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サイコブレイク - (2016/04/06 (水) 13:34:45) のソース

*サイコブレイク
【さいこぶれいく】
|ジャンル|サバイバルホラー(TPS)|CENTER:&amazon(B00LLYPV7G,image);&amazon(B00LLYXUAQ,image);|&amazon(B00LLYRSXQ,image);&amazon(B00LLYUTWS,image);|
|対応機種|プレイステーション4&br;プレイステーション3&br;XboxOne&br;Xbox360&br;Windows 7~8.1(海外のみ)|~|~|
|発売元|ベセスダ・ソフトワークス|~|~|
|開発元|Tango Gameworks|~|~|
|発売日|2014年10月23日|~|~|
|定価|【PS4/One】7,300円&br;【PS3/360】5,800円(共に税別)|~|~|
|備考|予約特典としてゴアモードのCERO:Z指定のDLC付属&br;英題「The Evil Within」|~|~|
|判定|なし|~|~|
|ポイント|期待値が上がりすぎたマーケティング|~|~|

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#contents(fromhere)
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**概要
カプコンを退社したバイオハザードの生みの親、三上真司氏がディレクターを務めたTPS視点のサバイバルホラーゲーム。~
「サバイバルホラーへの原点回帰」を謳い、「国産初のAAAタイトル」「500万以上のセールスに見合う内容を持ったゲーム」等の自信満々な発言、発売前の宣伝等のビジュアルや実写PVの効果もあり、大きく期待と同時に不安視されていた(当時、PVの後半辺りから「何故か熱の冷める感覚がある」という意見が意外と多く見られた)。

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**ストーリー
刑事セバスチャンは、相棒のジョセフ、キッドと共に、精神病院で起こった壮絶な大量死亡事件の現場へと急行するが、不穏な気配を察した次の瞬間気を失ってしまう。目覚めた彼が目にしたものとは? 現実と虚構、絡み合うストーリー、死と隣り合わせの狂気の世界で、生き延びるために戦え!(パッケージより)

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**特徴
-主人公のステータスは道中で手に入るグリーンジェルを消費することで強化/補正できる。~
ステータスは身体パラメーター(HP・走る時間・銃の手ブレ補正)、武器(威力・リロード時間・最大所持数・アガニボルト(後述)の各種弾頭の強化)など。
--グリーンジェルは1周目で全てのステータスを上げきる量は回収できない。優先して強化すべきステータスにうまく配分しないと厳しいが、ギリギリクリアできるバランスが保たれている。

-ステルス要素
--要所要所でステルスアクションを要求され、上手く立ち回れば厄介な敵も難なくやり過ごせる。何度もトライして達成感を得る快感は、やはり昔ながらのゲームという感覚がある。
--一部には無効だが、大抵の雑魚には気付かれずに近づくことでスニークキルが可能。弾薬やトラップツールを節約できるので、後述のマッチを除けば雑魚はできるだけこの方法で倒すことになる。隙がない敵は空き瓶を投げて音を出すなどして注意をそらす必要もある。

-本作独特のアイテム・武器。
--マッチ
---通常、雑魚を一体倒すだけでも拳銃の弾をかなり消費してしまうが、転倒させたり、スニーキングで「死んだふり」をしている雑魚に近付いて燃やす事ができる。上手くいけば拳銃かショットガン一発で複数の敵をまとめて倒す事も可能。
--アガニクロスボウ
---専用の弾頭「アガニボルト」を射出するボウガン。道中で手に入るトラップパーツから各種弾頭を作成できる。いずれの弾頭も強力で、この武器を上手く使いこなせるかどうかが鍵になる。
---全部で7種類(うち2種類はDLC特典)あり、それぞれに特殊効果が備わっている。~
ハープーンボルト:ダウン・吹き飛ばし性能を持つ。~
フラッシュボルト:一定時間敵の攻撃と視覚を封じてスニークキルを可能にする。~
マインボルト:センサーで起動し接近した敵に反応して大爆発を起こす。~
ショックボルト:敵を感電させしびれさせて足止めする。ボスにも有効。~
フリーズボルト:敵を凍らせ足止めする。ホーンテッドクラスなら一撃で倒せる。
---いずれも、他の拳銃やショットガンなどと違い射出時に音を出さない他、マインボルトなどはあらかじめ設置する事でトラップとして利用出来るので、効率良く戦略を組み立てれば楽にチャプターをクリアできる。

