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Batman: Arkham Origins - (2015/03/17 (火) 17:21:39) のソース

*Batman: Arkham Origins
【ばっとまん あーかむびぎんず】
|ジャンル|アクション|CENTER:&amazon(B00DHARSVE)&amazon(B00DHATJKC)|CENTER:&amazon(B00DHATG1O)&amazon(B00EF08D1Y)|
|対応機種|プレイステーション3&br;Wii U&br;Xbox360 &br Microsoft Windows(海外のみ)|~|~|
|メディア|【PS3】BD-ROM&br;【360】DVD-ROM&br;【WiiU】Wii U専用12cm光ディスク 各1枚|~|~|
|発売元|ワーナー・ホーム・ビデオ|~|~|
|開発元|WB Games Montréal&br()Splash Damage(マルチプレイ)|~|~|
|発売日|2013年12月5日|~|~|
|定価|7,980円|~|~|
|プレイ人数|1人&br()※オンライン時:3~8人|~|~|
|セーブデータ|4個|~|~|
|レーティング|CERO:C(15歳以上対象)|~|~|
|判定|なし|~|~|
|ポイント|アーカムシリーズの原点を描く&br()システムはアーカム・シティからほぼ変わらず&br()ゲームの出来は間違いなく良作なのだが…&br()バグとフリーズの嵐が最大の敵|~|~|
|>|>|>|CENTER:''[[バットマンシリーズリンク>バットマンシリーズ]]''|
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#contents()
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**ストーリー
前作『バットマン アーカム・アサイラム』、『バットマン:アーカム・シティ』の数年前を描くストーリーで、最も危険な犯罪が起こる前のゴッサム・シティが舞台。若く未熟なバットマンが、彼のまだ浅いキャリアの中で“犯罪と闘う戦士”として、ダークナイトになることを決定づける瞬間を描く。
ゴッサム・シティを支配するギャングの頭領、ブラックマスクがただ1人彼に立ち向かう男、バットマンの抹殺計画を遂行。バットマンの首に5000万ドルもの懸賞金を懸け、全世界から名だたる暗殺者を招集する。ゴッサム警察にもまだその存在を認められておらず、未来の仲間からも現在の敵からもその身を追われるバットマン。孤高のヒーローの、孤独な戦いが幕を開ける。(公式サイトより抜粋)

**概要
-言わずと知れた名作『[[BATMAN Arkham Asylum]]』から始まったアーカムシリーズ、その第三作目。

-時系列的には第一作「アーカム・アサイラム」よりも更に前に当たり、ブルース・ウェインがバットマンとして活動し始めてからまだわずか2年半しか経過していない時期のクリスマスイブの出来事とされている。
--本作中では、未だゴッサム市民はバットマンという存在を架空のもののように認識しており、警察権力もバットマンに敵対している。その中でバットマンは後に協力者となるゴードン警部と如何にして友情を育むこととなったのか、そしてバットマン最大の敵・ジョーカーが如何に生み出されたのか、という点がシナリオの骨子となっている。
--これらのシナリオは原作のエッセンスを取り入れつつも大幅にアレンジされており、それでいて違和感なく第一作「アーカム・アサイラム」に繋がるように構成されている。つまり本作は「アーカムシリーズのルーツ」を描いた作品なのだ。

-ちなみに本作は「バットマン:アーカム・ビギンズ」というタイトルで日本語販売されているが、原語版タイトルは「Begins」ではなく「Origins」。

-開発は今までの「Rocksteady」では無く「WB Games Montreal」が担当。
--またシリーズで初めてのオンラインマルチ・プレイが搭載された(Wii U版のみ非搭載)。

