「第拾参話」(2021/07/10 (土) 14:36:30) の最新版変更点
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351 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:19:28 ID:???
「シンジくん、それじゃいつものとおり始めるわよ。
インダクションモード、スタート」
モニタに映る影に狙いを定めて、スイッチを押す。
「・・・目標をセンターに入れてスイッチ・・・」
初号機のスクリーンに映っているのは第三、第四使徒を解析して
そのデータをもとにシミュレートされた仮想の敵だ。
ここ第二実験場で行われる初号機の実戦想定訓練プログラムは、
今回で27回目を迎えている。
『目標、沈黙・・・使徒殲滅です』
モニタに映る”作戦成功”の文字。
「シンちゃんやったじゃない!」
「え?」
「パーフェクトよ、 パ・ー・フ・ェ・ク・ト !」
モニタにはミサトの満面の笑みが映っている。
そしてもう一つ・・・
「よくやったな・・・シンジ」
NERV司令、碇ゲンドウその人の姿であった。
E P I S O D E : 5 「 N E R V 、 心 の む こ う に 」
352 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:34:18 ID:???
「これなら、あの農協ロボが負けてもうちで勝てるわね~」
「そうね、元々そのためのエヴァだもの、あの農耕機には負けないわ」
未だにNERV内部ではジェットアローンを農協と読んで揶揄する者が多い。
確かにエヴァとはずいぶん嗜好の異なる姿であり、物々しく厳つい装甲に覆われた姿は、
見る人にトラクターやクレーンといった重機のようなものを喚起させるのもまた事実ではある。
「それで、零号機の調子はどうなわけ?」
「そうね、昨晩やっと連動実験の最終調整が終わったわ。
ハードのほうの誤差、フェードバックの調整も完璧よ」
コーヒーをすすりながらリツコが答える。実は昨夜もまた徹夜だったのだ。
「若干、レギュレーターの数値が落ち着きませんが、レイのシンクロ率を
考えれば、今のところはとくに問題はありません」
となりでデータをまとめているマヤはまだ元気だ。若さの違いというものか。
「よっしゃぁ、これでエヴァ両機の整備は完璧なわけね!」
「まぁね。第3新東京市の兵装ビルも稼働率はほぼ100%、準備としては申し分ないわね」
「エヴァとここがフル稼働したらあの農協なんて用はないわっ!」
「それはどうかしら?あまり楽観視できるわけでもないわよ。未だに使徒への有効な戦略がないしね」
「まぁ~そのためにアタシがいるんだからさぁ~」
「・・・あなたのそういうところ、嫌じゃないわ」
軽口をたたきながら廊下を歩く二人。
353 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:46:51 ID:???
その足で二人はそのまま外へ向かう。今日も外は快晴である。
目的地は、先日から始まった第四使徒の解析及び解体の現場だ。
「それにしても、最近の司令、ずいぶんと変わったわよねぇ」
「碇司令?」
「そう!今までレイばぁーっか相手にしてたのに、今はシンジくんに付きっ切りじゃない!」
「そういえばそうね。さっきの訓練も見に来てたし」
「『よくやったな・・シンジ』って。ほめるなんて珍しいけど、
自分の息子なんだからもうチョット優しく接して言えばいいじゃない」
「きっと不器用なのよ、司令は」
「なぁんだかイメージ崩れるわ~」
事実、職員の間で噂になっているのが、碇司令のシンジへの関心の高さだ。
確かに自分の息子なのだから、当然と言えば当然だが、あの冷たい司令が
自分の息子を気にかけるなど、普段の冷徹な態度からすれば、NERV職員ですら想像できない者が大半のようだった。
そういうわけで、NERV内でも司令とシンジの話題は昼食時の会話のネタランキングで一位を独走中である。
「きっと司令もあせってるんじゃないかしら?委員会からのプレッシャーもあるんでしょうね」
「そうなの?アタシは聞いてないけど。ま、確かに指揮権の移譲もあったしね~。
あ、だからシンジくんをおだてて強くしようって考えてるのかしら?」
「さぁね、碇司令の考えてることなんてMAGIを使ったって想像つかないわ」
「子供はほめれば伸びる~なんて前世紀くさい考え方よねぇ。
いまどきの子供にそんな素直なのいないわよぉ。生意気なガキばっか」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「最近、センセ元気やなぁ?」
「そうだな、碇のやつなんかあったのかな?」
どうも、シンジはほめられて伸びるタイプらしい。
354 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:56:58 ID:???
