『ヨハネの黙示録』研究


全体の構成


◆序文 1:1-8
◆七つの教会の助言 1:9ー3:22
 七つの教会の幻の序幕 1:9ー20
 七つの教会への助言 2:1ー3:22
   1.エペソ教会 2:1-7
     ・七つの金の燭台の間を歩く方
   2.スミルナ教会 2:8ー11
     ・初めであり終わりである方、死んで蘇られた方
   3.ペルガモン教会 2:12-17
     ・鋭い両刃の剣を持つ方
   4.ティアティラ教会 2:18-29
     ・燃える炎のような目を持ち、足は光輝く真鍮のような神の子
   5.サルディス教会  3:1-6
     ・神の七つの霊と七つの星を持つ方
   6.フィラデルフィア教会 3:7-13
     ・聖なる方、真実な方、ダビデの鍵を持っている方
   7.ラオディキア教会 3:14-22
     ・アーメンである方、確かで真実な証人、神による創造の源である方

◆七つの封印と七つのラッパ 4:1ー11:19
 天の描写 4:1-11
 七つの封印 5:1ー8:1
  子羊が受け取る 5:1ー14
  ◇第一の封印(白い馬) 6:1-2
   ・子羊が七つの封印を解く 6:1
   ・白い馬と弓と冠を身に着けた騎手、勝利の上に勝利を得るために出て行く 6:2
  ◇第二の封印(火のような赤い馬、戦争) 6:3-4
  ◇第三の封印(黒い馬、飢饉) 6:5-6
  ◇第四の封印(青ざめた馬、疫病) 6:7-8
   ・地の四分の一は剣と飢饉と疫病と地の獣により殺される 6:8
  ◇第五の封印(祭壇の下にいる殉教した証人たちに白い衣が与えられる) 6:9-11
  ◇第六の封印 6:12-17
   ・大地震、太陽は黒く、月は赤くなる 6:12
   ・天の星が地上に落とされる 6:13
   ・天は消え去る、山と島は移される 6:14
   ・あらゆる人々は洞穴と山の岩間に隠れる 6:15
   ・人々は神と子羊の怒りの大いなる日を恐れ、山や岩に庇護を求める 6:16-17
   十四万四千人と大群衆 7:1-17

  ◇第七の封印(半時間の静けさ) 8:1
   〇七つのラッパ 8:2-11:19
    ◎第一の天使のラッパ(血の混じった雹と火、地と木々の三分の一) 8:7
    ◎第二の天使のラッパ(火の燃えている大きな山、海と海の被造物と船の三分の一) 8:8-9
    ◎第三の天使のラッパ(燃える大きな星(苦よもぎ:アプシントス)、川と水の源の三分の一) 8:10-11
    ◎第四の天使のラッパ(光を失う、太陽、月、星、昼、夜の三分の一) 8:12
     一羽の鷲の声(残りのラッパの音の故に地の住人は災いだ) 8:13
     ●恐らく第一の災いのはじまり
    ◎第五の天使のラッパ(蝗と底知れぬ所の使い(アバドンあるいはアポリュオン)) 9:1-11
     ●第一の災いの終わり(第二の災いの始まり) 9:12
    ◎第六の天使のラッパ(四人の天使と二億の騎兵、人間の三分の一) 9:13-21
     七つの雷の天使 10:1-11
     神殿を測る 11:1ー13
     ●第二の災いの終わり(第三の災いの始まり) 11:14
    ◎第七の天使のラッパ 11:15ー19

◆天の女と男児への竜の迫害 12:1-18
 ◇天の女の出産と大いなる竜の企み 12:1-6
   ・天の女の描写と陣痛 12:1-2
   ・七つの頭と十本の角を持つ赤い大竜の企み 12:3-4
   ・女は男児を出産する、男児は天に引き上げられる 12:5
   ・女は神が備えた荒野に逃れ養われる(1260日) 12:6
 ◇天の戦争(ミカエル軍 対 サタン軍) 12:7-9
   ・天の戦争が始まる 12:7
   ・サタン軍は劣勢となる 12:8
   ・サタン軍は地に投げ落とされる 12:9
 ◇大きな声による勝利の宣言 12:10-12
   ・神の救いと力と王国とキリストの権威が現れた 12:10
   ・兄弟たちは子羊の血と証言により竜に打ち勝った 12:11
   ・天は喜べ、地と海は災いだ、悪魔は残りの時が短いのを知り憤る 12:12
 ◇竜の女への迫害 12:13ー18
   ・竜は女への迫害を始める 12:13
   ・女は荒野に逃れ養われる(三時半) 12:14
   ・竜(蛇)の洪水による攻撃 12:15
   ・地は女を洪水から助ける 12:16
   ・竜は女の子孫の残りの者(イエスの証人)に戦いを挑む 12:17
   ・竜は砂浜に立つ 12:18

◆獣と十本の角と大淫婦と偽預言者への裁き 13:1ー19:21
 十本の角の七つの頭の獣 13:1ー10
 子羊の二本の角を持つ獣(獣の像を拝ませる) 13:11ー18

 子羊と十四万四千人(新しい歌) 14:1-5
 第一の天使(中天を飛び福音を宣教する) 14:6-7
 第二の天使(大バビロンは倒れた) 14:8
 第三の天使(獣と像を拝む者への呪詛) 14:9-13
 人の子のような方と天使(鎌を持ち地を刈り取る) 14:14-20

 最後の七つの鉢の災い 15:1-16:21
  七人の天使に鉢を手渡す 15:1-16:1
  ◇第一の鉢(地) 16:2
  ◇第二の鉢(海) 16:3
  ◇第三の鉢(川と水の源) 16:4-7
  ◇第四の鉢(太陽) 16:8-9
  ◇第五の鉢(獣の座) 16:10-11
  ◇第六の鉢(大河ユーフラテス) 16:12ー16
   三つの汚れた霊(ハルマゲドン)16:13-16
  ◇第七の鉢(空中) 16:17ー21

 大淫婦への裁き 17:1ー18:24
  大淫婦と緋色の獣の姿 17:1-6
  その意味の解説 17:7-18
  天使の叫び(大バビロンは倒れた) 18:1ー3
  天からの声(彼女から出なさい) 18:4ー20
  天使が石臼を海に投げ込む 18:21ー24

 大群衆の声(ハレルヤ、子羊の結婚の準備) 19:1-10
 白い馬に乗っている方の軍勢の裁き 19:11ー16
 神の大宴会 19:17ー18
 獣と地の王の軍勢の対抗と敗北 19:19-21

◆千年王国 21:1-15
 竜の千年間の封印 20:1-3
 第一の復活(千年王国) 20:4-6
 ゴグとマゴグの反乱と敗北 20:7-10
 地と天は逃げ去る 20:11
 死者の復活と審判 20:12ー13
 火の池(死とハデスと命の書に書かれていない者の滅び) 20:14-15

