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Ever17 -the out of infinity- - (2016/08/24 (水) 10:04:29) のソース

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*Ever17 -the out of infinity-
【えばーせぶんてぃーん じ あうと おぶ いんふぃにてぃ】
|ジャンル|恋愛アドベンチャー|#amazon(B000069E0Q)|
|対応機種|ドリームキャスト、プレイステーション2|~|
|開発・発売元|KID|~|
|販売委託|エレクトロニック・アーツ・スクウェア|~|
|発売日|2002年8月29日|~|
|定価|6,800円(税別)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|ポイント|最終ルートの怒涛の展開|~|
|>|>|CENTER:''[[infinityシリーズリンク>infinityシリーズ]]''|

*Ever17 -the out of infinity- Premium Edition
【えばーせぶんてぃーん じ あうと おぶ いんふぃにてぃ ぷれみあむえでぃしょん】
|対応機種|Windows98~XP&br;ドリームキャスト&br;プレイステーション2&br;プレイステーション・ポータブル|CENTER:&image(http://ecx.images-amazon.com/images/I/41mmkQ0ekxL.jpg,height=160)※Windows CD版|
|発売元|KID&br;【PS2廉価版】サクセス|~|
|開発元|KID|~|
|発売日|【Win CD版】2003年5月26日&br;【DC/PS2】2003年11月27日&br;【Win DVD】2005年6月17日|~|
|廉価版|【PS2】SuperLite2000:2004年10月28日/2,000円(税別)|~|
|配信|【Win】2014年5月30日/1,480円(税別)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|ポイント|細部の修正|~|

**概要
-アドベンチャーゲーム「infinity」シリーズの第2作。ただし時系列といくつかの単語の繋がりはあるが直接的な関係はない。
-様々なハードで移植・リメイクが発売されている。

**特徴
-事故により孤立した海中テーマパーク「LeMU」を舞台に、逃げ遅れ取り残された者達の人間模様を描く。
-プレイヤーはLeMUに遊びに来ていた青年「倉成武」か、LeMUに辿り着いた際に記憶を無くした「少年」のどちらかを選び、それぞれの視点で話を進めていく。攻略できるキャラは武編二人、少年編二人、四人クリア後に解禁されるキャラの計五人。
-いわゆる「美少女ゲーム」と呼ばれるジャンルではあるが、実のところ男女間の恋愛要素は薄目。むしろ家族間の情愛こそが色濃く、幾つもの違った形の家族の絆が描かれている。
-この当時のKIDゲーに顕著だったアダルト描写は,テキストのみだが本作でも健在。しかもこの部分がシナリオ上絶対不可欠となっていたりする。
-本作は&bold(){未プレイの者に対してネタバレ回避が広く推奨される}傾向にある。以下はできる限りネタバレに配慮しつつ記述するが、「どのような良作か?」という部分を説明するため、最低限の内容に触れることに留意されたし。


**長所
-最大の評価点は、何と言ってもそのシナリオにある。
--SFをベースに、哲学、オカルト、伝奇的なテイストをプラス。当時のコンシューマ用タイトルの中では比較的珍しく、特にSF要素は後に続く同系統作の先駆けとなった。
---SF描写は前作からあったが、その路線を決定づけたのは本作からと言ってもいい。

-前述の通り最初に選べるルートは四つあるのだが、(若干のバラつきはあるものの)それなりの評価を得ている。特に武編の二つは考えさせられる内容となっている。しかし、本当の肝はこの四つのルートは単体で見てもそれなりのクオリティであるのに加えて、その全てが後に解禁される最終ルートの伏線となっていることにある。

