【名前】ジャンヌ=M=ロチルド
【性別】女
【所属】魔術 元イルミナティ幹部
【魔法名】他人の不幸は蜜の味(plenus316)
【能力】「鴉魔の骸(アンチマモン)」「飢蠅魔王(ベルゼビュート)」
【能力説明】
「鴉魔の骸(アンチマモン)」
 発動時には二つの頭を持つ巨大な鴉が顕現する。但し「強欲鴉魔」のそれとは違いその巨躯は白骨化し、みすぼらしいローブのように漆黒の羽を纏っている。
 十字教における「七つの大罪」の一つ、「強欲」を司る悪魔であるとされるマモンだが、そもそもマモンとは、「富・財」を意味する古代シリア語であった。『マタイによる福音書』に「汝ら神と富(マモン)とに兼ね仕ふること能はず」とあり、神との対比から教父がこれを悪魔の一つとするに至った、というのが最も有力な説である。
 中世ヨーロッパのローマ正教は、免罪符問題などに代表されるが、とかく教会の建築費等の金銭を必要としており、そこから御布施を出さない信者を守銭奴として非難していた。そして、偶然にも「悪魔」として広まった「富(マモン)」という言葉を逆利用し「悪魔(マモン)が怖いなら教会に御布施をして富(マモン)を手放しなさい」という、奇天烈な理論が誕生したのである。
 つまり、マモンとは皮肉ながら教父らによって「作られた悪魔」なのである。
 今日の魔術サイドにおいて、「悪魔(堕天使)」とは神の書いたプログラムの通り行動するだけのロボットである「天使」が、混線によって神の命令を聞かなくなった存在であるとされる。上記の由来から分かるように、「人によって作られたモノ」であるマモンはこの定義に著しく抵触していると解釈し、その神秘性の欠如・存在の不確定性を魔術的に抽出し、極限まで増幅・凝縮・収束させた術式こそが「鴉魔の骸」。
 その効果はマモンをモチーフにした系統の術式への妨害、中でも特定魔術「強欲鴉魔」を想定した綿密なチューニングが施されており、術式の出力を九割方封じ込める事が可能であり、無理に発動を続けた場合魔力の循環不全を引き起こし体内から甚大なダメージを与える。
 彼女は元々「強欲鴉魔」を振っていたが後に現在の双鴉道化(レイヴンフェイス)にその神髄を継承しており、「鴉魔の骸」は「強欲鴉魔」の術式を骨子にアレンジされたもので「強欲鴉魔の残滓」「欲望の末路」等と嘯く。
 至高にして究極の「対抗魔術(カウンターアーツ)」であり、最愛の弟子に贈る心からの餞別(いやがらせ)である。

「飢蠅魔王(ベルゼビュート)」
 十字教における「七つの大罪」の一つ、「暴食」を司る魔王ベルゼブブの名を冠する術式。発動時には炎を纏う巨大な蠅が顕現する。
「暴食」とそこから派生した「飢餓衝動」を純粋に追求した効果は「万物の捕食」。彼女を中心に半径50m以内のあらゆる物体・物質を対象に発動し、存在を跡形もなく消滅させる。捕食効果は対象座標を射程範囲内に捕捉してから3秒後に発動し、指定された空間は前兆現象として砂糖水のように不規則な歪みを生じる。厳密には捕食領域内の物体・物質・大気に至るまで全てを消し去り、消失した座標は何もない空間=真空となり、流れ込む気流を戦術に組み込む事も可能。通常設定可能な捕食領域は一辺が1mの立方体で固定されているが、照準精度を甘くする事で一辺3mまでの範囲拡張が可能。
 またベルゼブブは悪魔の名士達の軍勢である「蠅騎士団」を率いていたという伝承により、使い魔として使役している蠅の大群を「騎士団」に見立て強化する事が出来る。具体的な手順としては、火の象徴武器である杖(色彩は赤、発動時は上部がラフレシアの花弁のように展開する)を右手に構え、火属性の「天使の力」を呼び込み使い魔に分配供給する。「天使の力」(悪魔を形作るエネルギーは紛れもなく天使と同一)が供給された蠅は異形の魔術生命体(あくまでも擬似的な存在で意思を持たない)と化し、一匹一匹が魔弾に匹敵する威力を獲得する。術者の指揮の下に統率され、対象を囲む砂嵐のように全方位から殺到し、肉を貪り、筋を削ぎ、骨を蝕む。アフリカゾウを十秒足らずで分解する様はまさに悪魔の饗宴の如しである。使い魔としての術者との魔術的リンクもまた「天使の力」によって強化され、感知能力としても高性能。斥候として放ったり、本体の術式射程外からの不意打ちにも即座に対応し、その身を犠牲に盾となる。
