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Enter the Gungeon - (2017/06/25 (日) 15:49:26) の編集履歴(バックアップ)


Enter the Gungeon

【えんたー ざ がんじょん】

ジャンル シューティング+ローグライク
対応機種 Windows 7~10、OS X 10.6~(Steam)
プレイステーション4
発売元 Devolver Digital
開発元 Dodge Roll
発売日 2016年4月5日
定価 【Win/Mac】1,480円
【PS4】1,500円
判定 良作


概要

見下ろし型の2D弾幕シューティングに、ランダムダンジョン、ランダムアイテムといったローグライク要素をドッキングさせた作品。
"Gungeon"(以下「ガンジョン」と表記)の名前が示す通り、世界観を始めプレイヤーの攻撃手段や敵キャラクターのモデル、アイテムや固有名詞のネーミング等々、作品を構成するあらゆる要素は「銃」に所縁のある物で構成されている。
シューティングの「己の実力さえあれば、あらゆる不可能を可能にできる」という動的な側面と、ローグライクの「限られたリソースを効率よく運用し、蓄積したノウハウで戦略的にゲームに臨む」という静的な側面が絶妙な具合で混ざり合っており、ランダム要素がもつリプレイ性と相まって、プレイヤーに何度でも挑戦させるモチベーションを与えてくれるゲームに仕上がっている。

システム

  • プレイヤーキャラクターを構成する主な要素は3つ。攻撃手段である「銃」、使用することで効果を発揮するアイテム「アクティブ」、所持するだけで効果を発揮するアイテム「パッシブ」。
    プレイヤーはこれらの3要素にそれぞれ異なる特徴をもつ複数のキャラクターから一人を選び、ガンジョンの踏破を目指す。
  • 基本的な操作は7つ。「移動」「照準合わせ」「射撃」「ドッジロール」「ブランク」「アクション」「アクティブの使用」。
    • 射撃で使用する銃にはそれぞれ1マガジン毎の弾数と総弾数が設定されている。ただし最初から持っている銃とごく一部の銃は総弾数に制限がない。
    • ドッジロールは無敵時間がある高速移動兼緊急回避技。発動回数に制限はないが終わり際に若干の隙が出来る。
    • ブランクは敵弾を消し、敵キャラクターを仰け反らせる所謂ボムの事。ガンジョン内の隠し部屋を暴く事にも利用する。回数制限あり。ガンジョン内で拾得するか、下のチェンバー(階層の事)に移動する事で回復する*1
    • アクションは「机を立てる」「ドラムを転がす」「スイッチを入れる」「トロッコに乗る」等、ガンジョン内の様々なオブジェクトに対する行動として使用する。
  • チェンバーは複数の部屋で成り立っており、一度部屋に侵入すると、中の敵を全滅(以下クリア)させなくてはその部屋から出ることはできない。
    • クリアにした際確率で、体力を回復するハート、銃の弾薬、施錠を解除する鍵、アイテムが入っている宝箱等がポップする。
    • クリアにした部屋では敵は再出現せず自由に往来が可能ではあるが、アイテムを置いたままその部屋を去ると一部の例外を除いてそのアイテムは消滅する。
  • ガンジョン内では、敵がドロップする薬莢を対価に各種アイテムを提供してくれるショップ、課題をこなすことで報酬がもらえるNPC、最初から宝箱が置いてある部屋等が存在する。
    • 但し彼らがいる部屋の入口や宝箱は施錠されていることがあり、その際は解錠する鍵を消費しないと利用する事はできない。
    • また各種NPCやアイテムは初期状態では一部しか利用できない。ガンジョン内で彼らを救出する、彼らの依頼をこなす、ゲームの実績を獲得する、後述するヘゲモニークレジットを支払う等の行為で順次アンロックされる。
  • 各チェンバーには必ず一体ボスが控えており、それを撃破することで次のチェンバーに繋がる部屋に入る事が出来る。
    • ボスを倒すと薬莢、各種アイテム、ヘゲモニークレジットが手に入る。ボスへの挑戦は(部屋さえ見つかっていれば)どのタイミングでもよく、撃破後も探索は続けられる。
  • この作品での各プレイは独立している。ゲームオーバー時は当然、仮にガンジョンを踏破しても所持アイテムは一切持ち越されない。

