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バトルコマンダー 八武衆、修羅の兵法 - (2016/08/20 (土) 17:36:16) のソース

*バトルコマンダー 八武衆、修羅の兵法
【ばとるこまんだー はちぶしゅう、しゅらのひょうほう】
|ジャンル|シミュレーション|&amazon(B000068HOJ)|
|対応機種|スーパーファミコン|~|
|メディア|8MbitROMカートリッジ|~|
|発売元|バンプレスト|~|
|開発元|アークシステムワークス|~|
|発売日|1991年12月29日|~|
|定価|9,800円|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|作りの粗いストラテジー&br()キャラゲーにしては複雑すぎた&br()エルガイムとドラグナーは地味にスパロボより先に参戦 &br()やりごたえ自体はある |~|
|>|>|CENTER:''[[コンパチヒーローシリーズリンク>コンパチヒーローシリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
当時バンプレストが展開していた「コンパチヒーローシリーズ」の1作で、『[[第2次スーパーロボット大戦]]』と同時に発売された。~
スパロボがターン制であるのに対し、こちらは2010年代に入っても未だに国内では馴染みの薄いリアルタイムストラテジーである。~
ある意味こういったジャンルに早いうちから目を付けた、稀有な作品でもある。

**ゲーム内容
-「3種族が見えない壁に仕切られた世界で共存していた世界が舞台で、壁の消滅により覇権をめぐって争いあうようになった」というオリジナルの世界観とストーリーで、とかく殺伐とした雰囲気が漂っている。
--ロボットアニメのメカ達が擬人化されて登場する。また、外見や名前がアレンジされている者も居る。ガンダムシリーズは機動族、マジンガーシリーズ(とゲッターロボやグレンダイザーも少々)は魔神族、重戦機エルガイムと機甲戦記ドラグナーは日出族。
--敵メカ由来キャラの割合が多め。機動族ならジオン、魔神族なら機械獣が半数を占める。
--スパロボのような原作のストーリーに基づいたクロスオーバー的シナリオは一切ない。どちらかと言えば方向性はグレイトバトルシリーズに近い。敵幹部もザ・グレイトバトルに登場したキャラ達。

-難易度は機動族(ガンダム)が初級者向け、日の出族(エルガイム、ドラグナー)が中級者向け、魔神族(ダイナミックプロ)が上級者向けとなっている。
--機動族はHPが低いという傾向があるものの、武器の射程が長く攻撃力も高め。そのアドバンテージは絶大で、相手が射程圏内に入る前に集中砲火を浴びせれば倒せる。おまけにバグで射程が無限なキャラが存在するのでかなりぬるい。
--日の出族はいわゆるマップ兵器が豊富。しかし通常兵器は機動族と比べると射程に劣るので通常戦闘では苦労する。敵の本拠地を落とせという勝利条件のステージもちらほらありやりごたえはあるが……。
--魔神族はHP及び攻撃力が高いという設定だが、射程が短すぎる。マップ兵器持ちもそんなにおらず、最高指揮官マジンガーの性能が3種族中最低など、上級者向けというより単に調整不足のせいで厳しい難易度になっている。

-リアルタイムストラテジーであるため、スーパーロボット大戦のようにすぐ移動するわけではなく、目的地までは移動時間が存在する。
--移動には通常移動、戦闘移動、戦闘待機、通常待機の4つのコマンドがある。戦闘移動、戦闘待機とは、敵を発見次第敵を攻撃するコマンドだが、移動力は下がる。
--移動は4箇所まで指定することが可能で、指示によっては指定箇所を行ったり来たりという歩哨のようなことをさせることも可能。
--そらセット、うみセットなどを使えば特殊な地形であっても高い移動力を維持したまま移動することが出来る。
--敵は出撃中の部隊を利用して索敵をしないといけない。視界はそれぞれの職業で異なる。
--戦闘は敵戦力を目視などで発見し、そのうえで射程範囲内であることで攻撃をすることが出来る。