◆新天新地 21:1ー22:21
 新しい天と新しい地 21:1-8
 子羊の結婚(天から下る新しいエルサレム) 21:9-22:5
 あとがき  22:6-21


1章


著者ヨハネはパトモス島に流罪になり、そこから小アジア地域の教会に向けて、この書簡を著わした。執筆時期はおそらくネロ皇帝(54-68年)の治世時であり、さらにはローマ軍による第一回目のエルサレム攻囲からローマ軍が一時撤退していた期間(66年11月25日~70年4月3日)の間であると思われる。それは幻によって神から与えられた預言の形式である。その内容は、「あなたの見たこと、現在のこと、今後起ころうとすること」であって、全ての内容が未来のことではなく、そのほとんどが70年のエルサレムの滅びに関連して書かかれている。けれども、それは黙示録(アポカリュプシス=覆いを除くこと)の形式で書かれており、象徴的な表現に満ちている。それは迫害下にあったクリスチャンがユダヤ教徒やローマ帝国を安易に刺激しないための暗号的な手法でもあったろう。しかし、その比喩は当時のクリスチャンたちには容易に理解できたと思われる。


2,3章


アジア地方の七つの教会に向けて。
1.エペソ教会 2:1-7
2.スミルナ教会 2:8ー11
3.ペルガモン教会 2:12-17
4.ティアティラ教会 2:18-29
5.サルディス教会  3:1-6
6.フィラデルフィア教会 3:7-13
7.ラオディキア教会 3:14-22


4章


天上の光景が描かれる。基本的に、天上の構造は幕屋の構造と同じになっている。神が座するみ座は至聖所の契約の箱、その箱の上に来臨するのが神である。その周りの四つの生き物(ケルビム)は契約の箱の上のケルビムであり、二十四人の長老は十二のパン、七つの燈火の霊は燭台、ガラスの海は水盤と対応している。

十二のパンはイスラエルの十二部族を表していた。また、無酵母のパンは、新しい契約におけるキリストの身体を表していた。すなわち、二十四人の長老は、イスラエル十二部族の中から、新しい契約にあずかるクリスチャンとなった人々を表している。これらのグループは、黙示録の中で14万4千人として表されている。彼らは神の国で、キリストと共に祭司として仕えることになると信じられていた。

しかし、14万4千人(二十四人の長老)は肉的なイスラエル人に限られているわけではない。神は地上的なイスラエルを裁かれ、古い契約を廃された。そして霊的なイスラエルとして教会を立て、彼らと新しい契約を結ばれたからである。つまり、14万4千人(二十四人の長老)は、霊的な意味でのイエスラエル人のことであり、異邦人も含む当時のクリスチャン全体を表している。

5章


「七つの封印」が為された巻物を解く「子羊」は、大祭司であるイエス・キリストを表している。毎年、大祭司は犠牲の血を至聖所に携えて来るものだったが、イエス・キリストは自分自身が犠牲の子羊となり、天上の至聖所にその血を携えて来る。そのため、イエスは全人類を贖うことができる。だからこそ、イエスには、裁きの封印を解く唯一の資格がある。

大勢の天使たちは幕屋の内側に刺繍されたケルブらを表す。また、聖徒の祈りを表す香は、香の祭壇を表している。

  • 幕屋と天上の光景の対応関係
み座=契約の箱
神=契約の箱の上に来臨する光
四つのケルビム=契約の箱に付いている二つのケルビム
二十四人の長老=十二のパン(クリスチャン)
香=香の祭壇
七つの霊=燭台
ガラスの海=水盤
金の祭壇(8:3)=祭壇
天使たち=幕屋の内側の天使らの刺繍
子羊(イエス・キリスト)=動物の犠牲

6章


子羊イエス・キリストによって「七つの封印」が解かれる。これらは一般的に終末の預言だと考えられているが、著者ヨハネにとって終末はすでに始まっており、その主な関心は、淫婦なるエルサレムへの裁きと、獣なるローマ帝国への裁き、そして諸民族なるゴグとマゴグへの裁きである。そして、ここからはヨハネの時代に起きた出来事が象徴的に描かれている。すなわち、それはユダヤ戦争におけるエルサレムの滅びである。

  • 第一、第二、第三、第四の封印
「白い馬」「赤い馬」「黒い馬」「青白い馬」が登場する。

「白い馬」はイエス・キリストを王とする神の国の力のこと。
「赤い馬」は戦争のこと。これはユダヤ戦争(第一次)のこと。
「黒い馬」は飢饉のこと。これもユダヤ戦争において生じた飢饉のこと。
「青白い馬」は死のこと。戦争と飢饉によってエルサレム内の大勢の人々が死に絶える。

  • 第五の封印
ここで殺された人々は、ユダヤ人からの迫害によって殉教した多くのクリスチャンのこと。殉教した彼らの血が、エルサレムのユダヤ教徒に対して復讐を求めて叫んでいる、ということ。

  • 第六の封印
大地震が起きる。70年のエルサレムの滅び以前にも、各地で地震が発生していた。この地震は、エルサレムだけでなく、ローマ帝国領内の様々な場所で起きている。33年エルサレム、46年頃クレタ、50年頃フィリピ、51年ローマ、53年アパメア、60年ラオデキア、62年ポンペイ、67年頃エルサレムなどである。

また、天が暗くなり、天の星が落ちてきたりして、人々が岩陰に隠れる様子は、79年のヴェスヴィオ火山の噴火によってポンペイにもたらされた災いの印象が強く表れている。

まとめると、終末にはまずエルサレムの滅びが起きる。そしてそれは、著者ヨハネが実際に見たことを象徴的に書いたものだった。まず、イエス・キリストが昇天し、神の国の王となったことで、古い契約は廃され、ユダヤ教にキリスト教が勝利した。次いで、キリストは神の裁きをエルサレムにもたらすことによって、「勝利の上に勝利を」得て、エルサレムを滅ぼす行動に出る。その神の裁きの結果、ユダヤ戦争(第一次)が起こり、死と飢饉によって大勢の人々が死んだり、ユダヤ教徒にクリスチャンが迫害されたり、大地震や火山の噴火などの天変地異が起きたりした、ということ。

7章


けれども、これはエルサレムの滅びの序章であって、エルサレムの滅びはまだ完了していない。「四人の天使」が滅びをもたらないように四方の風を抑えている。なぜなら、エルサレムが滅びる前に、ユダヤ人の残りの民を集め終えないといけないからである。神がエルサレムの滅びを70年まで猶予していたのは、ユダヤ教からキリスト教へ改宗する人々を集めるためだったということ。

ユダヤ教からキリスト教へ改宗する、ユダヤ人の残りの民は、「14万4千人」として描かれる。そして、彼らはクリスチャンになると「証印」を押される。その数は、イスラエルの十二部族から12000人ずつ計算した数。あらゆる部分が12で構成されているのは、新しいエルサレムの都市(21章)と同じである。したがって、これは実際の数ではなく、新しいエルサレムの象徴である。

