867 名前:ブルーローズ騒動5-1 :2011/11/21(月) 21:19:00.23 ID:???
歩いて降りてきた地下への階段も、MSがあれば簡単に飛んでいける。
対偽キンケドゥ戦のためにとこのコロニーの通路図を叩き込んでおいてよかったと、トビアはハサウェイとウッソを先導して思う。
迷わずに、そしてコロニーを傷つけずに外を目指すことができるから。

トビア「ここが出口だ!」

鉄のドアを開けてコロニー内部に戻れば、半壊した研究棟と薔薇の入ったケースを手にして高笑いをする偽キンケドゥが見えた。

偽キン「フハハハハ!奇跡の青いバラはこのキンケドゥさまが頂いていく!」

ウッソ「させるかぁ!」
ハサウェイ「粛正してやる!」
トビア「待てぇっ!」(キンケドゥさんの名を語るな!)

地表を割るように現れた三機のシグーがF97-Eを囲む。
コロニー内だからビーム兵器やライフルは使えない。
背中に配備された実剣を抜いて三人は偽キンケドゥと距離を取った。

偽キン「ハァン!ガキが刀振り回して何ができるっていうんだ!」
ウッソ「ガキだからってなめないでください!三人に囲まれてしまえば!」

ウッソがF97-Eの右横から飛び出して切りかかる。
左手にバラを、右手にライフルを持った敵だ。
薔薇の安全を確保するために、戦力を削いでおかなくてはならない。
詰め寄るウッソにF97-Eはライフルを乱射する。

偽キン「くそっ!」
ウッソ「当たらなければ、意味がないんですよ!」

スラスターを調節させてウッソがライフルの弾からひらりと避けて動く。
間合いを詰めては遠ざけ、遠退いたらばちかづいて誘うように飛ぶウッソに偽キンケドゥも焦りの色を隠すことができない。

ハサウェイ「後ががら空きだぁっ!」
トビア「ハサウェイ、ウッソ、近接援護は任せて!」
偽キン「ガキがちょこまかとぉっ!」

左からはハサウェイが背後をつくようにMSを駆る。正面からは行く手を阻むようにトビアがバルカンを連射する。

偽キン「くそぉう!お前ら全員落としてやるぅ!」
ウッソ「荒んだ心に武器は危険なんです!キンケドゥ!」

後ろをハサウェイに、前をトビアに阻まれ、右手のウッソとの隙間を逃げるように偽キンケドゥは進んでいく。

計 画 通 り

これも三人の策だった。
あらかたが退避したとはいえまだ見学客が残っているだろう研究棟から、F97-Eをとなりの牧草地に誘導する。
こうすれば敵のライフルも一般人にはあたらないし、MS墜ちたときの被害も最小に収まるのだ。


868 名前:ブルーローズ騒動5-2 :2011/11/21(月) 21:19:29.43 ID:???
ウッソ「はあっ!」

ウッソの剣が唸る。
真っ直ぐに切り下ろされる刀は右手を狙っていた。

偽キン「くそぅっ!」

後ろにも前にも避けれないF97-Eが上へ飛ぶ。
思いがけない動きにウッソの刀は腕ではなくライフルの銃身を半分にしていた。
偽キンケドゥがダメになったライフルを捨ててビームサーベルを引き抜いた。

偽キン「やられてたまるかぁっ!」
ハサウェイ「ウッソ!離れて!君がやられるっ!」
ウッソ「わかってるけど!」
トビア「やらせなあい!」

無意味にサーベルを振り回す偽キンケドゥ。
しかし何も技術がなくてもビームサーベルは協力な武器になる。
どこへとんでくるかわからないサーベルは予測のつけようがなくて回避が難しい。
間合いのなかにはいればいつ焼かれるかわからないほどだから。

普段三人ともガンダムに乗っているとはいえ慣れないシグーを操るの(その上コロニーや他の一般客を守りながらの戦闘)はかなりの技術がいる。

ハサウェイ「くそっ!速すぎるっ!」
トビア「ウッソ!離れてっ!」
ウッソ「それじゃあ逃げられる!」

しかも相手は高出力スラスターのついたBCバンガード仕様に改造されたF97-Eだ。
重量はシグーよりも軽いが機動力やパワーは劣らない。
上方に飛び出されて引き離されれば終えなくなる可能性もある。