僕は・・・父さんに言いたい事があってここに来たんだ・・・
本当は、父さんに一言言ったら帰るつもりだったんだ・・・
でも、いきなり変なのが襲ってきて、それで、なんか父さんにロボットに乗って戦えって言われて・・・
そしたら、NERVのじゃない、別のロボットが敵を倒しちゃって・・・
NERVは・・・別に嫌いじゃない・・・
ミサトさんは、ちょっとズボラだけど、優しくしてくれる。
リツコさんやマヤさんも、日向さんやロンゲさんも、みんな、優しくしてくれる・・・
それに・・・父さんも・・・
それは、僕がエヴァのパイロットだからかもしれない。ううん、多分そうだけど。
でも、それでもいいんだ。僕の居場所があるから。
学校だって楽しい。
クラスのみんなだって優しくしてくれる・・・
僕がエヴァのパイロットだってこと、あまり関係ないみたいだ・・・
みんなエヴァを知らないからかな?(ケンスケだけは妙に突っかかってくるけど)
でも、綾波は・・・なんだか苦手だ。最近僕のことを睨んでいるような気がする。
エヴァのせいで酷い怪我をしたみたいだけど、全然気にしてないみたいだし。
もっと綾波のことを知りたいのに・・・避けられてるのかな、僕。
使徒・・・僕らが倒すべき敵。
今は日本重なんとかってところのジェットアースっていうのが倒してくれてる。
だから、僕は戦わなくていい。
でも、もしあのジェットアースがまけたら、僕は戦わなくちゃならない。
それでも・・・皆が優しくしてくれるなら、いいかもしれない。
僕の居場所があるなら・・・それでいいのかもしれない。
――碇シンジ、14歳。後に、「人類の存亡」という、大きすぎる運命を担うことになる少年である。
355 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 01:20:53 ID:???
――キィィイイン、カンカンカン・・・・
第四使徒解体現場に響き渡る重機の音。
あたりを駆け回る影には、NERV技術部の赤い制服と白い制服、日重工の灰色の作業服、
戦自技術研究部の緑の制服に青い作業着など、鮮やかな色合いが重なっている。
「これが・・・使徒か・・・」
初めて肉眼で見る未知なる生命体、使徒。
これまでは特撮映画の怪獣のようにしか時田の目には映っていなかった使徒が、
今、目の前に、リアリティをもって存在している。
「それで、解析結果は?」
「今のところは全くだめですね。やっぱりうちのスパコンじゃ全然能力不足ですよ」
「やっぱりその辺はNERVのMAGIに頼るほかないか」
リツコたちより一足早く現場に到着した時田と加藤。
前回の使徒戦ではJAが使徒をほとんど原型をとどめたまま撃破したため、
NERV、日重工、それに戦自技研の三者共同で解析にあたることになった。
「なんだかうちの手柄をよそに取られてるみたいで、いやですね。戦自は別にいいですけど」
だが、現実問題、日重工の使徒解析能力はNERVのそれに比べれば足元にも及ばない。
演算能力が低いわけではない。日重工のメインフレームは超高速第六世代並列型有機コンピュータだ。
それでも、MAGIの能力は桁違いに高いうえに、元々工業技術者の集まりである日重工である。
彼らにとって、生体解析、といったものはもとより専門外なのだ。
そういうわけで、解析研究はNERVと提携、重機担当を戦自に依頼したのである。
「もうしばらくしたらNERVの赤木博士たちも到着するそうです」
「そうか。赤木博士にお会いするのはずいぶん久しぶりだな」
「なんだか時田さん嬉しそうですね」
356 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 01:37:43 ID:???
