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ONE ~輝く季節へ~ - (2015/03/05 (木) 21:55:07) のソース

//** ←の項目は目次に反映されますが、同じ単語を使うと不具合があるので(PS版)が必要です。
注意:このページでは、『ONE ~輝く季節へ~』とPS移植版『輝く季節へ』を扱っています。
//微妙リメイク廃止によりリメイク版を判定無しとします。
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#contents()
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//移植版の記事を統合しました。
*ONE ~輝く季節へ~
【わん かがやくきせつへ】

|ジャンル|アドベンチャー|&amazon(B000PIQOTI)|
|対応機種|Windows 95(初版)&br()Windows 95/98(廉価再販)&br()Windows 98~XP(フルボイス版)&br()Windows 98~Vista(Vista動作確認版)|~|
|発売・開発元|Tactics(初版/再販)&br()ネクストン(フルボイス版/Vista動作確認版)|~|
|発売日|1998年5月29日(初版)|~|
|レーティング|ソフ倫:18歳未満禁止|~|
|ポイント|恋愛ゲームの転換点?&br()「泣きゲー」の元祖とも呼ばれている作品|~|
|判定|なし|~|
|>|>|CENTER:''[[Key関連作品リンク>Key作品]]''|
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#center{&size(35){''WARNING!!!!!!!''}&br()&size(20){''本作はPS版を除いて18歳以上のみ対象のアダルトゲームです。''}}
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**概要

株式会社ネクストンのアダルトゲームブランド「Tactics」の3作目にあたる恋愛アドベンチャーゲーム。~
「心に届くADV第2弾」として企画、開発された(ちなみに第1弾にあたる『[[MOON.]]』は表面上は鬼畜系やカルト系の作品になっている)。~
後に「Key」を立ち上げることになる主要スタッフが作った作品であり、その方面で有名。~
当時人気を博していた『[[ToHeart]]』(Leaf)の後追い的な要素を持っていて、~
いわゆる学園物でシステムはテキストを読みつつ、時折発生する選択肢を選んで分岐するものになっている。


**あらすじ
#blockquote(){1998年、冬。~
普通の学生であったオレの中に、不意にもうひとつの世界が生まれる。~
それはしんしんと積もる雪のように、ゆっくりと日常を埋(うず)めてゆく。~
そのときになって初めて、気づいたこと。~
繰り返す日常の中にある変わりないもの。~
いつでもそこにある見慣れた風景。~
好きだったことさえ気づかなかった、大好きな人の温もり。~
~
すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。~
~
~
その絆を、そして大切な人を、初めて求めようとした瞬間だった。~
時は巡り、やがて季節は陽光に輝きだす。~
そのときオレはどんな世界に立ち、そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか。
}
(公式サイトから引用)


**キャラクター
***メインキャラクター
#region(close,クリックで開閉。)

-折原浩平((名前の変更が可能))(おりはら こうへい)
--主人公。両親と妹を亡くしており叔母と二人暮らしだが、叔母は忙しいのですれ違いの生活をしている。
--授業は真面目に受けていない上にかなりの変わり者だが、世話焼きでもある。
--ほとんど活動していない軽音部に所属しており、自身も幽霊部員。

-長森瑞佳(ながもり みずか)
--浩平の幼馴染でクラスメイト。叔母と暮らすようになって以来の付き合い。
--毎朝浩平を起こしに来ては彼の奇行に呆れるのが日課。
---自身を顧みない程ではないが非常に人が良く、無茶な思い付きや急な頼み事にも基本的に付き合う。
---浩平と一緒に登校することが多いが、真面目に部活動をしているので一緒に帰宅することは少ない。
--捨て猫を保護してしまう無類の猫好きでもある。

-七瀬留美(ななせ るみ)
--時期外れの転校生でクラスメイト。
---転校前の制服を気に入っており、新しい制服を手に入れてもそのまま着ている。
--乙女らしくなることを目標にしているが、元が男勝りな上に浩平や繭がいたずらするせいでよく地が出てしまう。その代わり面倒見が良い一面もある。

-椎名繭(しいな まゆ)
--年齢不詳の登校拒否児で、死んだペットのフェレットを埋葬しようとしていたところ浩平達と出会う。
--癇癪持ちで躁鬱が非常に激しい上に精神的にも幼い。

