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「涼宮ハルヒの仮入部~水泳部編~」(2020/03/12 (木) 14:48:54) の最新版変更点
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<div class="main">あたしは後藤君が好き。<br />
言葉では表現できないほど大好き。<br />
後藤君の顔が見れるだけでうれしい。<br />
そのために、学校に行ってるといっても過言ではない。<br />
なのに、今日は後藤君とあえない。<br />
<br />
というのも今日は学校休みだからだ。<br />
そんなあたしは今、市内の室内プールにいる。<br />
どうやら、水泳部は4月の平日は筋トレばかりなんだけれども、休日はたまに、市内の室内プールを貸しきって、2時間ほど練習を行うみたい。<br />
それは、部員募集のポスターにも書いてあったこと。<br />
多分、今日から入るという人もいるんじゃないかな?<br />
で、その中の一人が、あたしと同じクラスの女の子。<br />
<br />
涼宮ハルヒ<br />
<br />
聞くところによると、いろんなところに仮入部していってるとか。<br />
きっとここもその一つなんだろうな。<br />
まあ、平日に来るよりは、今日みたいな日に来るほうがよっぽどかいいよね。<br />
平日に仮入部したら、筋トレだけで終わりだし。<br />
<br />
「はい、じゃあ今から新入部生の実力を見せてもらうから、二列に並んで」<br />
部長さんがストップウォッチを持ちながら言う。<br />
どうやら、順番に二人同時で泳がせるらしい。<br />
泳げないということはないだろうけど、久々だから、ちょっと不安かな。<br />
そんなことを思いながら、あたしはストレッチし、列に並んだ。<br />
<br />
ピッ<br />
<br />
笛の音が鳴って、最初の二人が泳ぐ。<br />
どうやら、半往復の25メートルだけみたい。<br />
どうせなら、50メートルぐらいいっぺんに泳ぎたいんだけどなー。<br />
まあ、時間もないししかたないか。<br />
<br />
で、2組目が泳ぎだしたときに分かったんだけど、どうやらあたしと涼宮さんは一緒に泳ぐことになるらしい。<br />
真横を見てみると、そこに涼宮さんがいるから。<br />
それにしても、あんなに長い髪を器用に水泳帽にまとめられたなー。<br />
と思いながら、涼宮さんを見ていると、<br />
<br />
「あんたなんでいっつもあたしのほう、見てくるの?」<br />
と、涼宮さんが聞いてきた。<br />
えっ?あたしが涼宮さんを意識して見たのは、入学式の自己紹介のときと今ぐらいなんだけど・・・<br />
と思いながら、思い出した。<br />
涼宮さんが今座ってる席を。<br />
あたしの席の右の右の席が涼宮さんで、その右隣が後藤君なんだ。<br />
あたしが後藤君を意識的にしろ無意識的にしろ見てることを、涼宮さんは自分のこと見てるを勘違いしたみたい。<br />
「何?もしかして、あんたもあのアイドル研究部員の仲間?」<br />
なんのこと言ってるか分からないけど、事情は説明しておいたほうがよさそう・・・<br />
「実はあたし・・・」<br />
<br />
「コラ、そこの二人、何ボーっとしてんの。あんたらの番だよ」<br />
あたしが、事情を説明しようとすると、どうやらあたし達が泳ぐ番になったみたい。<br />
あたしと涼宮さんはいったんプールの中に入り、笛の音とともに、泳ぎだした。<br />
手をせいいっぱいにかき、足をバタ足させる。<br />
何秒かたって、涼宮さんの足が見えた。<br />
速い!<br />
運動神経いいのは知ってたけど、ここまでとは!<br />
そして、なんとか必死の思いで泳いで、壁に手をつけた。<br />
<br />
「涼宮さん16秒7、葉山さん20秒6。なかなかのタイムだね」<br />
なかなかどころか速すぎだよ、涼宮さん。<br />
<br />
「ハァハァハァ」<br />
あー、ダメしんどい。<br />
あたしはそのまま床に座り込んだ。<br />
先に泳いだ人も、その辺りで休んでるみたいだしね。<br />
<br />
「で、実は何よ?」<br />
涼宮さんが聞いてくる。<br />
