SOS団プレゼンツ 第一回 涼宮ハルヒ争奪戦 ―試練その1 その2―
適性検査の後、「試練その1 知能テスト」を行うことになった。問題は中学生レベルの五教科総合百点満点の試験を行なうというものであった。試験の内容は盛り上がりも何もない、単なるテストなので割愛させていただく。分かっているかもしれないが、先ほどのハルヒの宣告により、俺もテストを受けさせられていた。しかも俺の点数を基準にし、俺の点数未満のものを失格にするという。『あんたわかってるんでしょうね?この前の期末テストみたいな点数取ったらタダじゃおかないからね!』と死の宣告を受けつつ。…夏休みに宿題以外の勉強をさせられるハメになるとは、やれやれだぜ。テストが終わると鶴屋家の助っ人数十人が採点をした。さすがにこれだけいるとあっという間だ。先ほどのハルヒの宣言により、試験を受けるハメになった俺はひぃひぃ言いながらも問題を解いていた。信じられないことは起きるものだな。俺自身が一番吃驚しているのだが、夏休みの宿題のおかげだろうか?俺の頭は冴えていたらしい。なんと93点というかなりの高得点を叩き出すことができた。俺の点数が基準ということで、92点以下の参加者は脱落と言うことになった。この試験で人数はおよそ半分にまで減った。だが、俺の生涯五本の指に入るであろう高得点をあっさり100人弱が上回っているとは。かなりレベルが高いぞ。こいつら。ああ、ちなみに谷口は36点だ。採点が終わった回答用紙を見て、俺は笑いを堪え切れなかった。後日いじめてやろう。不憫なのは、点数が低かろうがこいつは最後まで強制参加という点だ。ここで早々と帰りたかったろうに。はっきり言って余談だが、コンピ研の奴等は俺より点数が高く、古泉と国木田は満点であった。腹立たしい。「あんたにしてはまあまあね。でも、うっかりミスしてるわよ。不等式の不等号は両辺を乗除したとき入れ替わるの忘れてたでしょ。しっかりしなさい!」この点数を前にしてもハルヒは厳しかった。やれやれ。俺に住み着いた不機嫌の座敷童は相変わらず動く気配が無いな。続いて、「試練その2 体力勝負」となるらしい。ホールから先ほどの庭園へと舞台を移した。舞台は先ほどと代わり、50m四方の白線による区切りがされており参加者はその中に入らされた。俺はハルヒに呼び出され、何かのお面とロジンバッグを手渡された。…なんだこれは。「いいから、このお面を付けて、手に粉を付けなさい。早く!もうすぐ鶴屋さんが開始の合図を送るわ!」「みんなー!知能テストお疲れっさ!頭は働いたけど体が堅くなってないっかな!?そこで『試練その2 体力勝負』だよ!ルールは簡単!あそこの『鬼』に捕まらないよう、逃げるだけさ!鬼の手には白い粉が付いているから、それが触れた時点で失格だい!ちなみに、白線の外側に逃げた場合も失格だから気をつけてよ!制限時間は一時間!!よーい!始め!!!」同時にピストルの撃鉄が火薬を叩いた。…なるほどわかった、今から鬼ごっこをすればいいわけだな。鬼は俺で、一時間捕まらなければ次の試験に進める訳か。…ちょっと待て。一時間も走り回れと言うのか?参加者の体力試験だよな?俺の体力試験をしてどうするんだ?「こーらー、キョーン、しっかりやりなさーい!目標50人!!」無茶を言うな。確かに鬼ごっこの参加人数が100人なのは多いが、2500メートルスクエアの中では少な過ぎる。人口密度は0.04人/m2だぜ?俺がいくら文句をいおうが、ハルヒがやめてくれる訳はなく、俺は一時間、ダッシュを延々繰り返すハメになった。「キョーン、右!右!違う!そこは左!そこっ!前!!あー、もうじれったい!!」ハルヒは大きな日傘の下、特等席でレモンスカッシュを飲みながら俺に号令を出していた。いつの間に用意したのか、『ミスSOS団 麗しの団長 涼宮ハルヒ』などという襷をかけていた。ノースリーブのドレスでは、腕章は無理だからな。いや、突っ込むのはそこでは無い。襷の名前を変えて朝比奈さんにかけるべきだ。若しくは『天下無双の我儘女 涼宮ハルヒ』にしろ!「はい、終了ー!みんなお疲れっさ!」鶴屋さんの終了宣言後、俺は大リーグボールを打った後ダイヤモンド上でぶっ倒れた花形満の如く動けなかった。―燃えたぜ―燃え尽きたぜ―真っ白にな― …あれ?それは違うキャラだったか?「なぁーに倒れているのよ!バカキョン!!」俺は水をブッかけられ、息を取り戻した。「っぱはぁ!何しやがる!!!」「いつまでも寝てんじゃないわよ!あれくらいの鬼ごっこでへばってるんじゃないわよ!おまけにあんた30人くらいしか捕まえてないじゃない!このペナルティは次に回すから覚悟なさい!!」…少しは俺を労ってくれよ、ハルヒ…「…本当は、鶴屋さんとこの非番のボディーガードが鬼をやる予定だったんだけど、急用ができたから参加できないって言われてね。それでキョンが良いってあたしが提案したの。鶴屋さん家のボディーガードとか侍従も居たんだけど、キョンは試験官だもんね。それに、あんたに捕まるような柔な男には興味ないわ。足切りに最適よ。…いつまで寝てるのよ。早く起き上がって…これでも飲みなさい」俺はハルヒに促され、起き上がり、ぶっきらぼうに突き出されたものを受け取った。それは可愛らしい水筒袋に入った、ダイレクトタイプの水筒だった。「…いつまでもあんたがぶっ倒れたままだと、この後に影響するからね。あたしが作ってやったわ。有り難く飲みなさい」ハルヒから差し出された水筒の中身はスポーツドリンクであった。飲んでみると普通のそれとは違い、程よい酸味が疲れた体に活をいれてくれた。「市販のBCAA入りスポーツドリンクに、ライムとカボスの果汁、あと蜂蜜を少し加えたのよ。クエン酸と糖分は疲労回復にもってこいよ」「…ああ、スマン。だがこれはお前の水筒じゃなかったのか?」「…!ち、違うわ!鶴屋さんの家にあったのを拝借しただけよ!」「そうか。お前と間接キスしたかと思ってちょっとビビッたよ。」「…だ、だからあたしのじゃ……ビビッたって、どう言う意味よ?」「い、いや、特に深い意味は…」「なぁーに言ってんのよ!間接キスを気にするなんて、お子様も良いところだわ!気にするんならあげないわよ!返しなさい!」そう言ってハルヒは水筒を強奪し、あろう事か水筒の中身を全部飲み干してしまった。「…っぷはっ!どう?間接キスなんてなんてことはないのよ!」「…分かったよ。お前が気にしないのはな。でも、もう少し俺のために残してくれても良かったんじゃないか?」「あれだけ飲めば十分でしょ!」「ああ、確かに体がひき締まったよ。ありがとうな、ハルヒ。」「………ふん!」…ハルヒは顔を反らせ、飲み干した水筒を片手に自分の席へ戻っていった…※試練その3に続く
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