-各施設などはマニュアルで指定し、攻撃してHPを減らすことが出来る。
--本拠点となるGHQはHPが0になった方の軍勢が敗北する。
--街や村はHPを0にした後で駐留コマンドを選択することで占領することが出来る。人口が0になるまで攻撃し続けると廃墟となり、どちらの軍のものにもならなくなる。

-キャラクターにはそれぞれ階級が存在し、それぞれ32人まで登録することが出来る。
--指揮官:部隊を形成するのに絶対必要な階級。初期配置以外はそれぞれのキャラに設定された規定レベルで兵士が昇格する。
--兵士:ここから戦闘に参加することが出来る階級。部隊員としても単独行動兵としても利用が可能。特訓コマンドによって未出撃のキャラを強化することも出来る。
--新兵:一定時間ごとに補充される、戦闘に参加出来ない階級。訓練によって7つの職業に就くことが可能。登録した時点で兵士へと昇格する(無訓練ではファイター)。
---各キャラクターにはアイテムを4つまで持たせることが出来る。
---給与をそれぞれの階級に設定しなければならない。支払い金額は階級ごとに一律となっている。

-八武衆とは要するに職業であり、初期メンバーを除いてプレイヤーが新兵に訓練を施すことでそれぞれの性能に見合った能力に補正が付く。
--ファイター / 闘武衆【Figh】:視界を除けば全能力はほぼ最低。ただし訓練なしで即戦力として登録することが出来るという利点はある職業。
--ナイト / 騎武衆【Knig】:戦闘向けの職業。攻防ともに高く、視界も悪くなく、移動力も申し分ない。
--ガンナー / 砲武衆【Gun】:移動力は大幅に下がるうえ、視界も低いので索敵は苦手。しかし攻防ともにかなり優秀で、拠点防衛向けの職業。
--マリナー / 海武衆【Mari】:海戦移動に長けた職業。移動力もそこそこだが戦闘力は高くない。
--フライヤー / 空武衆【Fly】:移動力や視界に長けた職業。単独行動や索敵行動に対し非常に優秀で、戦闘力も悪くない。
--ステルサー / 隠武衆【Stel】:工作活動に長けた職業。この職業を持つキャラがいれば工作コマンドが使用可能になる。戦闘力・視界・移動力は秀でてはいないが平均以上。
--ウィザーディ / 魔武衆【Wiz】:特殊コマンド魔法を使う職業。指揮官ならカリスマ、兵士なら努力の能力値を消費する。他の能力は最低級だが、他の職業にない効果を部隊にもたらす。
--ナース / 護武衆【Nur】:戦闘力などの補正は低いが、回復アイテム「きゅうきゅうセット」を使用すると部隊員全員を回復させることが出来る能力を持つ職業。

-開発コマンドによって、資金・時間に応じて新兵器を投入することが出来る。新兵器は主に特殊ピースとして部隊員1名扱いで組み込まれる。
--これら開発成功した新兵器を含め、弾薬は回復アイテムなどはプレイヤー自身で生産しなくてはならない。
--アイテム運搬用の特殊ピース・補給ピースというものも存在する。補給コマンドで即弾薬を補充出来るなど便利だが、移動力は低く、そして脆い。

**問題点
本ゲームはキャラゲーとは思えないほど本格的なリアルタイムストラテジーを構築しており、ほぼ必要な事項は取り揃えられている。~
しかし現在でもまだ成熟したとはいえないリアルタイムストラテジーの初期の作品ということもあり、中身は粗だらけで、プレイに支障を来たす問題点が多数存在する。