涼宮さんも疲れてるようだけど、あたしほどではなさそう。<br />
とりあえず、呼吸が落ち着いてからあたしは話し始めた。<br />
<br />
「実はね、あたし、あなたの隣の席の後藤君が好きで・・・ついつい後藤君のほう見ちゃうんだよね。だから、あたしが見てたのはあなたじゃなくて後藤君のほう」<br />
そう言ってから、一度、涼宮さんの顔を見てみた。<br />
先ほどとかなり表情が変わっている。<br />
聞いたことが期待はずれだった上に、むかつくことを言われたような・・・そんな感じ。<br />
<br />
「だから、今日みたいな後藤君とあえない日はちょっと残念で・・・」<br />
「うるさい!」<br />
なぜか、反抗的になる。<br />
その性格、直したほうがいいよ。<br />
<br />
「恋愛感情なんて、精神病よ」<br />
そうかもしれない、だって加藤君のことを考えると、胸が苦しくなるから。<br />
でも、<br />
「それは、悪いことじゃないよ」<br />
そう言ってみる。<br />
すると、涼宮さんは一度、けなしたように笑い、トタトタとどこかへ行こうとした。<br />
<br />
あたしは、少しだけ涼宮さんの後をつけ、<br />
「どこ行くの?」<br />
聞いてみた。<br />
「帰るのよ」<br />
「でも、まだ部活終わってないよ」<br />
「いいのよ別に、どうせ普通の部活だし、やめるわ」<br />
怒ってるような声で言いながら、涼宮さんは更衣室に向かっていった。<br />
なんだか、嫌な感じ。なんか分かんないけど、悔しい。<br />
<br />
「あなたには分からないの?」<br />
無意識的に、あたしは涼宮さんの背中にそう叫んでいた。<br />
「あなたには人を好きになるという気もちが分からないの?」<br />
一瞬後悔。でも、今はしていない。<br />
涼宮さんは一度立ち止まり、そして、ゆっくりとこちらを振り向き、言った。<br />
「分かるわよ」・・・と。<br />
普段より、小さい声で。<br />
<br />
「あたしだってね、好きな人ができたことぐらいあるわよ!」<br />
今度は叫ぶように言っている。<br />
「でも、あんたと違って、あたしはそいつの本名を知らない。あいつが今どこで何をしているか知らない。それに、いるはずの場所に・・・あいつはいなかった」<br />
怒っているような、悲しんでいるような口調。<br />
正直、ビックリした。<br />
意外だった。そんな過去があったなんて・・・。<br />
「あんたみたいに、好きな人の顔を毎日見れるようなことを、あたしはできなかった」<br />
あたしは、何も言えなかった。<br />
まだ、「分かるわけないじゃない!」と言われたほうがマシだった。<br />
というより、そういう言葉を予想していた。<br />
しばしの沈黙・・・<br />
<br />
それから、涼宮さんは今言った言葉を後悔したような顔をし、<br />
「誰にも言うんじゃないわよ」<br />
とだけ言い残して、更衣室にむかった。<br />
<br />
その途中、涼宮さんは水泳帽を取った。<br />
いくつも、髪をくくっているよう。<br />
1、2、3・・・6つだ。<br />
涼宮さんが毎日髪型を変えてるのは知っている。<br />
多分、あたしの予想があっていれば、毎日一つずつ結ぶ箇所が増えているんじゃないかな?<br />
どうして、そんなことをしているかあたしは知らない。<br />
何かのメッセージなのかも知れない。<br />
それとも、とくに意味はないのかもしれない。<br />
<br />
ふとあたしは、もし後藤君が急に転校したら・・・そんなことを考えた。<br />
きっと、考えられないくらい悲しくなる。辛くなる。<br />
もしかしたら、涼宮さんはずっとその気もちを抱えているのかもしれない。<br />
涼宮さんが好きな人がどんな人かあたしは知らない。<br />
さっきの言葉からして、クラスメートではなかったのは分かる。<br />
喫茶店で働いていたボーイさんを好きになって、いつの間にかやめていた。とかそんな感じだろう。<br />
気づくとあたしは、涼宮さんがいなくなってもずっと立ちっぱなしでいた。<br />
目線も先ほど涼宮さんがいたところから離れていない。<br />
なんだか、悪いことを言ってしまったような気がする。<br />
でも、後悔はしていない。<br />
