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ウィザードリィ外伝IV ~胎魔の鼓動~ - (2013/05/15 (水) 16:25:03) のソース

*ウィザードリィ外伝IV ~胎魔の鼓動~
【うぃざーどりぃがいでんふぉー たいまのこどう】

|ジャンル|RPG|~|
|対応機種|スーパーファミコン|~|
|発売元|アスキー|~|
|開発元|アスキー、アクセス|~|
|発売日|1996年9月20日|~|
|ポイント|異色風にしてベーシックなWIZ|~|
|>|>|CENTER:''[[Wizardryシリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1088.html]]''|
//|分類|&bold()''異色作判定''|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
WIZシリーズを移植・販売していたアスキーがオリジナルシナリオの作品として、GBで独自展開してきたWiz外伝シリーズ。~
4作目である「胎魔の鼓動」はプラットフォームをSFCに移して発売した。

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**特徴
***東洋風の世界観
-もともとWIZシリーズにはサムライ、ニンジャなど和風の風味が盛り込まれていたが、外伝4ではその部分をさらに強調。舞台を「緋蓮」と呼ばれる日本風の国に移し、迷宮も畳に障子など和風に。刀系統の武器も大幅に増えた。
--だが、「アメリカ人の見た勘違いした日本」の世界観である。当時のゲームは和製でもそういうのが多かったが。
--敵も和風のもの(侍、忍者、妖怪など)がメインに。とはいえ外人風の敵やモンスターも普通に出る。というか太ももを露出したセクシーくノ一が大幅に増殖。東洋うんぬんよりお色気が勝る異色の世界観に。
-プレイヤーの職業や種族はいつも通りなのでそこは和風でもなんでもない。

***イベントの大幅増加
-序盤で探索する3つの塔には、これまでの作品とは比べ物にならないほどのイベントが待ち受けている。たいていは「施錠された扉を開けるためのキーアイテムを持ってこい」という内容なのだが、ある扉を開けるのに別の塔で拾うアイテムが必要になったりと、その組み合わせは複雑怪奇。
--和風Wizを謳っているだけあって、女のすすり泣きやしゃべる生首など、日本の怪談風の演出がてんこ盛りである。

***本編(ナンバリングタイトル)へのリスペクト
-ゲームを進行すると出てくる古の迷宮。これが#1の迷宮に酷似しており、同一の迷宮ではないかと思わせるのだが、なぜそれが東洋の国にあるのかという説明は無し。
-さらにゲームを進行すると舞台はリルガミンに移る。こうなるともはやいつものWizである。外伝3から引き続き、ダイヤモンドナイトも友情出演(?)。
-後半、唐突に外伝3のキーパーソンであったアガン・ウコーツが出てくる。しかも、後半部分は「SCRIPTURE OF THE DARK2」(ウィズ外伝3のサブタイトル)であったことが2回目のスタッフロールで明かされる。外伝3をプレイした人なら、その後リルガミンがどういう末路をたどるかを知っているので…

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**評価点
-ハードをSFCに移したことによるボリュームアップ。グラフィック、音質、アイテム総数など全てにおいてパワーアップした。
-システム面は良好なアスキーWizそのものなのでプレイは快適。
-ミニマップの追加でより快適、かつ迷わずに探索可能。勿論、使わないことも可能。
-外伝3で外されていたフェルパー、サイオニック、モンクが追加、BCF以降で追加された種族&職業が勢揃いした。サイオニック呪文も従来のウィズ形式の名前で登場した。
-シナリオ自体の難易度が低い上に、序盤のレベル上げも容易。キャラクターの育成、レアアイテム集めに専念できるようになった。
--キャラメイク時にボーナスポイントが10以下だと3年間修行でき、Lv4の状態で登録できる。修行で能力値を上げてから本命の職業に転職と言った技も使用できる。修行には加齢のデメリットもあるが、それを見越してニューキャラクターの年齢が低めになっているため問題は無い。もちろんこれまで通り高ボーナスを狙うこともできる。
-職業や種族、装備関連の改善点多数。例を挙げると、「ドラコンが戦闘中逃走が可能になり、LV9からブレスが1グループに放てるようになった」「二刀流が可能になった」など。
--宝箱の罠解除やアイテムの識別を魔法で行えるようになった。どちらも高レベルの呪文で習得にはある程度の育成が必要なものの、この呪文の登場により盗賊技能所持者やアイテム鑑定用のビショップは必ずしも必須職業ではなくなった。
-敵出現の際には、不確定名グラフィックがアニメーションして登場する。テンポを崩すこと無く凝った動きをするため見応えがある。特にマーフィーズゴーストは必見。

