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シャドウハーツ・フロム・ザ・ニューワールド - (2018/07/08 (日) 14:31:25) の編集履歴(バックアップ)


シャドウハーツ・フロム・ザ・ニューワールド

【しゃどうはーつ ふろむ ざ にゅーわーるど】

ジャンル 純正統派超大作RPG

対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 2枚組
発売元 アルゼ
開発元 ノーチラス
発売日 通常版/プレミアムBOX:2005年7月28日
スターターパック:2006年1月19日
定価 通常版:6,980円
プレミアムBOX:11,800円
スターターパック:5,800円(全て税別)
レーティング CERO:12歳以上対象
判定 良作
シャドウハーツ - シャドウハーツII - フロム・ザ・ニューワールド


あらすじ

数年前、ジョニーは大きな事故に巻き込まれ、その際に家族と、大切な記憶を失った。

1929年。
暴力と闇の力に支配されていたアメリカ大陸。

父親は莫大な額の遺産を遺したが、ジョニーはそれを継ぐのを嫌い、今はニューヨークで一人の執事と供に私立探偵を営んでいる。
ジョニーが事故から目覚めたのと同時期、アメリカの各地で、ある怪現象が噂されるようになる。

薄緑色の空間が歪み、中から怪物が生み出されるその現象を、人々は「窓」と呼んだ。
ネイティブアメリカンの血を引く女性、シャナイアは、窓から出現する怪物を退治する賞金稼ぎの仕事をしながら、各地を旅して回っていた。

ある日ジョニーの元に、一件の依頼が届く。
傷害事件の容疑者で、保釈中に逃亡した男を探し出して欲しい、と。
まるで初めから仕組まれていたかのように、簡単に男を発見するジョニー。

だが、そこで異変が起きる。
男の背後の空間が不気味に歪み、そこから姿を現す異形の怪物。
一口で男を食い殺した怪物が、次はジョニーへと牙を向けた瞬間、人影が天井を突き破って、ジョニーと怪物の間に舞い降りる。
全身を淡い光に包み、人と鳥が融合したかのような幻想的な姿で― (公式サイトから引用)


解説

  • 第一次世界大戦前後の現実世界を舞台としたRPG、シャドウハーツシリーズの最新作。略称:シャドハF、FTNW、フロム等。
    • タイトルが示す通り、舞台は前二作から大幅に一新されている。
    • メインライターは、これまで『クーデルカ』からシリーズに携わり『1』~『2』でディレクションとシナリオを担当した町田松三(板倉松三)氏ではなく、新たに鈴木俊之氏が担当。
      • 町田氏はストーリーコンセプトの提供のみに留まっている。
  • 舞台は前作から14年後、1929年のアメリカ大陸。アメリカ合衆国および中南米の各地を冒険する。
    • 前作でマリス(悪意のエネルギー)が世界中に解き放たれてしまったことが、ストーリーに大きく関わっている。
  • 主人公も前作までのウルから交代となり、新主人公はニューヨークで私立探偵を営む少年ジョニー・ガーランド。
    • 素直な性格の少年。常識人であり、パーティ内では基本的にツッコミ役。
    • ウルのように戦闘に秀でているわけでもなく特別な能力は何も持っていなかったが、序盤でマリスの刃「マリスブレード」を形成する謎の能力に目覚める。
    • 前作までの重要な要素だった、主人公の精神世界グレイヴヤードは、今作では登場しない。
  • ヒロインはシリーズお馴染みのフュージョン能力を持つ、ネイティブアメリカンの女性シャナイア。
    • 故郷の村を壊滅させた女「レディ」への復讐のために行動しており、ギャグシーンにもあまり関わらず、ほぼ全編通してシリアス一辺倒のヒロイン。
    • 今作のフュージョンは各地の精霊の力を借りて変身するというもので、変身後の姿も怪物というよりシャナイアの女体を色濃く残している。
    • 各地の精霊と契約して新たなフュージョン能力を得ることが冒険の目的の一つになっているが、前作までに比べるとストーリーに大きく関わる設定ではない。
  • ゲームシステムは前作をベースにしており、シリーズ恒例のジャッジメントリング、SP(サニティポイント)といったシステムはほぼそのまま引き継がれている。
    • 一方で、前作から登場した「連携」や「紋章魔法」といったシステムには大きく変化している(後述)。

