タイムリミット 第一章
第一章 それまで16月5日放課後無事二年生に進級出来た俺は、予想通りというか何というか、とにかくハルヒの前の座席で学校生活を送っていた。いつの間にか中間テストも終わり、そろそろハルヒがまた何か言い出しそうな気がしていたその日の放課後、今や習慣のように足を運んでいる、SOS団アジトで朝比奈さんのお茶を堪能していると、そいつは、ドアを開けるやいなや、「みんな聞いて、重大発表よ!!」と、叫びやがった。そして、俺が「先ずドアを閉めろ」と突っ込む前に、ハルヒは、「来週の月曜日に隣町にでっかいショッピングセンターが開くっていうのは、しってるわよね?そこになんとオープン前日の日曜日に行けることになったの!ね、古泉君?」「どういうことだ、古泉。」と、俺の、精一杯の恨みと呪いを込めた言葉をさらっと流して、古泉は「はい、僕の叔父の友達に、あのデパートの責任者が居るんですよ。その人が叔父に特別招待券をあげたそうなんですけど、あいにく叔父がいけないのだそうで、僕たちの所にまわってきたんです」と、言った。お前の叔父は何者なんだとか、だいたい責任者ってなんだとか、いろいろと突っ込みたかったが、やめておいた。まあ、そんなところに、超能力者や宇宙人の力が必要なことなどないだろうしな。それに今日は月曜日、日曜日までにはまだ時間がある。それまでは少なくとも平和に過ごせそうだと思っていた。このときは。そして、その後はなんと言うこともなくすぎていき、その日の団活は終わった。 26月5日夜家に帰ると、母親が、突然宣告してきた。「明日から3人で旅行にいくから。」「はぁ?3人?」「そうよ。あんた以外の3人。あんたは留守番できるわね?」「何でいきなり?」「懸賞に当たったの」まったく、何て親だ。いくらチケットが3人分だからって、俺も連れて行こうとは微塵も考えないとは、いくらハルヒでもそんなことはしないだろう。いや、ハルヒなら俺らも巻き込もうとするから絶対しないか。と、俺の家族はいったいどうなっているのだと絶望しこれからの行く末に不安を感じながら、寝た。思えば、このときに何かおかしいと気付くべきだったのかもしれない。気付いたとしても何も変わらなかったかもしれないが。 約二時間後、それは、始まった。いや、おそらくそれはもう始まっていて、俺たちがそれに気付いたのが、そのときだったと言うべきだろう。 36月5~6日深夜俺は、夜はねるものであって決して、電話をするために作られた時間だと思っていたが、最近は、そうともいえなくなってきたようだ。それは今日、つまり今、俺の安眠を妨害して電話がかかってきたということだ。そういえば、以前もこんなことがあったなと思いつつ、通話ボタンを押すと、聞きたくもないやつの声が飛び込んできた。「もしもし、古泉です。お察しでしょうが緊急事態です」「なんだ、またハルヒが何かやらかしたのか?」「いいえ。いいですか、落ち着いて聞いてください。涼宮さんが誘拐されました」「ハルヒが!?だ、誰にだ!?」「詳しいことは後で話します。すぐに駅前に来れますか?」「解った。すぐ向かう」ハルヒが誘拐された?何故?誰に?混乱する頭の中で、必死に準備をして、家族にばれないように、注意しながら、全速力で駅前へと向かった。そこには、見知った顔があつまっていた。朝比奈さんは泣き顔、古泉はいつもの微笑みだがそこには、紛れもない動揺があった。そして、長門はいつもの無表情だった。「お待ちしていました。きょう、長門さんの情報統合思念体とはべつの思念体のTFEIが、長門さんに、接触してきたそうなんです。詳しいことは、長門さんに訊いてください」「ああ、長門、教えてくれないか?」俺が長門の方を向くと、長門はポツポツと話してくれた。「わかった。今日の午前0時27分、わたしの家に情報統合思念体とは違う情報生命体の端末が私に荷物を渡しにきた。その中には、4台の電子機器とこの手紙が入っていた」 俺は、差し出された手紙を受け取り、急いで中を見た。そこには、長門そっくりのワープロで打たれたような字で、こう書かれていた。「涼宮ハルヒは確保した。中の機器の時間が『0:00:00』になったとき、涼宮ハルヒは死ぬ。止めたければ、4人以内で以下の座標の地点に来い。*****」「その電子機器というのは?」「これ」そう差し出された機械は、腕時計と言うより小型のテレビのような画面が付いた、タイマーだった。そしてその画面には「84:32:29」と表示されている。「……」沈黙する俺の横で古泉が、「とりあえず今は準備して明日その場所に行ってみましょう。学校へは機関から休む旨を伝えてもらいましょう」と言っていたが、俺は、長門に訊ねてみた。「それ以外は解らないのか?」「そう。向こうも情報統合思念体と同等の能力を持っている。こちらからでは、何も知ることが出来ない。力になれなくて申し訳ない」「いや、十分だ」そういって、俺たちは帰宅した。 46月6日朝そして翌日朝、俺は家族が出かけるのを見送ってから、家をでた。駅前に行くと、やはり、もうみんな集まっていた。「遅い、罰金」と言う人を除いて。指定された場所は、俺たちには解らなかったが、ここからかなり離れた場所だった。その県に着いたときにはもう正午をまわっていた。俺は、焦っても無駄だとは思いつつも、自分の歩く速度が異常に遅く感じ、いらだちをおぼえていた。「あそこですね」古泉が指さしたそこには、一つの不審な箱が置いてあった。 6月6日午後14時-タイムリミットまで後3日 続く
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