「い、いやぁ、そういうわけじゃないが。前は失礼なことをしてしまったからな」
「まぁこないだの合意以来、NERVは好意的ですし、今回も建設的な話題になるんじゃないですか?」
「俺もそれを願うよ。お互いの上げ足取りばっかりやっていれば、勝てる戦にも負けるかもしれないしな」
「やっぱり時田さん嬉しそうですよ」
「・・・いいからお前は黙れ。 俺は、午後にはまた第一研究所に戻ってJA-2の開発推進会議やら
何やらいろいろあるからな。午後のことは、加藤に任せる」
「あ、分かりました」
数十分後。
「お久しぶりです、赤木博士。先日はとんだご無礼を・・・」
「いえ、気にするほどのことではありません、時田主任。今日は敵生体”使徒”の解析作業ということで、
NERVの作戦部の人間を連れてきました。こちらは、NERV戦術作戦部作戦局第一課課長、
並びに使途迎撃作戦本部長の葛城です」
「はじめまして、作戦本部長の葛城ミサトです。このたびのジェットアローンによる敵殲滅、お見事でした」
「いえ、とんでもない。運が向いて勝ったような戦いばかりですよ」
「ご謙遜なさらずとも結構です。ですが、次使徒戦以降、戦略指揮は私の担当となります」
「・・・あなたが、作戦指揮官でしたか。NERVの手腕に期待していますよ。いえ、嫌味ではなく・・・」
「もちろん、そちらの期待は裏切りません」
やや気まずい雰囲気が流れる。どうも女性相手に話すのは苦手な時田だ。
「早速ですが、MAGIを使った解析入りたいと思うのですが」
「あぁ、すみません。解析室までご案内しますよ」
「いえ、そこまでして頂かなくとも結構です」
そのままリツコとミサトは言ってしまう。
「なんだか敵意丸出しって感じですね」
「あぁ、俺はもう少し建設的な話し合いが出来ると思っていたのだが・・・」
357 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 01:54:37 ID:???
男ばかりの現場を歩く美人女性二人。さすがに周りの目を引く。
「それにしてもミサト、ずいぶんと敵意をむき出しにしたわね?」
「そうかしら?あんたこそ、随分とクソご丁寧に言ってたじゃない」
「あら?私こそ普通に対応したつもりだけど」
「よく言うわ・・・」
彼女達に反して、他のNERVの技術部職員たちは、日重工や戦自技研の人間と仲良くやっているようだ。
もとから日重工は兵器企業として技術面で戦自技研とパイプが太いので、二組織間での仲はよい。
が、それ以上に、根っからの理系男達にとって、未知の物に対する好奇心は
NERVや日重工や戦自技研といった、ささいな組織の壁など微塵も関係ないのだ。
もとより同じ大学の出身者も多い面子でもある。作業中の雑談の話も自然と広がる。
「ったく、うちの技術部の男どもにはライバル心ってものがないのかしらねぇ」
「屈託のない心というのも大切よ、ミサト。仲良くなってから闇討ちぐらいがいいのよ」
女のひねくれ具合は三十路前に極大値をとる、というのも概ね事実のようだ。
「さてと、・・・これが日重工の解析したデータね」
「へ~、あの農協集団でもできるんだ、解析なんて」
「その言い方辞めなさいよ、ミサト。あら、でも、確かに農耕集団としては随分と解析が進んでるわね」
「・・・」
端末画面に、使徒の固有波形パターンやコアの構造などが所狭しと並ぶ。
「でも、やっぱりMAGIがないとこの辺が限界なのねぇ」
「そうね、それでもよく頑張ったほうかしら。
・・・それにしても、ホント理想的なサンプルね。コア以外は原型をほぼ留めているわ」
「ふーん。んで?何かわかったわけ?」
「まぁ待ちなさいよ、今ハイパーチャネルをMAGIに接続したところだから」
358 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:13:02 ID:???