トビア「後ろのどれかを使えなくすれば!」
ハサウェイ「ぼくがやるっ!」

偽キンケドゥを追ってハサウェイが敵機の背後からX型の噴出口に向かって刃を向ける。
金属のぶつかる音がしたかと思うとX型のひとつがその衝撃にひしゃげていた。

ハサウェイ「やった!」
噴出口が詰まり折れた部分が小さな爆発を起こす。
体勢を崩した偽キンケドゥにハサウェイのシグーが更に襲いかかる。

ハサウェイ「ここまでだ!墜ちろおーッ!」


869 名前:ブルーローズ騒動5-3 :2011/11/21(月) 21:20:19.69 ID:???
ブレードを振りかざしたハサウェイが偽キンケドゥを更に追う。
しかしF97-Eのパイロットもまだ逃げることを諦めていなかった。

偽キン「やらせるか!」

ガンッ!
のこりのスラスターを操り背後のハサウェイに回し蹴りを浴びせる。
剣を振りかざしたシグーの脇に遠心力に任した蹴りが入る。

ハサウェイ「うわああっ!」

シグーの方が全長も重量も上だが出力全開のF97-Eの渾身の蹴りにハサウェイの体勢がよろける。
コロニーの疑似重力に引かれて落ちていく。

偽キン「ガキのくせしてでしゃばるから!」
ハサウェイ「くそーッ!」

偽キンケドゥがザンバスターの照準をハサウェイのシグー似合わせる。
F97-Eが引き金を引いた。
銃口から飛び出たビームはハサウェイに向かうはずだった。

ウッソ「させるかッ!」
トビア「ヤメロォッ!」

ウッソのブレードがF97-Eの肩を、トビアはザンバスターの銃身を切り落とす。
偽キンケドゥのMSの右手が切り離され緑の牧草地帯に落ちていく。

偽キン「うわああっ!」

思いもよらぬ反撃に偽キンケドゥは全力で二機から距離を取ろうと後ろに逃げる。
このまま高出力のスラスターに任せてコロニー外に逃げれば。
シグーの動力よりも早い速度で逃げれば!

偽キン「これはこのキンケドゥさまのものだ!」


???「キンケドゥ?貴様がキンケドゥだと?」

871 名前:ブルーローズ騒動5-4 :2011/11/21(月) 21:23:03.12 ID:???
いつの間に偽キンケドゥの背後についていたのだろう。
4人の気づかぬうちにコロニー内に新たなMSが2機現れていた。
機体を覆い隠すほどのマント、ドクロマーク、背中には大きなX型の噴出口。
その特徴は日登町にはお馴染みの……


ウッソ・ハサウェイ「クロスボーンバンガード!?」

コロニーの人工太陽に照らされたのはクロスボーンバンガードのエース2機。

ザビーネ「ダメじゃあないか…勝手にキンケドゥなんか名乗って。こんな子供に中破とは情けないぞぉっ!」

X2が背後からF97-Eを襲う。鋭利なショットランサーでコクピットを貫こうと腕を引いた。

キンケドゥ「殺すな!X2!ベラはそんなこと望んじゃいない!」
ザビーネ「解っているよ、キンケドゥ!」

ザビーネの突きがF97-Eの頭部を吹き飛ばす。

偽キン「くそぉおぉっ!」

メインカメラをやられてもまだ逃げようと足掻く偽物は所詮偽物で。
今度はキンケドゥの乗るX1から伸びたシザーアンカーにバラを掴む腕を絡めとられていた。

キンケドゥ「怪盗は怪盗らしく、予告通りに盗んでいこう」

そしてそのまま、鮮やかな手付きで青い薔薇をX1に引き寄せた。

キンケドゥ「どれどれ?奇跡の青い薔薇……the Earth…か」
ウッソ「ダメだっ!それは!」
ハサウェイ「返すんだぁっ!」

X1のコックピットが開いてキンケドゥがパイロットスーツで現れる。
ガラスケースを手に取ると、ヘルメットの奥で笑うのが解った。
このままでは盗まれる。
ウッソも、ハサウェイもシグーの推力を全力に上げてX1に迫る。
エネルギーの残量なんてあとわずかしかない。
フェイズシフトダウンが近づく中2機のシグーはキンケドゥに一歩でも近づこうと駆ける。


872 名前:ブルーローズ騒動5-5 :2011/11/21(月) 21:23:42.90 ID:???
キンケドゥ「これはッ」

あと少し。
あと少しでXがシグーのブレードの間合いに入る。
だからそれまで。
二人は力をこめて柄を握る。

そんな緊迫した状況で、生身のキンケドゥは深いため息をついた。
もう目の前には武器を掲げたMSがいると言うのにだ。

キンケドゥ「正に地球、だな…」

人工太陽の光に青いバラをかざしたキンケドゥはひどく穏やかな口調で言葉を漏らした。
花を盗みに来たというのに、のんびりとした様子のキンケドゥにウッソとハサウェイの闘争心は泡のように消えてしまって。