評価点

  • 戦闘システムは『2』の戦闘システムを改善し、コンボや連携と言ったシステムの面白みや戦略性が増している。
    • 変化の代表例は「連携」システム。連携を行うために味方同士で密集するという準備行動が不要になり、戦闘テンポがより向上。
    • その代わり、攻撃したりされたりする事で溜まる「ストックゲージ」が導入。最大2本溜まるこのゲージを一定量消費することで、前作の「連携」+αにあたる以下3種の行動を繰り出せる。
    • 「ダブル」
      • 2回分の行動を一人で一気に繰り出す行動。ただし同じ行動を連続で選ぶ事は出来ない。
      • この「ダブル」が追加されたことで一人でも連続攻撃や吹き飛ばしコンボ等が可能になり、上手く連続ヒットを繋げることがより重要になった。
    • 「コンボ」
      • 前作の「連携」と同様のシステム。他のキャラクターとの連携攻撃を行う。
      • 各キャラのストックゲージさえ1本以上溜まっていれば、行動順に関係なく最大4人の連携が可能。
    • 「ダブルコンボ」
      • 文字通り「ダブル」で「コンボ」を繰り出す行動。
      • これもゲージさえ溜まっていれば最大4人でのコンボが可能で、一方的に敵をタコ殴りできる非常に強力な連続行動となる。
    • また連携(コンボ)などの連続行動は、一回のジャッジメントリングだけで一括して判定を済ませることもできる(その分リングが複雑かつ高難度になる)ようになった。
    • 各攻撃範囲の高度や敵の浮きの高さが明確に表示されるようになり、どうすればコンボが繋がるのかが分かりやすくなった。
    • 今作の魔法システム「ステラチャート(ステラマジック)」は、前作の紋章魔法に比べて分かりやすく、またカスタマイズ性も高い。
      • 前作の「紋章魔法」とは違い持ち物となっているので、ステラチャートは他の仲間とチャートごと交換出来る。
      • ショップの横でステラチャートを改造できる彫金屋が新たに加えられた。お金を払うことでLvの高い魔法の装備や効果量の上昇、消費MPの軽減が可能。
  • 『2』ではぬるすぎて不評も多かった難易度についても改善。
    • 上記の「ストックゲージ」関連のシステムは強力ではあるが、「使用後は次回の行動順に大きくディレイがかかる」という甚大なリスクも伴う。
      • そのため使い所を間違えると敵に塩を送るだけの結果にもなりかねず、また行動が強力であればあるほどディレイも大きくなるため、「ダブルコンボ」で敵を殺しきれなかった際などは逆にタコ殴りを受ける事必至である。
      • 決してお手軽な攻撃手段ではなく、使用後のフォローなどもしっかり考えて使用する必要があるため、戦略性の高いシステムであるとして好評。
    • また「ストックゲージ」は味方のみならず敵にも存在し、さらに敵もこちらの隙を的確に突いてくるため、下手に隙を見せれば雑魚すら「コンボ」や「ダブル」でガンガン殺しにかかってくる。
      • 単体で出現するような強敵やボスも「ダブル」で攻撃してくるためピンチに陥りやすくなり、相手のストックゲージにも気を配ったり、リカバーできないような多大な隙を見せないような立ち回りが必要となっている。
    • かと言ってどうしてもクリアできない理不尽な難易度というほどのものはなく、対策と戦略を練っていけば大丈夫な、絶妙に厳しめの難易度になっている。
  • 前作の一部強力な技や魔法はある程度弱体化された。
    • 「ゲイル」は味方の素早さを上げて行動順を早くする魔法だが、上昇量が下げられた。その分獲得時期は若干早めになっている。
    • 前作で通常攻撃が強い傾向にあったためか、物理攻撃に強いキャラのパワーアップ要素が下げられたり、「エナジーチャージ」などの魔法は物理攻撃力が最も低いヒルダが習得できるようになった。
      • 逆に魔法はヒット数の増加や彫金屋の存在、「魔心眼*1」の追加によって重要度がかなり高くなった。
  • 全体的に強力なアイテム、ドーピングアイテムが少なくなった。
    • 特に「鍵」は一部除き指で数えるほどしか手に入らないので、ここぞという時の切り札感が増している。
      前作で問題点として挙がっていた「永遠の鍵」は 事実上全クリしてなおかつ周回プレイで1週1個だけ というコレクターアイテムと化している*2
  • ジャッジメントリングが更に大きくなり、「1」並に。
    • 代わりにテクニカルリングでのエリアはかなり狭くなっており、やりこみプレイヤーでも成功し続けるのは難しい。
  • グランドキャニオンやマチュピチュなどの、大陸各地の名所が登場する。
    • またクトゥルーで御馴染みのラヴクラフトが教授として登場したりと、オカルトネタも健在。
  • 音楽についても相変わらず評判は良い。
    • PVでも使われたOPテーマに惹かれて購入したファンも見られるほか、戦闘曲も好評で、最終戦のBGMは特に人気がある。
  • 異様に凝ったデータベースも相変わらず。
    • 戦闘不能回数、リング成功回数などプレイ中の記録を面白おかしく記録した「スコア」メニューも引き続き登場している。
  • 旧作のキャラが登場するファンサービスも。

