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SELECTION 選ばれし者 - (2016/02/23 (火) 02:18:38) のソース

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*SELECTION 選ばれし者
【せれくしょん えらばれしもの】
|ジャンル|ロールプレイングゲーム|&amazon(B000069S70,image);|
|対応機種|ゲームボーイ|~|
|発売・開発元|ケムコ(コトブキシステム)|~|
|発売日|1989年12月28日|~|
|定価|3,000円(税別)|~|
|配信|バーチャルコンソール&br()【3DS】2011年12月7日/400円(税5%込)|~|
|判定|BGCOLOR(khaki):''ゲームバランスが不安定''|~|
----
**概要
-『[[魔界塔士Sa・Ga]]』に続くGBのRPGタイトル第二弾。
-平和だった王国が、探求心の強い王により闇の力に支配されてしまう。15歳の誕生日を迎えたハイン王子が、祖国の呪いを解けるのは自分だけだと知り、その為に必要な伝説の剣を求めて東奔西走する……という王道ストーリー。
-普通のRPGとは違い、「みる」、「あける」、「たたく」といったコマンドを使いゲームを進めていくアドベンチャー要素が強いのが特徴。
-このため移動方法もコマンドを選択していきたい方向を指定して移動していく。
--移動先のカーソルに●がついている場合は敵が道をふさいでおり、そちらに移動すると戦闘が始まる。
---移動せずともアドベンチャーコマンドを実行する毎にエンカウント発生はある
-呪いの影響で大多数の国民が森の木に変えられてしまった為、情報収集の多くは「き」に対して「みる」コマンドを実行して得ることになる。
-コンティニュー形式は平仮名16文字のパスワード。

**評価点
***あまりにも斬新な戦闘システム
-本作を語るうえで欠かせないのが独自の戦闘システム。主人公のハイン王子は終始一人旅という『[[ドラゴンクエスト]]』と同じ状況なのだが、それに対して敵は最大3体ものグループで登場する。このため常に多勢に無勢という状態に陥る……と、思いきや''敵サイドは異種族に対して同士討ちを起こす''というあまりにも独自な仕様がある。
--この場合、敵の攻撃目標がハイン王子になるか異種族になるかはランダム。異種族同士で現れた場合、''敵サイドは常時メダパニがかかった状態''だと思ってもらってよい。
--後述の魔法システムも合わさり、敵サイドは''同士討ちと自爆が平常運航''という非常にカオスな状態になっている。
---ハイン王子がコムギ(HP回復アイテム)を食べているうちに、勝手に戦闘が終わっているなどよくあることである。
--ただし、このシステムのおかげでハイン側は敵同士が争っている間に態勢を整えることが可能であり、能力強化の魔法で戦闘態勢を整えたり、HP・MP吸収魔法で回復を行ったり、逃げ道を確保したりなど高い戦略性を出すことに成功している。
---敵が疲弊しきったところでトドメをさすなど漁夫の利を狙うことが基本だが、防御行動がないのが難点。
---効果のない道具を使って無駄行動を行うことで、敵が弱り切るまで傍観することは可能。

***妙なテンションのハイン王子
-実父に殺されかけたところを落ち延び、祖国は地の底に封じ込まれ、さらに母を失い親の顔も知らぬまま15年も森の奥に潜み生活をしてきたという暗い過去がある割に''あまりにも陽気。''
-%%自称%%[[しんのゆうしゃ>シャドウゲイト]]や[[せかいいちふこうなしょうねん>悪魔の招待状]]に似た独特のケムコ節は本作でも健在である。

