ハルシャミ保守 2日目(佐々木編)
二人と分かれてシャミ(ry)と一緒に帰宅となった。シャミ(ry)の運動不足解消のはずだったのだが、店からずっと俺の肩に鎮座している。いい加減疲れたし、腹も減って来た。いい加減自分で歩け。シ「……」どうやら降りるつもりはないらしい。全く、入れ替わっても図々しいのは変わらないな全k…「や!キョン」…うわっ!…佐々木!?ビックリした!お前なんでこんなところにいるんだ…?佐「今日は外で昼食を取りたい気分になってね。それでこうやって気儘な散策をしてたんだ。キョンは愛猫のお散歩かい?」肩の上の荷物がびくっと震える。まあそんなところだ。佐「丁度いい、君も一緒に昼食どうだい?勿論そちらの愛猫君も。 実は一人で昼食というのは些か寂しいのではと愚考していてね。 そんな時、丁度キョンがそこに通り掛かって来て声を掛けたんだ」今日はお前の相棒たちはいないのか?佐「彼女らだって、毎日僕と相伴するのは大変だろうし、たまには暇をもらいたいだろう。今日はいないよ」俺達は殆ど毎日ハルヒに付き合わせられているが、それに比べたら佐々木の方が分別がありそうだ。…わかった、腹も減ってきところだし、付き合おう。佐「恩に着るよ。君の愛猫君はどうするんだい?」お前はさっきの店みたいに門前払いが関の山だ。帰ったほうがいい。俺はシャミ(ry)を振り払おうとしたその時。プスいってぇー!爪を立てるな!!離れろ!!佐「くくくっ、離れたくないようだ。行きたがってるじゃないか? 無理に帰らせることはない。一緒に食事をとればいいさ」 俺は無理矢理剥し、シャミ(ry)を拘束した。暴れるな!佐「僕が抱こう。これでも猫の扱いは慣れてるんだ」佐々木はシャミ(ry)を抱き寄せた。途端シャミ(ry)は爪を引っ込め、急におとなしくなった。シ「にゃあ♪」佐「利発で趣きがある、いい猫君じゃないか。スマートというより、クレヴァーと言うべきかな。 おまけに愛嬌もある。君と違って」悪かったな。しかし今シャミ(ry)は猫を被っている。猫だけに…すまん、忘れてくれ。佐「さ、返すよ」俺の手に渡った途端、目付きが獲物を狙う豹のごとく変化した。無言の圧力である。佐「それじゃ行こうか」シ「………」何だかとんでもないことになりそうだ…
佐「キョン、ところで僕をどこに連れて行ってくれるんだい?」なんだそれは。自分が外食するため出かけたのに、決めてなかったのか?佐「ああ、本音を言うとただ外に出て散策してただけなんだ。そこで不運にも空腹と疲労で狼狽しているキョンを発見してしまい、哀れみを感じて昼食をご馳走しようと思ったんだ」そりゃどーも有難うございます。ただ俺は乞食じゃないぞ。佐「ああ、僕もそう思ってたよ」相変わらずよく分からない奴だ。佐「君に言われるのは心外だ。 君は試験の成績の割に博識な部分があったり、どこか冷めているなと思ったら変な所で固執したりする。 よく分からない奴の称号は君にこそ相応しい」へっ、そりゃどーも。佐「それより、僕をどこに連れて行くか決めてくれよ?」そうだな、最近のMYブームでMYフェバリットのココイチに行きたいのだが。佐「ああ、構わない。でも僕は行ったことないからエスコートしてくれるかい?」そんなに大したもんじゃないが、教えてやる。佐「楽しみだ。期待しているよ」…因みにシャミ(ry)は無言で俺にしがみついていた。ダウナーな不機嫌オーラを放ちつつ。見た目は猫でも、正しくハルヒである。…やれやれ…