その後、あらゆる国民から成る「大群衆」が描かれる。彼らは、異邦人でクリスチャンとなった人々である。彼らも14万4千人の一部である。なぜなら、彼らも聖所で仕えているから、神の国での祭司団の一員だからである。

14万4千人がユダヤ教の残りの民を強調しているのに対し、大群衆は異邦人であることを強調している。つまり、新しい契約は、ユダヤ人だけでなく異邦人にも開かれているという点で、ユダヤ教を克服したものである、ということ。


8章


  • 第七の封印
「第七の封印」は「七つのラッパ」のはじまりである。ラッパは戦闘の合図でもある。七つの封印は、ローマ帝国内における情勢を表していたが、七つのラッパはユダヤ戦争の本格的な開始を表している。

第七の封印を解いた時、「半時間」の静けさがあった。これは、ユダヤ戦争において、ローマ軍がエルサレムから一時的に撤退した期間を表している。ローマ軍は最初、66年11月にガルスがエルサレムを攻囲したが、すぐに一時撤退した。その後、67年5-6月に、ウェスパシアヌスとティトゥスが再びガリラヤに進軍を開始した。「半時間」とは、この約半年の期間の静けさのことと思われる。

しかし、ローマ軍がガリラヤを進軍したことで、「七つのラッパ」は吹き鳴らされた。

  • 第一、第二、第三、第四のラッパ
これらは第六の封印同様、79年のヴェスヴィオ火山の噴火による災厄のイメージと重ねられている。
  • 第一の天使のラッパ(血の混じった雹と火、地と木々の三分の一)
  • 第二の天使のラッパ(火の燃えている大きな山、海と海の被造物と船の三分の一)
  • 第三の天使のラッパ(燃える大きな星(苦よもぎ:アプシントス)、川と水の源の三分の一)
  • 第四の天使のラッパ(光を失う、太陽、月、星、昼、夜の三分の一)


9章


  • 第五のラッパ(第一の災い)
恐らくここから第一の災いがはじまる。

これも79年のヴェスヴィオ火山噴火のイメージとローマ軍のエルサレム攻囲のイメージが重ねられている。ここから第一の災いが開始され、いよいよ、ローマ軍による本格的なエルサレム攻囲が始まる。

「底知れぬ深みのかぎ」を持つ星(天使)は、宗教的な神の裁きをもたらす者である。ヴェスヴィオ火山から立ち上る噴煙、硫黄、火、さらに大量のローマ軍が「蝗(いなご)」のイメージ。

ここで裁かれているのは、エルサレムにおいてユダヤ教を奉じる人々である。70年、ローマ軍による二回目のエルサレム攻囲の期間は、ほぼ「五ヵ月」であった(70年4月3日~8月30日)。この攻囲の期間はまさにユダヤ人にとって「苦痛」であり、八方塞がりで逃げる場所もなかったため、死よりも苦いものであった。まさに、「死にたいと願っても、死は逃げて行く」状態だった。

  • 第六のラッパ(第二の災い)
五ヵ月間の攻囲の後、ローマ軍はエルサレムに突入し、エルサレムは滅びることになる。7章で四人の天使が抑えていた風がここで解き放たれる。「騎兵隊」は突入してきたローマ軍のことである。彼らは今度は苦痛を与えるだけでなく、ユダヤ人たちを実際に殺害していった。

「蝗」は殺さずに苦痛を与えるだけだが、「騎兵隊」は実際に殺害することから、これがローマ帝国の攻囲と攻撃に分けて表現されたものであることが分かる。

この裁きによって、エルサレムは滅びに至るのだが、その光景を見たローマ帝国内の人々は、改心することもなく、未だに偶像崇拝をつづけるのだった。

10章


エルサレムの攻撃ははじまったが、まだ滅びは完了していない。強い天使が、海と地の間に立つ。この天使はキリストであろう。海は死海、地はエルサレムであるから、彼はオリーブ山を中心にに立っていることになる。また、彼は雲の中から現れている。この表現から、これは終末にオリーブ山に来臨すると預言されたキリストのイメージであることが分かる。

キリストは著者ヨハネに「小さな巻物」を与える。それは腹に苦く、口に甘いものであった。これはエゼキエル書2,3章の描写と重ねられている。エゼキエル書では、バビロニア帝国によって、腐敗したエルサレムが滅ぼされることを指していた。エゼキエルはユダヤ人だったので、同族のエルサレムの滅びは身を切るような思いでもあった。そのため苦かったのである。それは著者ヨハネにとっても同じことであった。したがって、第一・第二の災いは、エルサレムの滅びについての宣告であったことが裏付けられる。


11章


まだ、第二の災いのつづきである。

ヨハネは聖なる神殿を測るように命じられる。ただし「聖所の外の庭」は測ってはならない。これは、クリスチャンはユダヤ人であれ異邦人であれ、皆が新しいエルサレムの祭司であるが、聖所の外の庭は祭司でない者たちのために設けられたスペースであり、クリスチャンでない異邦人の救いは、千年統治の後であるから、ここでは測らないでおけ、ということ。

「聖なる都」はエルサレムを指す。エルサレムは「42ヵ月」のあいだ諸国民によって踏まれる。これは三時半(3年半)である。エルサレムはその期間中「二人の証人」によって預言する。二人の証人は「二本のオリーブの木」「二つの燭台」で表されており、これはゼカリヤ書における総督ゼルバベルと大祭司ヨシュアのこと。彼らはバビロン流刑後に再建した第二神殿の象徴である。また、彼らはモーセとエリヤと同じような奇跡を行なう。つまり、二人の証人の預言とは、律法契約(モーセとエリヤ)と第二神殿(ゼルバベルとヨシュア)がエルサレムの滅びを支持している、ということを意味する。ユダヤ教では一切のことが二人の証人によって確証されねばならなかったからである。

また、この二人の証人エリヤとモーセは、洗礼者ヨハネとイエス・キリストにも重ねられている。洗礼者ヨハネが宣教をはじめたのは「ティベリウス・カエサルの第15年」。これは西暦28年の後半に当たる。これが「1260日」(3年半)の宣教期間の起点となる。そしてここからイエス・キリストは3年半のあいだ地上で福音を宣教をし、十字架につけられた。そして三日後に復活された。したがって、42ヵ月、1260日、三日半とは、洗礼者ヨハネにはじまりイエス・キリストによってエルサレムの滅びを宣告した期間と重ねられてもいる。

二人の証人は色々な象徴を含んでいるが、直接的にはこの二人の証人はエルサレムの滅びをふれ告げたクリスチャンたちの殉教のことを述べている。

その後、すみやかに野獣(ローマ軍)はエルサレムを総攻撃し、滅ぼす。そして、エルサレムはソドムやエジプトで揶揄され、さらし者になる。けれども、エルサレムが攻囲されている間、すでにクリスチャンたちはペレアの山地に逃げていた。それで、「三日半(1260日)」後、エルサレムのクリスチャンたちが帰還してきた時、彼らが生き残っているのを見て、人々は驚愕して、恐れた。それは、彼らがローマ軍の攻撃を聖書の預言から予見して、回避していたからであろう。彼らからすれば、それはまさにエルサレムの復活だった。

