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シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件 - (2020/09/23 (水) 19:52:06) のソース

*シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件
【しゃーろっく・ほーむず はくしゃくれいじょうゆうかいじけん】
|ジャンル|アクションアドベンチャー|&image(homes.jpg,height=200)|
|対応機種|ファミリーコンピュータ|~|
|メディア|1MbitROMカートリッジ|~|
|発売元|トーワチキ|~|
|発売日|1986年12月11日|~|
|定価|5,000円|~|
|判定|BGCOLOR(lightsalmon):''クソゲー''|~|
|ポイント|暴力が支配するイギリス&br;システム解説を平然と誤記(あるいは故意のミスリード)&br;理不尽な難易度、自画自賛&br;推理ADVだと思ったら、意味不明な『[[マッピー]]』だった|~|
|>|>|CENTER:''[[シャーロック・ホームズシリーズリンク>シャーロック・ホームズシリーズ]]''|

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#contents(fromhere)
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**概要
言わずと知れたアーサー・コナン・ドイルの有名探偵小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを題材としたアクション・アドベンチャー。トーワチキの処女作でもある。~
『最後の事件』終了後の時系列をベースとし、令嬢を誘拐した犯罪組織に迫っていく本作独自のストーリーが展開される。

**特徴
-本作の敵は令嬢を誘拐したオリジナルの犯罪組織''パパイヤ団''。

-ゲーム画面は、見下ろし画面と横方向画面の二つを使った横スクロールアクション。
--市街では一般市民も歩いているが、システム的には''敵''である。
---何もせずに触れるとダメージを受け、攻撃して倒すと見下ろし画面ではお金、横方向画面では情報(世間話も多い)が入手できる。

-推理力
--町の人から情報を入手するごとに上がっていく。下記、虫眼鏡で情報を入手するには一定以上の値が必要。

-虫眼鏡を入手するとゲーム攻略情報が入手できるようになる。
--情報の入手場所は大通り以外を歩く人々((大通りの人はお金を入手できるのみ))を倒すとヒントを聞き出せる。
---例:「ヒビワレノ  オオイ  ゲスイドウダナア」→ひび割れの箇所を手当たり次第調べる→情報ゲット
---なお、セリフを聞いた後は&bold(){「AB同時押し」}で通常画面に戻る。面倒くさいがA・Bボタンをどちらも攻撃に使用するゲームなので、「攻撃を連打したらセリフを見る前に閉じてしまった」という問題は避けられる。
--情報屋からも基礎的な情報は入手可能だが…(後述)。

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**問題点
-ゲーム進行方法の不明瞭さ
--ゲーム開始後、町中に放り出されるのだが、どこへ行って何をしたらいいのかがさっぱりわからない。
--攻略情報の入手に使う虫眼鏡だが、まず虫眼鏡の入手方法がノーヒント。
--町の人から入手できる情報も曖昧なものやヒントの体を成していないものが多く、その上日常会話や「シャーロックホームズッテ  ''オモシロイゲーム''ナンダッテ」等のようなネタ文章も多いため、必要な情報も埋もれがち。

-説明書で「このゲームでは使用しません」と記述されている2Pコントローラーが''実際には攻略に必須''。
--パスワードを入手するにも復活するにも2コンが必要。復活そのものの裏ワザ扱いはまだしも((『スーパーマリオブラザーズ』など、コンティニューが裏ワザ扱いで取説に表記されていないというゲームはファミコン時代にはよくあった。))パスワード入手まで裏ワザではどうしようもない。
---復活自体は1コンでもできるが、1コンだと体力1で復活なのに対し、2コンを使うと体力が満タンの状態で復活する。
---復活用コマンドが異なる(1P側:スタート+セレクト、2P側:十字キー+A+B)ため、どちらかを知らない人も多いだろう。
--さらに''謎解きに2コンが必須となるステージまで存在している''((具体的には2コンであるコマンドを入れないと入れない部屋がある。))。しかもラスボス戦手前。
--本作には他にも(意図して用意したとしか思えない)理不尽な要素が多数存在することから、上述の「使用しません」は誤表記ではなく敢えてのミスリードであると疑わざるを得ない。

