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I/O - (2016/07/17 (日) 23:02:26) の編集履歴(バックアップ)


I/O

【あいおー】

ジャンル SFミステリーアドベンチャー
対応機種 PS2
発売元 GNソフトウェア
開発元 GNソフトウェア
発売日 2006年1月26日
定価 6,800
判定 賛否両論
ポイント 良くも悪くも難解なSFノベル
あまりにも少なすぎる立ち絵

概要

18禁ゲームのコンシューマ化を主に手掛けていたGNソフトウェアのオリジナル作品第1弾。
コンピューターネットワーク、電脳世界と言ったサイバーなテーマを扱ったSFアドベンチャーである。SFと言ってもインターネット世界が進歩した2032年という事で、そこまで現在の生活に変化は無い。また、作中の世界観はメソポタミア神話(バビロニア神話)を下敷きにしている。
infinityシリーズ』の中澤工がKID退社後に監督を務めた作品であり、原案に『CROSS†CHANNEL』の田中ロミオ、シナリオに神話・ファンタジー関連の数々の書籍を手掛けた健部伸明、ムービーにMju:z代表の神月社と、各分野の著名人を起用して製作された。

シナリオ構成

  • シナリオはABCD4つのルートがあり、各ルートはゲーム開始後間もなくプレイヤーが任意で選択する。
  • Aルートは導入部的シナリオであり、ライトで分かり易い内容。アルファベットが進むごとにハード且つ難解になっていく。
    • A、B、C、Dの順番でプレイする事が推奨されているが、逆の順番でプレイする事で高難易度の謎解き、コアな展開が味わえるとも述べられている。他作品のような感覚で適当に選ぶのはお勧めしない。
  • 条件を満たすことにより、各ルートを総括する最終章Eルートを開始する事が出来る。
    • Eルートをクリアすると一旦物語は終了するが、更にダッシュルートがプレイ可能となる。
  • A´B´C´D´E´と、各シナリオに対応した5つのルートが用意されている。分岐は無く、ストーリーも本編ほど長くはない。各シナリオの主人公は本編と同じ。
  • D´C´の二つは過去編、 B´A´は未来編、は虚実編 となっている。

ストーリー

西暦2032年04月26日月曜日。午前00時12分。 メガロポリス:東京。

およそ3年ぶりに皆既月蝕が観測された。 単なる天文イベントだったはずのそれは、やがてまったく予期しない「ある怪現象」を引き起こす。 なぜか、それに呼応するように頻発化していく不可解な事件やテロ、ネットワーク犯罪……。

複雑に入り乱れ、混ざり合っていく実と虚。 まるで、起きていながら眠り続けるように。

何かが狂い始めていた。 誰にも見えないどこかで、誰もが知っている何かが。

これは、そんな世界に生きる少年少女たちの、邂逅と別離の物語。

そして……。

始まりは終わり、終わりが始まるのだ。

(公式サイト引用)

シナリオ紹介

  • 葵 日向(Aルート)
    • 葵 日向は夢月という双子の妹がいたが、2年前に失踪して行方がわからなくなり、それ以来、離人症が悪化する。
    • ある日どこからともなく送られてきた怪メールをきっかけに、能動的に行動するようになり、妹の失踪の原因を探ることになる。
  • イシュタル/Ishtar。(Bルート)
    • イシュタルはハッカーチーム《クリミナル》のリーダーとして活動する。《クリミナル》を中心とした全体的に明るいシナリオ。
    • そんなある日、チームは謎のクラッカーと衝突する。やがてそれは、サイバーテロを目論むテロリスト集団《コード》との対決にまで発展していく。
  • イシュタル/Ishtar(Cルート)
    • Cルートのイシュタルは、なぜか単独で行動している。もうひとりのイシュタルと比べると、やや冷たい印象を受ける。
    • あのイシュタルと同一人物かどうかは不明。
  • He/ヒィ(Dルート)
    • 神出鬼没で、その痕跡を残さない、インターネット上に現れる伝説のハッカー
    • 「He」とは、あくまで都市伝説の中の人物のはずだったのだが……