 弱点としては、「神の子」によって地獄の底に幽閉されたという伝承がある事から「神の子」をモチーフにした術式には相性が悪い。
【概要】
 かつて魔術結社イルミナティに所属していた魔術師。先代のイルミナティリーダー『双鴉道化』と対になる副首領(ナンバー2)、『「双頭の鴉」の片割れ』。教会の公式記録では既に死亡した事になっている。
 学園都市の成立以前、世界を影から動かしていたとある一族の末裔である父と、娼婦である母の間に生まれた娘で、幼少時は父親の顔すら知らず母親の女手一つで育てられた。自身も客を取れる程度の年齢になり、家の為に働こうと考えていた矢先に、長年の無理が祟って母親が急死し、生きる意味を見失ってしまう。
 そんな時に突然現れ手を差し伸べた者こそが先代のイルミナティリーダー『双鴉道化』。彼(?)は少女の父親の事や彼女の中に秘められた魔術的資質を告げ、彼女を強欲の巣窟に誘った。結社に所属してからは見る見る頭角を現し、副首領の座にまで上り詰め『「双頭の鴉」の片割れ』の二つ名と術式「強欲鴉魔」を習得する。
 その後、当面の「生きる意味」であった父親への復讐を果たしたが、あまりにも呆気ないその結末に拍子抜けし、今度は虚脱感ではなく飢餓感を強く覚えている事に気づく。それ以来一つの欲望に拘らずありとあらゆる快楽を貪り尽し、それでも何故か満たされる事のない、言い様のない「飢え」と「渇き」に苛まれる日々を過ごしていた。
 そんなある日、泥ヒバリの中で一人打ちひしがれている少年に出会い、その邂逅にかつての自分と『双鴉道化』のそれを重ね、“気まぐれで手を差し伸べてしまった”。かつての自分を彷彿とさせる少年の成長に確かな手応えを感じ、それまで考えもしなかった「教え導く」という生き方に充実感を見出していく。「飢え」と「渇き」が徐々に薄らいでいく。
 だが足りない。
 完璧ではない。
 彼女を苛む「飢え」と「渇き」は一向に消えない。あと一つ、何かが足りないのだと思案した末に、彼女は一つの可能性に行き当たる。そして誰にも何も告げず、一人イルミナティを出奔し忽然と姿を晦ます。
 その直後、彼女が見出した少年の下剋上によって『双鴉道化』が討たれ、イルミナティは新体制に移行していくのだが、この事件と直前の彼女の失踪との間に因果関係があったかは不明。

 そして数年の月日が流れ、現行幹部の多くが入れ替わり、所属する魔術師の殆どが「消えた副首領」の事を忘れ去った頃、イルミナティの活動においておかしな事が起こり始める。
 結社の組織立った計画から所属メンバーの個人的な欲望に駆られた行動まで、それらの計画が不思議と当初の予想よりも遥かに、―――不自然な程に上手く事が運んでいくにも拘らず、あと一歩の所で失敗してしまうという不可解な事例が相次いで報告された。
 まるで難易度の高いドミノ倒しを組もうとして、「見えざる手」に導かれるように順調にゴールまでのドミノを並べ終えた筈なのに、いざ倒してみるとゴール直前の「最後のドミノ」が絶対に倒れないよう固定されているような。そんな「成功を目の前にして満たされない歯痒さ」を与えるような結末。
 それこそがかつて数多の強欲を貪り、「自分一人の中だけで完結する欲望」に厭いた魔術師が見出した「他人の強欲すら巻き込んだ独り善がりの欲望」。有り体に言ってしまえば「他人の不幸は蜜の味」を字面の通りに実行しているだけなのだが、そこに傾ける情熱は常軌を逸している。
「蜜」の純度を高めるために彼女は敢えて対象の強欲に影から手を貸し、その欲望が実を結ぼうとするまさにその瞬間を狙って、全てを台無しにしてしまう。欲望が壮大な分だけ、その成就に対して支払った努力の分だけ、それが失敗した時のフィードバックが大きく、その時の対象の絶望に打ちひしがれる顔を見る事に至上の愉悦を感じるのだという。