-そして始まる''最終ルートは正に圧巻の一言である。''それまで綿密に張り巡らされた伏線がこのルートで次々と明かされ、一つ謎が明かされればそれがまた次の謎を呼ぶという具合に、物語は怒涛の勢いで展開される。時に繊細にパズルを組み立てるように、時に力技で強引にねじ伏せるように、エンディングまで一気にプレイヤーを連れていく。物語がどこにたどり着くのか、それを是非とも確かめてほしい。
--本作の仕掛けはミステリで言うところの「叙述トリック」と呼ばれるものにあたる。これ自体は比較的メジャーな手法であるのだが、特筆すべきはこの手法を『「ゲーム」という“画と音で構成され、プレイヤーの能動的な介入を許すメディア”に最適化させた』事にある。経験者が口を揃えて「ゲームだからこそ成立できたゲーム」と語る所以である。騙される快感がここにある。
//叙述トリックの注釈を書いてみたものの、ネタバレ回避の為に説明自体もせずに流しておいた方が良いかと思い削除。
---なお、前作に当たる『[[Never7 -the end of infinty->Infinity#id_7dacd8e9]]』をプレイしていると、ミスリードされそうになったりにやりとなる場面もある。
--その為クリアしたプレイヤーから「記憶を無くしてもう一度最初からプレイしたい」「まだプレイしていない人が羨ましい」などと言わしめた。

-それぞれのキャラクターも個性的。皆が皆背負ったものがあり、嫌味のない造形で親しみを覚えやすい。声をあてる声優も、主人公演じる保志総一郎始め、浅川悠、植田佳奈、笠原弘子ら有名どころを取り揃えていて力が入っている。

-KID伝統の充実したオプションも当然完備している。

**問題点
-上述の通り最終シナリオが肝なのだが、そこまでのシナリオが非常に冗長。
--キャッチコピーなどでは本作を海中の建築物に閉じ込められる「パニック物」として紹介しているが、本当に危機的状況に陥るのは各シナリオの終盤のみ。特に中盤は閉じ込められているものの差し迫った危険もなく食料もある中でまるで日常描写を延々と行うような中だるみが続き、緊張感に著しく欠ける。せいぜい食料が毎日マグロ料理ばかりでストレスが溜まってくるキャラが居る程度。
---この中盤を乗り切れるか否かで作品の評価が大きく分かれる傾向にあり、これに耐え切れず挫折してしまった者も少なくない。
--超科学設定を嫌う人にとっては、むしろ最終シナリオが受け付けられない可能性がある。

-少なくとも1周目は「倉成武」を主人公に選ぶことを前提にシナリオを作っている節があり、先に「少年」視点で話を進めてしまうと、どうしてもシナリオの理解に支障が生じてしまう(プレイヤーが気付くべき違和感に気付けない、など)。
--なお、最適のプレイ順序は【武グッドED1→武グッドED2(→この時点までに武バッドED)→少年グッドED1→少年グッドED2→最終シナリオ】(ヒロインで言えばOPムービーに登場する順)とされている。

-テキスト・イラスト・設定などに粗があり、致命的なミス・矛盾や、明らかに(オーバーテクノロジーを差し引いても物理的に)間違った・無理のある描写などが幾つか存在している。また、明らかに投げられっぱなしの伏線も存在する。
--特に致命的なものに関してはWindows版以降で概ね修正されているが、中にはシナリオの根幹を成しているため変更不可能で、結局最後まで残ってしまったものもある。
---ただし、そう言った部分も含め発売当時の公式サイトでは様々な憶測や検証で盛り上がったことは特筆に値するだろう。

-SFアドベンチャーとしての側面が強いが、恋愛アドベンチャーの体裁をとっているため、所謂「ギャルゲー」が苦手な人には敬遠されがち。
--かといって「恋愛ADVとして」期待していた場合は上記の通り物足りなく、それどころか本作のシナリオ展開や結末・真相などは、あらゆる要素が理不尽だらけの問題作と化す。素直にSFなり、「ミステリアスADV」なりとして受け入れよう。
--これを受けてか、PSP版ではジャンルが「ミステリアスアドベンチャー」に変更されている。
--中盤の中だるみ期間も、典型的かつ必要以上にコテコテなギャルゲーのノリ。見た目が受け入れられない人は、素直に回避しておいた方が賢明かもしれない。