評価点

  • 多く伏線を張られたシナリオ
    • ミステリー小説のように巧妙に伏線を最終シナリオで判明できる、謎にはプレイヤーを感嘆させてくれる。
    • 中澤氏が嘗て手掛けていた『infinityシリーズ』のようなトリックとカタルシスも健在。
    • 張られた謎も多いため最後まで引っ張ることができ、プレイヤーのクリアまで飽きさせない。
    • 中澤氏の代表作と言うと、投げっ放しの結末で波紋を呼んだ『Remember11 -the age of infinity-』が挙げられるが、本作は下記のような問題点こそあれど露骨な投げっ放しのオチではない。
  • 親切なシステム
    • オートプレイ機能、いつでも行えるセーブ/ロード機能(100箇所セーブ可能)選択肢など自動でセーブしてくれるクイックセーブ機能。
    • プレイ環境をカスタマイズできるオプション機能、各システムへのショートカットが行えるファンクションキー高速な既読メッセージスキップ機能。
    • 前回のプレイの履歴さえも閲覧できるテキストログ機能(ログ中の音声再生や、ログ上からのゲーム再開も可能)。
    • シナリオを途中から開始できるショートカット機能など、繰り返しプレイを快適にサポートするシステムも万全極めてユーザー思いのシステムである。
  • キーワード
    • 』や『Steins;Gate』でお馴染みのゲーム本文中の用語を解説するキーワード機能が搭載されており、未知な用語や固有名詞などはすぐに調べられる。
    • メッセージから直接用語解説にジャンプできるのも嬉しい。  
  • 世界観
    • 近未来のSFでバーチャル世界と現実世界の区別しづらくなったという映画マトリックスに似たような非日常感が多いシナリオだが、どこが現実味のある世界観でプレイしていく内にのめり込むようになっている。
    • SF要素もそこまで非現実的な物ではないためSFが苦手な人間もそこまで取っ付きにくさはない。
  • デフラグマップ
    • I/Oのシナリオ構造はデフラグマップと呼ばれる円形のボードで管理されており、最初は全て虫食いの状態だが、プレイする内に色が付いて行く。
      • 色はA:青、B:赤、C:橙、D:緑である。
    • シナリオを次々とクリアする毎に、だんだんとシナリオは完全な状態へと修復されていく、
    • 修復されると、これまで断片化して読めなかった部分が、次回からは読めるようになり修復処理はクリアしたルートだけでなく、他のルートにも行われる。
    • 修復の状況とメッセージの既読状況を確認することができ、どこの選択肢がおかしいか、どのEDを読んでいないか分かりやすい。
    • まれにBADエンディングによっては、修復した箇所が再び破損する場合もある。
  • BGM
    • 当時、BMS作者として活動しており、現在は音ゲーに曲を提供しているonoken氏が作曲を担当。どれのよく場面にあっており、OPテーマ『fragment』も高評価。