#region(以下抜粋)
-道端に空いてある穴に対して「たたく」コマンドを選択すると、(スカッ)「たたけないよー!」と、''ノリツッコミを披露する。''
-穴に対して「あける」コマンドを選択すると「あいているからあなっていうんだろっ!」とツッこまれる。
-人物に対して「あける」コマンドを選択すると''服を引ん剝こうとする''
-沼地を「たたく」と「げーーっ!!どろがかおじゅうにとびちったぞ!」と激しく後悔する。
-池を「たたく」と''「ひゃあ つめてぇーっ!!」''
-扉がブツブツと言っているという状況において、言葉を聞き取れる道具を使ったあとのリアクションが「こんなとびらがいえにあったら、うるさいだろうなぁ」と、''扉がしゃべるという状況を怪しむ素振りすら見せない。''
-一部の宝箱に対して「たたく」を実行すると、すっきりしたという理由で''HPが回復する''
-ぬかるみを「みる」と足を滑らせて転倒「ぎえ-っ!このぬかるみはそこなしだ!''フンガ!フンガ!''」
-塔の最上階から見える月に対して「たたく」を実行すると「はっ!''つきをたたこうとせのびをしたらあしをすべらせちゃったよーっ!''」
--この際、塔の最上階から落下して''20ポイントのダメージをうける''。しんのゆうしゃならまず死神の世話になっているだろう。
---勿論ハイン王子もHPが20以下なら力尽きてしまうのだが…。
--因みに腐ったジュースを飲んで腹下しを起こしても''20ポイントのダメージ''。体が強いのかそれとも腹が弱いのかは謎である。
-愛をつかさどる魔道士カミュが閉じ込められている塔に入った時の第一声が''「あのうつくしいひとがここにいるんだな…むふふっ!」''
-小人の質問に正解するとキスをされるが''「やったぁーっ!キスされちゃったぞ!これでがぜんげんきがでてきたぞ!!」''と叫び''HPが回復する''
-物語後半で挑む自分の城では、大きくなった時のハイン王子を想像して描かれた肖像画が飾ってあるが、''「ほんもののほうがハンサムだぞ」と自画自賛する。''
--敵に対してやたらビビリ腰なのもしんのゆうしゃと同じであり、行く手にクーガとスケルトンが戦闘をしているのが見えて「ああっ!ちかづいてくるぞ!!ど、どうしよう」と狼狽える。
---因みにクーガとスケルトンをドラクエに置き換えると''スライムとおおがらすが喧嘩をしているようなもの。''
-探索で魔物が不意に現れると、「ぎゃあー!」「で、でたーーっ!!」など情けない悲鳴を上げる。

……など、枚挙に暇がないが、こういった一人漫才を楽しむのも本作の醍醐味であり、一人旅という寂しさを微塵も感じさせない。
#endregion

***良質なBGM
-初期GB作品にしては曲数が多く使いまわしがない。いずれも雰囲気にあっており評価が高い。
--ただし一番聴く機会が多い戦闘BGMは1曲のみであり、4小節ぐらいの短さでループしてしまう。

***親切設計が多い
-移動に面倒なシステムだが、「テレポット」というMP0の移動手段があるのでそこまで気にならない。
-全滅してもペナルティが一切ない。
--ただしHP・MPともLV1初期値の20で復活するため、回復する手間は必要である。

**問題点
***使い物にならない魔法が多い
-本作の攻撃魔法はあまりにも自爆要素が多い。
--攻撃魔法の属性は幾つかあるが、そのうち炎を呼ぶ「ムーフ」、竜巻を起こす「フィー」、雷を落とす「ザグ」は…
---基本形(ムーフ/フィー/ザグ):単体攻撃。対象は''唱えた本人も含めて''誰か一人(ランダム)。
---デ系(デムーフ/デフィー/デザグ):単体攻撃。対象は敵一体。
---ボザ系(ボザムーフ/ボザフィー/ボザグ):全体攻撃。''唱えた本人も含め戦場全域を巻き込む''。
---ガル系(ガルムーフ/ガルフィー/ガルザグ):全体攻撃。対象は敵全体。
--なお氷属性の「グミー」「ガルグミー」には自爆要素は無いが、爆発属性の「トルネ」はやはり''唱えた本人も含め全体を巻き込む''。「ガルトルネ」なら対象は敵全体になるが…。
-上記のように、攻撃魔法の約半数が自爆要素持ちという危険な代物である。ひどい。
--前述の「敵の自滅」も大半はこれが原因。
---しかも本来無効化や反射できる属性でも自爆時は素通りする。なので同じ魔法でも''王子や異種族が唱えると効かないのに、自分自身で唱えた魔法では死ぬ''という奇妙な現象が起こる。
--もちろんハイン王子も例外ではない。LV2で「ムーフ」を覚えて、いざ唱えてみたら''自分が被弾して死ぬ''という事は誰もが経験した事だろう。
--基本形の呪文の場合、敵が3体いても、4回に1回は自爆する可能性がある。
---裏を返せば異種族同士の敵が3体いた場合、敵が唱える基本形の魔法が王子に飛んでくる確率は''1/4でしかない。''
--なお自爆するからといって上位魔法より威力が高い訳でもなく、安全な上位魔法を覚えたら危険な下位魔法は用済み。
---ボザ系はガル系より消費MPが1軽いという点はあるが、これだけのためにダメージを受ける旨味は全くない。