ウッソ「本当に盗むつもりなんですか」

ウッソの声がコックピットの向こうから聞こえる。
普段では出さないような硬い声にキンケドゥ――シーブックはくすり、とヘルメットの奥で笑った。
もともと盗む意思なんてシーブックたちににはなかった。
それでも、「盗むのやめたよ」なんて簡単なことで諦めることも、「あれは偽の予告だから」と言い訳することもできない。
なぜ盗まないのか、盗むのを辞めるにも相応の理由がいるのだ。

キンケドゥ(大怪盗っていうのも楽じゃないな)

ハサウェイ「本当に盗むなら、僕達が容赦しない!」

傷だらけの装甲のハサウェイもキンケドゥに向かって叫ぶ。


キンケドゥ「いや・・・これは俺達にも盗めないな」


ウッソ・ハサウェイ「え!?」

もう一度ガラスケースの中の青いバラに視線を落としたあと、キンケドゥは実弟の乗るシグーに向かってその花を投げた。

キンケドゥ「地球を独り占めするなんて、人間の傲慢だからさ」

ウッソがシグーの手のひらでそれを受け取ったのを見ると、X1とX2は目にも留まらぬ速さで現場を去っていった。
ぽかんと「青い地球」を手のひらに抱いた少年たちを残して。

873 名前:ブルーローズ騒動エピローグ :2011/11/21(月) 21:24:24.25 ID:???
キンケドゥとザビーネが去ったあとすぐにフラッグに乗ったグラハム警視正率いる警官隊が現れた。
勝手にMSを借りて戦闘まがいのことをやったのだ。
こってり絞られるのかとおもいきや、青いバラをキンケドゥたちから守ったことを感謝されるだけで誰も怒りはしなかった。
ユニウスセブンのお偉いさんやザフトの大人たちは、FAITH勲章を、だ、赤服をこの勇気ある少年たちにと進めたが、
三人はそんなためにキンケドゥと戦い青いバラを守ったわけではない、と固辞したのだった。

結局、警察とザフトからの感謝状だけは断れなくて、三人は顔をあわせて苦笑いしながら帰宅の途にようやく着くことができた。


キラ「なんだ、赤服もらってくればよかったじゃない。シンとおそろいだよ」
ウッソ「そんなのいらないですって」

そして、またウッソにも、ハサウェイにも、トビアにも三者三様の日常が始まった。
同室の兄は「もったいない、着ないならシャクテイにあげちゃえばいいのに」なんて赤服を辞退したことを嘆いていた。
ブラックロー運送にたのんだお土産はウッソが家につく前に配達されていて、
姉のセレーネが勝手に中身を物色していた。

セレーネ「あら、新作の青いバラはないの?」
ウッソ「それはまだ、一般で栽培しちゃいけないんだ」
セレーネ「残念ね」

代わりにと買ってきたアプローズは庭の片隅に植え変えた。
受粉機能が泣いこの品種はウッソが育てる時間ずっとあの青紫の花をかわらずに咲かすのだろう。

ウッソ「やっぱり僕にはV2が一番だよ」

実家の格納庫においてあるV2のコクピットに登る。
起動させなくても毎日のメンテナンスは欠かせない、それがウッソの日課だった。
その、コクピットの片隅、小さなガラス瓶に詰められた真っ青な花。
青い花弁を海に、緑のがくを大地に見立てた奇跡の青いバラ――the Earthがひっそりと飾られていた。



おしまい

874 名前:ブルーローズ騒動あとがき :2011/11/21(月) 21:29:58.21 ID:???
昨日の夜から長々とありがとうございました!
途中支援してくださった皆様感謝デス!

それにしても・・・
トビアの年齢・・・
ははは・・・

元は、ただ、ウッソとハサがキャッキャしてるただのシャクティ得な話になるはずだったんですけど
それは、
やめました。

そしたら結局キンケドゥがかっこいいとこ持ってっちゃってorz

MS戦闘難しかったです。
ウィキとにらめっこして装備を頭に入れつつ書いて見ました。
ホントこのスレの職人さんすげーなー!
って書いてて、思いました。

それではまたROMに戻りますねノシ

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最終更新:2015年04月30日 19:21