった。普通にオリジナル版同様の一枚絵の方が良かったという意見も多い。
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この3Dポリゴンが導入された経緯だが、サイバーフロントが所有していた一枚絵のデータがXbox360の高解像に耐えられない事が発覚したので、だったらこの際だから『新生Ever17』をアピールする為に、敢えて3Dグラフィックに挑戦したとの事。
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しかし同じXbox360の「アイドルマスター」のなめらかで綺麗な3Dグラフィックに比べると、どうしても見劣りしてしまう。新しい事に挑戦しようとする意気込みは買うが、それも空しく結果的に多くのユーザーに受け入れられなかったようだ。
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とはいえ不満点と言えばそれ位で、それ以外に関しては古参プレイヤーからも概ね高評価を受けている。
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オリジナル版で大きな批判を受けていた、中盤での冗長な展開が大幅に改善されており、適度に緊張感を維持したままテンポよく遊べるようになった。しかしその分ボリューム不足になってしまい、20時間もあればクリア出来てしまうのだが…。
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それに伴い、設定自体が変更になってしまったキャラもいる。これに関しては一部で不満の声もある。
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また、PSP版で存在した用語集が何故か削除されている。意味が分からない。
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5pb.社長の志倉千代丸がプロデュースした新規OPとED、リメイクされた音楽も非常に評価が高い。特にOPはオリジナル版とは全く曲風が違うので、驚いた古参ユーザーは多い事だろう。
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新規に追加されたシナリオは30分程度で終わってしまうものの、それでもオリジナル版で謎のままになっていた事が全て明らかになっている。
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なおEver17の版権は前述の通りサイバーフロントが有しているが、Xbox360版は5pb.の管轄となり、ユーザーサポートも5pb.が担当となっている。
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その後、サイバーフロントは2013年12月をもって倒産。現在版権がどうなっているのかは不明である。