-「武編」では登場人物の一人が主人公に非常にきつく当たり続け、かといって理由は示さず、涙目になったプレイヤーもいたとか。

**総評
前作『Never7』で確立された「恋愛要素もあるSF的なミステリアスADV」と言う特徴を更に昇華した名作であり、~
今も尚、「シリーズ最高傑作」「ADV史を語る上で欠かせない」と名高い逸品である。~
特に、最終シナリオにて明かされていく数々の伏線と意外な展開は圧巻の一言であり、~
その衝撃と感動は(ネタバレ無しの上で)実際にプレイする事でしか味わえない。~
中盤の中だるみなど気になる点もあるが、それを乗り越えてぜひ全編プレイし、極上のカタルシスを体感して欲しい。~

**その後の展開
-当初発売されたのはDC版とPS2版のみだが、後にCG・イベント、登場人物の立ち絵の追加や一部ミスの修正などを施した「Premium Edition」がWindows用に発売され、更にこれがDCとPS2に逆移植された。また、その後PSP版にも移植された。
--携帯機とアドベンチャーゲームの相性が良く、また作中専門用語の解説が追加されたため、PSP版は気軽にプレイし易い。しかしOPとEDが曲も含めて新規のものに変更されており、これに関しては賛否両論(ただし、最後までクリア済みであれば従来のOP・EDも視聴可能)。
--ハード・価格を考慮すると、現在ではWindowsのダウンロード版が手を出しやすいか。
//--「Premium Edition」のジャケットには本作にとって致命的とも言えるネタバレ要素が含まれている。これはPSP版のジャケットでは改善されている。
//ネタバレと言われると、かえって覚えてしまうのでCO。

-2004年10月にサクセスからPS2版の廉価版が発売された。ほぼ「Premium Edition」と同等の内容であり、定価は2,000円。版権所有者はサイバーフロントだが、ユーザーサポートはサクセスが担当となっている。
-このような作風でありながら、「濃いキャラデザイン」や「ストーリーよりゲーム性重視」の作風を好むとされる北米においても発売された希有な例であり、あちらでも高い評価を得ている。

-版権譲渡の紆余曲折
--後にKID倒産に伴い、本作に関わる版権がKIDからサイバーフロントに譲渡された。
--…が、下記、Xbox360版発売時は5pb.の管轄となっており、ユーザーサポートも5pb.が担当となっていた。
---後に2013年12月をもってサイバーフロントが解散した後は版権自体を5pb.が所有しているようで、現在は5pb.の販売サイトにてダウンロード販売されている。

**余談
概要にもある通り、本作は&bold(){未プレイの者に対してネタバレ回避が広く推奨される}傾向にある。ネタバレ回避しつつ本作の魅力を紹介していく(紹介文を考える)のはなかなかに難しい。''当ページも含めて''。

上記の問題点の為、発売当初はソフト一本あたり数時間程度しか割けないことが多いゲーム雑誌の発売前レビューにおいて、本作の評価は軒並み低かった。~
しかし発売後に評価が高まったため、ゲーム雑誌「ドリマガ」では発売前のレビュワー全員が最後までプレイし、改めてレビューを掲載するという異例の事態になった。~
雑誌レビューでの低評価は問題視された事もあるが、上記の通り本作は「中盤がだれる上に、最後までやってこそのゲーム」である。~
その為、いくつものゲームをやらねばならない雑誌レビューでは、高評価に値する箇所までプレイする時間はなかっただろう事もあり、仕方ないという意見もある。~
(実際、一人~二人のEDを見ていわゆるギャルゲーとして評価した場合、良作とは言い切れない点も多い)~
もちろんだからと言って、最大の評価点をレビュアー全員がスルーしてしまった事を、仕方ないと言い切ってしまう事も出来ないが。~
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*Xbox360版
|ジャンル|SF恋愛アドベンチャー|#amazon(B004YA0FG6)|
|対応機種|Xbox360|~|
|開発・発売元|5pb.&サイバーフロント|~|
|発売日|2011年12月1日|~|
|価格|通常版7,140円(税込)、限定版9,240円(税込)|~|
|CERO|C(15歳以上対象)|~|
|備考|初回限定版にはサウンドトラックCDとミニ設定資料集が同梱|~|
|公式サイト|http://5pb.jp/games/ever17/|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
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**概要(Xbox360版)
-5pb.とサイバーフロントとの共同開発によるXbox360でのリメイク版。