-敵のMPを減らす「ラマジ」は、敵サイドは''MP0でも魔法が使える''ため王子は使う意味が全くない。完全な地雷魔法。
-MPを吸収する「ゲトマジ」は、消費MPが3で''吸収量が1~10''なので損する可能性がある。
--''残りMPが9以下の場合、それ以上吸えない''という謎仕様があるため、よけい損する可能性が高い。
-敵の視界を封じる「メッシャー」は、命中率を落とすのではなく''同種族も狙うようになる''と言う仕様。
--このため敵が単体の場合は使っても何の効果もない。また異種族しかいない場合も何の意味もなさない。
-能力強化系魔法(リアプ/リボプ/リゴウ)や能力低下魔法(ラマーテ)の効果が1~10と安定せず使いにくい。
--そもそも''敵の能力を落としてその分自身のステータスを増やす''「ゲトアプ」と「ゲトボブ」があるため強化のみ、低下のみという時点で微妙。
---しかしゲトアプ&ゲトボブは攻撃魔法扱いで反射や無効化もされるため、ある程度すみわけはできている。

***アイテムに対してのヒントが少ない
-使うことで強敵とも有利に戦える道具に対しての説明が全くない。
#region(以下効果のネタバレ)
-母の形見の「(ルビー)ロザリオ」は、あるボス戦で必須(コレでしかダメージを与えられない)なのだが、その情報を得づらい。
--あるエリアの木に話すことでコレが苦手という話を聴くことができるが、ボスのいるエリアから離れているのでやや不親切。
-「キカンぞう」は道具として使用することで50%の確率で魔法を完全無効化するバリアを張れるが、説明はない。
--後述のマッド戦ではほぼ必須アイテムなのに…
-「きいろいミ」は道中で使うとモグ…モグ…モグ…''ハインのMPがへった''とやたら淡泊な演出が起こるだけで普通に使うと地雷アイテムと思ってしまう。
--が、戦闘中に使った場合は''何故か敵にダメージを与えることができる。''後述のボス戦ではやはりほぼ必須だが、やっぱり説明がない。
#endregion


***ゴールドが255Gしか持てない
-消耗品はLvが上がるごとに値上がりするため、この縛りは地味に厄介。LVが高くなるとオオムギや薬草は255Gでは2・3コしか買えないため、Lvが低いときからこまめに買い足す必要があるのは面倒である。
-なお武器を買い換える必要はなく(イベント毎に自動的に強化される)、防具を買い替える機会は2回だけである。

***フラグ管理が甘い箇所がある
-この当時のゲームならよくあることだが、パスワードに宝箱入手のフラグがないため(貴重品を除く)、パスワード再開でアイテムを量産できてしまう。
-有利なものばかりではなく、2番目に強い剣を手に入れるイベントが、最強の剣を持っている状態でも問答無用で起きてしまう(パワーダウン)。戻って最強の剣入手イベントをもう一度発生させればいいが、面倒。
-これ以外にも回復イベントなどはエリアごとで管理をしているようで、一度移動して戻ってくると何度でも使用できてしまう。

***一部の敵があまりに強すぎる
-真っ先に上がるのはマーテルの領域で必ず戦うことになる「スラッグ」。こいつは「酸を吹き付ける」という特殊攻撃を行うが、順当に進めて来たら一発で即死するような威力。ダメージ幅が大きいので運が良ければ何とかなるが、運が悪ければ相当鍛えていても本当にどうにもならないので、ダメージが最低値でとどまることを祈るしかない。
-終盤に現れる「ドルイド」は本作屈指のトラウマモンスターとして語り草である。
--まず守備力がヘネシー王に次ぐ124と異常に高く、順当に進めてきたのでは最強の剣でもダメージが与えられない。このため魔法に頼りたくなるが、フィー系を無効化しムーフ系とザグ系は反射するありさま。トルネ系とグミー系は確実に通るが、HPはヘネシー王より高い100を誇るためなかなか倒せない。
--しかもドルイド側はゲトラフ(HP吸収)デザグ・デフィーという''敵を確実に攻撃できる魔法で苛烈に攻めてくる''ため自滅することが絶対になく、火力が尋常じゃないので悠長にステータス強化も低下も行うことはできない。
--トドメをさすように行動力が高いため逃げにくく、''同種族2~3体で出現することが多いので同士討ちすらしない''という全く隙がない凶悪モンスター。