-給与は役職ごとに一律に設定しなくてはいけない。レベルが低かろうが高かろうが一律。そして、出撃していようがいなかろうが登録しているだけ支払われる。
--給与の影響が最も大きい指揮官は、一番レベルの高い指揮官に合わせないといけない。合わせないと高いレベルの指揮官のカリスマが下がり、配下の部隊員が逃げ出したり、最悪指揮官本人が逃亡する。
--敗北条件の1人である最高指揮官キャラであるF91、エルガイムMk-II、マジンガーは薄給でもそう簡単に逃亡しないが、薄給のままレベルをあげすぎると当然カリスマなどは下がるので、部隊などとても編成出来ない。
---なお、最高指揮官が逃亡してもシナリオには影響がなくシナリオ中のメッセージでは登場する。
//前後のそれと合わないので修正。ちなみに修正者は最高指揮官の逃亡に出くわした経験はない。
--指揮官も32名まで登録できるが、そんなに多く雇用していては金がいくらあっても足りなくなる。常に最低限数の維持を余儀なくされ、他は解雇して削らないといけない。

-説明書には「非常に高度なシミュレーション」とあるが、その通り複雑極まるシステムである。説明書だけで数十ページもあるうえ、その内容も非常に難解。
--スーパーファミコン初期の作品ということもあり、チュートリアルモードなどは存在しない。時代を考慮すれば致し方無いところもあるが、現代の視点で見ればこの難解さに対してチュートリアルなしというのは大問題である。
--Bボタンが決定、Aボタンがキャンセルという仕様も、プレイし辛さに拍車を掛けている。

-八武衆の能力差があまりにも激しすぎる。
--ファイター(闘武衆)はプレイヤーにすらその存在を忘れられるほど影が薄く、部隊員の数が逼迫していなければまず選択肢にあがらない職業。しかし登録した時点で即戦力に出来るという利点がある。
--最大の問題はマリナー(海武衆)で、水中戦に優れるという能力を持ちながら、水中で戦う機会自体があまりないため実質使い道が無い。というかそらセットがあれば水中で行動する必要もなくなるので、それに対応するうみセットも無用の長物。訓練時間は短いが、その利点はファイターにほぼ全て持って行かれている。

-箱にはスパロボ風の戦闘画面が書かれているが、実際には半ば隠し要素のような物で、それを期待して購入したプレイヤーに大きなダメージを与えた。
--これを利用すれば一方的に敵を攻撃出来るバグ技もあるので、一部はこれを悪用することで異常にヌルくなる。

-ゲーム進行に影響を及ぼすバグが多い。
--ステージをクリアすると、何面も前のステージに戻される事がある。
--ステータスを上げすぎると1に戻る事がある。

-バウが「バウー」、ズゴックが「ズッゴク」など、全般的に誤植が多すぎる。
--何故か誤字は機動族に集中しており、しかも基本的にはマップにおける報告画面のみ。

-敵をたった一体でも見つけると、見つけたキャラ全員がこぞって逐一報告してくる。大変に紛らわしく、カットも不可能なのでうざったい。
--手柄を立てようとそれぞれ必死なのかもしれないが…。

-面数がそれほど多くないにも関わらず、勝利条件が代わり映えしないものが多い。ほとんどのシナリオにおいて、町を幾つか占領したら敵が攻めてくるのを待って叩き潰す戦法で勝てる。説明書でもこの戦法はおススメされている有様。

-エンディングがゲームオーバー時と同じ画面。せっかくクリアしたのにこれでは興ざめである。

**評価点
-SDキャラクター達に意思があるという設定ならではの、面白い世界観。
--大陸に存在した3つの壁が崩壊し、領土争いになるという設定はファンタジー的で妙に魅力的なものである。
--キャラクターの口調は一部を除いてランダムで設定されるようで、サザビーが関西弁を喋るという面白い光景が見られることもある。