あたしが、後藤君の近くにいることが幸せな気がしてきたから。<br />
<br />
「あたしは後藤君のことが好き」<br />
この気持ち、できるだけ早く伝えようと思う。</div>
<div class="main">あたしは後藤君が好き。<br />
言葉では表現できないほど大好き。<br />
後藤君の顔が見れるだけでうれしい。<br />
そのために、学校に行ってるといっても過言ではない。<br />
なのに、今日は後藤君とあえない。<br />
<br />
というのも今日は学校休みだからだ。<br />
そんなあたしは今、市内の室内プールにいる。<br />
どうやら、水泳部は4月の平日は筋トレばかりなんだけれども、休日はたまに、市内の室内プールを貸しきって、2時間ほど練習を行うみたい。<br />
それは、部員募集のポスターにも書いてあったこと。<br />
多分、今日から入るという人もいるんじゃないかな?<br />
で、その中の一人が、あたしと同じクラスの女の子。<br />
<br />
涼宮ハルヒ<br />
<br />
聞くところによると、いろんなところに仮入部していってるとか。<br />
きっとここもその一つなんだろうな。<br />
まあ、平日に来るよりは、今日みたいな日に来るほうがよっぽどかいいよね。<br />
平日に仮入部したら、筋トレだけで終わりだし。<br />
<br />
「はい、じゃあ今から新入部生の実力を見せてもらうから、二列に並んで」<br />
部長さんがストップウォッチを持ちながら言う。<br />
どうやら、順番に二人同時で泳がせるらしい。<br />
泳げないということはないだろうけど、久々だから、ちょっと不安かな。<br />
そんなことを思いながら、あたしはストレッチし、列に並んだ。<br />
<br />
ピッ<br />
<br />
笛の音が鳴って、最初の二人が泳ぐ。<br />
どうやら、半往復の25メートルだけみたい。<br />
どうせなら、50メートルぐらいいっぺんに泳ぎたいんだけどなー。<br />
まあ、時間もないししかたないか。<br />
<br />
で、2組目が泳ぎだしたときに分かったんだけど、どうやらあたしと涼宮さんは一緒に泳ぐことになるらしい。<br />
真横を見てみると、そこに涼宮さんがいるから。<br />
それにしても、あんなに長い髪を器用に水泳帽にまとめられたなー。<br />
と思いながら、涼宮さんを見ていると、<br />
<br />
「あんたなんでいっつもあたしのほう、見てくるの?」<br />
と、涼宮さんが聞いてきた。<br />
えっ?あたしが涼宮さんを意識して見たのは、入学式の自己紹介のときと今ぐらいなんだけど・・・<br />
と思いながら、思い出した。<br />
涼宮さんが今座ってる席を。<br />
あたしの席の右の右の席が涼宮さんで、その右隣が後藤君なんだ。<br />
あたしが後藤君を意識的にしろ無意識的にしろ見てることを、涼宮さんは自分のこと見てるを勘違いしたみたい。<br />
「何?もしかして、あんたもあのアイドル研究部員の仲間?」<br />
なんのこと言ってるか分からないけど、事情は説明しておいたほうがよさそう・・・<br />
「実はあたし・・・」<br />
<br />
「コラ、そこの二人、何ボーっとしてんの。あんたらの番だよ」<br />
あたしが、事情を説明しようとすると、どうやらあたし達が泳ぐ番になったみたい。<br />
あたしと涼宮さんはいったんプールの中に入り、笛の音とともに、泳ぎだした。<br />
手をせいいっぱいにかき、足をバタ足させる。<br />
何秒かたって、涼宮さんの足が見えた。<br />
速い!<br />
運動神経いいのは知ってたけど、ここまでとは!<br />
そして、なんとか必死の思いで泳いで、壁に手をつけた。<br />
<br />
「涼宮さん16秒7、葉山さん20秒6。なかなかのタイムだね」<br />
なかなかどころか速すぎだよ、涼宮さん。<br />
<br />
「ハァハァハァ」<br />
あー、ダメしんどい。<br />
あたしはそのまま床に座り込んだ。<br />
先に泳いだ人も、その辺りで休んでるみたいだしね。<br />
<br />
「で、実は何よ?」<br />
涼宮さんが聞いてくる。<br />
涼宮さんも疲れてるようだけど、あたしほどではなさそう。<br />
とりあえず、呼吸が落ち着いてからあたしは話し始めた。<br />
<br />
