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ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタル・ベアラー - (2017/12/06 (水) 23:53:51) の編集履歴(バックアップ)


ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタル・ベアラー

【ふぁいなるだんたじー・くりすたるくろにくる くりすたる・べあらー】

ジャンル アトラクションアドベンチャー
対応機種 Wii
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2009年11月12日
定価 7,340円(税込)
判定 賛否両論
ポイント クリスタルクロニクルの中でも特に異色の作品
FFとしてもアクションゲームとしても癖がある
従来シリーズの未来設定だが、世界観は独自性強し
FFらしからぬ(?)王道ストーリーとキャラクター
独特の要素が多いのに説明が尽く不親切
FFCCシリーズの中でも特に賛否が別れる
ファイナルファンタジーシリーズ関連作品リンク


概要

Wiiで展開されたクリスタルクロニクルシリーズの最終作品。国作り、タワーディフェンスと来て、最後はまさかのアクションゲームとして発売となった。
主人公は引力を操る能力を持つという設定で、Wiiリモコンを使った引力操作によるアクションがメインのゲーム。
これまでのシリーズの世界観や設定は今作でも健在だが、一番遠い未来という設定のため、機械文明の発達を始め毛色がかなり異なるものとなっている。
なお、制作指揮はサガシリーズで有名な河津秋敏が関わっており、氏の趣向がゲームの其処彼処に散りばめられている。

特徴

  • マップはオープンワールドゲームのように開けたものとなっている。
    • 基本的に世界は1つのマップとなっている。昨今のゲームでよく評価要素として挙げられる、シームレスという奴である。
    • オンラインRPGに近いが、プレイヤーは基本的には1人(協力プレイも一応可能)。システムの都合上RPG的な要素が意図的に薄められており、ファイナルファンタジー=RPGと見ていると驚かされることになる。
    • 勲章という実績システムがあり、マップを巡ってこれを集めていくのがゲームの重要な要素となっている。
  • 主人公は身体の一部がクリスタル化した「クリスタルベアラー」の一人で、彼の独自能力として引力を操る事が可能。
    • 引力を操ることで、物、敵、など、大半のものを動かし、持ち上げ、投げることが出来る。
    • 主人公は最初からある程度の力を持っているという設定の為、アクションは既に最初から習得済。能力強化は可能だが新しいスキル習得などはない。
    • 目の前にあるものはデフォルトの状態でほぼ全て投げたり動かしたりすることができるため、自由度はかなり高い。
  • これまでのクリスタルクロニクルシリーズと異なり、キャラクターの頭身が3~5頭身のデフォルメ体型から8頭身以上のリアル体型となった。
    • これにより、リルティ族の違和感が尋常でないことになっている。
    • ある意味、ナンバリングにおけるVI以前とVII以降の違いを表していると見れない事もない。

評価点

  • 自由度がとにかく高い。
    • 主人公が成長する物語ではなく、ある程度成熟した青年であるが故に、意図して悪事を働くプレイもできてしまう。
      • 一番有名であろうことは、通行人を能力で捕縛し、身体を揺らして強制的に有り金を全部出させることが可能な点。
        やりすぎると本当に捕まる
    • 本筋のストーリーはあるものの、実は本作においてはやや添え物的な要素が強く、小ネタやサブ要素が非常に豊富となっている。
      • かといって内容がお粗末なわけではない。キャラクターの魅力自体はよく描けている。ただ本当にあっさりしており、その為中弛みは一切無い。この辺りもサガシリーズに通じるものがある。
      • FFシリーズで揶揄されがちな「ムービーゲー感」は同シリーズ作品と比較すれば薄めで、ゲームそのものに集中出来るという意見も。
  • 「Wiiリモコンを活かしたゲームを」という観点で作られており、コントローラーとの親和性が高い。
    • 冒頭でのシューティング面からしてWiiリモコンのポインティングで行う。
    • 引力を操るという設定なので、Wiiリモコンで標的をポインティングして物をロック・掴みながらあれこれ出来るという点は、Wiiというハードをよく理解して作られている。
    • 操作はリモコン(プラス含)&ヌンチャクのみ。クラシックコントローラ、ゲームキューブコントローラ、Wiiリモコン単体などでは操作不可。
    • 戦闘も基本はこれに準ずる。障害物を持ち上げて敵にぶつけたり、敵そのものを掴んで敵同士にぶつけるという荒業も可能で、戦闘シーンでできることはかなり多い。
      • 反面、剣や銃といった従来のアクションゲームでポピュラーな要素は通常戦闘においては基本使えない。
  • 基本システムに囚われないプレイアブルイベントがちらほら存在する。
    • 冒頭のシューティング面や飛空艇操作などを始め、サブイベントにおいても波乱の展開がとても多く、プレイヤーを飽きさせない。
    • こういった本筋から外れた要素は「同じシステムのゲームに集中したい」ユーザーからは好まれないことも多いが、本作においてこれらイベントの多くはゲームオーバーの概念が無い為比較的ストレスが少なく、ミニゲーム感覚で楽しめる。
      • プレイアブルイベントはクリア後自由に再プレイが可能。本編のシーンに思いをはせるもよし、ひたすらにやりこんで高記録を狙うもよし。
  • 開放的なゲーム性を反映してか、シナリオとキャラクターもそれに沿った陽性のものであり概ね好評。
    • 特にキャラクターは徹底的に前向きなヒーローである主人公・レイルや、そのツンデレぶりで作中一の萌えキャラ(?)とも評されるライバル・アミダテリオンなど、ある意味FFらしからぬ(?)清々しいまでにベタなキャラクター配置と王道冒険ストーリーは新鮮に捉えられた。特に近年のFF(とりわけナンバリング作品)でありがちで鼻についた、ウジウジしたキャラクターや鬱展開が殆ど無い点はポイントが高い。
    • ムービーと操作画面の切り替えもシームレスであり、波乱且つ小気味好い展開と相まって、まるでアクション映画のような軽快な感覚でストーリーを楽しむ事が出来る。
    • 本作のシナリオは『サガフロンティア2?』以来、久しぶりに河津氏自身が手掛けたものである。
  • 音楽面も高評価。
    • 岩崎秀則・山崎良によるBGMは各種ロック・ワールドミュージック・オーケストラとジャンルがとにかく多彩かつ高クオリティで、場面演出とのマッチングも秀逸。