こうして、クリスチャンたちは天に上げられるが、これは腐敗したエルサレム(ユダヤ教)が滅ぼされた後に、新しいエルサレム(キリスト教)として復活したことを意味する。そしてすぐに彼らが昇天するのは、その第三の神殿(新しいエルサレム)は天にあり、ユダヤの残りの者に証印を押すこと(黙7章)が完了したことを意味する。

  • 第七のラッパ(第三の災い)
神の家、エルサレムへの裁きが完了すると、次いで神の国は世の王国(ローマ帝国と諸国家)を滅ぼし、これを支配するために行動をはじめる。エルサレムを滅ぼしたバビロニア帝国は、神の武器として利用されはしたが、結局彼ら自身も役目を終えた後には、滅ぼされることになった。これと同じく、ローマ帝国もエルサレムを滅ぼすために用いられたが滅びることになる。


12章


「天の女」は「上なるエルサレム」(ガラテア4:26)。これはヤハウェの妻であり、クリスチャンの母である。具象的にはイエスの母マリアに相当する。「十二の星の冠」をつけているのは、イスラエル12部族の象徴。彼女が産んだ「男の子」は、神の国の王であるイエス・キリストである。

「竜」は悪魔サタン。「七つの頭」と「七つの冠」はローマ帝国の際立った七人の皇帝、「十本の角」は歴代十人の皇帝たちを表す。すなわち、悪魔サタンは世の王国を操る根源的な黒幕として位置付けられる。

悪魔はメシアが生まれると、これを滅ぼそうと画策した。しかし、女は荒野に「1260日」の間逃げた。これはイエスが生まれてすぐ、ヘロデ大王の迫害の手からエジプトに逃げたという伝承を暗示する。聖書に明示されていないが、恐らくその期間は三年半だったのだろう。

その後、ミカエル軍と悪魔サタン軍との間で「天での戦争」が勃発する。悪魔は敗北して天から追放され、地に落ちる。これが起きたのは、ルカ10章18節でイエスが「サタンが稲妻のように天から落ちるのを、わたしは見た」と述べている時であろう。すなわち、イエスが七十二人の弟子たちを各地に遣わし、彼らが悪霊を制した時である。さらにこの時、イエスは弟子たちに「確かにわたしはあなた方に、蛇や蠍を踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けた」と述べた。これは、第五と第六のラッパにおける蝗と騎兵隊(蝗の尾は蠍で、騎兵隊の尾は蛇である)の攻撃からクリスチャンは守られることを意味していると思われる。

しかし、天で敗北した竜は、地上に残された女を迫害する。これは、66-70年のユダヤ戦争(第一次)を指す。ローマ帝国が最初にエルサレムを攻囲し、すぐに一時撤退した時(66年11月25日)に、クリスチャンたちはエルサレムの東方にあるペレアの山地に逃げた。そして、ローマ帝国が再び攻めて来て、エルサレムは滅ぼされた(70年8月30日)。この期間は1335日であるが、エルサレムのクリスチャンは「三時半(1260日)」の間ペレアの山地にいたと考えられるから、一時撤退してから2ヵ月後にはエルサレムを脱出したことになる。

つまり、女(上なるエルサレム)が荒野に逃げるとは、クリスチャンたちがペレアの山地に逃げたことを指す。「蛇の口」から出た洪水は、西方からのローマ帝国軍の二回目の攻撃のことだろう。「地は女を助け」たとは、エルサレムとペレアの山の間を挟むヨルダン川の地理的条件によって、クリスチャンたちがローマ帝国の攻撃を回避できたことを指す。

こうして新しいエルサレムは生き残ることができた。これに悪魔サタンは怒った。悪魔サタンは地上のエルサレムを滅ぼした後に、「女の子孫の残りの者」、つまり残りの民であるクリスチャンを次なる標的にして出て行った。


13章


海から上ってくる「獣」はローマ帝国を指す。「十本の角」は歴代の十人のローマ皇帝を指す。すなわち、①ユリウス・カエサル ②アウグストゥス(オクタウィアヌス) ③ティベリウス ④カリグラ ⑤クラウディウス ⑥ネロ ⑦ガルバ、⑧オト、⑨ウィテリウス、 ⑩ウェスパシアヌス。この十人の皇帝は「十の王冠」を表すが、そのうち「七つの頭」に相当するのは、皇位僭称者であるガルバ、オト、ウィティリウスを除いた七皇帝。この三人の皇帝は内乱時代の皇帝たちで在位期間が短く、影響力が少なかったため頭は持っていない。

その外見は「豹(マケドニア帝国)」「熊(メディア・ペルシャ帝国)」「獅子(新バビロニア帝国)」に似ている。これはローマ帝国がダニエル書7章で預言される獣を継承している第四の獣であることを表す。

野獣の「頭の一つ」が打ち殺される。これは定説ではクリスチャンを迫害した皇帝ネロの自殺を指す。皇帝ネロが失脚してから、ローマは内戦状態となり、四人の皇帝(ガルバ、オト、ウィテリウス、ウェスパシアヌス)が次々と乱立した(四皇帝の年)。ローマの栄光に陰りが見えていたが、ウェスパシアヌス帝(フラウイウス朝)が即位してから内乱はおさまった。こうして獣は致命傷を負ったが復活し、これに民衆が感服して従ったという。

しかし、むしろここはユリウス・カエサルの暗殺を指すと思われる。三頭政治から終身独裁官となったカエサルの暗殺によって、皇帝による統治は瀕死となり、再び三頭政治が復活した。しかし、オクタウィアヌスによって独裁政権は見事に返り咲き、元老院も彼をローマ皇帝(アウグストゥス=尊厳者)として認めたことで、ローマ帝国は復活した。こうして全地は感嘆して、竜と獣を崇拝した。

獣には「42ヵ月」(3年半)エルサレムを冒涜する権威が与えられる。

ここで一旦、『ダニエル書』の預言を紐解こう。ダニエル書12:7では、獣は聖なる民を「一時と二時と半時(=三時半)」(ダニエル7:25)かけて打ち砕くと書かれている。この3年半は、聖なる民が踏まれる期間(黙11:2)、二人の証人が証言する期間(黙11:3)、二人の証人が殺されて復活するまでの期間(黙11:9,11)、そして女が荒野に逃げる期間(黙12:14)、獣がエルサレムを冒涜する期間(黙13:5)に対応している。すなわち、これはローマ軍が一時撤退した後、約2ヵ月後にクリスチャンたちがペレアの山地に逃げて隠れていた期間に相当する。そしてこの間にエルサレムはローマ軍によって滅亡したのである。