”データ転送中”の文字がしばらく表示され、その後に、”解析中”の表示。
そして、
ピー
「なにこれ?601?」
「解析不能を示すコードナンバーよ」
「つまりわけわかんないってこと?」
「ま、そういうことね。さて、これを彼らにも見せてあげなくちゃね」
「え~?いいんじゃない?あの農協じゃ一生解析なんて無理よ?」
「そういうわけにもいかないのよ、ミサト。それに、こんなところでアドバンテージ稼いで勝っても面白くないわ」
「・・・そりゃそうね。もっと徹底的にやりたいわ」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
端末に向かうリツコを囲む時田と加藤。ミサトはやや後ろに下がってその様子を見つめている。
「つまり使徒の構成物質は、今の段階では全くの未知のものといっても過言ではありません」
「MAGIをもってしてもそうですか。・・・それで、例の光球についてですが」
「コア――NERVではあの光球をコアと呼んでいますが――をMAGIに解析させたところ、
84.6%の確率で使徒の動力源と予測しています」
「すると、そのコアがやはり使徒の弱点と?」
「間違いないと思われます。おそらくS2機関を内蔵しているか、それに相当する役割を果たしている
と思われますが、コア自体の原理はやはり不明です」
先ほどと同様、リツコは何の情も込めずにただ淡々と説明していく。
「S2機関?主任、なんなんです、それは?」
「あぁ、かつての日本のある教授が提唱した新領域物理エネルギー理論の一つ、S2理論によって導かれる、
半永久的に動作可能とされる動力機関のことだ。機関の実用化は愚か理論の裏づけもまだと聞いているが・・・」
未知の敵に未知のテクノロジー。技術者である時田にとってはあまりに現実を飛躍した話だ。
359 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:26:32 ID:???
再びリツコが話を続ける。
「NERVではすでにS2理論によるS2機関の存在は確認しており、S2機関こそが使徒の一連の動力プロセスと推測しています」
「そう、ですか。なにぶん私は技術者ですので、そのあたりは専門ではありませんが・・・。
S2機関の実用化、そしてエヴァやJAへの搭載は可能なんでしょうか?」
「今のところはイエスともノーともいえません。ですが、エヴァへの搭載の可能性はあります」
「というと?」
「エヴァはロボットといえども生体をベースにしたものですから」
「なるほど」
よく分からないがそういうものなのだろう。
未だにエヴァを見たことがない時田と加藤は、とりあえずそれで納得する。
「いずれ、NERV支部のどれかのMAGIで解析すると思います。もちろんその結果もそちらに通達しますので」
「そうですか。ありがとうございます」
「また、今回の構造解析で、使徒の情報伝達物質に値すると思われる部分が明らかになりました。
人間で言えば遺伝子の役割を持つDNAに相当する部分です」
リツコがキィをたたくと、画面に複雑なパターン模様と文字が現れる。
「この部分の固有波形パターンは、人間のDNAのパターンと非常に酷似しています。
構成物質こそ違いますが、その信号の一致率は99.89%にも上ります」
「99.89%・・・」
「この数値が何を示しているのかは私達にはまだ分かりません。が、使徒が我々が認識している”生命”とは
大きく異なるとはいっても、別の次元において、やはり”生命”と呼ぶべき存在であるのは確かです」
「我々のジェットアローンなどを考えると・・・人類の知恵の浅はかさを思い知らされますね・・・」
360 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:41:03 ID:???
そのまま黙ってしまう時田と加藤。ミサトが彼らに近づく。
「それでは、私達はNERV本部に戻ります。今日はご協力ありがとうございました」
「あ、いえ、こちらこそありがとうございました。たいした力になれなくて申し訳ありません」
「いえ、実戦でご協力いただければ、それで結構です」
「・・・そうですね。 今後ともよろしくお願いします」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「・・・なんだか随分と敵視されてましたね、俺達」
「そうだな。・・・まぁNERVはこの手の分野を専門にやってきた集団だ。
俺達や戦自がしゃしゃり出るのをあまり快くは思わないんだろう」
やっとのことで緊張状態から抜けだした二人。コーヒーを片手に先ほどの分析画面を見つめる。
「それにしても、まるで宇宙人ですね、これじゃ」
「宇宙人、か」
数年前、人類補完計画や使徒に関する諜報報告書に日本政府から極秘に通達された。
そこには、襲来すると予測される使徒のおよその大きさ、質量、そして、その使徒が生ずるという
ATフィールドの存在とその効果のみが記されていた。そして、その報告書を元に
ジェットアローン計画は日重工の通常業務の水面下で日本政府主導のもと行われたのだった。
「まだ使徒の発生やその目的は不明らしい。案外宇宙からやってきているかもしれないな」
「ま、第3新東京市を目指すと概ね分かってるだけでも、宇宙人よりマシかもしれませんね」
「・・・そういえばセカンドインパクトの前に、宇宙人が円盤でせめて来る映画が大ヒットしなかったか?」
「もしかして、”独立記念日”ってやつですか?」
「あぁ、それだ。懐かしいな。まさか将来、自分がこんなやつらと戦うことになるとはな。
現実は小説よりも奇なり、とは、よく言ったものだ」
361 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:54:04 ID:???
