古畑任三郎 VS SOS団 解決編
俺達5人は、部室に集まっていた。だがいつも通りとは言えない。何故なら話を聞くに全員、古畑に絡まれていたからだ。
キョン「みんなあいつに絡まれていたのか……」古泉「ええ。彼は我々を疑っていると考えて良いでしょう。」みくる「だ、大丈夫なんですかねえ…・」ハルヒ「心配することは無いわ!アリバイトリックは完璧よ! あれがある限り私達は安全だわ。」長門「……!静かに。」
長門が突然俺達の会話にストップをかけた。
長門「……来る。」
耳をすませば足音がする。十中八九、あいつだろう。今度は何をしに来るんだ……?
コンコン
ノックの音……そして……
ガチャ
ドアが開く、そして現れたのはもちろん……
古畑「やあどうも、また来ちゃいました!」
古畑任三郎だった。こいつはどこまで俺達に付きまとうつもりなんだ。
古畑「えーですね、新しい事実が分かったんで是非ともみなさんにお知らせしようと!」ハルヒ「事実?そんなものには興味ないわ!帰って頂戴!」古畑「まあそうおっしゃらずに。実はですね、不思議なことが起きまして……」みくる「不思議なこと、ですか?」古畑「ええ。会長の死亡推定時刻は午後4時頃というのはご存知ですね?」ハルヒ「ええ聞いたからね!その時間は私達はイベントをしてたって言ったでしょ?」古畑「まあ聞いてください。実はですね、ある男子生徒……彼は谷口と名乗っていましたが…」キョン「谷口!?」古畑「ご存知なんですか?」キョン「ええ、クラスの友人です……」古畑「そうですか。その人がですね、面白いことを言うんですよ。 一昨日の7時前に、あそこで女子生徒に告白をしていたと! 一緒に居たご友人にも、そして相手の女子生徒にも確認をとったので、この情報は確かです。 ……おかしいでしょう?」
谷口……あいつあんなことを……っておい、これはマズいぞ。
古畑「えーそうです。死亡推定時刻は午後4時のはずなのに、その日の7時にそこで告白した人間がいた! もちろん、その場に死体などはなかったそうです。 ということは、ということはですよ?殺害現場はあそこじゃないということになります!」古泉「そうなりますね……」古畑「では何故犯人は死体を移動させたのか?それはアリバイを作るためです。 殺害現場を偽装することで、本当の殺害現場をカモフラージュする。 もしその本当の殺害現場が凄く近くだったらどうでしょう?そう例えば……体育館の小部屋とか。」
こいつ…!!
古畑「えー……あなた達はイベントをしながら、その最中に殺人を犯したんです。 朝比奈さん、古泉さん、長門さんが寸劇をしている間の4分間、 涼宮さんとキョンさんは舞台袖に下がっていましたね? その間なら、旧校舎に行くのは無理でも、体育館の小部屋に行くことは充分可能です。 ……犯人は、あなた達です。」
古畑がついに俺達を名指しした。落ち付け、まだだ。アリバイトリックは破られたが、まだ……
ハルヒ「証拠はあるの!?証拠も無いのに適当なこと言わないでよ!!」
そうだ。証拠だ。証拠が無い限り俺達は……
古畑「証拠ならあります。」
なんだと……!?
古畑はそう言うと、手のひらを開いた。そこにあったのは
制服の、ボタン!
古畑「えードジをしましたねーキョンさん。んふふふ……」キョン「なんで、それが……」古畑「えーどこにあったか知りたいですか?それはですね……死体の下に敷かれてました。 えー、それは気付かなかったでしょう!」
バカな、そんな……なんでこれが……
長門「待って。」
長門!?
長門「古畑任三郎。あなたの言うことは間違っている。」古畑「おや?私は間違ったことなど……」長門「あなたは死体の下にこれがあると言った。それはおかしい。 死体は首吊り死体だったはず。下に敷かれるはずがない。」古畑「えー……今、なんと?」長門「……首吊り死体の下に、ボタンが敷かれるはずはない。」古畑「聞きましたね今泉君!」
ドアの後ろから今泉が出てきた。テープレコーダーを持っている。……録音したのか?
今泉「ばっちりです!」古畑「えーあなた、今確かに言いましたね?『首吊り死体』と……」長門「……言った。」古畑「えー実はですね?会長の死体は首吊り状態ではありません。床に倒れていたんです。」長門「……そんなはずはない。」古畑「そうなんですよーほら!」
古畑は現場の写真を長門に見せた。
長門「……。」
そうだ。俺達は首吊りに見せかけて会長の死体を吊るした。だが「ドサッ」という音を聞き、俺とハルヒはヒモが切れて落ちた死体を確認した。その後校門で、古泉にそのことを伝えた。朝比奈さんは、今日現場に来て床に倒れたことを知った。
長門は……?