賛否両論点

  • 主人公の交代
    • シリーズファンに人気のあったウルから一新してジョニーに交代したことはかなり批判があった。
      極端ではあるが『ウルでなくなった』という時点で拒否反応を示す人もいたほど。
    • とはいえ新主人公のジョニーに全く魅力が無いわけではなく、ウルとは違った子供らしさはあれど自分の運命を受け入れつつ成長していく様は評価されている。
      (前作の結末から)「ウルはもう休ませてあげて」という声もあり、主人公を交代させたこと自体は一概に批判されていない。
    • しかし、後述のシナリオの拙さから評価がされにくいのは事実でもある。

問題点

  • シナリオ
    • 『2』の時点でかなり多かった後付け設定やご都合主義が『F』でも遺憾なく発揮されており、疑問点も多い。
      + 終盤のネタバレ
      • 代表的なものは、シリーズ初期から登場する「とある行動」があっさり成功するというもの。
      • これまで決して成功せず、時には災いを招く危険なモノであっただけに、今回(関係者はその後不幸な目に遭ったとは言え)成功した事については都合が良すぎるとの批判も目立つ。
      • しかも成功要因は、これまた後付け的に登場したポッと出のエネルギー。「これまで上手く行かなかったのは何だったんだ*3」と疑問が沸くほど簡単な解決法であったため、この点については特に不評が多い。
  • ストーリーのおおまかな展開は北米と南米の各地を巡りながらレディの行方を追うというもので、対立する敵も終始一貫しており前二作ほどの捻りは無い。
    • 従来のように、ゲーム中盤を過ぎた辺りから新たな舞台(南米)に行けるようになるが、今作は『1』の亜細亜編→欧州編や『2』の欧州編→日本編のように明確に前後編に分かれてはおらず、シナリオの大きな転換点も中盤ではなく終盤に集中している。
    • それまでのシナリオは、中盤から遺跡巡りの展開が続くこともあって中だるみしやすい。
  • キャラクター
    • 登場キャラは個性的な面々ではあるものの、主要の数人以外は基本的に空気と、今一つ練りきれておらず、全体的なキャラクターの魅力は前作には劣る。
    • パーティメンバーに関しても、シャナイアの従者ナタン以外のメンバーは旅に同行する理由付けも弱い。
      • ただ、ギャグシーンで大活躍するエセ忍者フランク、真面目な顔でとぼけた剛速球を繰り出すナタンなど、ギャグ担当としての人気があるキャラはいたりはする。
    • 主人公達よりもむしろ、敵であるレディと、彼女に恋心を抱く連続殺人鬼「キラー」の方に好感を持ったという感想も見られるが、敵キャラも過去の掘り下げなどはなく、今一つキャラクターの描写が足りない。
      • また、作中でも快楽殺人を行うなど、キラーの同情の余地の無い悪役ぶりが描かれる一方で、最終盤では唐突に極悪人である事など放り投げたような純愛ムービーが挟まったりと、演出も一貫せず、今一つ釈然としないという意見も見られる。
      • ジョニーを中心として会話が大体進むこともあり、そのほかの仲間&仲間の会話は非常に少ない。特にシャナイアはギャグシーンではほとんど喋らずジョニー以外の仲間との直接的な会話は数える程度。
  • サブイベントも『2』の焼き直しが多い。
    • 武器拾いイベントや漢寿司(2で言う漢祭り)や五重の塔(2で言うウルフバウト)など、『2』でウケた要素に若干手を加えて使い回しただけで、今作ならではのサブイベントというのはあまり無い。
    • とはいえ『2』で確立されたパロディやギャグ成分も遺憾なく発揮されており、それを楽しめる人は楽しめる。
  • パーティメンバーの性能差は『2』以上に激しく、パーティキャラが固定されがちなのが難点。
    • 終盤で強力な攻撃手段を覚えるジョニー、使いやすく火力も申し分ないシャナイアとフランク、補助役として極めて優秀なヒルダが引っ張りだこになりやすい。
    • 反面、リカルドやマオなどは固有技に癖が強く、とりたてて強力でもないため今一つ使い所が難しい。
    • 技数の減少、固有技の一部弱体化も重なって、前作のメンバーに比べて強さを感じにくい。

総評

ファンからの評判は「シナリオは△、システムは○」と言ったところ。システム面はシリーズで最も完成度が高いが、シナリオやキャラクターはシリーズで最も評価が低い。
良くも悪くも『2』の続編といった体である。
シナリオの微妙さが足を引っ張りがちだが、戦闘に関しては極めて順当に洗練されており、システム面は高く評せられて然るべきだろう。


余談

  • アメリカが舞台ということで、『1』に登場したハリーやその肉親・関係者が登場するのではないかという予想もあったが、結局作中には一切登場せず。一部落胆の声もあった。
  • シリーズ全体で見ても元々それほど多くはなかった売り上げが『フロム・ザ・ニューワールド』でさらに伸び悩んだためか、シャドウハーツシリーズはこの作品を最後にストップ。開発元であるノーチラスも解散となってしまう。
    • スタッフの何名かはその後『ロストオデッセイ』のフィールプラスなどに勤めているとの事らしい。