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Quantum Break - (2016/07/09 (土) 01:00:01) のソース

*Quantum Break
【くぉんたむ ぶれいく】
|ジャンル|アクションADV|&image(qb.jpg,width=200)|
|対応機種|Win10(64bit)  / XboxOne|~|
|発売元|Microsoft Studios|~|
|開発元|Remedy Entertainment|~|
|発売日|2016年4月7日|~|
|定価|【パッケージ版】7,900円(税抜)&br()【ダウンロード版】7,400円(税抜)&br()【PC版】7,400円(税抜)|~|
|レーティング|CERO:C(15歳以上のみ対象)|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|素晴らしいドラマパート&br()薄味なゲームパート|~|
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#contents(fromhere)

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**概要
良作ホラーアドベンチャー『[[ALAN WAKE]]』で脚光を浴びたRemedyが手掛けたTPS型アクションアドベンチャー。~
今回のテーマは「時間」。時を操る能力を手に入れた主人公ジャック・ジョイスが世界の破滅を阻止せんとする戦いを描く。~
「ゲームとドラマの融合」を謳っており、名優を多数起用したドラマパートでも話題となった。

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**ストーリー
ジャック・ジョイスは親友のポール・セリーンに招かれ、6年ぶりに故郷のリバーポート大学を訪れていた。~
ポールはジャックの兄ウィリアムと共に"世界を一変させる"研究に従じており、ジャックに実験への協力を依頼する。~
ところが実験は失敗し「時間の流れ」が断裂、同時に謎の企業モナーク・ソリューションズが大学を襲撃する。~
ジャックは事故の影響で身に着けた特殊能力を用い、ウィリアムと共に時間の崩壊を食い止めるべく奔走するが……

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**特徴
''基本的なシステム''
-システムの基本はいわゆるリアル型TPS。
--物陰に隠れながら、銃器や後述の特殊能力を用いて敵対する兵士を排除していくのがメインとなる。
--主人公が戦闘で用いるのはジャックだが、部分的に他のキャラクターを操作する場合もある。

''時間を操る特殊能力''
-時間操作能力を駆使した戦闘スタイルが本作の大きな特徴。これらはクロノンソースと呼ばれるパワーを得ることでスキルアップが可能。

#region(特殊能力)
-タイムヴィジョン
--壁の向こうにいる敵やアイテムなどをレーダーのように透過クローズアップして、視覚的な戦闘補助を可能にする能力。
-タイムストップ
--敵の周囲の時間を遅くし、行動を封じることができる能力。
--遠くの敵だろうと狙いを定めて発動させることが可能。発動させた後に弾丸を大量に打ち込んでおけば、防御の高い敵でもすぐさま倒せる。
-タイムドッジ
--一定距離を高速移動して回避したり敵の不意を突いたりできる能力。
--タイムドッジ後にはフォーカスタイムという短いスロータイムが発生するので、その間に敵を攻撃するスタイリッシュな戦闘が可能。
-タイムシールド
--自身の周囲に敵の攻撃を完全防御するシールドエリアを形成する能力。
--追い詰められた際にダメージの回復としても使えるほか、敵の近くで形成すれば敵を吹き飛ばすこともできる。
-タイムブラスト
--力をチャージして、広範囲に衝撃を与える爆発を発生させる能力。
--密集している敵や防御の高い敵に有効。時間操作能力の中では唯一直接的なダメージソースとなる能力でもある。
-タイムラッシュ
--周囲の時間を遅くしてその中を移動できる能力。タイムドッジとは異なり主人公自身の動きは通常速度であり、能力持続時間は長め。
--タイムラッシュ中に敵に駆け寄れば、殴りつけてテイクダウンが可能。
#endregion

-時間操作能力を駆使した謎解きが登場する。
--一部の場所の時間を巻き戻すことで、塞がれて進行不能な箇所を通ったり会話から情報を得たりすることが可能。
--クレーンから落ちた木材を巻き戻してエレベータ代わりに使ったりと、謎解き・パズル的な要素になっている。

''シナリオ展開''
-章構成になっており、各章の合間に実写のドラマパートが挟まれる。
--ドラマパートは主に主人公側ではなく、敵勢力のモナーク側の出来事が描かれる。
--各ドラマパートは30分近くあり、ボリュームはかなりある。
-シナリオは分岐箇所が存在し、その選択で道中のストーリーが変わっていく。
--分岐箇所ではジョイスではなく、あるキャラクターの視点に立って選択を行う。
--他作品では自身の選択によって起こる出来事が大抵予測できないが、本作では分岐箇所で操作するキャラの能力により、ある程度の展開を予見することが可能。
--自分の好みの展開を選んでゲームを進めることが出来る上に、一度クリアすればどの章からでも再開できるため、分岐地点の章からやり直したりできる。

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**評価点
''"時間を操っている"感''
-時間操作能力を用いた戦闘スタイルは、まさに時間を操っている無敵感・爽快感がある。
--攻撃面でも防御面でもいずれかの時間操作能力が有効に機能するため、困ったときの切り札として信頼できる。
--防御の高い敵に時間を止めてこれでもかというくらい弾薬を打ち込むのは爽快感がある。
--隠れる→撃つの単純な戦術ではなく、時には能力を頼りに敵の中心に突っ込んでゴリ押す戦術も可能。