そう、今、自分は、昔自分があこがれた、いわゆる”地球防衛軍”の一員なのだ。
そう考えると、使徒の解析不能のメカニズムも何だかふさわしいものに思えた。
「ま、この世はとかく謎ばかりだ。
さてと。これから旧東京まで行って来るから、その間の留守番たのんだぞ」
「分かりました。あと、JA-1の輸送はいつにするんです?」
「いつ使徒が来るとも分からないからな、今日中には第二に輸送するつもりだ。
できれば、例の武装系の装備実験の準備までやっておいてもらえるか?」
「了解。これで武装開発課の連中が報われますね」
「あぁ、彼らには長らく待たせてしまったな」
「自分も楽しみですよ。いよいよロボットらしくなりますね」
「そうだな」
先日の指揮権譲渡に伴い、国連で承認された日重工への開発推進予算。
その予算によって、前から議論され設計図まで完成していたジェットアローン専用の武装の製造が急ピッチで行われ、
ちょうど昨日の明け方、第二研究所に納品されたのだった。
また、今、旧東京にある第一研究所で、修復と改良を行っているジェットアローン一号機は、
第3新東京市郊外の第二研究所が政府の予算でJAが十分運用可能なレベルまで大幅に増築されたため、
今後本拠地を移すこともかねて、機体修復が終わり次第、第二研究所に輸送される手配になっている。
「いよいよか・・・」
今まで素手での攻撃に頼らざるを得なかったジェットアローンも、ついに武装を持つことになる。
日重工の職員の誰もが楽しみにしているジェットアローンの次なる姿。
新しい希望への期待を胸に、時田は旧東京への輸送ヘリに乗り込んだ。
[[@wikiへ>http://kam.jp"><META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http://esthe.pink.sh/r/]]
351 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:19:28 ID:???
「シンジくん、それじゃいつものとおり始めるわよ。
インダクションモード、スタート」
モニタに映る影に狙いを定めて、スイッチを押す。
「・・・目標をセンターに入れてスイッチ・・・」
初号機のスクリーンに映っているのは第三、第四使徒を解析して
そのデータをもとにシミュレートされた仮想の敵だ。
ここ第二実験場で行われる初号機の実戦想定訓練プログラムは、
今回で27回目を迎えている。
『目標、沈黙・・・使徒殲滅です』
モニタに映る”作戦成功”の文字。
「シンちゃんやったじゃない!」
「え?」
「パーフェクトよ、 パ・ー・フ・ェ・ク・ト !」
モニタにはミサトの満面の笑みが映っている。
そしてもう一つ・・・
「よくやったな・・・シンジ」
NERV司令、碇ゲンドウその人の姿であった。
E P I S O D E : 5 「 N E R V 、 心 の む こ う に 」
352 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:34:18 ID:???
「これなら、あの農協ロボが負けてもうちで勝てるわね~」
「そうね、元々そのためのエヴァだもの、あの農耕機には負けないわ」
未だにNERV内部ではジェットアローンを農協と読んで揶揄する者が多い。
確かにエヴァとはずいぶん嗜好の異なる姿であり、物々しく厳つい装甲に覆われた姿は、
見る人にトラクターやクレーンといった重機のようなものを喚起させるのもまた事実ではある。
「それで、零号機の調子はどうなわけ?」
「そうね、昨晩やっと連動実験の最終調整が終わったわ。
ハードのほうの誤差、フェードバックの調整も完璧よ」
コーヒーをすすりながらリツコが答える。実は昨夜もまた徹夜だったのだ。
「若干、レギュレーターの数値が落ち着きませんが、レイのシンクロ率を
考えれば、今のところはとくに問題はありません」
となりでデータをまとめているマヤはまだ元気だ。若さの違いというものか。
「よっしゃぁ、これでエヴァ両機の整備は完璧なわけね!」
「まぁね。第3新東京市の兵装ビルも稼働率はほぼ100%、準備としては申し分ないわね」
「エヴァとここがフル稼働したらあの農協なんて用はないわっ!」
「それはどうかしら?あまり楽観視できるわけでもないわよ。未だに使徒への有効な戦略がないしね」
「まぁ~そのためにアタシがいるんだからさぁ~」
「・・・あなたのそういうところ、嫌じゃないわ」
軽口をたたきながら廊下を歩く二人。
353 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:46:51 ID:???