…佐々木とココイチに行くことになったキョン。ついでにシャミ(ry)…さあ着いたぞ。どうやらペット同伴OKらしい。流石ココイチ。なお、この店だけの特別優遇だ。他の店は知らんから、くれぐれも事前確認してくれ。黄色の店舗を見上げながら佐々木が言った。佐「ここは何がお薦めだい?」お薦めも何も、メインはカレーしかない。具や量、辛さは選べるがな。佐「………ほう。それは興味深い。 自分の体調や嗜好、気分によって同じカレーでも全く異質な食材へと変化させることができるんだね?」いや、そんなに大層なものではない。先ずトッピングを選び、続いて量、辛さを選ぶんだ。…一瞬、佐々木は沈黙した気がようだったが、そこは敢えて突っ込まなかった。中に入ると、昼飯時のせいか混雑していた。しかし運良く四人用テーブル席が空いており、俺たちは向かい合わせで座った。俺は既に注文を決めていたがお前は決まったか?佐「そうだな。肉類や魚類は一般的過ぎるきらいがある。野菜やその他の食材が興味を惹かれる。 また栄養も注文を決める重要なファクターだ。 …そうだな、オクラ豆腐のカレーに納豆とチーズトッピングで行こうか」…恐ろしくマニアックな上、すべてネバネバだな。佐「そうかい?これらの食材から、ビタミンA,B,K、ムチン、イソフラボン、カルシウム等女性に必要な栄養を得られるのさ。 お薦めはビタミンKだな。新生児及び授乳中の母親に必要な栄養素だ」お前が子持ちだったとは驚いた。14才ならぬ16才の母だな。相手は須藤か?佐「面白い冗談だ。残念だが僕はまだ何一つ汚れてない、純潔な状態だ。 或いは処女とでも言うべきかな。キョン、安心したかい?」お前、人前でそんなこと平気な顔して言うな。そして何故俺が安心しないと行けないんだ?佐「心配そうな顔をしてたからね」言ってろ。…そしてシャミ(ry)さん、私めの服は爪研ぎじゃありませんので、恐縮ですがお止めいただければと思うのですが…シ「…ギ…………」
俺はパリパリチキンカレー600g3辛を注文した。食欲旺盛な年頃だ。これくらいは食べられる。シャミ(ry)…は、俺の余りものでも与えよう。やがてテーブルに注文品が届き、お互いに黙々と食べている。心なしか佐々木はあまり美味しくなさそうな顔をしている。どうした?美味くないのか?佐「あ?いや、なかなかの美味だ。」…あのトッピングは本当に美味しいのか?答えはg軌道の波動方程式を自力で解くより難しい気がする。佐「キョンはこの店が好きなのかい?」ああ、カレーは大好物だしな。しかもこの店は他の店舗と違って福神漬けも美味しいんだ。つい通いすぎて店長に顔を覚えられちまった。今日はいない様だけどな。…実は店長不在であることは分かっていた。今日はシフト表に組み込まれてなかったからな。第一店長がいる時に女連れでこの店に入ったら絶対誤解される。佐「そうか…」なにやら佐々木が悩んでいた。因みにシャミ(ry)は俺のカレーを食べようとして、奇妙な呻き声をあげた。熱さと辛さが猫舌にはきつかったらしい。可哀相になったので、カレーのかかってないパリパリチキンをあげる事にした。佐「ふう、もう十分だ。量を減らせば良かったかな」トッピングし過ぎだ。それに少食の女性には300gはキツいかも知れん。佐「キョン、良かったら食べないか?」俺は600gを平らげ満腹に近かったが、佐々木のカレーはあと100g程度か。食べられない事はない。どうせだから食べてしまおう。そう思った矢先、シャミ(ry)は佐々木のカレーを食べ始めた。佐々木のカレーは甘口、更にチーズと時間の経過が猫舌の障壁を突破した様だ。そんな姿に佐々木は喉を鳴らした。佐「愛猫君は僕のカレーを君に食わせたくないようだ。嫉妬しているのかな?」唯腹が減っているだけだろう。それにこいつは雄だ。佐「そうかい?雌猫のような印象を受けたから、つい間違えたようだ」…中身は確かに雌(今は)だ。鋭い…シ「ガツガツガツ……ジロッ」シャミ(ry)は食べながらこちらを睨んでいた。はっきり言って、金縛りにかかりそうな、怖気のする目線だった…
