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ディガンの魔石 - (2013/12/15 (日) 22:34:23) の編集履歴(バックアップ)
ディガンの魔石
【でぃがんのませき】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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PC-9801UM/VM以降、PC-8801mkIISR以降、MSX2
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発売・開発元
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アーテック
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発売日
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1988年4月
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定価
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10,000円
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分類
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良作
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自航惑星ガデュリンシリーズリンク?
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概要
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自航惑星ガデュリンの世界観の一端をなす物語。
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その世界観は独特。また、生活感にリアリティを持たせたゲーム性が特徴的。
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グラフィックやBGMも評価も高い。
ストーリー
オロの国のとある片田舎の村、カーティア。そこで若い男女が結婚式を挙げていた。ディノとアビリアという若者である。結婚後、二人は新婚旅行も兼ねて、隣国エウラドーナのおつげの泉へ向う。これからの生活の指針を得るためおつげを授かるのは、オロの住人の習慣だった。しかし、受けたお告げは衝撃的なものだった。遠からず、二人を引き裂くような試練が訪れるという。不安に駆られながらも二人は帰路につく。故郷カーティアに帰ると、異変が起こった。ディノの妻アビリアが、身体が徐々に異形に変わっていくという奇病にかかったのだ。村の医者ではどうする事もできず、ディノは妻の病気を治すため旅に出る事を決意する。
特徴
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どこか妙に泥臭く、リアリティのあるRPG。
本作はリアリティのあるゲーム性が特徴なのだが、それは戦闘やストーリーではなく日々の生活の方なのである。時間の流れがある。食事を取らなければならない。病気や怪我がある。稼ぎはモンスター退治より普通の労働、等々。一風変わった味のある設定。
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時間の流れのある世界。一日は24時間ではないが、8つの時間に区切られ、朝→日中→夕方→夜と時間が流れる。それに伴い、様々な影響がある。
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プレイヤーは睡眠を取らなければならない。一日半も寝ないと、眠気に襲われてパラメーターが落ちていく。それでも無理に起きているとHPまで減っていく。逆に寝すぎても駄目。
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食事も取らなければ生きていけない。そうしないと、睡眠不足と似たような影響がでる。その食事の頻度は種族による。中には全く食べない種族や、逆に多喰らいの種族もいる。
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病気。実に様々な病気がある。宿代をケチって野宿していると、「腐り病」奇病にかかってしまう。風邪を引いたNPCと話すと、うつることもある。歓楽街で性病に感染したなど様々。当然、治さないと悪い影響ばかり出る。
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怪我。戦闘は危険である。何度も戦っていれば、その内怪我するのも当たり前。しかも結構頻繁に怪我をする。ダンジョン探索で無傷で帰るなど不可能。そして怪我をすると本来の力を発揮できなくなる。これも医者に見てもらったり、魔法で治療する必要がある。
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楽しい日雇い労働。本作ではモンスターとの戦闘は大して稼ぎにならない。モンスターは大して金を持っておらず、一銭も落とさないものもいる。ではお金はどうするかというと、職安に行って仕事を紹介してもらうのである。働かなければ金は手に入らない。当然である。
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能力が低い内はそれほどいい仕事を紹介してもらえないが、能力が上がれば稼ぎがいい仕事ができるようになる。能力の上昇の実感が、やれる仕事が増えた事で感じるという、これまた一風変わった本作の特徴。
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生活経費が意外にかかるため、逆に「これだけあればしばらく安心できる」ほどにお金を貯める事に喜びを感じる面もある。…なにやら生々しいが。
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愉快な買い物。
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比較的物価が高く、高価なアイテムもかなりあるので、つい消費衝動に駆られる所がある。日々労働に励み、高価なアイテムを買いあさる事に楽しみを感じるという、変わったRPGである。
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他にも野宿していたら引ったくりにあって金を盗まれたり、パーティの仲間との関係が悪くなって金を持ち逃げされたりと、やはりどこか泥臭い。
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仲間との関係は大切に。
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パーティは話の流れから組む者もいるが、人手不足からプレイヤーが雇った者もいる。そしてキャラクター達は、行き先は一緒だが目的は異なるという関係。特に雇ったキャラクターは、いろんな理由でパーティを勝手に抜けたりするので、気を配らなければならない。