-強烈なビジュアル
--人を選ぶ点ではあるが、ゲーム中のストーリーや雰囲気には非常にマッチした作りになっている。登場するおぞましいクリーチャーのビジュアルも、ラスボスの過去の体験から生まれたという点で、悪いものではない。

-3つのDLC
--『THE ASSIGNMENT』『THE CONSEQUENCE』
---本編で多くを語られなかった、キッド側のストーリーが描かれるDLC。前後編で各1,000円と少々割高だが、新規マップ・新規クリーチャー追加・収集要素ありと、ボリュームは値段相応。
---敵に対抗する武器が、後編の中盤を過ぎた辺りまでほとんど手に入らない事もあって、&bold(){「本編よりサバイバルホラーしてる」}と言われる事もある(後述)。~
本編同様強制戦闘のシーンはあるが、&bold(){それ以外ではキッドは丸腰で対抗手段は何も無い。}さらに通常ホーンテッド以外は即死攻撃を持つ相手ばかり。しかし全体の難易度が理不尽に高いわけではなく、内容も良く出来ているので、このDLC自体に不満の声は少ない。
--『THE EXECUTIONER』
---本編の重要な要素・STEMに繋がれた被験者の物語。本編で強い存在感を放ったクリーチャー、キーパーをFPS視点で操作し、能力を強化しながら暴れまわる事ができる。
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**評価点
-チャプターの始めから難易度を変えてやり直せる。下手なプレイで弾切れを起こしても詰む事はない。

-やり込み要素は本編で語られなかった部分の補完や攻略の補助になるため、やりがいがある。
--アーカイブス;新聞記事やセバスチャンの警察手帳など、事件の背景やサイドストーリーを補完する。比較的見つけやすい場所にあるため収集は難しくないが、1周目で全て収集するのは厳しい。2周目からのお遊び程度に考えた方がよいだろう。
--ロッカーの鍵:宝箱やステージに隠された女神像を破壊することで1つ(低確率で2つ)入手できる。セーブポイントにあるロッカーをどれか1つ開けることで弾薬やグリーンジェルなどを補充できる。セーブ&ロードで厳選も可能。
--地図の断片:少々見つけにくい場所にあるが、クリア特典として強力な武器を入手できる。もちろん使わなくてもクリアは可能。
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**賛否両論点
-オリジナリティが薄い。
--恐怖演出そのものは確かに及第点だが、その演出も「過去の映画・ゲームで見たことがある演出や描写」が大半を占めている。雰囲気作りに必要な血と肉塊、鉄錆といったような演出も特に目新しいといえる程ではない。第8世代のハード性能を活かした革新的なものはない。
---パクリと捉えられかねないものもある。看板クリーチャーの「キーパー」は''『SILENT HILL 2』の「レッドピラミッドシング」''と、「頭部が金属質な多角形」「倒しても復活する」「人の意識が具現化した存在」「最終ボス戦前に2体同時に相手にする」など類似点が多い。~
その他、タティアナ看護師の服装が『SILENT HILL』のリサ・ガーランドと同じだったり、『SILENT HILL 3』を連想させるメリーゴーランドや車椅子等。~
また、スニークキルは前年に発売した''[[THE LAST OF US]]を参考にしたように見える。「空き瓶で敵を誘導」「ナイフで一撃キル」「炎に極端に弱い」と類似点も多い。
--ディレクターの三上氏がバイオハザードに囚われている、という印象もある。
---初代バイオのセルフパロディとなる冒頭のホーンテッド(人型の敵)振り返りシーンや決められた条件で戦うラスボス戦(ただし、ロケットランチャーで倒した後にハンドガンを使ったQTEがある)など、前述の既視感のある演出を含め大きく賛否は分かれる。同氏が現在の環境でバイオハザードを作ったらこうなったと思えば納得いくだろう。
---先述した通り、このゲームを「昔ながら」か「古臭い」かで評価が分かれるだろう。
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**問題点
-死に覚えゲー
--本作には、ステージ中に即死/大ダメージを負う罠や敵が至る所に、それも大量に散りばめられており、これも死にまくる要因となる。大抵は直前にチェックポイントが入るが、ロードが10秒以上掛かる本作でこうしたトライ&エラーはストレスが溜まる。~
中ボスクリーチャーはほぼ全員が即死攻撃を持っている為、慣れない内は何度も死ぬ。
--一応各チャプター冒頭でロードが入るが、それ以外は一部を除き全てシームレスなので、エリア移動でストレスが溜まるという事はない。
--何より問題なのは、後述の''極端に狭い視界のせいで、死角からの攻撃により死にやすい''事。
---当然プレイヤー側のスキルや不注意ではなく、開発側の調整不足によるものである。~
このためプレイヤーはストレスが溜まり続け、クリアしても達成感より徒労感を感じやすい。~
あまりにも頻繁に死ぬため、がむしゃらに突っ込むより「テキトーに進んで敵配置を覚えて死に、覚えたら本腰を入れて攻略」したほうが楽という結論に至る。つまり高い死にやすさが、折角の恐怖演出を殺してしまっている。
--''被ダメージ時の無敵時間が無い''
---これのせいで、「一度に複数の敵から攻撃を食らって即死」「掴み攻撃を受けている最中に攻撃を食らって死亡」という事態に陥る事がある。特にチャプター6:籠城で頻繁に起こる。
--上記のあらゆる悪さを凝縮したのがチャプター7のキーパー戦。毒ガスで制限時間が設けられ無限沸き&即死持ちのキーパーを尻目に仕掛けを解除して進む必要がある。キーパー自体もかなりの強敵でばら撒くベアトラップに引っ掛かるとダッシュからの即死攻撃。やり直すと、長いロードの上にスキップ不可のムービーまで戻されることも伴い、多くのプレイヤーが苦しめられた。