…食事を終え、店を出る二人と一匹…ふーっ、食った食った。ココイチ最高だな。しかも佐々木が奢ってくれた。曰く、付き合わせたのはこちらだから払うのは当然だ、とのこと。どこかの団長様に聞いて欲しいセリフだ。お前だ、シャミセンの中の人。しかし、本当にご馳走になって言いのか?佐「ああ、僕はそんなに窮乏していないしね」いや、流石に女の子に奢ってもらうのは男としてどうかと思ってな。佐「…このジェンダーフリーのご時世に何を言っているんだ。 今回は僕が払うのが当然なんだ。嫌とは言わせないよ?」佐々木は珍しくムキになっている気がした。…謝っておこう。すまん。佐「…言い過ぎた。こちらこそ済まない。調子に乗り過ぎていた。 いや、まさか君が僕を女性として見てくれているとは思わなかったよ」その姿形を見れば女性だろ。佐「…そうじゃない。やっぱり君は君だ。残念だけど安心したよ」なんだそりゃ?佐「また縁があったら会おう。それじゃ」佐々木はやや俯きながら横断歩道を渡っている。…おい!何をしている!佐「え…!?」俺は佐々木の所まで全力疾走した。シャミ(ry)がずり落ちた気がするが構っている場合ではない。既視感があった。これと同じ様な光景があった事を覚えている。だから反射的に行動できたのかもしれない。俺は横断歩道で突っ立っている佐々木を引っ張り、抱き寄せた。反動で尻餅を着く。痛てぇ。刹那、右折してきた対向車が佐々木のいた場所を通り過ぎた。信号が変わり始めだったから突っ込んできたのだろう。佐「な、何…?」馬鹿野郎!信号が赤だ!佐々木は一瞬びくっとなり、顔を伏せていたがやがて少し顔を上げ、「ごめんなさい…」と呟いた。やや涙目である。こんな顔で俺に許しを請う佐々木は初めてだ。しかも女の子の口調に変わっていた。やばい。かなりドキドキする。思わず顔を逸らした。あ、いや、お前が大丈夫ならそれでいいんだ。佐「ありがとう…」潤んだ瞳とやや紅潮した微笑で俺を見つめていた。まるで佐々木という仮面を剥いだ少女がそこにいた気がした。待て待て待て。こいつはこんなに可愛かったのか?思わず抱き締めたくなる。否落ち着け俺、ここは公道だ。通行人の目線が気になる。それに俺の知ってる奴がいたらd…谷「うぃ~す。NANANAナンパ全敗中~ うぉあ!」キ「………」佐「………」谷「スマン、ごゆっくり~!」佐「…ふっ、くくくっ、面白い人だ。君の知り合いかい?」少女はいつもの佐々木に戻っていた。少し安心したが、また谷口か…。はぁ、厄日だ…シ「……………」
佐「本当に済まなかった。この謝礼は近いうちにさせてもらうよ」いや、今日奢ってもらったし、それでチャラだ。佐「あれは違うと言っただろう?」なら別の機会に奢ることにする。佐「君は強情張りだな」お互い様だろう?な「あははっ、確かに」佐々木の屈託のない笑い方に少々驚いた。もう少し作った様な笑い方をする奴なのに。佐「ではそろそろ帰らないと、別の予定に間に合わなくなる」今度は気をつけろよ。佐「ああ。抱き付き魔に襲われるのは御免被りたいからな」どうゆう意味だそれは。佐「深い意味はないよ。じゃ」佐々木は俺と別の道を歩き、途中で振り向いて語りかけて来た。佐「―そうだ、言い忘れた。君と『親友』で本当に良かった。これからもよろしく頼むよ―」───私のことを───…走りさって行く佐々木の声は、最後まで聞き取れなかった。俺は少し呆然としていたが、ふと意識を取り戻し、帰る事にした。シャミ(ry)は俺に振り落とされた事を怒るでもなく、ただ俺の後を付いて来た。どうした。元気ないぞ。シ「………」しょうがないな、ほらシ「!」俺はシャミ(ry)を抱き抱えた。シャミ(ry)は一瞬驚いた様子だったが、抵抗はしなかった。その時、「こんにちは」突然声を掛けられた。―橘京子、周防九曜―※ハルシャミ保守 2日目(橘&周防編)につづく
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