-里村茜(さとむら あかね)
--雨の日に買い手のない空き地で佇んでいたクラスメイト。
--寡黙で他人の関わりを拒絶している。お節介な浩平に対しては「嫌です」が口癖のようになっている。
--かなりの可愛い物好きと極度の甘党(料理は得意なので味覚がおかしい訳ではない)でもある。

-川名みさき(かわな みさき)
--事故により視力を失った上級生だが、それを感じさせないくらいに明るくお茶目。
--一見おしとやかに見える外見だがかなり社交的で、人並み外れた大食い((ファンからは元祖カレー先輩とも呼ばれている))でもある。

-上月澪(こうづき みお)
--生まれつき口が利けない(喋ろうとしても声が出ない)後輩で演劇部に所属している。
--喋る代わりにスケッチブックの筆談と身振り手振りで意思疎通を図る。ドジ気味だが元気っ子。

#endregion

***サブキャラクター
#region(close,クリックで開閉。)

-柚木詩子(ゆずき しいこ)
--茜の友人で別の学校に通っている。
--茜と最近会っていないのが心配で学校にやってきたというかなりの友達思いではあるが、浩平のクラスにも平気で入ってくるなど強引なところがある。
---浩平とは喧嘩友達みたいなやりとりを繰り広げることになる。

-深山雪見(みやま ゆきみ)
--みさきの幼馴染で演劇部部長。
--自由奔放なみさきに手を焼く苦労人だが、彼女を度々心配したり澪も劇に参加出来る様に配慮するなど、気配りの出来る女の子。

-広瀬真希(ひろせ まき)
--クラスで人気のある留美に嫉妬しているクラスメイト。
---あまり良い性格とは言えない。

-住井護(すみい まもる)
--浩平の悪友でクラスメイト。
--頭が悪い上にロクなことをしておらず、特に重要なポジションでもないが、彼が関わってくることで物語が動き出すこともある。

-氷上シュン(ひかみ しゅん)
--軽音部の幽霊部員で浩平の事も知っているが、浩平は彼のことを覚えていない。
--謎が多く、不思議な言動も多い。

#endregion


**評価点
-当時としては珍しくシナリオ重視の作品で、キャラクターも十分掘り下げられている。共通ルートもおまけ的な物では無く、個別ルートに大きく関わっている。
--浩平は一見無個性な主人公に見えるが、変わり者の範疇では収まらないほど個性が強く、大きな魅力になっている。
--ヒロインも全て曲者揃いなものの印象的な描写が多く、キャラを魅力的に描けている。更に、情緒不安定・事故による失明・先天性唖障害…と、ヒロイン6人中3人がハンディキャップの所有者(更に他の2人と浩平も健常者とは言いがたい)と異色のラインナップ。
---しかも一人は別の学校の生徒(そもそも1つか2つ教育課程が違うと思われる)だが、転入したり学校外のみで会う訳では無く、途中で浩平達がしれっとクラスに入れている。
---ただし、盲目のヒロインについては「そんな盲目者が本当にいるのか」的な描写も多い(例えば白杖要らずで普通に学校の中を歩いているところ)。
---ハンディキャップの重さ等もしっかり描いており、日常との落差も後の「Key」ブランドに受け継がれる魅力の一つと言える(前作『MOON.』も根本では類似点があるものの、作風が大きく異なる。)

-茜、みさき、澪の久弥氏担当のシナリオは、癖が少ない上に展開の見せ方が上手く、基本的に高評価。
--逆に瑞佳、留美、繭の麻枝氏担当のシナリオも久弥氏に劣る訳ではないものの、癖が強いシナリオなので賛否両論が激しい。同様に浩平の性格もより癖の強いものになっている((ただし、浩平は共通ルート時点から癖が強い上に、久弥氏の浩平も違和感を覚えるほどのものではない。))。

-BGMについても評価が高い上に、当時としては珍しいことに各キャラのテーマ曲がある。
--この時代の18禁作品としては珍しく、アレンジや耳コピによる二次創作も比較的多い。

-時々どこともつかない場所における、「ぼく」と「少女」の謎めいた会話が挿入される。
--これが何を表しているかは物語を進めると分かるが、本作がどういう話であるかの謎にもなっており、上手く表現されている。

#region(close,ネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉。)