***ボスは雑魚に輪をかけて激強
-中盤で戦う沼の主「マッド」は守備力が高いうえ、中盤において最強の攻撃魔法「トルネ」と「ガルトルネ」を連発してくる。
--キーアイテムの一つで呪文は封じることができるが、成功率が50%なので非常に運任せの戦いを強いられる。
-サファイアを守護する「イエティ」は「吹雪」でこちらの行動力を落としつつ攻撃をしてくる。
--威力が非常に高いうえ行動力が落とされるため後手に回らざるを得なくなるので回復もままならず殺されることが多い。
--そもそもよほど鍛えていても、''運よく最低値付近のダメージが出ても2発は耐えられないほど超威力''でどうにもならない。
--しかも特殊行動なので封じる手すらない。突破方法としては''吹雪が来ないことを祈るしかない''という運ゲーである。
-長い地下道を抜けた先の城で待ち構える実父「ヘネシー王」
--守備力が異常に高く、最高レベルでもまともなダメージが期待できないうえすべての魔法を反射してくる。
--そのうえヘネシー王は最強魔法の「ガルトルネ」と「ガルグミー」で容赦なく責め立ててくる。
--ドルイドを筆頭に強敵が犇めく長い長い道中を抜けた先で待ち受ける''攻撃も魔法も効かないボスに圧倒的に倒され強制送還される''という光景に心をへし折られたユーザーは数知れない…。

#region(ネタバレ)
-実は「きいろいミ」というアイテムで固定ダメージを与えることができるので、これを使い続けるのが攻略方法だがノーヒントなので気づかないユーザーのほうが多い。
-さらに「マタンゴのほうし」という道具を使えば一定確率で眠らせることが可能なので、LV20代での突破も可能ではある。
-したがってヘネシー王の攻略方法は''胞子でトリップした親父に謎の実を与え続けて倒す''という凄まじくシュールな展開になる。
#endregion

-一方でラスボスは驚くほど弱い。はっきり言って道中のドルイドのほうが強いぐらい。
--ただし攻撃力は最強なので思わぬ事故死もありうる。
**総評
荒は目立つものの、大きなバグもなく作りこまれた世界観とユニークなテキストで飽きさせない作りであり、よくまとまった作品に仕上がっている。~
惜しむらくは2週間前にGB初のRPG作品として世に出た『SaGa』に完全に埋もれてしまったことだろう。~
こちらが先に発売されていたらGBのRPGの礎になっていた……かもしれない。

**余談
-92年9月には本編の続編である『SELECTION・II 暗黒の封印』が発売された。本作とは違いADV要素はなく無難なパーティ制のRPGである。
--ADV要素がないためか、ケムコ節全快だった王子の一人漫才はすっかりなりを潜めてしまっている。
-98年5月には『I』と『II』を一つにまとめた『SELECTION I&II』が発売されている。
--『II』以降はコンティニュー形式がセーブ(恐らくバッテリーバックアップ)に。『I&II』での『I』はパスワードとセーブの両方が利用可能。
-2008年にはiモードなどの携帯コンテンツでフルカラーリメイクされた。
--デザインはそのままにカラーで書き下ろされたモンスターなどは一見の価値あり。
--またハイン王子も線の細い耽美系の容姿に書き直されているが、''概要ページの王子はGB版のまま''なので違和感が凄い。
-現在は『I』『II』ともに3DSのVCで購入可能なので、比較的遊びやすいタイトルである。
-同名の[[RPGツクール2000]]用フリーゲーム『SELECTION』とは無関係。検索する際は要注意…?
-本作の戦闘BGMは翌年に同社から発売された『スヌーピーマジックショー』の最終面のBGMとしても使われている。
-説明書やパッケージ等のイラストでは王子が右手に剣を持っていたり左手に持っていたりするが、これはミスではなく…。