''ボリューム大の素晴らしいドラマパート''
-ドラマパートのクオリティは手放しで称賛できるほどに優れている。
--登場する役者陣は皆海外ドラマや映画での実績がある俳優たち。どの人物も味があり、素晴らしい演技でドラマパートを盛り立てている。
--アクションシーンやカーチェイスなどのダイナミックな演出も十分に盛り込まれいる。
--敵の動向に焦点を当てているため、ゲームパートのジャック目線とは別の、もう一人の主人公目線でストーリーを楽しめる。

''その他''
-カメラワークや操作性などに特長は無いが、逆にそつなくまとまっているとも言える。
-グラフィックは非常にリアルで美麗で、ドラマパートとゲームパートの繋がりが不自然に感じないほど。
-ストーリーはやや難解であるが、それなりに練られていることが分かる。ただし、後述するように理解を妨げる要素が大きすぎるのだが…

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**問題点
''難解なストーリーと、その魅力・理解を削ぐ数多の要素''
-ストーリーが難解な一方で、理解を助けるような分かりやすいヒントや演出が少ない。
--ストーリーは理解さえできればなかなか考えさせられるものになっているのだが、そこに至るためには各所の読み物を理解する必要がある。
--しかし、各文書が誰が誰にあてた文書なのか、具体的に何を意味しているのか、などが分かりにくく、すべてを理解してエンディングに辿りつくのは至難。
--結果的に、結局なんだったのか分からないまま終わるか、モヤモヤを残して漠然と理解して終わるかの2択になりがち。
--ストーリーの深さを味わうにはまず理解が出来なければならないのに、理解できないためにストーリーも浅く見えてしまう。
-ローカライズが中途半端なのもストーリーの理解を妨げる。
--訳はそれほどおかしくないが、字幕が文節ではなく単語内で区切られるなど、いい加減なローカライズにありがちな不親切さが見受けられる。
--ゲームを進めることで解放されていく主要キャラクターの日記はそもそも未訳。人物の重要な背景を知ることのできる独白なのに…
-その他にも細かい要素がいちいちストーリーの理解の妨げになる。
--XboxOneの実績解除表示が字幕と被る箇所が多数見受けられる。
--ドラマパートで字幕が消失するバグがある。当然、ストーリーの理解とせっかくのドラマパートの魅力を大きく削いでしまう。
--手に入る文書の文字が小さく読みにくい。ちまちました文を読み込むのはストレスでしかなく、せっかく読み込んだところでストーリーに関係しないもある。

''薄いゲームパート''
-ゲームパートがあらゆる面で薄い。
--敵の種類、武器の種類、戦闘演出、マップ、スキルなど全てが種類が少ない上にありがち。
--文書系データしか収集要素はなく、アイテムを拾って利用したりといったことはほとんど無い。
--スキルは強化しても順当なパワーアップをするだけで、その種類も少なく、物足りなさは否めない。スキル強化に必要なクロノンソース探しも取り立てて楽しいものではない。
--単純なシナリオ的ボリュームも控えめで、難易度にもよるがゲーム開始からエンディングまで数時間で辿り着けてしまう。
--時間操作能力を駆使した謎解きは中々工夫されたものも多いが、こちらも数が少ないのが残念。

''時間操作能力の既視感''
-画期的なように見えるが、「時間」を利用しているだけで出来ること自体は既存のシューターで既に取り入れられていることの方が多い。
--タイムヴィジョンで出来る透過・強調効果は『[[THE LAST OF US]]』『WATCH_DOGS』など数多のアクション、シューターで取り入れられている。
--タイムストップやタイムドッジなどのスローモーション効果は演出や特殊能力として多くのゲームで取り入れられている。
--本作に登場しないため最初は気付かないが、タイムブラストは言ってしまえば他作品における爆薬・手榴弾のようなもの。
--一応補足しておくと、これらは多くのシューターで取り入れられている便利な機能であり、それ自体を取り入れていることは間違いではない。ただ、「今作のオリジナリティーだと思っていた能力が、実際は他のシューターが取り入れていることを時間操作能力に置き換えただけ」なのが問題。

''その他''
-ドラマパートは敵側の人物をメインに進んでいくため、結果的に主人公の魅力が薄れがち。
-ボス戦といえる戦闘がラスボス戦くらいしかなく、そのラスボスも視覚的に分かりにくい即死攻撃を連発してきたりと、面白さより苦痛の方が大きい。

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**総評
そつなくまとまっている…と言えなくもないが、パッケージからも漂うシンプル&スタイリッシュ感を悪い意味で体現していると言った方が適切だろう。~
ドラマパートの出来はいいが、主幹であるはずのゲームパートはなんとも薄味で、「画期的」と言えるような特徴も無い。~
ドラマ・映画的演出を取り入れて高評価を得ている作品は多いが、それらは「充実したゲームパート」という前提があってこその評価である。~
本作は単純な「ゲームとドラマの同梱」であり、「ゲームとドラマの融合」を謳うのはやや安直と言わざるを得ない。~
ただ、ドラマパートと難解なストーリーを読み解いていくのを目的に、自分からのめり込んでいけるほどの興味があるなら、プレイして損はないだろう。

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**余談
-当初XboxOne専売を公言していたが、発売直前になってPC版との同日発売を発表。一部XboxOneユーザの反感を買った。