-強制戦闘が多い・強制ではないが戦わないときつい(後々きつくなる)場面が多い。
--一定数を倒さなければならないというシチュエーションは勿論だが、中ボス戦などでうまく立ちまわるために実質的に戦闘を強制されているケースが多い。
---例えば、チャプター3の中ボスは、弾薬を節約しないと倒すのにかなり消費してしまうので、ある家のトラップを使用する必要がある。エリア内をスムーズに移動して中ボスとの戦闘に集中するには、そのエリアの雑魚敵を一掃する必要がある。
---中ボス戦に備えるなら、スニークキルやトラップを有効活用すれば弾薬やグリーンジェルも手に入るので、結局戦闘になりがち。「逃げながら節約しつつ進んで行く」のではなく「倒しながら進んで行く」スタイルが主流なため、「サバイバルホラー」というジャンルには首をかしげるかもしれない。もちろん、相手にせず逃げるという選択肢もあるが。
--しかしこれに関して一番の不満が出るのはラスボス戦。
---詳細は省くが、ラスボス戦の内容は走って逃げるか専用の武器で攻撃するかのみで、それまで温存してきた弾薬や上げてきたステータス値は&bold(){全く関係無い。}その一つ手前の戦闘が、弾薬を消費する最後の機会になる。要は、シチュエーションを強制された戦闘。
---映画的な演出にしたかったのだろうが、ここまで弾を温存してきたプレイヤーは不完全燃焼のまま終わってしまう。

--多種多様な武器を使いこなす敵。
---斧や松明、ナイフや包丁等の原始的な武器は勿論、拳銃にアサルトライフル、クロスボウに狙撃銃、更には手榴弾やロケラン(ボスのみ)と多種多様な銃器を使いこなし、命中精度も高い。さらにリロードや射撃間隔こそあれど弾数''無限''でバカスカ撃ってくる。しかも倒しても武器やアイテムをドロップしない。
---銃器で武装した敵が恐怖感を殺しているのも大きな問題。「ホラーゲームで武装した敵との撃ち合いは怖くない」という指摘は、バイオハザード4からある。しかし「サバイバルホラーの原点回帰」を謳いながら結局本作にもその要素が多数あり、先述の「三上氏がバイオハザードから抜け出せていない」という印象を持たれた。