-探偵としての捜査とアクションゲームとのミスマッチ
--画面上に出てくる敵を倒しお金や情報を入手する、と書けばアクションゲームとしては普通だが、その相手が一般市民であり、入手する情報が探偵としての捜査情報である為、''いきなり襲ってくる一般市民を蹴り倒して情報を貰い、さらにお金を奪う探偵''というシャーロック・ホームズを題材にしたゲームとしてはあんまりなゲームになってしまっている。%%「足で稼ぐ」とは言い得て妙。%%
---しかもアクション性の難易度上げの一環で、''町によっては銃弾が飛び交っている''。作中の時代背景における新興国たる植民地でもこのような光景はまだ珍しかったはずだが…。
--攻略本によると''歩いている市民=パパイヤ団構成員''という設定があり((「ロンドン駅に着いたわたしは、ブリストルまでのキップを買おうとしたが、モロッコ皮の財布がなくなっているのに気づいた。いや、財布だけではなかった。手帳、ピストル、虫メガネ、探偵道具一式がなくなっていた・・・。わたしともあろう者が!どこからかコルディリア博士の笑い声が聞こえるようだ。こうなったら、捜査費は全部パパイヤ団の隠し資金で賄おう。市民に装したパパイヤ団の手下ども、空手キックで勝負だ。1キックで30ポンド手に入る。」JICC出版局の攻略本より。原文ママ))、助手のワトソンと店員以外の''英国民ほぼ全員がホームズの命を狙っている''というのだが、説明書にはそんなことは記述されていない。
---実際には、市民に攻撃して話しかけるとホームズへの敵意などなかったかのような''どうでもいい世間話''(上記参照)を返してくるため、一般市民にそんな設定があるとは考えがたい。

-アクションゲームとしての難しさ
--まず被ダメージに無敵時間がないので、''複数の敵に重なられたらあっという間に死ぬ''。
--町によっては銃弾が飛び交うのだが、しゃがんでも銃弾をかわすことができない。
--ナイフを繰り出すと、処理落ちで画面が止まる。
---敵側も同じなので、ナイフを突き立てられたと思ったら処理落ちでペースを乱され追撃を食らう…なんて事も。
--公園や民家の中にも''穴があいており''、落ちれば即死する。
--横スクロールアクションシーンでピストルを撃たれると避けるのが難しい。しゃがむアクションはあるのだが、''ホームズの座高>弾道''なので結局当たるため、梯子が近くにない場合はジャンプキックの頂点でギリギリかわすしかない。

-ショップ関連の理不尽さ
--携行型回復アイテムである薬瓶は1つしか持てないのだが、1つ所持している状態でも普通に薬屋で購入できてしまう上、購入すると「''既に持っている薬を捨ててくれないか?''」と聞かれる。
---「はい」「いいえ」の選択肢こそあるが、「いいえ」を選んでも購入キャンセルにはならず、きっちり代金を取られたうえで''新しく買った薬瓶を処分されてしまう''。
---「もう持っているから買う必要はない」と止めるなどのダブり防止措置を設ければいいものを、このようにわざわざプレイヤーが損をする流れへと持っていくのだから、もはや悪質である。
--情報屋の利用価値が皆無。
---「''鍵が無いと行けない場所がある''」「''よろず屋には便利なものが売っている''」(意訳)といった基礎的すぎて聞くまでもない内容か、「''この手帳スゲーだろ!ニューカッスルで買ったんだ!''」(意訳)といった''情報屋の情報''のどっちかしか聞けず、攻略に有用な情報は全く得られない。早い話が%%街で見かけたら蹴り飛ばしたくなるような%%ボッタクリである。