問題点・賛否両輪

  • 立ち絵が少なすぎる。
    • 脇役はもちろん、声のあるキャラクターすら無い。
    • それなりにシナリオに関わる家族やクラスメイト、果てはネルガル、ナブー、といった重要キャラクターさせ立ち絵が無い。なので重要な会話シーンが誰もいない部屋で姿や形が出ない透明人間の音声だけが流れるホラーのような事もしばしば。
    • その他大勢の敵も使い回しが多い。
    • 他にも重要なアイテム、テーブルに置いてある食べ物、ベッドに寝ているキャラなども描かれていない。想像しろとでも言いたいのか…
    • CGにはキャラが描かれているが、立ち絵が無いという残念な事も
    • これは予算の問題だったらしく、中澤氏も「圧倒的に立ち絵が不足していた」と認めている。後に発売されたPC版では10人以上もの立ち絵が追加されている。
  • テーマが多すぎる
    • 神話、宗教、哲学、心理学、科学、IT、プロミング、力学などあらゆる要素が込めれらており、テーマが多すぎて何が何だか分からない
    • 一つの事件を軸としたというが、かなりずれているような印象も受ける。
    • またメインテーマのSF部分もSF好きな人にも進められるかと言えば、かなり難しい。
    • これもまた、実力派の脚本家陣がそれぞれの得意分野を活かし過ぎて、整合性が取り切れなかった結果かもしれない。
  • 選択肢が少ない
    • 1ルートでせいぜい5~6個。他のADVと違い選択肢が少なく、一本道要素が高い。
    • またBADエンドも「選択肢を間違えたら即死」が殆ど。
  • 一部科学的に間違いがある
    • 「100匹の猿」理論や「レミングの集団自殺」など現在では否定されている説が事実とされている。
    • 著名な科学者がいる世界観なのだから一人も否定しないのは違和感を覚える人は覚える。
    • フィクションなのだから「説が正しいと認められた世界」「否定されたがそれは捏造だった」と言う設定でも問題は無いのだが、ならばそうと作中で明言しておくべきだったかもしれない。
  • シナリオ
    • バーチャル世界と現実世界が混合していくという環境で進んでいくシナリオは徐々に境が分からなくなり混合する。
    • 4人の主人公が現実、バビロンを時間や空間を行ったり来たりするため分かりづらい。主人公たちや敵の目的がしばしば理解が追いつかなくなる。
    • 本作にはいわゆる多くの物語作品である「解説役」「聞き役」という立場の人間が少なく、世界観を理解しているキャラクターばかりで、プレイヤーを置いてけぼりにしている感覚を覚える事も
    • 特に「C」、「D」パートは時間の流れが曖昧になっており、理解に非常に困難。
      + ネタバレ注意
    • 現実世界とバーチャル世界を混合し、さらにプレイヤーの理解が及ばなくなる。またこれまでのシナリオと違いSF全開、ファンタジー全開で何でもアリなお話になってくる。
    • 主人公がゲームをログオフしていると勝手に行動してくれるシャドウヌルというAIがあるのだが、「C」、「D」パートではそのシャドウヌルが生命を得て勝手に行動するため、現実の人物かシャドウか分からなくなる。
    • また終盤はある人物が別の人物としてバビロンで活動するため、判別しづらい。
    • 加えてバーチャル世界の出来事が現実にも起こる多世界解釈や量子論などのせいで現実とネットの世界が混合する。
    • 最終版、夢月が寝ている状態を起こすため、日向と真佑実が夢月の夢に入る、するとその夢で寝ている夢月の夢に入る、さらにその夢で寝ている夢月の夢に入るという無限ループに陥ると言う訳がわからない展開がある。
    • このように時系列や視点や環境が入り乱れるシナリオC以降は情報を整理するのが極めて困難。
    • 一方で「A」「B」パートはしっかりとした骨組みのため理解が追いつかない事は少ない。
    • 結末
      + ネタバレ注意
      • 最大の敵である大企業のエクサークの壊滅がやけにあっさり。少々物足りない、
      • 多層世界説ようはパラレルワールドであるため正史があっても、終盤で分岐してしまい例えばとあるルートでハッピーそうなエンドを見たときでも、他の結末のせいですっきりとしない。
      • また現実とバーチャルが混合されたので死んだキャラが生き返ったり、AIが生命を持ったりと少々強引。
      • 終盤部分は世界観を広げすぎてまとまって無いという意見もある。
      • ラストの虚実編についてはメタな観点にまで話を持って行ってしまっている為、もうエピローグは解釈任せ。『Remember11』のような投げっ放しではないにしても、後味スッキリとはとても行かないだろう。
  • テンポ
    • いちいち雑魚の断末魔を挟むなどテンポが悪い。
    • 難解なSF理論の解説など挟まれ助長とも言われる部分も多く、意味のない回想シーン多く、特に無限ループに落ちる場面は二度も繰り返される。
    • 今作はスキップがしっかりしている分ましだが…。
  • キャラクター
    • 一部キャラクターが少々共感や同情しにくい。これも立ち絵がry
    • 日常的描写が薄く、キャラクター感情が分かりにくい。ストーリーを進める記号とも言われる事も
    • また多くのキャラクターはアバターネームを使用するため現実の名前と混合してしまい、誰が誰なのか理解しにくい。
      + ネタバレ注意
    • 葵 日向
      • うじうじキャラで好感が湧きづらい。おまけに行動理念も少々描写不足気味。妹を探す理由もシスコンだからで済ます。
    • アンドラス
      • アンドラスはクリミナルのメンバー綾瀬 みかをストーカーした人物としてシナリオに登場してクリミナルと対決する。卑屈かつ小物で同情の余地も無い様な人間で、しかも直接は銘記されていないが強姦疑惑まである。
      • あるパートでは可愛い妹が居て兄を大切に思っていたりイシュタルに協力するなど比較的良い奴のように描かれる。
      • 何故こんな奴の優遇するのか首をかしげるユーザーも多い。
    • エンリル
      • エンリルはテロ集団のリーダーで《クリミナル》を殺害し、その家族まで手を掛ける。
      • 終盤に和解するのだが、上記の事もあるのに少々強引である。
      • またエンリルは日向が探していた夢月の恋人であり、日向目線で見るとなんだがNTRされたような気がしないでもない。
    • 葵 夢月
      • 日向の妹であり、今回の騒ぎの元凶の一人。なので余り助ける気力が沸かないというプレイヤーも多い。
  • 同性愛者が出てくる
    • 何人か同性愛者、もしくはそれに準じたキャラクターが出てくる。例えば主人公の一人のイシュタルなど、「おねえさま」と呼ぶ女性を慕っているなど、モロにそれである。
    • 人それぞれだがやはり多くの人が好感を抱く設定ではないだろう。

総評

実力派スタッフを起用しただけあり、オリジナリティ溢れる設定や濃厚な世界観、謎解き要素、伏線回収など魅力的なシナリオを誇る作品である。
一方でプレイヤーを置いてきぼりした場面も多く非常に理解しにくく、癖の強いキャラや展開の数々もまた人を選ぶ。
登場人物が多いのに立ち絵が少なすぎるせいで様々な弊害も起きた。
その結果、著名人を多く起用した割にはかなりマイナーな作品になってしまっている。もう少し一般向けにシフトしたら名作として名を馳せたかもしれない、惜しい作品である。