「黒ノ十三」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

黒ノ十三 - (2013/11/25 (月) 11:50:52) の編集履歴(バックアップ)


黒ノ十三

【くろのじゅうさん】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 トンキンハウス
発売日 1996年9月27日
定価 5,800円
ポイント 13本のホラーノベルオムニバス作品
重度の鬱シナリオを含む

概要

人気作家・綾辻行人が監修を務めたホラーノベル。
本作には複数の執筆者からなる十三編の、それぞれに“形”の異なる「恐怖」の物語が収められている。
※説明書より一部引用

特徴

  • シナリオは全部で13本用意されていて、ゲーム開始時点では4本のみ解放されている。
    そのシナリオを全て読むと4本ずつ新たなシナリオが解放されていき、12本の物語を読むと綾辻原作の最終シナリオ「鉄橋」がプレイできる。
  • 各シナリオのジャンルは、不気味な話・不思議な話・不条理系など様々だが、いずれもメインテーマは「恐怖」であり、ハッピーとは言えない結末を迎えるものが多い。
  • シナリオの途中には選択肢(常に3択)が登場する。なお、正解はいずれの場合も1つだけで、残りの2つを選ぶと必ずゲームオーバーとなる。
    いわゆる即死ゲー。
    • バッドエンドの内容については、むしろ正規終了の結末よりも平穏であったり、ギャグ色が強かったりするものもある。
    • ゲームオーバー時には、「“黒ノ十三”(タイトルで表示される本)が呪われる」ようなムービーが流れる。意外に種類が多い。

評価

  • シナリオの評価はものによってまちまちであり、読後感も含めた完成度を高く評価されているシナリオもあれば、練り込みの浅いシナリオもある。
    全体については「出来の差が激しい」と言われやすく、良くも悪くも複数ライター制にありがちな評価となった。
  • 大元のコンセプトである恐怖を正面から描いた作品は評価の高いものが多い。
    • 中でも「羽音」というシナリオは全作品中でも非常にインパクトの強い内容である。
      気分が悪くなるとさえ言われるその凄まじさは、本作を鬱ゲーとして有名なものにした。
      + 羽音シナリオ・ネタバレ
      • シナリオは主人公の一人称で進む。
        その内容は「同級生の虐めに遭いゴキブリを食べさせられた主人公は悪夢に悩まされ、現実でも追い詰められていき、最後には大好きだった母親に包丁で殺害される」というもの。
        更にラストシーンで主人公は真相を思い出すのだが、これも「いじめに耐えかねた主人公は自殺を考えたが、その勇気もなかったので、母親に殺してもらったのだった」という陰惨なもの。
        つまり主人公は最初から死人だったのである。しかも「その後自室の壁に埋め込まれた主人公の死体は今もゴキブリに食われ続けている」という描写まである。
        そして最後は「主人公の残留思念は再びシナリオ冒頭へ戻り、生前の記憶とゴキブリの悪夢と母親に惨殺される激痛に永遠に苦しみ続けるのだった」という悲惨なループオチ。
        最後まで、一切の救いも逃げ道もない。
  • ゲームオーバー展開についても、本来の物語とはまた違った恐怖を味わえる良作から、「何事もなく朝を迎えました」「あなたは死にました」といったやっつけ仕事まで玉石混淆。
  • 最終シナリオの「鉄橋」は尻切れトンボな内容で、全シナリオの中でもおそらく1番評判が悪い。
  • BGMの質は良く、種類も多い。サウンドテストも用意されている。

問題点

システム面の評判はあまり良くない。

  • シナリオ中は選択肢を選ぶシーンでしかセーブできない。
    正解の選択肢を完璧に推察できるタイプのストーリー運びではない上、ゲームオーバーになるとセーブデータの読み込み直しから始める仕様であるため、ポイントごとのセーブが必須。
    • 実質分岐しないシナリオであることから、バッドエンドの存在は「テンポを悪くしている」と評されることも。
  • クリアしたシナリオの再読は可能だが、「鉄橋」が出現すると、もうそのデータでは再読は不可能となる。
    • メモカのセーブデータに「長時間プレイありがとうございます」というメッセージがつく仕様にするなど、妙なところだけ凝っている。

総評

様々な角度から様々な恐怖を描いた本作は、オムニバスホラーノベルとしての立脚点に忠実な出来に仕上がったと言え る。
救いのない結末も含めて一つの物語として描ききる方向性などから『世にも奇妙な物語』となぞらえられることもあり、マイナーながらファンからは愛されている作品である。
システム面の不親切さとそこからくるテンポの悪さがサウンドノベル作品としての快適性を損なっていること、練り込みの浅いシナリオが含まれていることなど、良作として扱うには幾分疑問が残るものの、画像の枚数やBGMの種類は多く、気に入る物語に出会える可能性は高い。
ADVゲームの好きな人なら、大いに触れてみる価値があるだろう。

余談

  • 後に綾辻は本作について「自分はほとんどノータッチだった」と関与を否定している。