-両極端な武器・アイテムの性能
--近接攻撃は無強化だと17回殴らないと倒せないほど弱い。
--一般的なTPSで最も使うであろうハンドガンは、足止め程度しかできない上に先述の通り手ブレや弾道ブレが酷すぎるので、慣れるとほとんど使わなくなる。産廃と言うほどではなく「命中率」と「クリティカル」を優先的を強化すれば、ホーンテッド相手にはなかなか優秀。しかし、後述の武器を改造した方が遥かに役立つため結局微妙。これらの武器が序盤で手に入る事も考慮すれば、本作のハンドガンは単なる補助武器と言える。
--ショットガンは適当に撃っても当たり、吹っ飛ばして転倒させる効果もあるため対雑魚における最強武器と言える。
--マッチは倒れたホーンテッドに使うと、HP残量に関係なく''1本擦るだけで即死する''。~
ホーンテッド系最強で、極めて厄介な「アンノウン」も、ダウンさせればあっさり焼き殺せる。~
近くの敵(状態問わず)にも引火するので、上手く誘導すれば2~4体一気に焼き殺せる。アップグレードで持てる量が増える上に割りと頻繁に入手できる。
---「敵の火への耐性の低さ」はラスボスの過去が関係しているとはいえ、マッチ1本で燃えるのはさすがに無理がある。少なめの弾薬を節約する為の要素・今までのホラーゲームとは違うゲーム性を求めた結果とも取れるが。
--このため、「雑魚をショットガンでまとめてふっ飛ばし、マッチでまとめて焼く」のが対雑魚の基本戦術になる。
--アガニボルトはその多彩な種類ゆえ、ショットガン・スナイパーライフル以外の銃器が不要になるほど強すぎる。
---ハープーンボルト:高威力・敵貫通・ダウンを奪う・低コストと使い勝手が良すぎる。強化コストはとても高いが最大までアップグレードすれば雑魚を即死させられるようになり、こうなるとアンノウンですら問答無用で倒せる。
---フラッシュボルト:雑魚を足止めでき、連続スニークキルが可能。未強化の4秒では2体が限度だが、最大強化すれば16秒にまで伸びるので5~6体いける。コストも低く範囲も広い。
---ショックボルト:電流で一定時間敵を拘束する効果で、''ボスにも効く''。地面に打ち込むことで地雷のような使い方や部品さえあれば大半のボスの封殺も可能。
---フリーズボルト:雑魚は問答無用で即死、ボスもショック程ではないが長期間足止めでき、アップグレードで広範囲化と隙がない。
---勿論、各ボルトの作成には部品が必要だが、殺る気満々の罠が至る所に大量に設置されている事が幸いし、部品の消費数が多いショックかフリーズを作り過ぎない限りは数に困らない。あまりに便利なので、入手時期が後半になるマグナムは終盤のボス1~2体にしか使わない。威力の高さを考えればマグナムがほぼボス専になるのは当然だが。

-命中率と当たり判定が理不尽
--発売当初より問題視されているのが、銃器の命中率の低さ。
---まず手ブレが酷い。主人公は現役の刑事だが、とてもそうは思えないほど手ブレが酷い。照準の動く速度こそゆっくりめなものの、その振れ幅が大きい。この手ブレの酷さとセバスチャンの過去が合わさって「アル中」と呼ばれる事も。
---手ブレ以上に問題なのが、立ち止まって銃を構えても''照準の中心へと飛ばない命中精度の悪さ''。6~7メートル先の壁の一点を狙うと分かるが、中心から頭一つ分以上ずれた位置に着弾する事もある。ハンドガンの命中率とクリティカル((ヘッドショットで敵を即死させるステータス))のアップグレードでかなり改善されるが、それでも完全には無くならない。
---銃弾の当たり判定の消滅バグ。敵やオブジェクトにきっちりと狙いを付け、近距離で発砲したのに、当たらずに背景に着弾する…という現象が低確率で発生する。危機感を演出するための仕様とも考えられるが、もしそうなら完全に滑っている。
//↑もしかしたら上記の弾道ブレで逸れた結果による物で、バグではないのでは?
//↑これ書いた者だけど、ラストの串刺しセバスチャンがロケラン撃つシーンあるじゃん?あん時に弾道がラスボスルヴィクを貫通した事がああった。他にも、一番最初の女神像を至近距離でリボルバーで撃って、当たらずに貫通したり。
--上記のようにこちらの当たり判定は大変シビアなのに対し、敵側の当たり判定はガバガバ。
---敵の格闘攻撃は扉や壁をすり抜けてこちらに当たる。銃口が壁を突き抜けていれば普通に被弾する。こちらの攻撃が壁越しに敵に当たる事は勿論無い。逆にショットガンを密着して撃つと、銃口が敵を貫通して当たらない事もある。~
斧を振りかぶった敵の''肘''に当たってダメージ、つるはしを''振り下ろした後''の敵に近づいたらダメージ、十分な距離を取って回避したはずのセンティネルの体当たりに直撃等、この理不尽な当たり判定は随所で見られる。