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人間関係に影響するのが、仕事の配分や無茶な生活をする事。仕事はみんなでやれば稼ぎは多くなるが、不満も溜まっていく。主人公一人だけが働いている状態が、一番人間関係が良かったりする。何か間違っているようだが。
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仲間との関係は戦闘にも影響する。
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戦闘は一般的なターン制だが独自の面もある。
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一般的なターン制の戦闘システム。ただキャラクターの位置には独自のもの。先頭が始まると敵に対し、近距離と遠距離の二種類の位置取りとなる。これは敵も同様。近距離では接近戦ができるが、魔法は使えない。遠距離はその逆である。敵からの逃走も、遠距離にいないとできない。
この位置取りはフォーメーションではなく、ランダム。接近戦向きではないキャラが敵の間近にいたり、魔法が使えないキャラが遠距離にいたりするのはよくある。戦闘開始直後はまず、各キャラの得意な位置へと移動する事が必須。
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プレイヤーが戦闘時、操作できるのは主人公だけ。他はAIで動く。一応、ターン開始時に、仲間の一人に「頼む」という形で戦闘を指示できる。ここで影響するのが前述した仲間との関係。悪いと言う事を聞いてくれず、勝手な行動を取る場合がある。逃げ出してしまう事すらある。
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レベルの概念がない。
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キャラクターの成長は、レベルシステムではなく、各パラメーターが個々に上昇していくというもの。
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その他にも薬でパラメーターを上昇させる方法がある。非常に高価だが、効果は抜群。むしろこれを買うために戦闘せず、働いてばかりというというのもままある事。仲間が増えれば必要となる額もかなりの額になる。また全てのパラメーターに対応した薬が、最初から店に揃ってはいない。一方戦闘では費用はかからず、わずかだが全員のパラメーターが上がっていく。どう成長させるかはプレイヤーの自由。
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印象的なグラフィックとBGM。
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グラフィックは、当時としてはあまり見ない写実的な表現がされている。その絵画のようなグラフィックは、本作の大きな特徴の一つ。そもそも当時ゲーム機として採用されていたPC98では、同時発色がわずか16色。2色の陰影を使ったもの以外では、写実的な描画をするのは難しかった。そこでディザリング技術を用いて表現し、他では見ない映像美を作り出した。
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PC88においてはさらに描画条件が厳しく、8色でそれを実現した。解像度もPC98に劣るため、ややぼやけた感じがある。
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透明感のあるBGMも印象的。PC88の音源の力がフルに発揮されている。
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音源についてはPC98の方が劣る。メロディーは同じではあるが、PC88版に比べると音の深さを感じず、やや機械的な印象を受ける。
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NPCとは様々な会話ができる。街の住人などのNPCには、まるでADVのごとく自分が知った事柄を片端から聞ける。
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世界観は独特なもの。人間だけではなく、様々な種族が住んでおり、パーティを組む仲間もまるでスター・ウォーズの様。独自の宗教観もある。ただのファンタジーRPGではない。もっとも、これら世界観はストーリーの根幹に関わるものもあり、これ以上の説明はネタバレになるため省略する。
難点
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成長の楽しみがやや弱い。
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パラメーターの上昇が遅く、それに合わせたように各場所のモンスター達の強さに大きな差を感じられないため、戦闘での成長の実感が少し弱い。
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魔法はあるが、主人公は覚えられず、魔法を使えるキャラも仲間になった時点から増えたりしない(仲間になった時点でかなりの数の魔法を知っているが)。しかも中盤でほとんどの魔法を会得した大魔導師が、仲間になってしまう。魔法を徐々に会得していく楽しみがない。
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細かな点が雑。
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NPCにいろいろ聞けるのがはいいが、状況が変わっても内容に変化がない。例えば、NPCの中には仲間として旅を同行する者も出るが、彼らの台詞も変わらない。何とか探し出し仲間としたキーキャラクターと、いっしょに旅をしているにも関わらず、ある事柄を探している当時と同じく「知らない」といい続けるような現象もよくある。
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デモのグラフィックと、会話時のキャラクターの顔があまり似ていない。似ているのは、人間外の顔つきのキャラクターくらい。
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酔っ払いのNPCは、何故かおばさんの格好で男口調で話す。
総評
とにかく特異な印象を持つRPG。リアリティのある生活感に、写実的なグラフィックや透明感のあるBGM。またストーリーから感じる世界観も、本作を強く印象付ける。さらに戦闘よりも、生活面での楽しみが大きいというのも一風変わっている。
一方でトップビューの画面や戦闘システムなど、正統派のRPGと似たような面もあるため、プレイしにくいという訳でもない。
惜しむらくは、世界観やストーリーにやや縛られ、RPG本来の成長を楽しむという面が弱い点だろう。
王道RPGとは一線を画した、異色のRPGである。
余談
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消費税がネタとして使われてる街がある。本作の発売された1988年は、揉めに揉めた消費税が成立した年。本作はそれを受けてか、ある街だけ消費税があり、表示価格+3%の値段でないと買えなくなっている。