アンドロイドは電気羊の夢を見るか? ◆auiI.USnCE









――――ヒトと、心を持つ機械の違いは、なんなのだろう?









     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







目前に、横たわっている二つの死体。
小さな子供と母親だった人間。


誰が、殺した?


私だ、私が殺した、殺しました。


メイドロボである私――イルファが。
ヒトを護るべき存在である機械が。
ヒトを害してしまった。
先ほど流れた放送で死んだ事を確認しながら。
私は再び殺した事を実感していた。
大切なヒト達を呼ばれてないことに安堵しながら。

大切なヒトを護る為に。
それ以外のヒトを殺す。

正しいはずなのに、何かが狂っている。
この島では、当たり前のルールなのに。
けれど、メイドロボとしては、失格だった。

なのに、心が訴えるのだ。
大切なヒトを護れと。
大好きなヒトを、護れと。

だから、私はそれに従った。
私も護りたかったから。
大切な家族を。


でも、それは、メイドロボとしては失格に等しい事だ。
私と同じく大切なヒトがいて、それでも殺す事に迷ったあの子は、メイドロボとして正しい事なのだろう。
それが本来のメイドロボなのだから。

けれど。


けれども、私達は心を持たされて、生まれてきた。


ヒトが持つ心を。
それはとても幸せな事で。
それはとても苦しい事だった。

心を持ったからこそ、こんなにも大切なヒトの事を思っていられる。
心を持ったからこそ、こんなにも、葛藤して、苦しまなくていい事まで苦しんでしまう。


私は……
私には……よく解からない。



ヒトは……ヒトは、



――――心があるから、ヒトであると言えるのではないでしょうか?



ならば、ヒトと、心を持つ機械である私との違いはなんなのでしょうか?



解からない、解かりません。
私が殺した母親であったヒトはきっと大切なヒトを想っていた。
心の底から、きっと。

なら、私もそれは変らない。
プログラムから規定された感情ではないと私は断言したい。

なら、違いなんてないはずなのに。
血の繋がりなんて関係ない。
思いで繋がりあっている。


なら……なら……っ!



「どうして、私は、メイドロボなのですかっ!!!」


咆哮。
ただれた半分の顔の機械を触りながら。
流れるはずの無い涙を感じながら。


メイドロボであるからこその苦しみを。




ただ、ただ、吐き出していた。





【時間:1日目18:20ごろ】
【場所:C-4】

イルファ
【持ち物:、M240機関銃 弾丸×295 NRS ナイフ型消音拳銃、予備弾×10、不明支給品(早苗)、不明支給品(アルルゥ)、水・食料一日分】
【状況:右眼損傷】

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最終更新:2011年07月22日 18:25