-本作の流れは最愛の妹を亡くして喪失感を抱えている浩平がヒロインと仲良くなった後、浩平の存在が次第に希薄になってヒロインのみが覚えている状態になった後に、「えいえんのせかい」と呼ばれている別の世界に行ってしまい、最後にヒロインとの絆のおかげで戻ってくるというものと言うもので統一されているが、没入しやすい様にシナリオや設定が随所に工夫されている。
--「えいえんのせかい」と呼ばれている謎があって、物語の読み応えも増しているが、浩平やシナリオに対して説得力を増す要素にもなっている。
---上述の「ぼく」と「少女」の話は「えいえんのせかい」での話とされている。

-浩平は奇行(基本的にギャグとして描かれる)が多い上に好きでやっている様子も伺えるが、全くの狂人という訳でも無い。
--独白から今までの経験(トラウマを紛らわす為のもの)が影響しているのが伺える。かなりの世話焼きなのもこれが影響していたりもする。

#endregion


**賛否両論点

-樋上いたる氏の絵は当時から賛否両論な上に、本作は作品内で絵柄が不安定になっている。
--まだ若手の頃で腕が甘く、ある意味で伝説となっているCGもある。
--その一方で、本作より前の『同棲』や『MOON.』の頃から印象的な絵柄で知られており、好意的に受け止めるファンも多い。

#region(close,ネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉。)

-繭シナリオのみ一時的に繭の身柄を預かり彼女の心の成長を見守るという、特殊な流れになっている。
--エロでも恋愛でもなく、当時としては異色のシナリオなので戸惑う人も多い。
--『MOON.』でもそうだったが、麻枝准氏が後の作品でもこだわることになる擬似家族コミュニティの原型とも言える。

-「えいえんのせかい」関連の設定はいくつか解釈が出来て面白い代わりに、分かり辛い。
--上述しているが謎の会話は「えいえんのせかい」での会話とされている。内容は主に浩平が本編開始時~エンディング前までを思い返しているという形(明言されてはいないが、そうでないと物語との関連性が薄い)。
---つまり、本作はゲーム開始時点から一貫して、浩平がヒロインとの絆を頼りにして戻ってくる物語である。その為、(思い留まっても「えいえんのせかい」へ強制的に行ってしまうという設定もあるが)「えいえんのせかい」に行くのは逆説的に必然である。
---但し、永遠の世界の時間の流れが現実世界と同じとは限らない上に、相互に影響しあってる可能性もある(浩平の独白に俯瞰してるような気持ちになるというものがあったり、「えいえんのせかい」へ行く予感があったりする)。
--ちなみに誰とも深く関わらなかったBADエンドでは、ある日いきなり「えいえんのせかい」に行ったところで終わる。
--浩平が「えいえんのせかい」に引き込まれる(浩平自身が望んだことなので正確な表現ではない)のは、浩平の妹を亡くしたトラウマと瑞佳の言動が要因になっている。作中のキャラが理由もなく「えいえんのせかい」に行く訳では無い。
---浩平が「えいえんのせかい」に引き込まれる原因は主に瑞佳シナリオで語られるが、茜や氷上シュンも「えいえんのせかい」に関わりが有り、設定を補間する要素になっている。

#endregion


**問題点

-基本的にはヒロインを追いかけていけばいいのだが、時々意地悪な選択肢が発生する。
--留美シナリオへの分岐が顕著。初見だと判断材料が無い上に、大抵は選び間違えてアウトになる、いわゆる初見殺し。
---具体的には「カンニング込みで漢字の読み試験を解く」というシーンで、選択肢の形式が「読みを当てる」のではなく「正解を書いていそうな人の答案を盗み見る」というややこしい物になっている。誰が正答で誰が誤答しているかはパターンだが、誤答を1問以下にしなければ留美シナリオは詰みになるため、対応表の作成がほぼ必須である。
---その代わりにユニークな解答が楽しめる。
--他のヒロインも「一件関係のなさそうな行動を取ったら目当てのヒロインに会えた」というようなことがよくある(特にみさき)。意地悪な選択な上に最後の辺りでBADエンドになるものもある。
--留美と異なる意味で瑞佳シナリオでの選択肢も問題。詳細はネタバレになるので後述。