皇帝の座に就いたウェスパシアヌスは、エルサレムを滅ぼすために行動する。ユダヤ戦争(第一次)において、ウェスパシアヌスは皇帝ネロの死後、新たな皇帝の座につくために出かけて行き、仕事を息子のティトゥスに委ねた。そして皇帝になった後に、ウェスパシアヌスはティトゥスに命じて再びエルサレムに攻めかかり、西暦70年、エルサレムを滅ぼすことに成功した。

また、「常供のささげ物が取り払われ、荒らす忌まわしいものが据えられる時から、千二百九十日がある」(ダニエル12:11)とある。「荒す忌まわしいもの」はローマ帝国軍のことである。イエスもそう述べている。これは、ネロ帝の時代、シリア総督ガルスが一回目のエルサレム攻囲から撤退した時から、二回目の攻囲を経てエルサレムが攻撃され、神殿の壁が崩された時までの期間である。すなわち、(66年11月25日(キスレウ19日)~70年7月14日(タンムズ17日)=1290日)となる。このエルサレム神殿の壁が崩された日は、現在のユダヤ人も断食を行っている。

さらに「待っていて千三百三十五日に至る者はさいわい」(ダニエル12:12)と述べている。これは、ガルスが一回目のエルサレム攻囲から撤退した時から、エルサレム神殿が陥落した時までの期間である。すなわち、(66年11月25日(キスレウ19日)~70年8月30日(エルル5日)=1335日)となる。

また、ダニエル書8章では、合計して「二千三百の夕と朝」(ダニエル8:13,14)あると書いてある。これは、1290日+1010日=2300日と解する。1290日が終わったのはエルサレムの神殿の壁が崩された日(70年7月14日(タンムズ17日))であるから、その日から1010日(2年9ヵ月と20日)を数えると、73年5月2日(イヤル7日)になる。なんとこの日は、ユダヤ人最後の砦であるマサダが陥落した日であり、この日をもってエルサレムの滅びは終了し、ユダヤ戦争は終結した。

イエス・キリストもこのダニエル書を引用して、「荒す憎むべきもの」(マタイ24:15)が立てられたら山に逃げるよう警告を出していたことから、ダニエル書の1260日、1290日、1335日、2300日が、ユダヤ戦争に当てはまることは裏付けられる。ダニエル書は西暦前の書物でありながら、エルサレム滅亡について正確に預言していたのである。

次に、地から「別の獣」が現れる。この獣には「子羊の角に似た二本の角」がある。これはまさに「羊の皮をかぶった狼=偽預言者」(マタイ7:15)である。これを裏付けるように、この獣は別の個所で獣と並列して「偽預言者」と呼ばれている(黙示録19:20)。

この別の獣の実体は何か。まず、海からの獣(第一の獣)は地からの獣(別の獣)とは区別されている。パレスチナあるいは著者の居たアジアを中心に見てみれば、ローマ帝国の首都はまさに海の彼方にあったので、第一の獣は海から上って来ると言える。一方、別の獣は地から上って来るのである。また第一の獣はエルサレムやクリスチャンを迫害するローマ帝国の皇帝を表すが、別の獣はこの第一の獣の偶像を作らせて拝ませ、エリヤのように天から火を降らせる偽預言者的な行為をし、人々を惑わす。したがって、別の獣は第一の獣の子分であり、各属州の総督たちを表す。

総督たちは第一の獣(ローマ皇帝)を崇拝し、「偶像」を作らせる。これはローマ貨幣である。貨幣には皇帝の彫像が刻まれていた。つまり、総督たちは自国にローマ貨幣を流通させ、ローマ帝国の搾取的な経済システムにあらゆる階層の人々を呑みこみ、従わせることでいわば「刻印」を押し、これに従わない者は売買できない(生活できない)ようにしたのである。またその像には生命の息が吹き込まれた。貨幣は生物のように経済を動かし、経済力こそが物を言う格差社会を作り出したのである。

ではこの刻印とは何か。その刻印は「獣の名またはその名が表す数字」である。この獣の数字は「666」である。著者ヨハネは当時迫害が厳しかったために、ローマ皇帝を直接的に非難することはできなかった。そのため黙示録は暗号や比喩を用いて書かれたのである。そして、この数字は「人間の数字」である。

皇帝ネロ(nrwnqsr)をギリシャ語表記し、これをゲマトリアによって数値化すると、N=50、r=200、w=6、n=50、q=100、s=60、r=200 合計=666 となる。また、聖書では6という数字は7に及ばない不完全性を表す。創世記において創造の業は7日で完成し、安息を迎えるのであり、6日では未完成であるからだ。貨幣は第一の獣の像として作られたものであるから、これは皇帝ネロの肖像が刻まれたローマの貨幣を表している。


14章


一方、「子羊」であるイエス・キリストは「シオンの山」(エルサレム)に立っている。すなわち、キリストは罪を贖う大祭司として、神の国の王として座している。しかし、その座は天にある。

キリストと共にいるのは「14万4千人」である。これは7章で示されたユダヤ教からの残りの者として集められた者たちであり、クリスチャンのことを表す。彼らは迫害に耐え復活した後、キリストと共に王また祭司として地上を支配すると信じられた。

14万4千人という数字は、ユダヤの各12部族から12000人ずつを集めた数。21章で新しいエルサレムの長さは12000スタディオン(約2000m)の正四面体である。つまり、14万4千人という数は実際の数ではなく、12で象徴されるイスラエルを象徴しており、新しいエルサレムに象徴されるクリスチャン全体を指している。

神の国の都市である新しいエルサレム(14万4千人)は、人間の王国の代表であるローマ帝国(666)と対比されている。

14万4千人は、神のみ座、四つの生き物(ケルブ)、二十四人の長老たちの前で「新しい歌」を歌っている。これは律法契約の旧い契約に対する新しい契約のことである。聖書はキリストについて証するための書物なのだが、ユダヤ教徒がいくら聖書を読もうと、キリストを信じる者でなければこの歌は理解できない。

次のシーンでは、別の天使があらゆる民族に福音を宣教している。ここでは、「初穂」として集められたクリスチャンと、異邦人を分けている。すなわち、神の国では、王はキリストであり、クリスチャンはその共同支配者(君たち)であり、異邦人はその臣民として位置づけられる。

つづいて、いよいよ「大バビロン」への裁きがなされる。当時、ローマ帝国のことを直接批判することはできなかったため、クリスチャンたちはローマ帝国のことを隠語でバビロンと呼んでいた。『第一ペテロ書簡』でも、著者は実際にローマに滞在していたのだが、バビロンと呼んでいる。

獣とその像を礼拝する者たち、つまり帝国と皇帝を礼拝する者は、最終的に神の裁きを被ることになっている。彼らは「神の怒りの杯に注がれた神の怒りの葡萄酒」を飲む。これは黙示録14章14-20、15章,16章の平行記述である。また「火と硫黄による責め苦」とは、9章の騎兵隊と同じような殺戮に遭うことを指している。

一方、この最後の迫害を忍耐して殉教し、「主にあって死ぬ者たち」は復活する。ただし、復活するのは地上の裁きが完了してからである。それまで彼らは「労苦を休む」ことになる。