評価点

  • 実力が必ず結果につながるゲームバランス
    • 概要でも少し触れたように、ローグライクはそのランダム性故「運」の要素が切り離せない。
      「常に最善手を打ってきたが、リソースに恵まれずついにクリアできなかった」というのはよくある話である。
      本作もご多分に漏れず運の要素はついて回るのだが、本作は「プレイヤーの実力の上昇による恩恵がより大きい」ように調整がなされている。
      これがシューティングであるからというのももちろんそうだが、他にも具体的にいくつか挙げると、
      ・「各チェンバー内には必ずショップと二つ以上の鍵付き宝箱が配置されてある」
      ・「施錠を解除する鍵は、部屋でのポップがない場合は必ずショップで販売している*2
      ・「ボスをノーミスで撃破すると体力の最大値が2つ分上昇する(効果のアイテムがもらえる)」
      ・「部屋をクリアにする度に、アイテムがポップする確率が上昇する*3
      つまりプレイヤーの実力の上昇が、体力が増える、回復や補給に使う薬莢を他の強化に回せる、消耗を上回るペースでリソースが手に入る、という形で返ってくるのである。
      よってどんなに運に見放されていようとも、実力が十分ならほぼ毎回確実にガンジョンを踏破できるようになる。このように運の要素を孕みながらも「己の実力さえあれば、あらゆる不可能を可能にできる」という動的な側面が最大限活かされている点はシューティングゲームとしては非常に嬉しい点である。
    • プレイヤーの実力とはもちろん射撃精度などの操作技術だけの事ではない。ローグライクよろしくプレイヤーのノウハウの蓄積も本作では重要なファクターとなっている。
      弾幕シューティングの看板に偽りなく、序盤から敵が大量の弾をばら撒き、難易度は相応に高い。しかし敵弾は総じて大きく、見やすく、人間の反応速度で見切れないほどの速さはない。
      また敵は攻撃の瞬間に「銃身がプクッと膨れる」「榴弾に亀裂が走る」「武器を大きく振りかぶる」「レーザーポイントが一瞬途切れる」といったサインを必ず発しており、加えて個体ごとに「必ずプレイヤーの現在位置を狙う」「必ず未来位置を狙う」「一定回数ごとに必ずインターバルがある」「敵にもダメージを与えられる攻撃をする」といった特徴も持っている。
      よって難しいながらも理不尽な攻撃は一切存在せず、プレイを重ね敵の特徴を深く知れば、恵まれた反射神経が無くても十分に立ち回れるようになる。
    • 敵だけでなくプレイヤーの銃にもノウハウがある。単純に強い、弱いで区別されるものではなく、「威力が大きいが単発でリロードも長い銃」「DPSが優秀だが直ぐに弾切れになる銃」「チャージが必要で連射はできないが、燃費が良く長持ちする銃」「敵を押す力が非常に強い銃」など銃ごとに様々な特徴があるほか、「リロードするごとに性能が変化する」「マガジン内の特定の一発のみ特殊な攻撃をする」といったギミックを備えている物も存在する。
      これらの特徴を把握し、「雑魚用」「ボス用」「最初の一発用」という様な用途の使い分けを知れば攻略の効率は格段に向上する。
      1チェンバー毎に必ず一つは手に入るという最低限の保証はあるものの、実は銃の入手は本作で最も運に左右される箇所であり、故に効果的な銃の運用はかなり重要度の高い要素となっている。
      このように、部屋ごとの敵の編成や地形をよく観察し、どの銃を使うか、どの敵から倒していくか、どの方向に誘導すべきか、カバーに徹するべきか追いつめられる前に出るべきかを判断するといった「限られたリソースを効率よく運用し、蓄積したノウハウで戦略的にゲームに臨む」という静的な側面が求められる点はローグライクとしては非常に嬉しい点である。