-そっちの意味では実用性がほぼない。全体的に肌が硬そうでしていることがあっさり気味であるため。
--そもそも、いわゆるエロゲーでありながら一部のシナリオではエロシーン自体をキャンセルすることも可能にされている。
---ただし、あまりエロ要素を期待されている作品ではないのと、本作の焦点を考えるとこのゲームジャンルが最も自然ではある。

-何度も動作確認版が新たに発売されているが、古いゲームなだけあって初版はWindows95にのみ正式対応な上に、システムも『MOON.』のものとほぼ同等で良くない。
--内容量もだが、重要な選択肢も多いことからセーブ数30では明らかに数が足りない。しかも日付程度しか情報が表示されないが、共通ルートでの分岐が多いので時間が空くとどういうデータなのかが分かりづらい。
--バックログが無く、非常に不便。
--既読スキップが無いのも非常に不便。ちなみに『MOON.』ではマップを調べる場面が多かったので、不便ではあったが深刻な問題ではなかった。
--当時はまだフルインストールが一般的ではなかったとは言え、BGMがCD-DAのみなのも不便。あまり問題ではないが回想モードも無い。

#region(close,ネタバレ要素。クリックで開閉。)

-瑞佳ルートでは個別までは好意的に接するだけで入れるが、個別に入るとは好意的に接するか冷たくするかの選択がしつこいくらいに発生し、少しでも甘い顔をすればバッドエンド行きになる。
--これは実際にプレイしても理由が分かりにくく、浩平と瑞佳それぞれの思いと関係性を推測出来ないと、理不尽な浩平と何故か献身的なヒロインにしか見えない。そのせいもあってか瑞佳シナリオは評価が分かれやすい上に色々な解釈がある。
---瑞佳は一見テンプレ的な無条件且つ自然に世話を焼く幼馴染に見えるが、これはお互いが昔からの関係を大切にしているということが重要視されている(「えいえんのせかい」もこれに関係している)。時折見せる違和感のある態度も大体これが影響している。
---浩平の内面が分かるシナリオでも有り、別の見方をすると浩平の古傷が大きく抉られる話であることが他ヒロインと大きく違う。(単に戸惑いだけで外道行為をしている訳でも適当なシナリオと言う訳でもない。ちなみに他ヒロインに対しては悪質ないたずら(留美に対して)や戸惑ったり勘違いからの失敗はあっても意図的な外道行為はほとんどない。)そのことが浩平の自己中心的な仕打ちと強烈な自己嫌悪、その後の話へと繋がっている。
--ちなみに共通の時に好意的に接すれば個別に入れるというのも、「好感度を稼いだり浩平が意識している」様にも見えるが、そうではないことがテキストを読むと分かる。選択肢を少し間違えると入れなくなるのもこれが関係している。

-「みずか」と呼ばれている少女については特に明言されていないので具体的なことは不明なものの、幼い頃の瑞佳とその思い出に浩平自身の思いと亡くなった妹との記憶が関係している。
--曖昧に表現されている上にどれか一つでも欠けると成立しないので、分かりやすい様でいて分かり辛い存在になっている。
--このキャラは瑞佳シナリオや「えいえんのせかい」だけでなく、浩平の内面に深く関わっている。気にしなくてもストーリーの大筋には影響しないので問題無いが、理解しようとすることで納得出来る部分が増える。

#endregion

**総評
本作の様なギャグを交えた日常パート、ヒロインとの絆を深めるパート、破局の予感を漂わせながらも最後にはハッピーエンドという構図は「泣きゲー」あるいはシナリオ重視型恋愛ゲームの基礎となった。~
普通の現代世界を舞台にしたエロゲーでありながら、そっち方面どころか日常や恋愛以外の物事に焦点を強く当てているという面が特徴的((主人公とヒロイン達の設定に至っては安易に真似出来るものでは無いせいか、未だに埋没していない))で、『ToHeart』の存在も大きいが恋愛以外のシナリオを重視したエロゲー・ギャルゲーの先駆け的存在とも言える((そういうのが全く無かった訳では無いし『MOON.』でも似たことが言えるのだが、『ONE』『Kanon』以前はあまり勢いがなかった))。~
推理物では無い通常の物語で謎を作り、想像の余地を多く残す手法(※手抜きではない)についても同様のことが言え、直接間接問わず業界に与えた影響は大きいと思われる。(この点は特にKanonで話題となった)~