長門だけ、知らない!
古畑「そうなんです。確かに首吊り状態に吊るそうとした形跡はありました。 しかし実際は、ヒモが切れて落ちてしまっていたんです。 さて、さてさてさて……ここで問題になるのが、首吊り状態にあったのがいつだということです。 殺害現場は1番奥の部屋です。ということは当然、窓から中はまる見えだ。外からも確認できます。 もし首吊り状態ならば、いくら使ってない教室だからと言ってもすぐに発見されるでしょう! しかし掃除の時間まで発見されなかった。 つまり朝学生達が登校した時間には、既に会長の死体は床に転がっていたことになります。 そして門が閉まる直前まで谷口さんがいました。 ということはですね、首吊り状態にあると誤認できたのは、夜の学校に忍びこんで、 会長の死体を首吊り状態にした人間しかいないのです! えー……なにか反論はありますか?」
一気にまくしたてた古畑。なんとか反論を見つけようとするが、見つからない。ハルヒ、古泉、朝比奈さんも考えているようだが、同じようだ。そして長門も……
終わり、か。
長門「……ごめんなさい。」
長門が俺達に向かって謝った。
キョン「いや、お前は悪くない。死体の状況を伝えなかった俺達のミスだ。」ハルヒ「そうよ。私達が悪いわ。」みくる「そもそも私が調子悪くならなければ……あの時……」古泉「ご自分を責めることはありません、僕等みんなの責任です。」
俺は古畑の方を向いた。
キョン「こういうこった、俺達の負けだ。」古畑「認めて頂いて、ありがたいです。」古泉「あなたは始めから、長門さんに狙いを絞っていましたね?」古畑「ええ。彼女は確かに冷静沈着で頭脳明晰です。判断力もある。 しかし……『嘘をつくこと』に関しては、この5人の中で最も苦手だと思いました。」
確かにな。長門がウソをつくことはほとんどない。正直者なんだ、あいつは。
古畑「それに、昼休みに会話した時にピンと来たんです。勘違いをしているな、と。」長門「……どこで?あなたとの会話に不備な点があるとは思えなかった。」古畑「あなた言ったじゃないですか。『自殺のはず』って。 これを聞いて思ったんですよ。あなたの中では、会長は首を吊った状態なんだと。」長門「……うかつ。」
ん?待てよ?ここで俺はあることを思い出した
キョン「ちょっと待ってくれ。じゃあのボタンは……」古畑「ええ。ボタンのくだりに関しては完全な嘘っぱちです。 ちなみにこのボタンはですね、谷口君に借りたものでして……。」
なんてこった。俺達は完全に古畑の手の上だったってことか。
古畑「しかし残念でなりませーん。何故こんな方法をとったんですか?」ハルヒ「脅されてたのよ。秘密をバラされたくなければ解散しろってね。 解散するぐらいなら、犯罪者になった方がマシよ!」古畑「しかしですね、あなた方ほどの絆があれば、もっと別の方法でも、 きっとこの状況を乗り越えられたはずです。」長門「……わたしは、この行動に関して後悔はしていない。」古泉「僕もです。」みくる「わ、私達で考えた結果ですから!」キョン「そういうことだ。」古畑「ふふ……そうですか。やはりあなた方は、実に強い絆で結ばれてらっしゃる。」
古畑はそう言うと微笑んだ。
ハルヒ「いい!?みんな!!」
ハルヒが叫んだ
ハルヒ「SOS団はこんなことで解散しないわよ! とっとと罪償って、また不思議探索するんだから! 1番遅れた人は……罰金なんだからね!」
ハルヒは涙目になっている。朝比奈さんの目にも涙が浮かんでいた。そして……俺にも……
ハルヒは古畑に向き合った
ハルヒ「あんたの推理もなかなかだったわね!見込みあるわ! みんながまた戻ったら、SOS団に入れてあげてもいいわよ!」古畑「ん~ふふふ……考えておきます。……では、行きましょうか。」
古畑が手を差し出す。だが、ハルヒはその手を拒んだ。
ハルヒ「みんな行くわよ!着いてきなさい!」
そうだよな。やっぱいつでもこいつが先頭でなきゃいかん。そして俺達は、罪を償うために、歩き出した。またいつか、こいつらと不思議探索をするために。罰金は、ごめんだからな。
終わり
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