-完成度の低いステルス要素
--ステルス要素を目玉として紹介している割に強制戦闘の多さ・すぐにこちらを見失う敵AIの頭の悪さ・隠れる場所の少なさ等から完成度は低い。
---序盤は隠れる場所も多く、ステルス要素を楽しめる。しかし物語が進むほど先述の「強制的に敵と戦わせられる」「必ず敵に見つかる」といった場面が多くなると同時にベッド下やロッカー、クローゼットといった中に入って隠れる場所が極端に少なくなっていく。最終決戦前の戦闘に至ってはラスボスのお膝元であることを考慮してもステルス要素が一切ない雑魚ラッシュで、申し訳程度に空き瓶が落ちているだけ。
//--本作のジャンルは「サバイバルホラー」であるが、正直''サバイバル要素は無いに等しい''。
//---怪我した箇所を自分で治療する、といった要素はない。動植物を捕まえる等の要素もない。物資がないためハンドメイドの武器やアイテムを自作する、というシステムもない((しいて言うならアガニクロスボウがそれだろうか?))。ましてや''主人公が「生きる事」に強く固執している訳でもない''。
//---本作は、要は「ステルス要素を入れ、弾薬を少なくし、主人公を弱くしたBH4」である。だからこそ「三上氏がBHから抜け出せていない」という印象を持たれたのである。
//↑その理屈で言ったら、初代バイオですら「サバイバル要素なぞ無いに等しい」って事になると思うんだが。あとwikipedia情報で申し訳ないが、サバイバルホラーはシステムじゃなくてテーマで定義づけられるジャンルともあるし。

-全容の把握が難解なストーリー
--新聞記事や手記を集めたり、クリア後に解禁されるフィギュアコレクションの解説を見てストーリーの大筋は把握できる。だが本編を一度プレイしただけでは、全てを知ることはできない。
--理由の一つとして、場面転換のぶつ切り感が強いことが挙げられる。
--本作の舞台設定は、精神的な世界を中心にしているためか、話が進むと主人公が文字通り別の場所に飛ばされ、また一から手掛かりを追っていく形になる。時にはまるで毛色の違う場所に飛ばされる。前後のステージやシナリオの関連が薄いため、チャプター毎のリザルト画面を挟んだりゲームを翌日再起動させた始めた時思い出せない事もある。
--また、本編で描かれなかった部分を補完するキッド編のDLCが、「同じ時彼女は何をしていたのか」ではなく、実質「何が真相だったのか」を主題にしている。別売りにせずどうにかして1枚のディスク(1つのデータ)にまとめられなかったのか。
---一方でボリュームもそれなりにあり、一つの作品にすると冗長になってしまう危険性もあるため、DLCにしてしまうのもやむなしとも言える。