「泣きゲー」の元祖と呼ばれるだけあって、当時としては珍しい発想だけが評価されている訳ではなく作品自体の評価も高く、根強い人気がある。~
例えば「Key」の作品やシナリオ重視型のADVが好きならお勧めできる作品である。


**余談
-その後、本作の主要スタッフのほぼ全員がネクストン上層部との対立から退社。スタッフの1人だった樋上いたる氏の紹介で株式会社ビジュアルアーツに入社し、彼らが新ブランド「Key」を設立している。そのため、ファンの間では『MOON.』と『ONE』も「Key」の関連作品とみなしている。
--本作は「Key」作品の『Kanon』の人気から注目された経緯がある。
--その一方で、後述の移植版や本作のメディア展開は、版権の都合もあって大半は原作スタッフを介さずに行われているため、これらのメディア展開で追加された人物や設定等は公式として認めないファンが多い。また、サントラ・ドラマCD・OVA化・OVAのサントラなどがそれぞれ複数出ており、エロゲ―原作としては異例な程多岐に渡っている。
---メディア展開もだが、Windowsのバージョンアップの度に新パッケージを出していた。ある程度は仕方ないと言えるが、その余りの頻度から節操が無さ過ぎるという批判がある。
--ネクストン傘下の「BaseSon」というブランドが『ONE2』という作品を出しているが、原作スタッフは全く関わっていないのでファンからは完全に別物という扱い。本作との繋がりもあまり無い。
---本作の人気から制作・注目された経緯がある上に、本作を意識している作品でもあるので仕方ないが、本作と比較されて低評価になることも多い。ある意味で不遇な作品とも言える((一介のゲームとしてはそこまで悪い作品ではないのだが…))。
--この様な経緯があるため、熱烈な「Key」ファンは『MOON.』と『ONE』のメディア展開について過敏になっている(「Tactics」の本作以後の作品については無関係なのでノータッチ)。

-本作は上層部に『ToHeart』みたいなのを作れと指示されて(これが悪いことという訳ではないが)作られた作品である。
--製作当時から上層部と制作スタッフとの間に意識の差があったと思われ、「タクティクス設定原画集」に書かれている内容((企画段階での「えいえんのせかい」は「クライマックスを演出するための舞台装置である」という言い回しやスタッフの退社の経緯など))を全て額面通りに受け取って良いかは微妙。「えいえんのせかい」は各所にしっかりと設定や伏線が為されており、退社の経緯もネクストンが悪いと限った話ではないが、後に語られているものとは表現が異なる。
---一部の設定や展開が『ToHeart』にかなり似ているが、中身が別物になっているのはこれも影響していると思われる。

-18禁版と全年齢版のOVAが出ている。
--18禁版は原作を元にしており、描写不足などからあまり良い評価を受けていないが無難な作品とは言える。
--全年齢版は完全なオリジナル展開…は良いとしても、重要な設定も無視している。更にそれらを受け入れても非常に理解しがたい内容になっているので評判が悪い。補足すると、原作プレイ・未プレイに関わらず理解しがたい。
---描写も全体的にあっさりしすぎていたり、曖昧なものになっていて空気を見ているかの様な作品になっているので演出的にも評価が悪い(作中のキャラと言うより、視聴者に対して希薄感を表現しているのかもしれないが)。
---結果として何をやりたかったのか、何を狙っていたのかすら分からない作品になっている。

-CG鑑賞モードに「主」という名前のでぶったリス(?)らしきマスコットキャラがいるが、彼(彼女?)が何者なのかは本作最大にして永遠の謎である。そもそも読み方も「あるじ」なのか「ぬし」なのかすらわからない。

-ゲームで実際にあるシーンではないが、「知ってるがお前の態度が気に入らない」のAAでスケッチブックを持っているのが上月澪である。
--他にも「乙であります!」で有名なAAがあるが、これは後に『CLANNAD』の公式コミックを描いたみさき樹里氏の柚木詩子のイラストが元(台詞部分は原作やイラストとは無関係)である。