**変更点
-会話シーンの立ちポーズ絵や一部イベントが3D化
-物語の舞台であるLeMUのデザインが変更された
-シナリオ全体を見直し、オリジナル版で発覚した矛盾点や、全体的に冗長だった部分を改善してテンポが良くなった
-声優のボイスを全て録り直し
-新規シナリオ、イベントCG、エンディングを追加
-イベントCGを全て高解像に描き直し
-OP、EDの変更、音楽のリメイク
-初プレイ時は強制的に武視点をプレイするよう変更された
-少年視点でのつぐみの衣装が変更された
-用語集が削除された

**評価点(Xbox360版)
-シナリオ中盤の中だるみの改善
--オリジナル版で大きな批判を受けていた中盤での冗長な展開が大幅に改善されており、適度に緊張感を維持したままテンポよく遊べるようになった。

-新規追加シナリオも短いながら好評。
--30分程度で終わってしまう短さではあるが、オリジナル版で謎のままになっていた事が全て明らかになっている。

-新規OPとED、リメイクされた音楽も非常に評価が高い。
--特にOPはオリジナル版とは全く曲風が違うので、驚いた古参ユーザーは多い事だろう。
--[[Xbox360版OP>http://www.youtube.com/watch?v=8biltdXfwvo]]

**問題点(Xbox360版)
-Xbox360版最大の特徴である3Dポリゴンだが、正直言って評判はあまり良くない。
--出来は決して悪くは無いのだが、アニメ調のイベントCGと比べるとどうしても違和感が生じてしまい、極端な賛否両論が分かれる結果となってしまった。普通にオリジナル版同様の一枚絵の方が良かったという意見も多い。
--この3Dポリゴンが導入された経緯だが、サイバーフロントが所有していた一枚絵のデータがXbox360の高解像に耐えられない事が発覚したので、だったらこの際だから『新生Ever17』をアピールする為に、敢えて3Dグラフィックに挑戦したとの事。
//---しかし同じXbox360の「アイドルマスター」のなめらかで綺麗な3Dグラフィックに比べると、どうしても見劣りしてしまう。意気込みはともかく、その結果は残念ながら失敗となってしまった。
//ハードが同じ、というだけでメーカーや開発が違うアイマスと比べる必要はないのでCO。

-中だるみ改善による弊害
--中盤の展開を変えた関係で設定自体が変更になってしまったキャラもおり、その点には不満の声が出ている。
--またボリューム不足にもなってしまっており、20時間もあればクリア出来てしまうようになった。その為、物足りないという声も聞かれる。

-PSP版で追加された用語集が削除された。
--あって困るものでもないし、単純に流用でも良かったと思うのだが……。

**総評(Xbox360版)
中盤の中だるみが改善された事でゲーム全体としては遊びやすくなったが、それに伴うシナリオ変更は原作ファンから少々意見が割れている。~
また目玉でもある3Dポリゴン化に関しては、元のままが良かったという声が多く、出来は悪くないものの実質的には失敗だったと言えるだろう。~
とはいえ、ゲームの一番の根幹部分が改悪されたという事もないので、Ever17を本作で初プレイするのも悪くないだろう。