*テイルズ オブ イノセンス 【ているず おぶ いのせんす】 |ジャンル|ロールプレイングゲーム&br()(シリーズ内ジャンル名:想いを繋ぐRPG)|&amazon(B000UTM33S)| |対応機種|ニンテンドーDS|~| |メディア|1GbitDSカード|~| |発売元|バンダイナムコゲームス|~| |開発元|アルファ・システム|~| |発売日|2007年12月6日|~| |定価|6,090円|~| |プレイ人数|1人|~| |レーティング|CERO:B(12歳以上対象)|~| |コンテンツアイコン|暴力、言葉・その他|~| |廉価版|Welcome Price 2800:2008年10月30日/2,940円|~| |判定|なし|~| |ポイント|良くも悪くもシンプルな出来|~| |>|>|CENTER:''[[テイルズオブシリーズ関連作品リンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/260.html]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -テイルズ オブシリーズのマザーシップタイトル第9弾。略称は『TOI』『イノセンス』。キャラクターデザインはいのまたむつみ。 -製作はナムコ・テイルズスタジオではなく『式神の城』や『[[テイルズ オブ ザ ワールド なりきりダンジョン2]]』のアルファ・システムが手掛けている。 -DSテイルズでは2作目。外注作品としては初のマザーシップタイトル。 --1作目の『[[テイルズ オブ ザ テンペスト]]』があまりにあんまりな出来だったことも手伝ってか、期待が寄せられた。 --1年後に発売されたDS3作目の『[[テイルズ オブ ハーツ]]』と同じ時期に製作がスタートしていることから、『ハーツ』の布石、『テンペスト』の救済措置として発売されたのではないかと言われている。 ---- **評価点 -グラフィックはDSの性能を考えれば出来が良い。 -戦闘システムも好評。 --アクション要素を取り入れた戦闘は奥深く、空中でコンボが続いた時はかなり爽快。一体の敵を一定時間戦闘に参加しているキャラ全員で一方的に攻撃し続けられる「インフィニティジャム」や、一定時間攻撃力や詠唱速度が高まる「覚醒」を使って様々な組み合わせのコンボができる。 -図鑑要素の充実。 --『レジェンディア』以降のマザーシップタイトルは制作期間や容量の都合なのか、モンスター図鑑とコレクター図鑑が何かしらの関係でどちらかが削除されていた作品が多かったが、本作では『リバース』以来の両方存在している作品になっている為、ファンに歓迎される事になった。 ---特にモンスター図鑑はモンスターのコピペ元の『アビス』では廃止されてしまった為かプレイヤー側から残念がられていたが、同じくマザーシップタイトルの本作で『アビス』と同等のモンスターの姿を自由に閲覧出来るのはある意味皮肉ではある。 -いのまたむつみによるキャラクターデザインもこれまでのキャラと異なるなど多少の賛否両論はあるものの、ユーザーからの受けは上々。キャラクター自体も、気弱な主人公・ルカや、それをネタにルカをいじり倒す新機軸ヒロイン・イリアなど、これまでのシリーズにない魅力を持っている(描写が描写なので、賛否分かれるが)。 -OPアニメーションは、KOKIA独自の世界観とプロダクションI.G製作のアニメーションも相俟ってハイクオリティに仕上がっている。 -従来のシリーズ通り、豪華な声優を採用した個性の強いキャラクターは健在。 --フルボイスではないもののイベントシーンにも声がついている。 --女性声優が主人公を演じるのはマザーシップタイトルとしては初である。 --また、サブキャラにも主要キャラとしての活動も多い若本規夫、杉田智和、沢城みゆきを採用しているほどである。 ---若本氏が演じるキャラクターの「ガードル」はこれまでの氏のキャラクターがキャラだったせいか、ファンの間から「第二の穴子」と称されている他、真殿光昭が演じる「ハスタ・エクステルミ」は、脱力系かつ電波な言動や声優の狂演もあってか、ファンからも非常にコアな人気を持つキャラクターになっている。 //-マップやダンジョンの構造がとてもシンプル。迷うことがないのでストーリーがサクサク進行する。 //--シンプルすぎるゆえの批判もある(問題点参照)。 ---- **問題点 -シリーズ恒例のスキット(フェイスチャット)にほぼ声がついておらず、収録数も少なめ。