-荒削りだがやりごたえはある。
--攻撃や移動がリアルタイムに行われるため、司令官であるプレイヤーは意外とあくせく指示を出していかないといけない。序盤は待ち時間が多いが、その待ち時間でもできることは山ほどあるため、暇な時間は意外と少ない。
--仮に暇な時間が発生しても、ユニットが着々と目的地に向かっている姿を眺めるのは、子供心にはそれほどつまらない場面ではない。
--終盤は勝利条件も容易でなくなってくるので、休む暇なくユニットに指示を出していかないといけなくなる。よってヌルゲー感はかなり薄れる。最終面付近は特にそれが顕著。

-兵士1体1体が出来ることはかなり多い。
--ステルサー(隠武衆)なら塹壕設置、地雷設置、時限爆弾セット、仕掛け解除などの支持が行え、それらを仕掛けていく楽しみはある。
--ウィザーディ(魔武衆)は、魔法を利用することで他の職業にはない能力を発揮させることが出来る。きゅうきゅうセットなしで部隊員全員を回復させる、弾薬を全回復させる、GHQに緊急帰投させる、死者をゾンビとして蘇らせるなど、戦闘力の低さを補って有り余るほど多彩。
---ただし死者復活はプレイヤーが制御出来るわけではないので実用性が低く、消費MPも高いのでまず用いられない。
--普通のユニットにしても、例えば索敵のため部隊員の一人を一旦単独行動させ、視界の広い部隊員だけ先行させて敵を発見させるということが可能で、戦術や作戦の幅がとても広い。
---ユニットの配置を自分で変えることも可能であり、基本となる1ユニット4人の集合陣形のみならず、制限内において四方向に広がって歩いたりすることも出来る。
--戦地で逃亡した者には無理だが、訓練・特訓中に逃げたキャラは捕まえる(捕縛成功・失敗はほぼランダム)ことで折檻することができ、痛めつけたり監禁したりと、けっこう残酷な仕打ちができてしまう。
---「こんじょうをたたきなおす」で傷めつけた場合、死ぬ寸前までダメージを与えられる。残りHPがほぼない時にこのコマンドを選択すると「これ以上やると死んでしまいますよ」と制止が入るなど、一線を越えられないようにしている。

-敵のターゲッティングはオート設定もマニュアル設定可能。
--一々敵をターゲットしなくてもオートにしておけば自動的に敵と戦ってくれる。戦略的に指揮官から倒すなど考えた場合はプレイヤーの指示が必要。

-まだスーパーロボット大戦に参戦していない時代に、重戦機エルガイムと機甲戦記ドラグナーを参戦させたこと。
--ドラグナーに至っては、スーパーロボット大戦がおよそ10年程度後まで先延ばしされたことからも、本作のチョイスはある意味先進的だったと言える。

**総評
本作は右を見ても左を見ても問題点だらけであり、到底まともな内容と言えるものではない。~
リアルタイムストラテジーというジャンル自体が人を選ぶ事に加え、バグや仕様上の粗が多いせいでさらに癖の強いゲームとなっていることもあり、~
キャラゲーなのにも関わらず、ターゲット層がかなり狭いという大きな欠点を抱えている。

ゲームプレイが成り立たない程の破綻を引き起こすような致命的な不具合やバランス崩壊などは少なく、不便な点は多いがゲームとして成立するだけの最低限の質は十分保っている。~
バグを逆用した裏技なども多く、難易度の高さも相まってやり込み甲斐も十分にあり、このジャンルが好きな人であれば十分、楽しめるクオリティに落ち着いている。~
ただでさえ、敷居が高く人を選びやすいこのジャンルを、(制作者の想定内において)子供向けに出した本作はある意味、挑戦的だったと言えるだろう。

これを意識したゲームとして、「スーパーロボット大戦・スクランブルコマンダー」という作品が後にが発売されたが、そちらはあくまで「スーパーロボット大戦シリーズ」の範疇でありゲーム性は本作と大きく異なるため、純粋なRTSとしては本作が唯一無二的名存在であるといっても過言ではない。

惜しいところが目立つゲームであるが、その内容の濃さから固定ファンも多く存在している作品である。

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