「ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス
【ぺるそなきゅー しゃどう おぶ ざ らびりんす】
概要
アトラスの人気RPG『ペルソナシリーズ』と『世界樹の迷宮シリーズ』のコラボ作品。
世界観やシナリオは『ペルソナ3』(以下『P3』)及び『ペルソナ4』(以下『P4』)が、ダンジョンや戦闘システムは『世界樹の迷宮』シリーズがベースとなっている。
キャラクターデザインは副島成記氏だが、『世界樹』を意識してかSD化されたデザインとなっている。
評価点
シナリオ
-
良質なクロスオーバーシナリオ
-
ゲーム開始時に『P3』主人公と『P4』主人公の選択を行い、選んだ方の作品がメインとなる。選択に関わらず両者とも命名することになる。
-
選ばなかった方はアニメ準拠の性格付けがされ会話にも参加してくるようになり、選んだ方は原作ゲーム準拠で選択肢以外に台詞はなくなる。
-
『P3』及び『P4』キャラの日常的な交流シーンや、原作での人間関係の問題を別作品キャラを加える事で解決する等、非常に上手くまとめられている。
-
同じくクロスオーバーの『P4U』が格闘ゲームに付随するシナリオである為に終始シリアスとなっているが、本作は舞台が「文化祭」だけに全体的に明るく、日常的な会話も多い。
また、本来なら時間がずれている為に『P4U』では『P3』メンバーが「人生の先輩」扱いだったが、本作は同年代で出会っている為に、対等な関係で描写されているのも本作独自の点。
-
順平と陽介の3枚目コンビの会話や、コロマルとクマのマスコット対決、女子一同での女子会等々。
-
『P4』に比べると人間関係の良くなかった『P3』キャラが『P4』メンバーを交える事で人間関係を改善したりといったシーンも。
-
両作とも、仲間が全員揃いかつ物語の核心にはまだ到達していないタイミングで召喚されている。
-
そのため原作では途中退場するキャラも最後まで使用できるという、そのキャラのファンには非常に嬉しい要素も。
-
当然ながら原作での出来事が話題になることもある。攻略には影響しないがプレイ済みならニヤリとできる。
-
キャラの秘密が明らかになったり、人生が決定的に変化したりというイベントは構造的に起こせない。その点も踏まえ原作のプレイをおすすめしたい。
-
ベルベットルームの3人も一堂に揃い、サポートを担当する。
-
『P3』のエリザベスとテオドアはそれぞれ保健室での回復と美術室での装備作成、『P4』のマーガレットはベルベットルームでペルソナの管理を行う。
-
ベルベットルームの主であるイゴールは欠席。担当声優の田之中氏が鬼籍に入ったため、台詞の収録ができなかったためと思われる。
-
『ペルソナ』らしいメインシナリオ
-
本作オリジナルの「玲」と「善」を絡めたメインシナリオはある程度先の読める王道展開ながら、クロスオーバーをまとめるシナリオとして良好。
戦闘システム
戦闘システムは前列最大3人、後列最大3人、合わせて5人までの『世界樹』形式。
これに『ペルソナ』のシステムを上手く『世界樹』のシステムに溶け込ませている。
-
サブペルソナシステム
-
本作では『ペルソナ』原作と異なり、『P3』『P4』主人公両名ともペルソナチェンジができない。その代わり、ペルソナ使いではない善と玲を除く全員がサブペルソナを所持・付け替えることが出来、メインペルソナ+サブペルソナという構成で戦う。
-
ただし「戦闘中にサブペルソナを臨機応変に付け替える」ことはできなくなっている。
-
ステータスや耐性はメインペルソナのものが適用される。耐性系スキルを除きサブペルソナは影響しない。
-
サブペルソナにはボーナスHP・SPが設定されており、戦闘時のみメインのものに上乗せされる。上乗せは戦闘突入の度にやり直しされるため、スキル消費分をボーナスの数値以下にすることにより永久機関が可能。
-
探索中の回復スキルは当然、メインのSPを消費する。
-
トラップ等でHPSPが空になった状態で戦闘に突入してもボーナス分は保証され、事故死軽減に一役買っている。
-
スキル関連
-
本作では1キャラにつきメインペルソナの固定枠が4種、スキルカードによる自由枠が4種、サブペルソナ枠が最大6種の最大14種のスキルが習得可能になっている。
-
善と玲のみはペルソナ使いではないので14枠全てが固定。ペルソナ使いたちのメインペルソナ同様、上位スキルを覚えると自動的に上書きされる。
-
スキルカードとサブペルソナで好きなスキルを10種付けられるので、ペルソナ原作に比べて仲間の育成の自由度は大幅に増している。