**特徴
-「フリーフロー・コンバット」、「プレデター戦闘」、「捜査モード」等、前々作・前作から継続している要素についてはそちらを参照。本項では本作から新たに追加された要素のみに限定して述べる。

-ガジェット
--バットマンが戦闘・罠・謎解き等に使用するアイテム群。ここでは前作から追加要素があるもののみ説明する。
--本作は前々作・前作よりも過去の話を描いているので、前作に登場したガジェットのうち多くは登場せず、別のガジェットに役割が置き換わっている。具体的には「ラインランチャー」、「リモート・エレクトリカル・チャージ」、「フリーズブラスト」が削除された。
--''バットラング''
---お馴染みバットマンのメイン飛び道具、コウモリ型手裏剣。今作では初代のマルチ・バットラングが復活し、再びトリプル・バットラングが使用可能になった。
--''遠隔クロー''
---本作初登場ガジェット。特殊な地形の場合に限定されるが、二点間にワイヤーを張り、その間を渡ることが可能とする。
--''衝撃起爆装置''
---本作初登場ガジェット。翻訳の関係で名前が分かり難いが、相手を混乱させる手投げ爆弾のようなもの。使用感は前作のフリーズブラストに近い。
--''グルーボム''
---本作初登場ガジェットではあるが、用途は前作のフリーズブラストと全く同じ。瞬間的に凝固する特殊樹脂を使った爆弾で、高温の蒸気が出ているパイプに蓋をしたり、水に投げ入れて簡易足場を作成したりする。敵に投げつけて固め、足止めすることも可能。
--''ショックグローブ''
---ガジェットの一種だが、ガジェット欄には表示されず、入手直後から常時使用可能となる。前作のRECと同じく、電子機器に電気を供給し、一時的に稼働させることが出来る。また、戦闘では一定数のコンボを重ねることで「充電」され、充電が完了すると一時的にバットマンの能力を攻撃性能が向上する。具体的には攻撃のコンボ数増加が二倍になる他、バットマン自身の攻撃力が上昇、更にガード不能攻撃となりスタンバトンやシールドを持つ敵にも正面から攻撃可能となる。
---このシステムは前作WiiU版に於いて「B.A.T.モード」という形で導入されたものだが、本作では正式に本編に取り入れられることとなった。

-ステージ
--本作の舞台はゴッサムシティ全域。前作の舞台アーカム・シティは「ゴッサムの一部区画を巨大刑務所として隔離した」という設定だった為、本作でもアーカム・シティと同様の地形を見受けられる部分もあるが、新規エリアも多く、少なくともマップは前作の1.5倍以上の広さとなっている。
--また、マップの広大化に伴いファストトラベル機能が追加。屋外であればどこからでも、バットウイングに乗って特定ポイントまで瞬時に行き来することが可能となった。

**評価点
-難易度とカタルシスが共存する戦闘システム
--前作WiiU版限定の要素だったB.A.Tモードが正式に戦闘に組み入れられたことで、充電と放電のメリハリが利いた戦闘を実現している。充電中には苦戦するシールド持ち敵や巨大敵も、放電に切り替わった途端バシバシとコンボ攻撃が出来るようになり、何とも爽快感がある。
--しかし敵の種類が増加した他、全体的に前作に比べ敵が強化されており、戦闘が易化した訳ではない。忍者やカンフーを使用する難敵や巨体敵なども雑魚に織り込まれるようになり、より一層戦闘に歯ごたえが出ている。

-演出面の強化
--グラフィックは最早言うことなしのトップレベル。遠景からビルの看板・雪の質感に至るまで細部まで作り込まれている。
--加えて本作では過去作では見られなかった様々な演出手法が取られており、ストーリーを盛り上げる。
---例えばバットマンを操作して戦闘していると、突如画面がTV局のカメラに切り替わり、そこにバットマンが暴漢と必死に戦う姿が映る。画面の中のバットマンは変わらず操作可能であり、プレイヤーはTVカメラ越しに応援する視聴者の心情になりながらも、バットマンとして多くの人々の期待を受ける重圧と高揚感を味わうことが出来る。
---ジョーカーの独白シーンではプレイヤーはジョーカーを操作し、彼の精神世界を旅するのだが、そこには口から火を噴くピエロやトランプの暴漢など、およそ常人の精神には登場しない様々なモチーフが登場する。((この演出は一作目「アーカム・アサイラム」に於いてスケアクロウの精神攻撃を受けたバットマンの演出と対になっている。バットマンの精神世界にはあくまで彼の見聞きしたトラウマや、骸骨といった有体なモチーフが具現化していたのに対し、ジョーカーの精神世界はあくまで陽気で、愉快なのである。))これによりプレイヤーは狂人・ジョーカー目線で世界がどのように見えているのか、ということを擬似体験することとなる。