地上の裁きは、「雲に乗る人の子のような方」(主イエス)と鎌を持った天使がぶどうの木を刈り入れるシーンで描かれる。イエスは自分のことを「ぶどうの木」であり、「実」を生み出さない国民を捨て、「実」を生み出す国民に神の国の相続権を与えると言われた。良い実を結ぶ者と、腐った実を結ぶ者とが分けられるのである。イエスは良い実を刈り取り、天使は腐った実を投げ捨てる。すなわち、この地上の裁きは、獣(ローマ帝国)を崇拝する腐敗したイスラエルへの裁きを表している。

その裁きで天使たちが地に捨てたぶどうの実(ユダヤ教徒)を騎兵隊が踏みつけている。これは9章の騎兵隊と同じような攻撃を指している。蝗は裁きを伝え責めるためのものであったが、騎兵隊は殺すために遣わされる。すなわち、この騎兵隊はローマの軍隊を表す。イスラエルを攻撃するローマの軍隊によって殺され踏みつけられた人々の血は「1600ファーロング(スタディオン)」に及ぶ。これは約296キロメートル。イスラエル全体を表す時、「ダンからベエル・シェバまで」という呼び方をするが、ダンからベエル・シェバまでは約300キロメートルであることから、これはイスラエル全体へ裁きが及ぶことを示している。

こうして、キリストを認めずに腐敗したユダヤ教は裁かれた。蝗と騎兵隊の裁きを受けていることや、その裁きがぶどうの木であることから、これがエルサレムに関する滅びを表していることが分かる。しかも、これは「大バビロン」に対する裁きの最中であった。このことから、大バビロンの淫婦の実体も自ずと明らかになる。


15章


次の幻は「七つの災厄(七つの鉢)」である。これは、「七つのラッパ」がエルサレムへの裁きを表していたのと同様に、大バビロン(エルサレム)に対する裁きを表す。

獣やその像の刻印を死をもってしても受けなかった者たちは、「ガラスの海」のほとりに立っている。これは天のことである。彼らは天で竪琴を弾き、「モーセの歌と小羊の歌」を歌う。これはモーセの律法契約とイエスの新しい契約である。

四つの生物は神の怒りに満ちた黄金の鉢を、聖所から出てきた七人の天使たちに手渡す。彼らの裁きが終わるまでは、誰も聖所に入ることはできない。これはエルサレムの最後の裁きが完了するまでは、エルサレムはローマ軍に攻囲されており、エルサレムの外部から中に入ることも、内部から外に出ることもできないことを表す。


16章


七人の天使は次々と神の怒りに満ちた黄金の鉢を注ぎ込む。

第一の天使は地に注ぐ。すると悪性の腫れ物が生じる。
第二の天使は海に注ぐ。すると海は血の色になり、海の生物は死滅する。
第三の天使は川と水源に注ぐ。するとそれらは血となった。
第四の天使は太陽に注ぐ。すると灼熱によって人々は焼かれた。
第五の天使は獣の座に注ぐ。すると獣の国は暗くなり、人々は苦しむ。
第六の天使はユーフラテス川に注ぐ。すると水は枯れる。
第七の天使は空中に注ぐ。すると大地震が起こり、大都市は三つに裂ける。

「第六の鉢」で、ユーフラテス川が枯れるのは、「日の昇る方角から来る王たちのために道が備えられるため」である。エルサレムはたびたび東方の帝国(アッシリアやバビロニア)の攻撃によって裁かれたので、ローマ帝国をエルサレムが滅ぼす軍隊としてイメージしている。

「かえるのようみ見える三つの汚れた霊感の表現」は、「竜(悪魔サタン)」「獣(ローマ皇帝)」「偽預言者(元老院)」の口から発せられる。彼らは偽りを言って「ハルマゲドン(メギドの山)」に王たちを結集させる。それは、腐敗したエルサレムを滅ぼしたローマ帝国が、神の国の王イエス・キリストをも滅ぼそうとして最終決戦を行うためである。


17章


「大バビロン」は「娼婦」である。彼女は両手に「嫌悪すべきもの」と「淫行で汚れた黄金の杯」を持っている。これはこの娼婦が、ローマの皇帝の権威と、エルサレムの祭司の権威を両方持っていることを表す。彼女はその権威を用いて、「聖なる者たち」や「イエスの証人たち」(クリスチャン)を迫害し、その血で酔いしれている。

彼女は「緋色の獣」の上に乗って運ばれている。この緋色の獣は、第一の獣であるローマ帝国とは若干異なる。この獣は緋色であり、十本の角には王冠が付いていない。十本の角は「王権を受けていない」と解説されているとおりである。第一の獣はローマ帝国全体を表していたが、この緋色の獣は特に「八人目の王」を表している。

「七つの頭」は「七つの山」(七人の王)を表している。これは古代ローマ市に実際にあった「ローマの七丘」をイメージさせる。

さらに著者はこの七人の皇帝のうち「五人はすでに倒れ、一人は今おり、他の一人はまだ到来していない」と述べる。これは定説では①アウグストゥス、②ティベリウス、③カリグラ、④クラウディウス、⑤ネロ、⑥ウェスパシアヌス、⑦ティトゥス、⑧ドミティアヌスと解釈されることが多い。しかし、するとドミティアヌス帝が緋色の獣(八人目の王)となることになり、大淫婦(エルサレム)はドミティアヌス帝の上に乗っていることになる。しかし、ドミティアヌス帝の時代にはエルサレムはすでに滅びているので、八人目の王はドミティアヌス帝ではないと考えられる。

そこでこの配列を修正すると、①カエサル、②アウグストゥス、③ティベリウス、④カリグラ、⑤クラウディウス、⑥ネロ、⑦皇位僭称者(ガルバ、オト、ウィテリウス)、⑧ウェスパシアヌスとなる。よって、「今いる」6人目はネロ帝となるから、著者ヨハネはネロ帝の時代に『ヨハネの黙示録』をアジアの七つの教会に向けて書き送ったことになる。また7人目の王は短い間しか留まらないとある。これはネロ帝没後、皇位継承を巡って内乱状態になって皇位僭称者が乱立したゆえに、「四皇帝の年」とも呼ばれており、ガルバ、オト、ウィテリウスの治世は合わせて1年ほどしかなかったことを表す。

そして「かつていたが、今はおらず、やがてやって来る獣」である「八人目の王」は、大淫婦エルサレムを滅ぼすウェスパシアヌス帝のことである。「かつていた」とはネロ帝の時代にガルスによる第一回目のエルサレム攻囲(66年11月17日~66年11月25日)を表し、「今はおらず」とは一時ローマ軍が撤退した期間(66年11月25日~70年4月3日)を表し、この時点がヨハネが執筆している時点である。「やがてやって来る」とはウェスパシアヌス帝の息子ティトゥスがエルサレムを再び攻囲した期間(70年4月3日~8月30日)を表す。