「実はね、あたし、あなたの隣の席の後藤君が好きで・・・ついつい後藤君のほう見ちゃうんだよね。だから、あたしが見てたのはあなたじゃなくて後藤君のほう」<br />
そう言ってから、一度、涼宮さんの顔を見てみた。<br />
先ほどとかなり表情が変わっている。<br />
聞いたことが期待はずれだった上に、むかつくことを言われたような・・・そんな感じ。<br />
<br />
「だから、今日みたいな後藤君とあえない日はちょっと残念で・・・」<br />
「うるさい!」<br />
なぜか、反抗的になる。<br />
その性格、直したほうがいいよ。<br />
<br />
「恋愛感情なんて、精神病よ」<br />
そうかもしれない、だって加藤君のことを考えると、胸が苦しくなるから。<br />
でも、<br />
「それは、悪いことじゃないよ」<br />
そう言ってみる。<br />
すると、涼宮さんは一度、けなしたように笑い、トタトタとどこかへ行こうとした。<br />
<br />
あたしは、少しだけ涼宮さんの後をつけ、<br />
「どこ行くの?」<br />
聞いてみた。<br />
「帰るのよ」<br />
「でも、まだ部活終わってないよ」<br />
「いいのよ別に、どうせ普通の部活だし、やめるわ」<br />
怒ってるような声で言いながら、涼宮さんは更衣室に向かっていった。<br />
なんだか、嫌な感じ。なんか分かんないけど、悔しい。<br />
<br />
「あなたには分からないの?」<br />
無意識的に、あたしは涼宮さんの背中にそう叫んでいた。<br />
「あなたには人を好きになるという気もちが分からないの?」<br />
一瞬後悔。でも、今はしていない。<br />
涼宮さんは一度立ち止まり、そして、ゆっくりとこちらを振り向き、言った。<br />
「分かるわよ」・・・と。<br />
普段より、小さい声で。<br />
<br />
「あたしだってね、好きな人ができたことぐらいあるわよ!」<br />
今度は叫ぶように言っている。<br />
「でも、あんたと違って、あたしはそいつの本名を知らない。あいつが今どこで何をしているか知らない。それに、いるはずの場所に・・・あいつはいなかった」<br />
怒っているような、悲しんでいるような口調。<br />
正直、ビックリした。<br />
意外だった。そんな過去があったなんて・・・。<br />
「あんたみたいに、好きな人の顔を毎日見れるようなことを、あたしはできなかった」<br />
あたしは、何も言えなかった。<br />
まだ、「分かるわけないじゃない!」と言われたほうがマシだった。<br />
というより、そういう言葉を予想していた。<br />
しばしの沈黙・・・<br />
<br />
それから、涼宮さんは今言った言葉を後悔したような顔をし、<br />
「誰にも言うんじゃないわよ」<br />
とだけ言い残して、更衣室にむかった。<br />
<br />
その途中、涼宮さんは水泳帽を取った。<br />
いくつも、髪をくくっているよう。<br />
1、2、3・・・6つだ。<br />
涼宮さんが毎日髪型を変えてるのは知っている。<br />
多分、あたしの予想があっていれば、毎日一つずつ結ぶ箇所が増えているんじゃないかな?<br />
どうして、そんなことをしているかあたしは知らない。<br />
何かのメッセージなのかも知れない。<br />
それとも、とくに意味はないのかもしれない。<br />
<br />
ふとあたしは、もし後藤君が急に転校したら・・・そんなことを考えた。<br />
きっと、考えられないくらい悲しくなる。辛くなる。<br />
もしかしたら、涼宮さんはずっとその気もちを抱えているのかもしれない。<br />
涼宮さんが好きな人がどんな人かあたしは知らない。<br />
さっきの言葉からして、クラスメートではなかったのは分かる。<br />
喫茶店で働いていたボーイさんを好きになって、いつの間にかやめていた。とかそんな感じだろう。<br />
気づくとあたしは、涼宮さんがいなくなってもずっと立ちっぱなしでいた。<br />
目線も先ほど涼宮さんがいたところから離れていない。<br />
なんだか、悪いことを言ってしまったような気がする。<br />
でも、後悔はしていない。<br />
あたしが、後藤君の近くにいることが幸せな気がしてきたから。<br />
<br />
「あたしは後藤君のことが好き」<br />
この気持ち、できるだけ早く伝えようと思う。<br /></div>