-PCのフルボイス版・PS版・ドラマCD版・OVA版、それぞれの声優はバラバラで全く統一されていない。
--ちなみにPCフルボイス版とPS版の声の評価は悪い。

-「泣きゲーの元祖」とも呼ばれるだけあって話題に挙がることも多い。
--ライトノベル作家の本田透氏やシナリオライターの奈須きのこ氏は影響を受けたと言及している。シナリオライターの元長柾木氏は存在自体が奇跡でありコピーできるような代物と評している。

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*輝く季節へ
【かがやくきせつへ】
|ジャンル|恋愛アドベンチャー|&amazon(B00005OVTB)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売元|KID|~|
|発売日|1999年4月1日|~|
|定価|6,800円(税別)|~|
|ポイント|蛇足で微妙な追加CG&br()黒歴史の追加ヒロイン&br()元シナリオの改変はほぼない|~|

**概要(PS版)
ファンから「Key」関連作として扱われている『ONE ~輝く季節へ~』のPS移植版。~
ただし、移植時に「Tactics」に残っていたのはプロデューサーのYET11(吉沢務)氏のみであり、他の主要スタッフは全員「Key」に移っている。~

タイトルが変更されたのは、PSにおいて既に『ONE』というゲームが発売されていた為である。


**変更点
-シナリオ関係
--新ヒロイン「清水なつき」の追加
--コンシューマ移植に当たって、規制に引っかかりそうなシーンの削除
---当然ながらエロ関係はかなりの量が削除されており、直接的なシーンは当然ながら、18禁とまでは言えないヒロインのパンツを下ろすシーン等も削除。
---自主規制らしく、飲酒シーンは当然としてもこんなものまで?と言う様なものまで多数変更されている。

-音声・BGM関係
--音声の追加
--効果音の追加
--CD-DAからPSの内蔵音源に変更。

-新規CGの追加
--ただし、Hシーン等が削除された関係でそれらのCGもカット。

-その他
--メッセージウィンドウ方式からビジュアルノベル方式へ変更。
--OPムービーの追加。
--セーブ数の増加。
--バックログ機能の追加。


**評価点(PS版)
-原作部分は規制部分を除いて無難にベタ移植されている。
--原作スタッフが関わっていない上に、後述のように追加シナリオとCGに問題がある為、それら以外がそのまま移植された事は、原作の代わりやエロゲーに抵抗がある人が買う分には十分と言える。

-セーブ数増加とバックログ機能の追加
--バックログはADVとしては基本的な機能で、無いと非常に不便。
--内容に対して明らかにセーブ数が不足していたので、セーブ数増加も大きな長所。


**賛否両論点(PS版)
-音声の追加
--演じているのは有名声優が多く、PC版プレイヤーによってはイメージに合わないなどの好き嫌いはあっても棒読みなどはない。
--ただ、言い回しが明らかにそぐわない場面が多数存在する問題点がある。
---完全に別の場面と勘違いしていると思しきものも多い為、台本や演技指導段階の問題と思われる。

-SEの追加
--追加された事自体は良いが、追加が相応しい場面に対して量が少なすぎるせいで、少々中途半端や手抜きといった印象を受けやすい。
//気になる人も少ないなら、ちょっと問題のある評価点レベルでは?
//効果的・評価出来ると言えるSEもほとんどないので(ついでに言うとこちらも気になる人が少ない)、中途半端や手抜き感を加味すると賛否両論かと。

-OPムービー(アニメ)の追加
--アニメということも考えると、可も不可も無くと言った出来。
---しかし、描写的にも設定的にも違和感の強いみさきや、ネタバレ回避の為かちぐはぐな留美や繭など、出来とは無関係なところで不自然な描写がある。
---原作ファンからすると原作のデモムービーの方がよほど印象的で良いといった評価が多いが、アニメによる話題作りやデモはポップな曲では無い等の事情も考えられる。


**問題点(PS版)
-追加CGが微妙。
--イラストレーターが変更されている為、追加CGが浮いてしまっている。独特の絵柄を似せようと意識したのは理解出来るが、お世辞にも成功してるとは言い難い。
---そもそも樋上氏の絵柄自体が賛否両論で、その樋上氏の絵の印象的な部分を他人が真似ようと強調して歪になっており、単独で見ても見比べても違和感を覚えるものになっている。
--「シリアスな場面が台無し」という意見に加えて、「何でこのシーンに追加した?」と首を傾げたくなる追加もあって、正直残念な追加になってしまっている。