「十本の角」については、それは王権を受けていないが、大淫婦エルサレムを滅ぼす際に獣と共に戦う。また、その後も子羊イエス・キリストにも戦いを挑む。このことから、十本の角はローマ帝国内の各属州の総督たちを表すと考えられる。これは13章の別の獣(地からの獣)と対応する。したがって、別の獣(地からの獣)=偽預言者=十本の角である。

そして、この緋色の獣の上に乗っているのが「大淫婦」である。彼女は背教し腐敗した地上のエルサレムを表す。彼女はローマ帝国とそれに従属する諸国家と霊的な淫行を繰り返し、世の王国と結託して神に背教し、神の女(上なるエルサレム)が産んだ主イエス・キリストとその女の子孫(聖なる民、残りの民、クリスチャン)を迫害している。

そしてついに西暦70年、緋色の獣と十本の角(ウェスパシアヌス帝と総督たち)は、大バビロンの淫婦(エルサレム)を憎み、滅ぼす。


18章


天使が「大バビロン」(エルサレム)に対する裁きを言い渡す。エルサレムは滅び、偶像崇拝にまみれた「悪霊たちの住処」として渡された。多くの王が、彼女と淫行を犯し、地の旅商人たちは彼女の淫行によって富を得た。

天使は彼女の罪にあずかり、災いに遭いたくないなら、「彼女から出なさい」と勧告する。つまり、腐敗したエルサレムを保守するのをやめ、キリストを信じなさいということ。

彼女の裁きは「一日」(1年間)で終了する。実際に西暦70年のエルサレムへの攻撃は半年ほどで滅亡した。これはかつて、新バビロニア帝国がペルシアのキュロス王に一日のうちに滅びた光景と重ねられている。このキュロス王はイエス・キリスト(メシア)と重ねられており、腐敗したエルサレムがメシアによって打ち砕かれることを暗示している。

商人たちはエルサレムの様々な商品を貿易により得られる経済的恩恵をもはや受けれないために嘆く。その貿易商品リストの最後は「人間の生命」で締めくくられる。これはエルサレムも彼女に加担する商人たちも、人間の生命を搾取していたということを表す。これは迫害された預言者や聖なる民(クリスチャン)、あらゆる搾取された人々に対する神の復讐の裁きである。それゆえ、聖なる民、使徒、預言者はこの正当な裁きが果たされたことを喜ぶ。


19章


エルサレムの滅びを見て「大群衆」(異邦人のクリスチャン)は神を賛美する。そして、その14万4千人で象徴されるクリスチャン全体はキリストの花嫁となり、子羊の結婚式に招かれる。これはキリスト教が民族主義的なユダヤ教に勝利して、証印を押されたことを意味する。

ここから先は現代においてもまだ成就していない終末の出来事である。

天に「白い馬」に乗った者が現れる。彼は神の国の王であるイエス・キリストである。また、6章に登場する「白い馬」と同一である。彼は「多くの王冠」をしており、十本の角に勝る支配権を持っていることを表す。キリストは天使の軍団を引き連れてエルサレムを滅ぼした獣と偽預言者(十本の角)と諸民族に対する裁きを行う。すなわち、ローマの皇帝と総督と市民への裁きである。彼らがエルサレムを滅ぼしたのは裁きの代行を務めただけであって、彼らはキリストに反対しているゆえに主ご自身によって裁かれるのである。

この戦いは、16章の「神の大いなる日の戦争」のこと。諸国の王たちはキリストの軍勢と戦うために「ハルマゲドン(メギドの山)」に集まる。しかし、中天を飛ぶ鳥たち、おそらく天使の軍団は彼らの肉を貪り食う。そして獣と偽預言者は捕らえられ、生きたまま「火の池」(ゲヘナ)に投げ込まれる。獣の刻印を押された残りの者たちは剣によって殺され、鳥たちに食べられる。「生きたまま」というのは、悪魔サタンは千年間深淵の牢獄に監禁されてから火の湖に投げ落とされるのに対し、彼らにはその猶予はないことを表す。獣(皇帝)と偽預言者(総督)は永久的に滅び、二度と復活することはない。


20章


「底知れぬ深みのかぎ」を持つ天使が現れる。これは9章の蝗と騎兵隊の災いをもたらしたアバドン(アポルオン)のことである。「底知れぬ深み」は冥府の牢獄のことであり、サタンは一時的に活動できない状態となるが、再び復活することを表している。したがって、これは永遠の滅びを表す「火の湖」(ゲヘナ)とは異なる。エデンで人類を誘惑した時から原初の蛇となった悪魔サタンは、ついに「千年間」縛られ、底知れぬ深みに監禁される。この期間中は、悪魔が人類を惑わすことはできなくなる。

次に14万4千人からなる王たちが「座」に就いて支配をはじめる。彼らは獣の像を拝まず、刻印を受けなかったために殉教したクリスチャンである。彼らは復活し、キリストと共に千年間、王として地を支配する。これが「第一の復活」であり、神の国によるメシアの千年統治の開始である。

「残りの死人は千年が終わるまで生き返らなかった」とある。これは、地上に生き残った人間たち(異邦人)はまだ霊的に回復しないことを表す。つまり、千年統治の期間が終わるまでは、異邦人はまだ清められることはなく、キリスト教会の霊的な指導を受ける。

「第一の復活」にあずかるキリスト教自体はもはや救いを確証されており、「第二の死」(火の池)の滅びを恐れる心配はない。しかし、異邦人からなる民衆は、この千年統治の期間中にキリストを信じないなからば「第二の死」に至る可能性も残る。

その「第二の死」は千年統治後に起きる。サタンは底知れぬ深みから解放され、地上全体から民衆「ゴグとマゴグ」を惑わして神の国(キリスト教)に敵対させる。しかし、その反乱運動は失敗し、神の支配は確立する。悪魔とそれに組した人々は火の湖(ゲヘナ)に投げ込まれ、ついに永久に滅びることになる。これが「第二の死」である。それ以降は、民衆も霊的な死を恐れる必要はなくなる。

要するに、神の国の千年統治とは、かつてのローマ帝国支配領域全域においてキリスト教時代がはじまることを意味している。そして、キリスト教自体は永久に存続するが、その臣民については信仰が試されており、千年後には民衆による反乱運動が起きる。そして、これが鎮圧された後に、キリスト教は全地球を恒久的に支配することが達成される、と著者は述べている。

過去に死んだ人々も最後の審判にかけられる。最終的に「死とハデス」そのものも火の湖(ゲヘナ)に投げ込まれる。「ハデス」とは、死者が神の審判を待っている状態のこと。つまり、以後、神の裁きにかけられる者は誰もいなくなり、天地から罪がなくなるということ。


21、22章


「新しい天と新しい地」が実現する。「新しい天」は「新しいエルサレム」であり、クリスチャンが地上を統治する神の国のことである。「新しい地」は霊的な異邦人からなる地上の臣民である。これが「地に下ってくる」とは、恒久的な神の国の時代が地上で実現することを意味する。その国には圧政者による苦しみや、戦争による死はない。地上はかつてのエデンの園のような平和な状態になる。