-不自然な演出・無理のある展開~
一例を挙げると、
--ステルスキルにはナイフを使うが、近接攻撃はナイフを使わずに銃器で殴る。~
開発中のトレーラーでは、武器としてナイフが存在していた。何故変えたのか。
--主人公は自前の自動拳銃ではなく、序盤で入手する装弾数の少ないリボルバーを使い続ける。
--主人公はどんな状況に陥っても即座に順応して行動を始める。疑問を持ったり驚いたりする描写はほとんどない。プレイヤーが疑問に思う事をことごとくスルーするため、感情移入し辛い。
---例えば最序盤。「精神病院の大量殺人現場でフードの男に襲われて意識を失い、気付いたら血まみれの廃墟で逆さ吊り」という異常な状況にもかかわらず上記の態度である。このエリアからエレベーターで抜け出す道中で足に怪我を負うが、エレベーターを降りた時点で何故か治っている事についても、何ら疑問を持たない。
---とりわけ不自然なのが、キッドがこちらを撃って「汚染されてる」と意味深な発言をして立ち去るシーン。当然プレイヤーは疑問に思うが、再会した時''セバスチャンは華麗にスルー''。~
ラスボス直前では「自分を撃ってジョセフを殺したお前は信用できない」と、撃たれたことは取り上げられるが、汚染発言は最後まで掘り下げられない。~
一応、直前のキッドとの会話やジョセフの異変などから、「汚染」が何を指すか推察すること自体は難しくはないが。
--ラスボスを撃破するための「ロケットランチャー」の入手経緯も強引。死体が持っているものを鹵獲して流用するというもの。
---問題なのは「敢えて直接的描写を控えめにし、ヒントを大量に散りばめる事で、プレイヤーに考察させる余地・楽しみを与える」ストーリー構成ではなく、その構成に徹しきれていない事である。実際『SILENT HILL2』はストーリー面が好評。しかし本作は''セバスチャンが無反応すぎる''ため、''考察する前に違和感が強く前に出てきてしまう''のである。
//--頭部に巨大な杭がぶっ刺さった雑魚がいるが、その雑魚にヘッドショットを決めても怯むだけで即死しない、''でもナイフで刺せば即死する''。明らかに演出とデザインが噛み合ってない。
//↑チャプター2のイベントで出てきた奴なんて、額が大きく割れて致命傷を負ってるような外見できびきび動いてるんだし、それらのデザインは問題点になりうるんだろうか?

-カメラワークが致命的に悪い。
--極端に近くて狭すぎる視野と超巨大レターボックス
---本作では画面と操作キャラクターの距離が、''操作キャラの下半身が画面に映らない''ほど近く、視界が狭いのに調節機能がない。銃器を構えると手首しか映らないほぼFPS視点になるので、それに合わせたのだろうが、プレイヤーからすれば遊び辛いだけ。特にアガニクロスボウは、構えると視界の3~4割を遮ってしまい、視界が狭いどころか角度によっては着弾点が見えない。~
---このため、戦闘中に''死角から敵に攻撃される''事態が頻発し、かなりストレスが溜まる。~
カメラを下に向けないと足元も確認できないので、「足元のアイテムが見えない」「足元のトラバサミに引っかかってダメージ」といった事が頻発するため、快適性はかなり低い。
---''巨大なレターボックス(映画等に見られる画面上下の黒帯)が終始画面上下にある''。ただでさえ狭い視界をさらに狭めており、発売当初から大きく批判され続けた。
---これらの事情から頻繁にカメラを操作する必要がある。加えて、歩くだけで画面が小刻みに揺れるので非常に3D酔いを起こしやすい。内容の良し悪し以前に3D酔いのために途中で断念せざるをえない場合もある。
---後にアップデートでレターボックスの有効/無効切り替え機能が追加されたが、視界距離は改善されなかった。また、配信が''発売から8ヶ月後''と評価を覆すには遅すぎた。
--オプションにカメラの左右反転切り替え機能がない
---今時の一般的なTPS/FPSゲームにはほぼ必ず搭載されている同機能がオプションに存在しない。カメラ操作が重要なシューターでは死活問題であり、左右反転がないことは大きく批判された。こちらは後のアップデートでも機能追加されていない。