-新ヒロイン「清水なつき」の存在。
--いくら原作シナリオライターが関わっていないとは言え、''原作を否定しているシナリオ''になっており、この点もって原作ファンからは酷評されている。
--新キャラなので当然なつきのCGも追加CG担当の人なので、CG全体が他キャラと比較すると浮いてしまっている。
--原作と関係無しに考えても感情移入が難しいキャラな上に、話が強引過ぎていまいちと言う評価が多い。更に他のヒロインと比べて進展も駆け足になってしまっている。
---原作や諸々の設定とは切り離した上で、一応評価する声や許容出来るといった声も存在する。

#region(なつきシナリオ詳細(ネタバレ有り))
-前述しているが元々の本作は浩平が「えいえんのせかい」から戻ってくる話で、本編はその絆(思い出)という形式なのだが、なつきシナリオでは結局''浩平が元の世界に戻ってこない''。
--このシナリオにも「えいえんのせかい」が関わっているのだが、独自設定をふんだんに追加していてなつきの為だけに改変されているとしか言えない。
---新規シナリオとして方向性の違うものを追加したかったのかもしれないが、結果的にシナリオ自体がゲームから浮いてしまっている。

-浩平と出会い頭に、それも執拗に「お兄ちゃん」と呼んでまとわりついてくる上に「お兄ちゃん」と浩平とを不自然且つ頻繁に混同する。
--当の浩平は比較的平然と接するのだが感情移入出来る様なテキストは無い。
---更に浩平はなつきと接して、何故かすぐに妹のみさおや「えいえんのせかい」について明確に思い出す(あるいは知る)結構な違和感を覚える展開。

#endregion

-何も考えずにウィンドウ方式からビジュアルノベル方式に変更されている為、改悪にしかなっていない。
--元がウィンドウ形式だったものを単にずらっと並べただけであり、絵もテキストも見づらくなっただけである。ウィンドウ形式を生かした演出もあるので尚更。
---元が次の表示に切り替わるからこそ同じ人物が連続して喋っていても「」で区切っていたのだが、これも「」区切りごとそのまま縦に並べている。~
その為、同じ人物の台詞が「」で区切って連続して一つの画面に表示される。会話の流れによっては、別人の台詞と勘違いしやすい。
--立ち絵が変わる度に一度テキストがリセットされるので、違和感とともにテンポも悪くなっている。

-PS内臓音源になった事で、BGMが若干劣化。
--仕方ないと言えば仕方ない部分だが、少しでも良くしようと工夫した形跡は見られない。

-規制への配慮と考慮しても、おかしな表現に多い。
--Hシーンの削除自体は問題点ではないが、追加シーンは妙に回りくどくて長い上に変なものが多く、浮いている。好みにもよるが削除だけの方がマシなものが多い。
--原作のとある中傷台詞を「誰にでもついて行く」にする変更が有り、中傷台詞であることは変わらないが、重要な場面にも関わらず受ける印象が大きく変わっている。
---他にも飲酒をあることに変えた結果、いけない薬でも使ってるのか?と疑問に思うくらい異常な表現もある。
--変更個所は自然でも前後のテキストのつじつまが合っておらず、矛盾していたり違和感を受ける表現が多い。


**総評(PS版)
バックログ機能追加とセーブ数の増加は大きな長所なのだが、表示方式変更の改悪が響いて(ハードの違いを考慮しても)利便性が増しているとは言い難い。~
それら以外は大小は別として劣化要素となっているものが多い。~
中でも「原作CGから浮いている追加CG」と「清水なつき」はその最たるものであり、原作ファンからは完全になかった物とされることが多い。~
追加CGと清水なつきの事情さえ分かっているなら、ベタ移植に近いまずまず無難な出来なので、PS版から入るのも悪くはないだろう。


**余談(PS版)
-本作のビジュアルファンブックには、PC版製作スタッフのインタビューも掲載されている。

-追加CGの件やそれがどのCGなのか知らない人からすると、「樋上氏が描いた下手なCG」等の様に誤解されやすく、主に樋上氏に対して余計な悪評の原因となっている。
--その一方で追加CGの原画家にとっても、原作の絵が不安定なので逆の形で誤解される場合がある。要するに両者にとって余計な悪評の原因になってしまっている。

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//書いたは書いたが歯切れが悪いです。後で手直しするかも。