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**問題点・賛否両論点
***ストーリー、世界観
-やはり従来までとは違いすぎる世界観が鼻に付く。それでいて出てくる敵やアイテムが今までのシリーズのデータに和風の妖怪やアイテムなどを当てはめているような物が多く、違和感がぬぐえない。さらに、和風にもかかわらずテキストが海外小説の翻訳風(つまりいつものウィズ)であるため、ますます違和感が増大する有様。
-上記の通り、本作後半は「外伝IIIのエピソードゼロ」であるため、前作を知らない人間がプレイすると、「&bold()''PCが殺した''街娘ダリアを、アガンが怪しい儀式でどうにかしようとして…」という非常に後味が悪い上にぶつ切りなエンディングで終わる。
--もっとも外伝3をプレイしていた場合でも、&bold()''この儀式が引き金となってリルガミンが滅亡する''ことを知っているため、なおさら後味が悪い。
-本編前半も、個々のイベントに力が入っている割に本筋のストーリーはいまいち良く分からないまま終わる。3つの塔をクリアすると、唐突に''名前も分からない''黒幕が初登場して最終ボスを復活させる。黒幕が一体何をやりたかったのか、そのラスボスは何者なのか、さっぱり分からないまま。

***戦闘バランス
-本編クリアくらいまでの間、敵が弱い。前述の通り最初からある程度強いキャラを作り出せるうえ、序盤でも楽に経験値を稼ぐ方法があるため、戦闘に苦労するのはごく最初だけ。
--恒例の隠しダンジョン「ドラゴンの洞窟」では敵の強さが高騰するが、即死や状態異常になることが少なく、攻撃力も大幅に抑えられている。高レベルのパーティならうっかり死ぬ確率は低い。
-攻撃魔法のダメージはレベルに関わらず固定(しかも、高位魔法の威力が下がっていたりもする)なのに、敵のHPは高騰しているため相対的に攻撃魔法が弱体化。外伝4に限った問題ではないが。また、敵1グループ辺りの数が少なめなので、グループ攻撃の必要性も薄い。
-キャラの性別が選べるが、専用職業、専用装備で女性が優遇されている。
-本編のラストダンジョン「SANCTUARY」は、なぜか直前のダンジョンよりも数段弱い敵ばかりが登場する。
--勿論苦戦するはずもないので、後半は通路が迷路状に入り組んだダンジョンでスイッチを探し回るだけの作業になってしまう。
--しかもラスボスまでもが直前のダンジョンのボスよりも格段に弱いという謎仕様。加えて最後の最後で、本編に全く関係ない・名前すら出ていないはずのアガン・ウコーツ(=徳永剛プロデューサーをモデルとした人物)が突如登場して終わり、という興冷めストーリーとなっている。

***セーブデータ破壊バグの存在
-初期ロットでは、「アイテムの呪いを解く「ジルフェ」という魔法を使うと、セーブデータが破壊されてしまう」という致命的なバグがある。修正版への交換、修正されているニンテンドーパワー版の入手など今となっては不可能。
--呪いを解くのは従来通り店で行えばよいので、ジルフェはほとんど使う必要のない魔法だったのが不幸中の幸い。

***前半戦「三種の神器編」のイベントフラグ管理
-序盤で探索することになる3つの塔。イベントや仕掛けは豊富に用意されているのだが、適当にゲームを進めると容易にそれらが破壊されてしまう。ちなみにバグではなく、意図通りの仕様らしい。
--キーアイテムで解錠できる扉は「高レベルの盗賊で無理やりこじ開ける」ことも出来てしまう。これを行った場合、解錠した扉に関するイベントが連鎖的に消滅するため、謎解きが中途半端に終わってしまい、腑に落ちない気分になる。
--また各塔に分散しているクリアアイテム「三種の神器」をどれか一つでも持ち帰ると、3塔とも謎解きやトラップの大部分が破壊されてしまう。塔内のNPCもほとんど消滅する。最終的には「三種の神器」を全て持ち帰ることになるが、進め方によっては残り2つは単に拾ってくるだけ、となりかねない。
---進め方によっては、強力なアイテムの入手が不可能になる。またイベントが全て「未完」となる為、結末がわからないままのクリアを余儀なくされてしまう。
---しかも「幻術の塔」は、神器獲得後に全ての罠がスイッチONになるため、転移魔法「マロール」がないと攻略が著しく困難となる。もっとも、一つの塔をクリアできる実力が付く頃にはマロール習得レベルに達していることが多いだろうが。
--ただし、これは言い換えれば「キーアイテムが無くても鉄格子をこじ開けまくってさっさと先に進める」ということでもある。キーアイテムはボルタック商店に陳列することができず、「転生の書」(アイテムコンプリートを達成するともらえるアイテム)の取得条件からも外されているため、イベントをすっ飛ばしまくっても大丈夫。
---一方、全てのイベントを網羅したいプレイヤーはイベント扉をこじ開けることの無いようにフローチャートを完璧に組んで進める必要がある。