-
BOOSTシステム
-
ペルソナ原作のように相手の弱点を突くと有利になるシステム。クリティカル発生時にもBOOST状態になる。
-
弱点攻撃時とクリティカル発生時にはBOOST状態になり、その状態ではターン開始時に最速で行動出来る上、次の行動のコストが0になる。
-
相手の弱点を突いた際には敵が転倒することがあり、転倒時は1ターン何もできなくなる。
-
BOOST状態は敵の攻撃を受けると解除される為、「後半は敵がダウンしにくくなる」、「全体攻撃も増えてくる」といった要因でゲームが進むごとに段々使いづらくなってくる。
-
とはいえ、スキルの組み合わせをしっかり考えれば最後までBOOST状態は活かせるし、システムが死んでるというほどではないが。
-
程よく調整されたゲームバランス
-
『世界樹』初心者(あるいは知らない人)へ向けてか、基本の難易度は『世界樹』シリーズに比べるとやさしめ。
-
難易度は5段階用意されている。最高難度の「RISKY」を除きゲーム中に変更が可能。なおシナリオやエンディングには影響しない。
-
RISKYではペルソナ原作同様に主人公が死ぬとゲームオーバーになる。
-
ちなみに即死魔法用の防御アイテム「ホムンクルス」は本作でも存在するが、一度死ぬ処理を挟んでいるのか、難易度RISKYではホムンクルスで即死を免れてもゲームオーバーになる。
-
おおよそバランスよく作られてはいるものの、後述のような問題もある。
-
十分なボリューム
-
ダンジョンの各階層ごとに異なるギミックが用意されており、最下層ではそれらを総合したものとなる。
-
各ダンジョンのモチーフに沿って明確なストーリーが進行し、ちょっとした行き止まりでも会話が発生したりと飽きさせない工夫が見える。
その他システム
-
マッピングに使用できるアイコンも多様で、形だけでなく色も多数用意されており、非常に使い分けやすい。
-
ダンジョンには階層ごとに踏破率が設定されており、100%になると強力な装備が入った特殊宝箱が開く。行き止まりでの徒労感を軽減している。
-
『ペルソナ』の依頼システムも搭載。
-
BGMは『P3』・『P4』どちらで始めたかで戦闘BGMが変わるほか、一部のイベントでは原作の曲を使用している。
-
セーブスロットは3つだがSDカードにも保存できる為、セーブ数で困る事はまずない。
賛否両論点
-
「短期決戦前提」の戦闘バランス
-
全体的にスキルの使用コストが高めなため、探索中に長期戦が続くとあっという間にHPもSPも尽きる。
-
前述のように、サブペルソナのボーナスHP・SP分は戦闘ごとに回復するため、ボーナス分で敵の弱点を突いて速攻で終わらせるのが基本となる。
-
キャラのデフォルメ化
-
全員がデフォルメされたのはペルソナシリーズでも異質な為、原作ファンの間でも少々意見が分かれ気味。
-
デフォルメ自体に肯定的な人でも、「可愛らしさの所為でシリアスシーンの印象が薄くなる」という声も。
-
一部ダンジョンの演出
-
お化け屋敷がモチーフのダンジョンが登場する。「文化祭」の定番であり、そのチョイス自体に問題はないが、(個人差はあるが)雰囲気と演出が相まって本当に怖い。
-
謎解きの難易度も高く、下手するといつまでもこのダンジョンに留まることになる。
-
このダンジョンのF.O.Eは能動的に襲い掛かってくるタイプが多く、迂闊に移動するとあっという間に追いつめられる。
-
出現位置が固定のF.O.Eもあるが、そのF.O.Eの出現の演出がビックリ系のそれである。別の意味でプレイヤーを追い詰める。
-
苦手なプレイヤーにとってはまさに苦痛である。難易度云々以前に、このダンジョンに耐えられなくてゲームを投げ出したプレイヤーもいる。
-
謎解きの難易度
-
仲間がほぼ答えに等しいヒントを言ったり、後々重要になる事柄はわざわざ赤文字で注意喚起してくれたり、隠し通路やイベント発生地点の正面に来ると毎回発見を知らせてくれたりと至れり尽くせりである。
-
『世界樹』シリーズとは異なり明確な個性を持ったキャラクターの集まりであるため、謎に対し意見を述べるのはごく自然なのだが…
問題点
-
雑魚戦においてハマ・ムド系の即死魔法が強すぎる。
-
光及び闇の弱点持ちであれば高確率で効き、耐性さえなければ何度目かで倒せてしまう。
-
その為、両方を覚える直斗もしくは覚えさせたサブペルソナだけでダンジョン攻略難易度は格段に下がる。
-
もちろん無効の敵には効かないが、光と闇両方無効なのはボスと一部を除くF.O.Eのみ。最終盤まで便利なレベル。
