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First Queen - (2016/08/22 (月) 09:32:51) のソース

*First Queen
【ふぁーすとくぃーん】
|ジャンル|RTS&RPG|
|対応機種|PC-9801VM/UV以降、X68000|
|発売・開発元|呉ソフトウェア工房 |
|発売日|1988年9年27日|
|定価|8,800円|
|分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|

**物語
戦いの発端はオルニックから始まった。

オルニック王は、すでに滅びてしまった古代ログリス王国ゴルド王の血を引くキャサリンを王妃に迎える。~
野心高き彼女は年老いた王を退位させ自ら女王に即位し、ログリス全土を手に入れるため南へと侵略を開始した。~
手始めに麓のリッチモンドが襲われ、住民は瞬く間に虐殺されてしまった。領主リッチモンドは命からがらカーディック城のペリーズ王の元へ逃れる。ペリーズ王には、一人娘のソフィア姫がいた。~

「オルニックの目的は、このカーディックとあなた方の命です。キャサリンはログリス創世記にあるゴルド王の言葉『わが末裔唯一人となりし時、ログリスは一つとなり繁栄す』を信じています。~
 今ゴルド王の血を引くのはキャサリンとあなた方だけ。ただちに兵を上げ、オルニック軍の南下を阻止しなければ」~
「リッチモンド伯、わしはこの通り長らく病んでおり、自らの身もままならない。わしの代わりに兵を率いてオルニック軍を打ち破ってくれ!」~

こうして今、ログリス全土を巻き込むオルニックとカーディックの戦いが始まった……。

**概要
日本でのRPG要素を持ったRTSの先駆け、『シルバーゴースト』(88年、PC88SR & X1)。本作はそのシルバーゴーストのシステムを受け継ぎ発展、さらにボリュームアップさせたものである。
-プレイヤーはリッチモンド伯となってカーディック軍を率い、最南端から幾つものエリアを通って仲間を増やしつつ最北端のオルニック城を目指す。
--敵もまた徐々に南下して来る。同じエリアに入ると戦闘になり、リッチモンド伯が戦闘で死亡するか、カーディック城が陥落するとゲームオーバーである。

**特徴
-本作最大の特徴は「ゴチャキャラ」システム。今でこそリアルタイムストラテジー方式のゲームは珍しくないが、本作のそれはその走りとも言える、非常に斬新なシステムであった。
--まず1つの部隊は最高18名で編成され、移動や戦闘はこれを単位として行う。通常の手順では編成できない部隊も僅かにあるが、それ以外は特に制限も無く、仲間になったキャラならほぼ好きなように部隊を編成出来る。
---そして敵部隊やモンスターと戦闘になると、互いの部隊のキャラが入り乱れてリアルタイムにぶつかり合う。
--戦闘の中でコントロールするキャラは、リーダー以外でも自由に変えられる。ただしリーダーをコントロールしている状態でないとエリア間の移動は出来ない。
---味方のAIは常にコントロールキャラの救出を優先するため、コントロールキャラが一人で離れて敵に囲まれピンチになっても(余程相手が強い敵でなければ)安心。
--但し、「敵部隊と交戦中、コントロールキャラと仲間が遠くはぐれている」「敵部隊に仲間が囲まれた状態でエリア移動をしてしまう」と、その仲間ははぐれたり、敵に捕まったり、行方不明になってしまうというデメリットがある。
---その場合、エリアから最も近い「宿屋」や、敵施設の「牢屋」などを探すと再会できることが多い。
--さらに本作には前述のように、RPG的要素もある。兵は戦って経験を積み成長していく。
---中には一定のレベルに達すると「武器屋」でクラスチェンジができるようになり、これまでとは違った特性・AIを身に付けるキャラも存在する。

-全体MAPは南北に細長いもので、南端にプレイヤーの居城、北端に女王の拠点がある。プレイヤーは女王打倒のため北上するのだ。
--基本的にどういうルートで侵攻していくかは個人の自由。ただし、いくつかこなさなければならない必須イベントはある。

**評価点
-当時珍しかった本格RTS。
--前作『シルバーゴースト』のゴチャキャラシステムの面白さをそのまま継承。さらにシステムを発展させ、ボリュームも大幅にアップ。
--最初は少数だが、方々を巡る事で仲間を増やしていく。敵リーダーを倒して部下を追い詰め降伏させて仲間にすることも出来る。最終的に総勢150名以上もの固有の名を持つキャラを集めることが可能。様々な勢力を味方につけ軍団が増強されていくのは、大河ドラマかのよう。
---MAP上には様々な勢力があり、味方を増やすには、彼らに依頼する事となる。ただし勢力同士が敵対してるものもあり、その場合は一方を味方につけると、もう一方は敵となる。
--キャラのAIはクラス毎に決まっているが、それも多様。普段は隊列を組んでいるが、敵を見つければ近寄って攻撃する(弓兵は弓を射つ)しHPが少なくなれば後方に退がって休む(ナイトは休まず、名誉を重んじ死ぬまで戦う。また固有のキャラには例外も多くいる)。命令によって一斉に退却させたり停止させたりも出来る。
--終盤には「決戦場」が存在する。これは一部隊ごとに順次出現していく自軍とともに数十名の敵(限りがあるが、倒すごとに復活していく)と戦う場所で、数十名のキャラが入り乱れて戦う様はまさにクライマックスに相応しい壮観なものである。
---ここまで進めることだけなら強力な部隊が1つあれば可能だが、この決戦場で勝つためにはある程度育てた部隊がいくつか必要になる。