また、テイルズではお馴染みの劇中アニメーションがない(wiiの『ラタトスクの騎士』にも言えることだが)。 --この点は携帯機である以上、仕方ないところではある。 -フィールド画面の問題 --フィールドではこれまでの作品で登場していた宝箱やスキットポイントといった物が存在せず、探索の面白味に欠ける。 ---一応、フィールド移動中にカスタマイズアイテムや薬草を獲得できる「採取ポイント」が出現する事があるが、1回のみ調査できるフィールドの物よりもギルドダンジョンの同型の物の方が多く調査できる為、わざわざフィールドに採取ポイントを用意した意義が薄い。 --また「ナム孤島」や「ミュージアム」といったお楽しみスポットが存在せず、サブイベントは基本的に町かダンジョン限定になってしまった。 ---シリーズ恒例のおまけダンジョンがフィールドに存在しているのがせめてもの救いか。 -ダンジョンが単調な上長く、敵が多い。その上パーツのコピペを多用しているため非常に迷いやすい。 --一応、宝箱やセーブポイント等のマップ内オブジェクトの存在を記憶する事で大体のプレイヤーの位置を把握出来るが、それでも迷いやすいと言わざるを得ない。 --最終ダンジョンに至っては&bold(){延々と螺旋階段を上るだけ}の構成。その上通路が狭いため敵を避けるのはほぼ不可能。 --この作品の後に同社が開発したファンディスク『[[テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2]]』でもこの点は同様。 --また、隠しダンジョンは自動生成ダンジョンであるのだが、裏ボスと戦うためには&bold(){セーブなしで地下100階}まで潜らなければならない。一応5階ごとに脱出ポイントはあるが途中入場は不可能と、あまりに面倒くさすぎる。 -シナリオも評価が低い。内容もかなりあっさりしており、全体的に説明不足。 --主要キャラクターは前世で知り合い同士で、それが重要な部分を占めているのだが、大抵の敵キャラが前世にとらわれすぎている。チトセに至ってはルカを慕う理由もイリアを憎む理由もすべて前世から引きずっているものであり、「前世のまんまの記憶しかないのか」と批判されるほど。 --エルマーナ「ウチ前世はヴリトラやってん」ルカ「へー、ぼくアスラ」の会話に代表されるように、まるでネットゲームで知り合った仲間が現実(オフ会)で出会ったかのような描写から「''初めてのネトゲオフ会''」と呼ばれる事も。 -戦闘バランスにもやや難がある。 --序盤こそ普通だが、中盤あたりから敵の能力がインフレし始め、プレイヤー側はHPやTPがレベルを上げてもあまり上がらず、こちらの取れる行動の選択肢が限られてしまう。これに耐えかねて投げる人も。 --特技・秘儀・奥義の3段階のシステムを採用しているのに、セットできる術技が4つのみと少ない。そのため戦闘がワンパターンになりがち。 ---セットできる術技が少ない分、比較的シンプルな戦闘になっているの救いか。 --『アビス』までの3D作品で登場していた「払い」の通常攻撃が廃止され広範囲攻撃が術技限定になっている関係で全体的に攻撃範囲が狭く、通常モンスター戦で袋叩きに遭う率が高い。特に蟹の姿をしたモンスター戦で顕著。 --本作での戦闘終了後のガルド及びアイテム獲得は敵を倒すと飛び散るオブジェクトを回収しないと獲得出来ない仕様になっている為、一つ取り逃すだけで取得ガルドが下がる所かアイテム獲得もままならない。 ---一応、これの対策としてはテクニカルのスタイルのレベルを上げるで取得出来る「吸い上げ」のアビリティをセットする事や、作戦の優先行動で「お金を回収しろ」「アイテムを回収しろ」を設定すれば良いが、前者の場合はアビリティセット容量を圧迫してしまいキャラクター育成の自由度が低下してしまう難点も存在する。 --戦闘画面及びモンスターのデザインは『アビス』のほぼコピペ。見た目での新鮮味はほぼ無い。 ---しかも『アビス』で強すぎていた点が指摘されていたフリーランもほぼ未調整で登載され、ON/OFF可能だったアビスとは異なり標準システムとして存在している上に、フリーラン中にも攻撃をくり出せる事から、只さえも強すぎたアビス以上に強さに磨きが掛かっているとも言える。 --ニンテンドーDSのボタン数の関係かターゲット切り替えとフリーランが同一ボタン(短押しでターゲット切り替え、長押しでフリーラン)に統合されている関係で少しややこしく、3Dテイルズに慣れているプレイヤーは操作に混乱する可能性が高い。 ---また、ボタン長押しがフリーランに設定されている為、従来作で出来て当たり前だった「ボタン長押しで時間を止め、じっくりとターゲットを絞り込む」事が不可能になってしまった。 -ギルドシステムもかなり不評。 --依頼内容も画一的で、ただポイントを稼ぐだけの作業ゲーになっている。 ---一応フォローすると、依頼の中にはギルドダンジョンでしか戦う事が出来ないモンスターや、特殊アイテムを装備して進める物も存在している事から各種図鑑のコンプリートには必要不可欠であり、クエストで獲得出来るグレード量も戦闘時の物と比べて多く、引き継ぎアイテム(後述の)の購入には必須となっている。 --グレードを消費して各種便利アイテムや2周目引き継ぎ権利を買うことが出来るが、過去の作品に比べて引き継ぎアイテムが高すぎる。なのにギルドでクエストを破棄しただけで''ここの消費ポイントを1%値上げされてしまう''。((なおこの仕様で小数点以下の値が出現する内部値と小数点以下を切り捨てる表示値の差を利用して、グレードをオーバーフローさせカンストさせてしまうバグが存在する)) ---こう書くと「じゃあ諦めずに全てクエストを達成したら別に良くね?」と多くのプレイヤーは思うかも知れないが、クエストの中には「全ステータスが大幅にダウンしてしまうペナルティの付いた防具を強制装備してストーリー後半戦の敵に10回戦闘で勝利する」という、ライトプレイヤーお断りな物が2つ程存在する為、上述のコレクター図鑑埋めを目的としてプレーする場合は、図鑑登録後に破棄してしまいやむを得ずギルドアイテムを値上げしてしまう可能性が高いだろう。 -グレードとは別に戦闘評価が[[エターニア>テイルズ オブ エターニア]]以来の復活となったのだが、戦闘ランクノーマルでは満点を取るのが非常に困難である一方で、ハード以上だとレベルを上げて序盤の敵を瞬殺しただけで満点が取れてしまう。 --高評価のものは5つまで記録されるのだが、同評価のものは古いものから順に消去される。保存は不可能で、コンボが長く続いた記録等も雑魚との戦闘の記録に容赦なく上書きされてしまう。 -引継ぎによって一部イベントが起こらなくなり、いくつかの要素がコンプリートできなくなるバグが存在する。 --その場合引継ぎアイテムを捨てて周回すれば復活するが、引き継がなかった要素をまた集めなおす必要がある。 -敵幹部の中にはボイス数が少なく序盤と終盤にしか用意されていないキャラクターも存在する。 --もっとも、シナリオ終盤での該当キャラクターとの戦闘では久々のボイス登場にも関わらず、やたらと喋りまくるのが救いか。 ---- **総評 グラフィックなどはDSの性能を考えればかなり出来がいいが、上記の問題点が足を引っ張ってしまい、評価は割れ気味である。~ ただ、あんまりすぎる出来であった前作である『テンペスト』による前評判の悪さを覆すには十分な出来であり、特に戦闘面にこだわるユーザーには満足できる内容である。~ 簡単にまとめれば、シンプルさが売りの出かけ先でも気軽に出来るRPGといったところ。 ---- **余談・その後 -本作はシリーズ恒例の小説版が発売されている他、ジャンプスクエア創刊号からコミカライズ版も連載されていた(全12回)。 -パーティキャラの半数は同社が本作の一年前に製作した『[[テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー]]』のキャラモーションの大半を流用している。 --具体的には主にスパーダがロイドから、アンジュが盗賊から、エルマーナが格闘家(あるいはセネル)からである。技の大半が共通していることからも明らかであろう。 --後に『[[テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー3]]』にてガンマンがイリアのモーションより追加された。 -この作品の後にDSで発売された『ハーツ』(こちらはナムコ・テイルズスタジオ製作)では、今作の問題点をほぼ改善してはいるのだが、斬新過ぎる販売戦略でまたしても評価が割れてしまった。 -2012年にPS Vitaで『[[テイルズ オブ イノセンス R]]』としてリメイクされた。 --戦闘システムの変更、シナリオの一部書き換えおよびマップの追加、フルボイス化、グラフィックと音質の向上、キャラの追加などがされた。 ----