-デバッグ不足や調整不足・最適化不足を感じさせる杜撰な作り
--不安定なフレームレート
---本作のフレームレートは第7世代ハードと同じ30fps。第8世代ハードは60fpsが実現可能になったにも拘らずである。しかも固定ではなく可変であり、プレイ中30fpsを発揮する事はまず無く、頻繁に下がりその度に処理落ちに見舞われる。
---PC版なら自分で数値を弄ることもできるがそれでも改善されない。推奨される手段ではないとはいえ、それでも直らないとなるとそもそも根本的な部分から完成度が低いのだろう。
--大小様々なバグ
---上記の銃弾の当たり判定消滅バグに始まり、アマルガムαが壁に引っかかって動けなくなる、フリーズ(PS3)、エラーによるアプリ強制終了(PS4)、ハシゴを降りられなくなる、画面外に落下して復帰不能になる、NPCが直立不動になる等、大小様々なバグが発生・存在する。中には[[首チョンパされても動きまわる主人公>https://www.youtube.com/watch?v=k0TSp7uU--g]]という愉快なバグも。
--頻発するテクスチャの貼り遅れ
---画面切り替え時やムービー挿入時に、テクスチャがぼやけて表示され、数秒後にきちんと表示される現象がゲーム開始時から頻発する。ゲームプレイに大きな影響を及ぼすものではないが、ムービーでこれが発生すると萎える。
---また、村人による小屋への放火シーンで村人の顔のテクスチャが滅茶苦茶になる、アマルガムαが壊した壁のテクスチャが消滅する、という事が100%発生する。
--しゃがみ移動の欠陥仕様
---ゲーム中盤に一定の高さで回転し続ける即死罠(ホーンテッドにも有効)があるためしゃがみ移動を強制されるが、この状態で罠の解除・グリーンジェルの回収をすると強制的に立ち上がってしまう欠陥仕様。タイミングが悪いとしゃがむ暇もなく罠に当たって即死する。
---しゃがみ状態ではなぜか投擲が出来ても射撃が出来ない。普通にプレイしている分にはそこまで気にならないが、上記の罠で一気に表面化する。敵もしゃがみ状態で行動するが、拳銃を持った敵はしゃがみながら撃って来る。タイミングを見計らってダッシュで逃げるか立ち上がって撃つなどすれば簡単に対処は出来るが、どうしても理不尽さは拭えない。
--ロード時間が長い
---死亡時のロードが10秒以上、長い時はそれ以上掛かる。旧世代機版なら更に長い。この点も快適性を大きく損なう要因である。

-初回特典DLC「ゴアモード」について
--本作のレーティングはCERO:D((17歳以上対象))だが、初回特典としてゲーム内描写・演出をCERO:Z((18歳以上のみ対象))相当に引き上げる「ゴアモードDLC」なるものが用意された。~
開発側も「CERO:Zの天井を目指したい」と謳い、「年齢制限をクリアしている人なら本DLCを入手しておかないと後悔する事になるだろう」と、自信満々に早期購入を促していた事から、多くのプレイヤーが期待に胸を弾ませた。
---しかし蓋を開けてみれば、「雑魚の頭部がヘッドショットで吹っ飛ぶようになる」「死体袋に入れられた死体が袋から出ている」程度で、部位欠損等の描写は依然として海外版から大きく規制されたまま。これには海外版と同程度の表現を期待したユーザーから失望と怒号が飛び交った。実質CERO:Dと大差なく、勿論入れなければそれ以下、これでは''詐欺である''。
---しかもこのゴアモードDLCにもバグがあり、グロテスク表現の設定が無効となる現象が頻繁に発生する始末。比較的すぐに修正アップデートが配信されたが、適用後も定期的に再発するため、結局現在も根本的な解決には至ってない。
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**総評
どこかで見た恐怖演出・要素と本作独自のオリジナリティの欠如、飲み込み辛いストーリー、劣悪なカメラと操作性、違和感を覚えざるを得ない数々の描写、DLCに至るまで多数の問題点を抱えており、完成度は決して高いとは言えない。~
「サバイバルホラーへの原点回帰」「500万以上のセールスに見合う」という開発側の強気な発言と、それに全く見合わない方向性・クオリティも本作の低評価を後押ししており、各レビューサイトは大荒れ、大手通販サイトアマゾンでは発売一ヶ月足らずで僅か半額以下にまで値崩れし、「在庫ブレイク」という蔑称もつけられてしまった。~
ただし、多数の粗はあれど致命的な問題点は無いし、普通にクリアする分にも問題は無い。周回毎に縛りプレイをして遊べるくらいの実績解除もあるので、ダークな世界観に浸りたいという方はプレイしてみてもいいだろう。~
しかし開発者が謳った「(第8世代ハードにおける)国産初のAAAタイトル」の名に相応しい出来かと言われると大きな疑問が残る、色々と残念な作品である。
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