-100人を超える兵達一人々が成長していくRPG要素。
--各兵は経験を積んで強くなっていく。アイテムを使って強化される場合もある。まさしくRPG。プレイヤーは100人を超える各兵、一人々の成長を促していくのだ。このためか、この人数を率いながらも各人に愛着も湧くと言うもの。

-シナリオも特別素晴らしい出来というわけではないが、要点はキッチリと抑えている。
--モチーフとなっているのはかの『アーサー王伝説』。中盤、泉の妖精から「エクスキャリバー(移植作品によってはエクスカリバーそのままの名前)」を託されるシーンで、ニヤリとした人も多いだろう。
--タイトルにもなっている『First Queen』はこの世界で非常に重要な意味を持っている。もっとも、何故それが必要なのかという理由づけは、一作目ということもあってやや弱いが…。

**問題点
システム周辺は不便なところがあった。
-ゲームを起ち上げると、常に最初の段階から始まる(つまり起ち上げと同時に所謂「New Game」で始まる)。ゲーム中にセーブは出来るしすでにメニューが開いてあるためそこからデータをロードすれば続きから始められるのだが、セーブ箇所は一つしかないため、うっかりセーブの方をしてしまうとこれまでの努力が水の泡。
-敵部隊が別のエリアに動くとアナウンスが出るが、この時にマップが表示されないためどこに来たのか分かりづらい。
-先述の通りレベルが上がるとクラスチェンジが出来るようになるが、ファイターからナイトへのクラスチェンジは最南端の町でしか出来ない。いちいち歩いてそこまで戻るのが非常に面倒。
-戦闘中にも不便なところがある。
--レベルは攻撃が当たった時にランダムで上がるのだが、弓兵が弓を当ててもレベルアップ判定は起きない。そのため弓兵は自分でコントロールして接近戦をやらせないとほとんどレベルが上がらない。
---また弓兵以外でも積極的に敵に向かって行かないキャラはいるため、そういったキャラも自分でコントロールして敵と戦わなければならない。
--HPが0になって死んだキャラは消えてしまうが、何の警告もないのでわかりにくい。このゲームには生き返りの手段などというなまっちょろいものは存在しないので、うっかり死なせたままセーブしてしまえばそのまま永久にお別れである。
--敵を寝返らせても外観が変わらないため判別しづらい。
--コントロールをリーダー以外に移すと''リーダーが動かなくなる。''
-通常移動は隊形を維持したまま動くため、一列隊形にしないとよく障害物に引っ掛かってしまう。退却の際も一直線に後退しようとするため自分でコントロールしないとよく敵に囲まれる。

ちなみにエンディングは少々欝。あまりハッピーエンドとは言えない。
予言の内容的に死亡フラグが立ってる王様はともかく、吹き飛ばされて行方不明になる主人公は当時だれもが「あり得ない」と評価した。
(どうやら主人公を続投させるための処置だったらしい、名前は違うけど)

**総評およびその後の展開
-当時これだけ多くのキャラに個性まで付けて同時に動かせるゲームは他に無く、一人一人に名前のある一般兵にまで愛着が沸いた「一人も殺さない」プレイを貫くプレイヤーが続出した。
-2001年にはグラフィック変更とともに問題点の幾つかを解決し、オリジナル版も同梱してアレンジ版としてwindowsに移植された。対応OSは95/98/Meだが、公式サイトからパッチをダウンロードすればXPにも対応可能。
-- SFCにも移植されているが、販売元がかの『カルチャーブレーン』になったためか、「夢の介バージョン」として大幅な変更が加えられている。とはいえ、SFC版にある独自の味わいはなかなか良質。
-その後「ゴチャキャラ」システムは2以降でさらに強化・進化され、First Queenはシリーズ化していった。

**余談
-開発元である「呉ソフトウェア工房」は社員が5人にも満たない小さな企業である。しかし社長自ら「業界最年長プログラマー」と名乗り気を吐いていることでも知られ、PCゲーム業界ではそれなりに有名である。
--雑誌「ログイン」の創刊20周年記念時に祝いのコメントを寄せていた。きちんと掲載され、編集部から返信の記事も書かれていたことからも、それは伺える。
-自社作品のパッケージイラストに非常に力を入れていることで知られている。それもそのはず、I~IIIは''天野喜孝''、IV及び「ダークセラフィム」は''末弥純''であり((両者の出している画集にも、ちゃんとこのパッケージイラストは掲載されている。))、小さな企業であることが信じられないぐらい豪華なイラスト陣である。
//「零細企業」は多分に侮蔑的なニュアンスを含むので、自称する場合はともかく、第三者が呼称に用いることは失礼に当たります。