    • 以上の点から、この作品は「どんなにひどいプレイになろうとも足りない物は自分の技術であると納得ができる」「結果への反映度から実力の向上を実感しやすい」ゲームになっており、これが運によるランダム性というスパイスと合わさって、プレイヤーに何度でもチャレンジしようという気持ちを起こさせてくれるのである。
  • 快適な操作性
    • 複雑なモデルやモーション、リアルなコリジョンなどの制約に縛られないダイナミックな操作性こそ2Dゲームの真骨頂であるが、本作もその例にもれず直感的できびきびとした動きを見せてくれる。
    • すべての動作がワンボタンで実行できるようになっている*4のでプレイヤーの反応速度を妨げるものは一切ない。熟練すれば画面いっぱいの弾幕をスイスイよけながら一方的に弾丸を叩き込む快感に酔いしれることが出来る。
    • 当然すべてのボタンは自由にカスタマイズ可能。加えてコントローラー操作の場合は弾丸の発射角度を敵に向かって自動で補正してくれるアシスト機能と照準を伸ばした方向に画面がスライドする機能も付いており、さらにそれぞれの加減を調節することもできる。
    • ガンジョンの奥に進むにつれて所持する銃の数が増えてくるのだが、銃の選択は「一つづつ順番に選択」「予め登録した二種の銃を交互に選択」「一覧から直接選択*5」と三種類用意されており、スムーズに銃の選択が行えるようになっている。
      本作で銃の使い分けが重要なのは既に述べているとおりなので管理が煩雑にならない配慮は有難い。
    • ガンジョン内の部屋は複雑な地形をしていたり、いろんなオブジェクトが配置されたりしている。
      ただ撃って、避けての繰り返しに終始するわけではなく、「机を盾代わりにする」「罠を起動させる」「相手を落とし穴に叩き込む」「柱を利用してカバーに徹する」といった具合に戦闘中の選択肢は意外と多い。
  • 豊富でユニークな銃器類
    • 「銃」をテーマにしたゲームだけあって登場する銃の数は非常に多く約180種類ほどにも及ぶ。
      しかし特筆すべきはその数の多さではなく、リアル、フィクションの区別なく古今東西あらゆる所から銃のネタを引っ張ってきている点にある。
      ジャンルをゲームだけに絞って例を挙げてみても、
      ・青くて丸いフォルムが往年の名作アクションを連想させるチャージショットロックハンド
      ・伝説のバウンティハンターが使っていた、なんとも女性的な名前の銃ヒロイン
      ・凄まじい火力を誇り、どこぞのスパイゲームでも絶賛されていそうな超兵器AUガン
      ・同じくスパイゲームで酷評されていそうなダメ銃「Klobb」
      ・あれ、そういえば本作と似たようなコンセプトの涙で攻撃するゲームがあったような…「泣ける銃」
      ・体力満タンで剣先からビームが…もはや銃でも何でもない背徳の呪具
      ・宇宙で働くエンジニア必携の工具マインカッター
      ・ダメージを受けると性能が下がる不思議な銃ポラリス?
      等、枚挙に暇が無い。
      ゲーム以外にも、発射すると「デーデンッ」の効果音と共に巨大なサメに襲われる「圧縮空気タンク」、第三次世界大戦が始まりそうなロケットランチャー「Com4nd0」等、本当に色んな所から節操なくネタを拾ってきている。
      プレイ中に出会った銃を見て「ああ、これはアレの事だな」とニヤリとするのも本作の楽しみ方の一つ。ただこのような有様故、どれもこれもトンデモ銃ばかりなのはご愛敬。