-
さらに状態異常の付着率を上げるスキル「不浄の手」を所持していると、耐性なしならほぼ確実、耐性持ちでも相当の確率で効くようになってしまい、「直斗(もしくはハマムド両方持たせたキャラ)一人でいいんじゃないかな」レベルになってしまう。
-
一応、戦闘終了時のサブペルソナ取得が「BOOST状態の味方が多いほど出安く、良い物になる」という仕様である為、戦闘開始直後に即死させると光・闇が弱点の敵以外からはサブペルソナ入手がしづらくなるという欠点はある。
-
せっかくのオリジナルキャラクターである善と玲が終盤力不足になりがち。
-
善と玲はサブペルソナを装備できない代わりに全属性攻撃、一列回復(HP回復、状態異常回復、封じ回復の3種)等のスキルを覚える為、汎用性は非常に高く、特に状態異常や封じを範囲指定で回復できるのは非常に便利。
-
反面、ボーナスHP・SPの回復も存在せず、スキルの付け替えや追加が不可能な為、他のキャラに強力なスキルが揃う後半になるにつれて相対的に力不足になっていってしまう。
-
SPに関しては移動中にSPが自動回復するスキル「安息の旅路」を覚えるので、場合によっては他のキャラ以上に探索中のSPの心配はいらない利点もあるが。
-
HP回復スキルもレベルアップでスキルが強力になるにつれて回復量も十分な量になり、一列回復できる点は便利だが、移動中に列指定出来ないためか、移動中に使えないのが地味に痛い。
-
即死魔法である光属性が弱点であり、サブペルソナで耐性をつけることができないのもマイナス。光属性で即死しにくくなるアクセサリも存在するが、アクセサリ枠は一つしかないのでこの為だけに枠を占有はしづらい。
-
持ち物及びサブペルソナの所持数がすぐいっぱいになる。
-
ある程度の探索をするとすぐ上限に達するため、一つの階層を一気に攻略といった事が難しい。
-
そのタイミングを見越してか、依頼や校内散策イベントが増えるようになっているため、適度に帰ってほしいという開発の考えのようだが、煩わしく感じることも多い。
-
原作の『世界樹』シリーズほどではないものの、ちょっとしたミスであっさり死ぬ事もあるので、初心者へ向けての調整といった面もあるようだが。
-
所持数の上限14に対して一つのパーティに付けられるサブペルソナは最大7人分。合体・イケニエ素材や探索・ボス戦特化のもの個別にを用意しようとするとまるで足りなくなる。
-
原作同様ペルソナ全書も存在するので、金があればいくらでも引き出せはするが。むしろ素材として使うなら、ランダムで目当てのサブペルソナが落ちるのを待つよりそちらのほうがはるかに手っ取り早い。
-
一部のネタが少々くどい。
-
『P3』『P4』女性キャラの壊滅的な料理スキルネタや完ニのガチムチ系のネタ等、度々ネタにされる為、ウザく感じる人もいるほど。
-
最終的に物理スキル偏重になりがち
-
魔法スキル重視でもゲームクリアは十分出来るが、最終的には何かと物理スキルの方が便利な点が多い。
-
物理スキルの威力を強化する方法が多い他、最上級ペルソナの固有スキルにも強力な物理スキルが多い。
-
使用コストの面でもSPに比べHPは回復手段が豊富な為、長期戦にも対応しやすい。
-
加えてメガテンシリーズではおなじみの物理反射はない(というか、反射自体が存在しない)為、物理偏重で勝てない敵がまずいない、というのも一因。
-
マッピングのメモ機能自体は便利だが、単語の変換機能で使いづらさを感じる事も多い。
-
「き」で「木」が出ない等の一般的な変換候補の欠落があったり、「きえ」なら「消え」に変換できるのに「きえる」で「消える」に変換してくれないといった謎の不親切仕様だったり。
-
漢字の登録ミスなのか、ゲーム中に使用されている漢字でも一部使えない文字がある。その為、宝箱の中身をメモしようとしても代替の漢字かひらがなを使わざるを得なくなる。
-
ムービーのリプレイ機能等がない
-
要所要所で挿入されるムービーシーンの出来がいい(特にEDムービーの評価は高い)だけに、それが見返せないのは少々残念。
-
EDムービーに関して言えば、クリアデータさえ残しておけばラスボスを倒しなおす手間で見る事が出来るだけマシな方かもしれないが。
総評
見ての通りの「ペルソナキャラクターを使った世界樹」である。
それぞれの原作システムを上手く溶けこませており、また、『P3』と『P4』のクロスオーバーとしてみても非常に出来が良い。
世界樹シリーズの探索型RPGが少々人を選ぶものの、苦手でなければ『P3』『P4』ファンにオススメできる良質なコラボ作品に仕上がっている。