-ボス戦闘の強化
--前々作・前作と本シリーズの課題の一つであった点が、「ボス戦闘が味気ない」というものだった。本シリーズのボス戦闘はそれ以前に登場した雑魚敵・中ボスのパターンを複合・工夫しながらも使いまわしているものが多く、「強敵との勝負」という実感を今一つ得難かった。しかし本作のボス戦闘は演出面・歯ごたえ共にかなり強化されており、文字通りの「強敵」として仕上がっている。
---例えば百戦錬磨の傭兵・デスストロークとの戦闘はガチンコの格闘戦。それもデスストロークの攻撃を見切ってかなりシビアにカウンターを決めていく必要があり、迂闊にこちらから殴ろうものなら逆にカウンターの餌食となる為、ヒリヒリとした緊張感のある戦闘に仕上がっている。
---対して放火犯・ファイアフライとの戦闘などはガジェットを多用して全力で挑む必要がある。一応有効な、模範解答的な攻撃方法は存在しているものの、ファイアフライに対しては様々なガジェットが効果がある為、自身のスタイルに合った方法で攻めていくことが可能となっている。

-ストーリー
--本作のストーリーはまだ未熟なバットマンと協力者、そしてヴィラン達との闘争の幕開けという非常に濃い内容となっている。
--登場するヴィランはブラックマスクを中心にデスストローク、ペンギン、ベイン、アナーキー、デッドショット、そしてジョーカー等。彼らは一人取ってもそれだけで一本漫画が描けるくらいの魅力的かつ強力な悪役たちであり、その彼らを違和感なく組み込みつつ「仲間とは・友とは何か」という主題を描き切ったメインシナリオの評価は極めて高い。

-原作愛
--やはり一番の評価点はここに尽きる。本作にはスタッフの惜しみない原作愛が注ぎ込まれており、恐ろしいことにビルの看板の一つ一つに小ネタが仕込んであるレベルで作り込まれている。
--特に人気ヴィラン・Mr.フリーズについてはメインシナリオに登場しないながらも「Mr.フリーズのルーツを描いたDLC」を配信して補完している。
--本作の登場ヴィランの一人・アナーキーは''マイナー過ぎて日本語のWikipediaに載ってないようなヴィラン''だ、と言えばスタッフのバットマンフリークぶりが伝わるだろうか。
--また、本作の舞台はバットマンの本拠地ゴッサムシティであり、敵側もバットマンの主要ヴィランは概ね押さえてある。つまり本作はシリーズ中でも所謂「いつものバットマン」像に最も近く、ハイクオリティな「バットマンごっこ」を求めている層にはたまらないものとなっている。

**問題点
-バグやフリーズが多い。
--本作はここで一気に評価を下げてしまった感がある。本作のゲームとしての完成度は極めて高い水準にあるが、''残念ながら本作をバグ・フリーズなしにプレイすることはほぼ不可能である''。こう断言できるほどにバグ・フリーズの頻度が極めて多い。
--数度のパッチ配布により現在は比較的マシだが、発売直後はマトモに遊ぶことすら難しかった。
---「敵を尋問しなければならない場面で尋問ボタンが出ない」程度ははっきり言って日常茶飯事。「攻撃対象の人間が壁や車に埋まっている」「敵が柱に引っ掛かってずっと走っている」「クリアしていない筈のチャレンジのクリア判定が出る」など、バグ報告に関しては枚挙に暇がない。
--原因はPS3のスペックをギリギリまで使用しているからではないか、と言われている。事実、次回作の「アーカム・ナイト」は次世代機での発表となった。
---ではスペックをギリギリまで使用した分良いものが作れているのか、と問われるとこれも首を傾げざるを得ない。本作のマップの広さが前作の更に1.5倍以上になっていることは上述した通りだが、ここまで広くする必要があったのか、という点は甚だ疑問。イベントも何も無い「ただあるだけ」の空き地や無駄な路地等も多く、「オープンワールドを作り込む」事に固執し過ぎており、その結果無駄に容量を食っているのではないかとも言われている。
---実際フリーズやバグの多くは屋外、つまりオープンワールド部分で発生しており、オープンワールド部分の作り込みが甘いことは疑いようがない。
---前作「アーカム・シティ」の時点でロード時間がかなりかかっていたにも関わらず、本作でマップ拡大を行ったことが失敗の要因であることは明らか。見通しが甘いと言わざるを得ない。