賛否両論点

  • 案の定、独特のシステムには賛否が分かれている。
    • FFCCシリーズとして異色というよりもむしろFFとして異端の存在であり、引力を使ったアクションゲームという事で正道からも外れている。
      • 敵を持ち上げて利用するなど独特のプレイングが可能な一方で普通の攻撃手段がなく、投げるものが無くなって敵自体をひたすら投げるしかなくなるケースも多い。
      • ボス戦も数が少ないうえ単調。攻撃力を強化していないとラスボス戦は苦行としか言い表せないものになってしまう。
    • 一部のフィールドは敵の出る"瘴気ストリーム状態"と、住民のいる普段の状態を一定時間ごとに繰り返す。
      • 瘴気ストリーム状態ですべての雑魚を倒し、"平定"することによって最大HPアップのアイテムを得られる。しかし一定時間ごとに繰り返す仕様が仇となり、戦闘中時間切れで勝手に戦闘が終わってしまうという問題が発生している。
      • 時間を調整するアイテムがある為、最悪でもアイテムに物を言わせたゴリ押しを敢行すればどうにかなるが、果たしてこれを救いと呼んでいいものか。
    • シナリオ上の強制戦闘もほとんど無い為、サブイベントをスルーしてしまえば戦闘をほぼ行わずにクリアする事ができてしまう。
    • こうした独特のシステムに合わせて、先述したユーザーの遊びやすさを考慮していない不親切さが、本作の評価を下げてしまっているという印象は否めない。
  • クリア自体はそんなに難しいものではなく、やりこみ要素を捨てればすぐに終わってしまう点。
    • ただその自由度の高さの分、世界観を楽しむという意味でのやりこみ要素はとても多いので、このゲームの性質に噛み合ったプレイヤーであればそう簡単に終わることはないだろう。

問題点

  • 全体的にユーザーに対して不親切。
    • まず初っ端からシューティングステージが始まるのだが、ストーリーの流れでいきなり導入し、ボタン操作だけが前触れ無く表示される。この時点で付いていけない人を多数出してしまった。
    • そうでなくても非常に独特の操作を要求される本作だが、チュートリアルは一切無い。
    • 操作すべきボタンなどは必要に応じて表示されるのだが、操作の独自性故に「本当にこれでいいのかわからない」という事態が多く発生する。
    • 「FFCCシリーズの過去作品をプレイしていること」がプレイヤーの前提条件として想定されているとしか思えないくらい、FFCCシリーズの世界設定に関する説明が無い。知らないプレイヤーは世界観についての基礎知識などが特に無いまま、よく分からないうちに物語を進めなくてはならない。
    • 特に、ボス戦など一部のイベントに時間制限がある点は不満点としてよく挙げられる。無論この時間制限についても、事前の説明は一切無し。
    • ムービーをスキップすることができない。
      • 実は本作には、2周目以降のみ視聴可能なムービーが存在している。そのムービーを見るために周回プレイを敢行する際、既に見た内容のムービーを再び見せられるのは正直うざい。
  • 住民達と基本的に会話できない。
    • 非常にアクション豊かな住民達などが町で多く見られるのだが、登場するキャラの殆どとは会話不可能。RPGとは違うということの表現かもしれないが、勿体無くも感じる。
    • ざわざわ声やちょっとした声は聞こえるが、意味のある会話はほとんど無い。置物…とまでは言わないものの、オブジェクト的な扱いになっている。
      • 町民が多くリアクションもバリエーション豊かではあるのだが、ぶつかると(こちらにその気が無かった場合でも)町民達は酷く嫌そうな顔をする。人によっては不快に感じる。
  • 最早河津作品恒例の、未完成と思しき部分の存在。
    • 具体的には先述した会話のオミットや全体マップの非実装など。特にマップの不備は街など入り組んだマップで迷いやすくなる一因となっている。
    • これらは発売日の前倒し*1や開発スタッフが一部『ファイナルファンタジーXIII』の制作へ流れたことなどにより開発スケジュールが逼迫した結果とされ、特に後者は影響が大きかったと攻略本でスタッフが述懐している。

総評

クリスタルクロニクルシリーズとしても、そしてファイナルファンタジーシリーズとしても、あげくアクションゲームとしてすら正道から外れたゲーム。

とはいえ客観的に見てもゲームとして欠陥があるわけではなく、『キングダム ハーツ』シリーズ寄りのバリエーション豊かな遊びが提供されている。
シナリオ・キャラクターの面はヒロイックな主人公を始め全体的に好評で、説明不足とはいえ魅力的な世界観と相まって感情移入はしやすい。

しかし、その特異なゲーム性に対する認識がスタッフ側において甘く、説明不足などユーザビリティを度外視した点が目立つのは否めない。
その為か本作の評価については賛否が完全に割れてしまっており、特に否定意見に関してはFFという鋭い声のユーザーが多いシリーズなだけに、ことさら大きく響いてしまった様だ。


余談

  • 宣伝として、要潤が発売前の本作をプレイした動画番組が公開されていた。