賛否両論点

  • ストイックなゲーム性
    • 評価点で「プレイヤーの実力が最大限反映されるゲーム」と述べたが、これは裏を返せば唯一確かなものはプレイヤーの実力だけという事でもある。
      例えば『不思議のダンジョンシリーズ』などにあるアイテムの引継ぎといった、直接難易度が下がるような要素はゲーム側からは提供されない。
      また理不尽ではないとはいえ高難易度であることには変わりなく、何度も何度も死んで覚える事が前提なため、面白さを実感する前に挫折してしまう事もありうる。
      あくまで「プレイヤーにゲームのレベルを超えさせる」コンセプトであるため、万人が手放しで受け入れられるような作品ではない。

問題点

  • アイテム類の取捨選択が厳しい
    • 本作で最も批判が集中する点。
      システムにある様に、部屋にあるアイテムは次の部屋に入った時点で消滅するため、弾薬やアクティブなどのスタックできないアイテム類は次のチェンバーどころか、次の戦闘にすら持ち越すことが出来ない*6
      特に弾薬が保存できないのが厳しい。ポップした時点で補給をしなくてはならない為に有効に使えないケースが多く、効率的な運用を覚えるまでは折角良い銃を手に入れてもすぐに弾切れにしてしまいがちである。
      アクティブもショップで大枚はたいて購入した直後に宝箱から別の物が出てきて、支払った薬莢が無駄になるといったケースは多い。
      この点ばかりは本作を肯定的にとらえているユーザーからも「やりすぎ」との批判が強い。
  • 隠しステータスに対する言及がない。
    • 実はキャラクターを構成する要素は上記以外に二つある。それは隠しステータスである「呪い」と「Coolness*7」。
      前者は「強化された敵が出現する確率が上昇する」「アイテムのポップ率が下がる」「敵が薬莢をより多く落とす」、後者は「アイテムのポップ率が上がる」「アクティブのクールタイムの減少*8」といった効果がある。
      リソースを得る機会の増加はローグライクでは死活問題なのでこれらの要素は結構重要なのだが、ゲーム中これらに対して全く説明がない。呪いは言葉と上昇した時のエフェクトだけは存在するがCoolnessにはそれすらない。
      また本作にはアイテム同士の組み合わせで特別な効果を得る「シナジー」という要素があるがこれも効果を発揮した際のエフェクトのみで一切の説明がない。
      一番困るのはこれらのステータスに関わるアイテムの効果を把握することが出来ない事である。
      例えば「投票用紙」というアイテムはCoolnessを上昇させ、「決闘用ピストル」という銃と一緒に所持することでその銃の性能をあげるシナジーを持っているが、このゲームの百科事典である「アモノミコン」の解説ではそのことに触れられておらず、何も知らないプレイヤーにとってはただのフレーバーアイテムにしか見えない。
  • ボリュームがやや少なめ
    • 舞台であるガンジョンは基本5チェンバー、隠し3チェンバーの計8ステージ。ローグライク的な駆け引きを楽しむためにはもう少しボリュームが欲しいところ。
      また、踏破するまで何度もチャレンジすることになるとはいえ、流石に安定してクリアできるようになってしまうとやる事が無くなってしまう。
      各アイテムや隠しキャラクターのアンロックといったやりこみ要素なども存在するが、大抵の場合全てをアンロックするより前に、全てのチェンバーを制覇する事になるだろう。

総評

電子ゲーム技術が向上し、一つのゲームが持つデータ量も増えた現代において、映画かと見紛うほどの美麗なグラフィックや、「クリアするまでがおまけでクリア後のおまけが本番」と言える程ボリュームの多さを売りにした作品は多い。
勿論そのこと自体は喜ぶべきことであるが、そんな中で2Dのレトロなグラフィックで「ゲームをクリアする事に全力を傾けさせる」という呆れるほど昔ながらのコンセプトをひっさげたこの作品は、懐かしいながらもどこか新鮮で清々しい。
それは数多くのゲームと触れ合ってきたがゆえに、時には冷ややかな目を持ってゲームに接してしまう我々の心に風穴を開けるだけの力があるからなのだろう。
万人向けではないが、シューティングの持つ「避けて撃つ楽しさ」、ローグライクの持つ「学ぶ楽しさ」、そしてゲームのもつ「達成する楽しさ」を確かに持っている良作である。