-一部やり込み要素の難易度
--前々作・前作のリドラートロフィーと同様、本作にも多数のやり込み要素が仕込まれている。しかしこのうちの幾つかの要素が嫌がらせじみており、問題視されている。
---本作の蒐集要素には「エニグマの脅迫ファイル」「サイラス・ピンクニーの日記」「アナーキーのタグ」の三種類が存在する。問題視されているのは後の二つ、「ピンクニーの日記」と「アナーキーのタグ」。「脅迫ファイル」に関してはゲーム内ヒントである程度の位置を特定することが可能なのだが、この二つについては完全にノーヒントで蒐集する必要がある上に、どちらも入り組んだ地形の裏側などにあることが多く、自力でマトモに探そうとすると、本作のマップの広大さも相まってかなりうんざりする。
--また、本作には「ダークナイト・チャレンジ」というチャレンジ要素が設定されており、設定された課題をクリアする度に経験値などの特典が貰える。しかしこの「ダークナイト・チャレンジ」は、高レベルになってくると「1度も攻撃を受けずにコンボ倍率50倍と15バリエーション以上を達成しつつ脅威度中以上の敵に勝利する」等、かなり無理難題を吹っかけてくる。
---これで「ダークナイト・チャレンジ」のクリア報酬が軽いものならば無視も出来るが、なんと全てのチャレンジをクリアすると映画「ダークナイト((クリストファー・ノーラン監督のバットマンシリーズ二作目。バットマンとジョーカーの対決を描いた衝撃的なストーリーはバットマンファンのみならず全世界的に影響を与え、バットマンシリーズを再興した。バットマンファンならば間違いなく視聴している大傑作。))」のバットマンのスキンが使用可能になるというのだから、なかなか無視もしづらいのである。

-翻訳の質の悪さ
--前々作・前作と同様、やはり翻訳の質はあまり良くない。
--一例を挙げると、マッドハッターに誘拐された少女を救助したシーンの会話で、バットマンの「これでもう大丈夫だ(Everything's going to be all right.)」という呼びかけに少女は「大丈夫じゃないわ(No, It's not)」と返す。「大丈夫じゃないわ」という言葉は不穏な雰囲気であり、「何が大丈夫じゃないんだ?」とプレイヤーも不安になるのだが、これは単なる直訳のミス。この少女の台詞は「酷い目に遭ったわ」程度の意味であり、日本語と英語のニュアンスの差異が意味深な雰囲気を助長してしまっている。
--また、これは翻訳担当者の責任ではないかもしれないが、本作の日本タイトル「アーカム・ビギンズ」にも批判は多い。「オリジンズ」では日本人に意味が分かり難いという配慮なのかもしれないが、「Origins」という英字タイトルの下に「ビギンズ」と片仮名で書いてある現状も、これはこれで分かり難い。

**総評
アーカムシリーズ三作目にして、アーカムシリーズの原点を描いた本作。ゲームとしての完成度は前作に勝るとも劣らないのだが、バグとフリーズの多さがネック。「アーカムシリーズ」という看板の大きさも相まって、必要以上に出来に落胆されてしまったようにも感ぜられる。

とは言え、致命的なバグに遭遇することは然程多くないのが救い。バグの多さに敬遠せず、一度はプレイしてみることをお薦めしたい。極上の演出とシナリオは、必ずやあなたをバットマンの世界に没入させてくれるだろう。

**余談
-本作ではアーカムシリーズ恒例の「隠し部屋」が未だ見つかっていない。本作には隠し部屋は仕込まれていないのではないかとの疑いが強いが、前々作の事例を鑑みるに、全世界のプレイヤーが血眼になっても見つけられない程に隠されている、という可能性も否定できない。

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