 彼女が現在最も純度の高い「蜜」を得られるだろうとして狙いを付けているのが、何を隠そう現イルミナティリーダー双鴉道化。誰よりも強欲で誰よりも強大で誰よりも掴み所のない、そんなかつての弟子を陥れるために、彼女はいつの日か大いなる壁として―――倒れざる「最後のドミノ」として立ち塞がるだろう。
 世界を巡る旅の途中で偶然尼乃昂焚に出会っており、お互い双鴉道化との関係は知らずに僅かな期間行動を共にした事がある。彼の印象は「どこがと言われると答えようもないけど、どことなく『あの人』に似ているわね」との事。
 普段(イルミナティの活動が活発でない時期)は「マドレーヌ」という偽名を使い、魔術的探査を掻い潜る偽装を施した上で、パリ大学で非常勤の講師として働いている。
【特徴】
 実年齢では八〇に迫る高齢だが、強欲飢餓時代に服用した貴重な霊薬の効能により20代後半の容姿を保っている。体格は小柄だが母性の象徴は豊満、というか大豊作。
 母親譲りのプラチナブロンドの髪が自慢で緩いウェーブをかけて腰下まで伸ばしている。反面、父親の面影を残す真紅の瞳を毛嫌いしており、母と同じ色のカラコンを嵌めて碧眼にしている。
 十字教のどの宗派のものでもないデザインの、エメラルドグリーンの修道服を身に付けているが、傍目には奇抜なパーティードレスのように見える。これ自体が霊装であり、低出力の魔術砲撃ならば意にも介さない。その他にも世界各地で欲望のままに収集した霊装を携帯可能なサイズの物に限り持ち歩いている。
 猛禽類の頭蓋骨を模したドミノマスクを付けているが、顔を覆うでもなく縁日のお面のように斜め上に引っ掛けている。
【台詞】
 人称は私、あなた、彼、彼女等。親しい人は性別関係なく「○○くん」、年下に呼び掛ける際は「坊や」「お嬢ちゃん」等も使う。
 双鴉道化に対しては「クロウ(烏)」という渾名で呼ぶ。大型のワタリガラスを意味する「レイヴン(鴉)」は可愛くないし、“まだ早いんじゃないかしら”と今でも師匠目線。
「初めまして、ジャンヌ=マティユー=ロチルドよ。最初に言っとくけど、私をファミリーネームで呼んだらその時は殺すから。気軽にジャンヌと呼んでくれて構わないわ」
「分かるかしら? 人は何かの目標に向かって努力を積み重ね、それが報われなかった時、積み重ねた想いの分だけ深い絶望を味わうの。私はそんな人が浮かべる絶望が、苦悶が、後悔が、憤怒が、悲哀が諦観が慟哭が……んっ、はあぁぁぁ。何よりも快感なの。思い出しただけでゾクゾクしちゃう。でもまだ足りない、もっと最高に甘い蜜があるのを私は知ってるわ。あの子が為す術もなく無様に泣き崩れる様を見る事が出来たなら、私はどうなっちゃうのかしら。うふ、うふうふ。うふふふふふふふ」
「あの人は言ってたわ。強欲(マモン)なんて所詮後付けの付属品に過ぎない、って。イルミナティの最初の、本来の目的は、光(ルシファー)の追求にこそある筈なんだ、って。可笑しいわよね、とても強欲の教団の長の発言とは思えない。でも、彼はひたむきだったわ。誰にも、この私にすら理解されず、それでもイルミナティの本来あるべき形を必死に模索していた。今にして思えば、あの子は彼を殺った時、何を思っていたのかしら。彼はあの子に殺られる時、何を思って逝ったのかしら」
「嬉しいわ、クロウ。未だにその手垢だらけの強欲鴉魔を後生大事に使い続けてくれているのね。うんうん、分かる、分かるわぁ。そりゃそうよねぇだってその術式は私とあなた、師匠と弟子、母と子、姉と―――っと。もう、せっかちなんだから。もう何年かぶりの感動の再会じゃない、最後まで言わせてよ」
「じゃあ、見せてあげる。今日この時の為に温めておいたとっておきよぉ。……さぁ全てはまやかしだと証明するために、出でよ鴉魔の骸(アンチマモン)!!」
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最終更新:2013年10月05日 18:17