天使は子羊(イエス・キリスト)と花嫁(新しいエルサレム)の結婚を見せてくれる。この結婚自体は、千年統治が始まる時に行われる。

新しいエルサレムの都市の設計や寸法は、12の数で満ちている。つまりこれが、ユダヤ人による王国であることを表す。ユダヤは12部族であり、神に選ばれた14万4千人は12部族から12000人で構成されている。またこれが正四面体であり、一面1万2千ファーロング(2200キロ)である。これはかつてのローマ帝国の支配領域全体がキリスト教になることを意味する。これが正四面体なのは地上のイスラエルより完全であることを表す。(14章では地上のイスラエル全域が1600ファーロングで示されていた)。

新しいエルサレムの都市には神の神殿がない。本来神殿とは、神と罪ある人間を仲介する為の存在である。しかし、クリスチャンは全員が祭司であり、その罪は贖われているため、もはや神殿は必要ない。

新しいエルサレムである神の国は、「命の水の川」を地上にもたらす。また川のそばに「命の木」が植えられる。それは異邦人を霊的にいやすためのものである。



資料


歴代ローマ皇帝

 ※白丸は17章での数え方。黒丸は13章での数え方。
第一回三頭政治 BC60~49
 カエサル、ポンペイウス、クラッスス
終身独裁官
 ①➊ユリウス・カエサル BC45~44 ※厳密には皇帝ではないが皇帝として数える。
第二回三頭政治 BC43~32
 オクタウィアヌス、アントニウス、レピドゥス
ユリウス・クラウディウス朝
 ②➋アウグストゥス(オクタウィアヌス)BC27~AD14 ←人口調査
 ③➌ティベリウス(14-37) ←治世15年、洗礼者ヨハネが宣教を始める。
 ④➍カリグラ(37-41)
 ⑤➎クラウディウス(41-54)
 ⑥➏ネロ(54-68) ←クリスチャンを迫害し、一度目のエルサレム攻囲させた。
⑦四皇帝の年(皇位僭称者)※僭称者をまとめて皇帝として数える。
  ➐ガルバ(68-69)
  ➑オト(69)
  ➒ウィテリウス(69)
フラウィウス朝
 ⑧➓ウェスパシアヌス(69-79) ←二度目のエルサレム攻囲をさせ、エルサレムを滅ぼした。
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※実は黙示録ではティトゥスとドミティアヌス帝のことには触れていない。
 ⑨ティトゥス(79-81)
 ⑩ドミティアヌス(81-96)


西暦33年~70年までの間に生じた地震

33年  エルサレム
33年  エルサレム
46年頃  クレテ
50年頃  フィリピ
51年 ローマ
53年 アパメア
60年 ラオデキア
63年 ポンペイ
67年頃 エルサレム



年表


28年後半 洗礼者ヨハネが宣教をはじめる

54年10月13日 ネロ皇帝即位

58-63年 パルティア戦争(第四次)

60年 使徒パウロ、ローマに囚人として移送される。

62年2月5日~79年8月24日 ヴェスヴィオ火山による大地震発生。以後地震が相次ぐ。79年に火山が噴火し、ポンペイ市が埋没する。

64年6月19日 ローマの大火、ネロ帝はキリスト教徒に罪の濡れ衣を着せて迫害する

66年5月 総督フロルス、エルサレム神殿から17タラントを押収、抗議する市民を虐殺、ユダヤ戦争(第一次)勃発。

66年6月 熱心党(ゼロータイ)、マサダ要塞を占拠し、ユダヤ独立を宣言

66月8月 反乱軍、アントニアの塔を制圧。新ローマ派の大祭司アナニアを殺害

66年10月15,16日 ローマのシリア総督ケスティウス・ガルス、3万の軍を引き連れ進軍開始

66年10月22-28日(ティシュリ15-21日)ユダヤ人の仮小屋の祭り

66年11月17日 ガルス、エルサレムを攻囲

66年11月25日(キスレウ19日)ガルス不可解な一時撤退

67年 ローマにて使徒ペテロ殉教

67年5-6月 将軍ウェスパシアヌス、息子ティトゥスと共に6万の軍をつれて進軍開始、ガリラヤ侵攻

68年6月9日 皇帝ネロ自殺

68年6月8日 ガルバ皇帝即位

69年1月15日 オト皇帝即位

69年4月17日 ウィテリウス皇帝即位

69年7月1日 ウェスパシアヌス皇帝即位

70年 ウェスパシアヌスは軍事作戦を息子ティトゥスに委ねる

70年4月3日~8月30日(ニサン4日~エルル5日、約5ヵ月)ティトゥス、三日で7キロに及ぶ攻囲壁を築きエルサレムを攻囲。5ヵ月後、エルサレム神殿陥落・炎上

70年4月11日(ニサン14日)ユダヤ人の過ぎ越しの祭りは中止

70年7月12日(タンムズ17日)神殿の壁が破られる

70年9月26日(ティシュリ5日)エルサレム市陥落。ティトゥス市内に入場し、凱旋帰国

70年10月 ウェスパシアヌス、ローマ入城

70年-80年 コロッセオ建設開始

73年5月2日(イヤル7日)ユダヤ人最後の砦マサダ陥落

79年6月24日 ティトゥス皇帝即位

79年8月24日 ヴェスヴィオ火山噴火、ポンペイ市埋没。

80年 コロッセオ完成

81年9月14日 ドミティアヌス皇帝即位

86年 ダキア族との戦争開始

88年 ダキア族に勝利

89年 ダキア族と講和条約を結ぶ

96年 ドミティアヌス帝、暗殺される


『ダニエル書』の預言の成就


1260日 3年半(ダニエル12章7節)
ガルスが一回目のエルサレム攻囲から撤退した約2ヵ月後にクリスチャンたちがペレアの山地に逃げた日~エルサレム神殿が陥落した日まで
(66年11月25日(キスレウ19日)の約2ヵ月後~70年8月30日(エルル5日)=1260日)

1290日 3年7ヵ月(ダニエル12章11節)
ガルスが一回目のエルサレム攻囲から撤退した日~二回目の攻囲でエルサレム神殿の壁が崩された日まで
(66年11月25日(キスレウ19日)~70年7月14日(タンムズ17日)=1290日)

1335日 3年8ヵ月半(ダニエル12章12節)
ガルスが一回目のエルサレム攻囲から撤退した日~エルサレム神殿が陥落した日まで
(66年11月25日(キスレウ19日)~70年8月30日(エルル5日)=1335日)。

2300日 6年4ヵ月と20日(ダニエル8章14節)
ガルスが一回目のエルサレム攻囲から撤退した日~ユダヤ人最後の砦マサダが陥落した日(ユダヤ戦争終結日)まで
(66年11月25日(キスレウ19日)~73年5月2日(イヤル7日=2300日)







最終更新:2021年03月29日 04:48