-シナリオ面の問題
--まずFC(子供)向けとはいえ、敵組織のパパイヤ団というネーミングセンスからして、ホームズの世界観には合っていない。
--敵が大規模な犯罪組織なのに、警察に協力も求めない。原作でモリアーティの組織に対抗する際には警察の協力も仰いでいたのだが…。
--タイトルは伯爵令嬢誘拐事件であるが、その誘拐事件はゲーム内容にほとんど関係がない。つまりタイトルと内容が不一致である。
---伯爵令嬢も、オープニングで怪人物にさらわれて以来、エンディングまで登場しない。そもそも誘拐されてからホームズに依頼がくるまでの場面はゲーム中には描写されない。ゲーム開始直後の状態で、誘拐事件が起こっているのかさえ、プレイヤーにはわからない。
---さらには、令嬢の行方を捜す描写は劇中一切ない。探そうという文章すらも存在しない。パパイヤ団の支部を叩き、本拠地をつきとめ壊滅させたら''ついでに令嬢も救出できた''、といった話である。
---令嬢の捜索を頼む依頼人=伯爵も、ゲーム中には登場しない。依頼人の出番はなんと、説明書内のストーリー説明部分だけである。
---言ってみれば典型的なマクガフィン((世界観的には重要だが、読者の視点からは全く別の存在でも代替が効く、「物語の動機付け」に過ぎない存在。この作品で言えば「犯罪組織に大切なものを奪われたので取り返さなければならない」という部分だけが重要で、その「大切なもの」は別に伯爵令嬢だろうが、宝石だろうが、黒歴史ノートだろうが「取り返さなければならない」説得力さえあれば一応話としては成立する。))である。アクションゲームとしては別にそこまでおかしくはない(初代スーパーマリオブラザーズだって、ピーチ姫はラストシーンしか出てこない)が、シャーロック・ホームズを題材にした(一応)ストーリー重視の作品としては色々と酷い。

**評価点
-あまり取り上げられない原作ホームズの一面をピックアップしている事。
--原作においてホームズは格闘技に精通した人物で、犯人を逮捕する過程で肉弾戦を行うことは頻繁にあり、生命を危険にさらすことも珍しくない。また、バイオリンの名奏者でもある。そういった一面を扱った作品はまずない。
---ホームズを題材にゲームを作る際には名探偵として頭脳面を主に描かれることが多い為、この点は本作ならではと言えるだろう。ただ、それを上手く表現できているとは言いがたいのが惜しいところ。
//各ボス部屋には強化アイテムが隠されており、それを入手するとしばらくの間ホームズのグラフィックが○で囲われた"P"に変化し、体力の最大値が増加する。この"P"は「"Powder"の略で、原作で描写されている薬物中毒者としての一面を反映したものではないか」とする説がある。

**総評
何を考えてホームズを題材にこんなゲームにしたのか問い詰めたいゲーム内容。~
ホームズである事を抜きに考えても、攻略情報やアクションの面でも辛い為、単純にゲームとして非常に遊びづらい代物になってしまっている。

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**その後の展開
-説明書の最後にある紙切れには、「第2弾(PART2)企画中」と記されていた。
--実際、トーワチキの名でホームズ物の『[[霧のロンドン殺人事件>名探偵ホームズ 霧のロンドン殺人事件]]』『[[Mからの挑戦状>名探偵ホームズ Mからの挑戦状]]』が後に発売されている。
---''凄まじくクソだった本作の路線は引き継がない''推理物アドベンチャーであり、こちらは比較的まともな内容であった。
---本作は「ホームズの宿敵である「M」失脚後の英国裏社会を支配しようとするパパイヤ団」との戦いだったが、続編2作の黒幕はいずれも「M」であり、時系列的には本作より過去になる。今回の黒幕はやられ際に「SEE YOU AGAIN NEXT GAME」と言うが、公式的にも完全になかった事にされてしまった。

**余談
-山内泰延の漫画『男子高校生の日常』で、主要人物の一人がこのゲームをプレイしている。
--それを学校で話した時の友人たちの台詞は「あーあの蹴りで戦うアクションゲーム」「街の人に当たると連続ヒットして即死するんだよ」「''コンティニューが裏技みたいなゲームだな''」といったもの。