***その他
-三本の塔には各種謎解きが張り巡らされていたが、それ以降はもう燃え尽きてしまったのか従来のひたすら潜るだけの様なダンジョンになる。
--敵の配置もバランスが悪く、新しい場所に行けるようになっても前半は以前の段階で戦っていた敵よりも弱く、経験値も低い、アイテムも悪いという完全に戦う意味の無いような状況になっている。
-本編前半のラスボス前に謎のパズルをやらされる。このパズル、実はルービックキューブと同じシステムで、解法さえ知っていれば3手で完成できるのだが…
--あまりに意地悪過ぎとスタッフも自覚していたのか、取扱説明書のFAQ欄の端にヒントが掲載されていたものの、ヒント自体が漠然としすぎていたためルービックキューブ方式と判らない人が続出。加えてパズルの操作法(壁のボタンの使い方)がノーヒントなので、そもそも何の謎解きなのかさえ分からないまま詰んだプレイヤーも多い。
-「練武場」という「キャラクターを育てるため」という触れ込みの、クリアには関係のない簡易ダンジョンが存在する。当初は三階しかなく、四階より下はゲーム進行にともなって解放される…という触れ込みだったのだが、実際に四階より下が解放される条件は、「その階に対応したエリアの敵を全て倒す」こと。
--つまり、練武場○階を解放するには対象となる敵を''全種類''倒せ、ということ。対象の敵は出現場所にかなりのばらつきがあるので、当然漏れが発生して延々探し回るはめになる。しかも「あと何匹倒せばいいか」という情報しか教えてくれず、どのモンスターを倒し損ねているかの情報をまったく得られないので、結局倒した敵の名前をいちいちプレイヤーがメモしてない限り手当たり次第に敵を倒すしかなくなる。
--最後まで掘り進めると隠しボスと戦えるが、その隠しボスも間違いなく先に会うであろうドラゴンの洞窟の裏ボスよりも明らかに弱い。とはいえ、この「練武場」はやりこみ要素としては及第点であろう。

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**総評
 一見色モノでありながら、実はオーソドックスかつ古参のWizフリーク向けの作品。~
 ただし難易度が低めでキャラメイクの自由度も高く、初心者入門にも適している。ジルフェバグ以外は重大なバグも無いので、結局のところ初心者でもシリーズ経験者でも遊べる安心のWizだと言える。シナリオが中途半端でバッドエンド気味なのと、戦闘バランスの練り込みが甘い点が残念。

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**その後
-任天堂プラットでのASCII製wizは本作で終了。次作としてPSで「ウィザードリィ ディンギル」が発売された。
--ディンギルには「外伝」と銘打たれていないものの、同じアスキー作品でシステム・主要スタッフ共にほぼ同じであることから、ファンからは一般に外伝シリーズの一作品として認識されている。
-その後Sir-Tech社の崩壊に伴ないWIZの版権が乱売され、各メーカーからシステムも世界観もバラバラなWIZシリーズが乱発される事態に。それに対し「原点回帰」を掲げ、外伝のスタッフが制作に携わった「戦闘の監獄」「五つの試練」が発売された。
--WIZのシステムを流用し、タイトルを変えて出したゲームも。外伝1・2も、携帯アプリに移植した「ネザードメイン」として配布されている。
-2009年には「ウィザードリィルネサンス」プロジェクトが発足。WIZブランドの再生に乗り出している。
--ただルネサンスを標榜したDS版「生命の楔」は宣伝で「Wiz#1~#3、#5への原点回帰」を謳いながらその実まったく原点回帰せず、システムはほぼ別物RPGと化している地雷なので注意。
---一応「Wizとは関係ない別ゲー」として考えればそこそこ遊べるゲームであることを付記しておく。但し間違っても「生命の楔」でWizの世界観に触れよう、とは思わない事。

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