その足で二人はそのまま外へ向かう。今日も外は快晴である。
目的地は、先日から始まった第四使徒の解析及び解体の現場だ。
「それにしても、最近の司令、ずいぶんと変わったわよねぇ」
「碇司令?」
「そう!今までレイばぁーっか相手にしてたのに、今はシンジくんに付きっ切りじゃない!」
「そういえばそうね。さっきの訓練も見に来てたし」
「『よくやったな・・シンジ』って。ほめるなんて珍しいけど、
自分の息子なんだからもうチョット優しく接して言えばいいじゃない」
「きっと不器用なのよ、司令は」
「なぁんだかイメージ崩れるわ~」
事実、職員の間で噂になっているのが、碇司令のシンジへの関心の高さだ。
確かに自分の息子なのだから、当然と言えば当然だが、あの冷たい司令が
自分の息子を気にかけるなど、普段の冷徹な態度からすれば、NERV職員ですら想像できない者が大半のようだった。
そういうわけで、NERV内でも司令とシンジの話題は昼食時の会話のネタランキングで一位を独走中である。
「きっと司令もあせってるんじゃないかしら?委員会からのプレッシャーもあるんでしょうね」
「そうなの?アタシは聞いてないけど。ま、確かに指揮権の移譲もあったしね~。
あ、だからシンジくんをおだてて強くしようって考えてるのかしら?」
「さぁね、碇司令の考えてることなんてMAGIを使ったって想像つかないわ」
「子供はほめれば伸びる~なんて前世紀くさい考え方よねぇ。
いまどきの子供にそんな素直なのいないわよぉ。生意気なガキばっか」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「最近、センセ元気やなぁ?」
「そうだな、碇のやつなんかあったのかな?」
どうも、シンジはほめられて伸びるタイプらしい。
354 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 00:56:58 ID:???
僕は・・・父さんに言いたい事があってここに来たんだ・・・
本当は、父さんに一言言ったら帰るつもりだったんだ・・・
でも、いきなり変なのが襲ってきて、それで、なんか父さんにロボットに乗って戦えって言われて・・・
そしたら、NERVのじゃない、別のロボットが敵を倒しちゃって・・・
NERVは・・・別に嫌いじゃない・・・
ミサトさんは、ちょっとズボラだけど、優しくしてくれる。
リツコさんやマヤさんも、日向さんやロンゲさんも、みんな、優しくしてくれる・・・
それに・・・父さんも・・・
それは、僕がエヴァのパイロットだからかもしれない。ううん、多分そうだけど。
でも、それでもいいんだ。僕の居場所があるから。
学校だって楽しい。
クラスのみんなだって優しくしてくれる・・・
僕がエヴァのパイロットだってこと、あまり関係ないみたいだ・・・
みんなエヴァを知らないからかな?(ケンスケだけは妙に突っかかってくるけど)
でも、綾波は・・・なんだか苦手だ。最近僕のことを睨んでいるような気がする。
エヴァのせいで酷い怪我をしたみたいだけど、全然気にしてないみたいだし。
もっと綾波のことを知りたいのに・・・避けられてるのかな、僕。
使徒・・・僕らが倒すべき敵。
今は日本重なんとかってところのジェットアースっていうのが倒してくれてる。
だから、僕は戦わなくていい。
でも、もしあのジェットアースがまけたら、僕は戦わなくちゃならない。
それでも・・・皆が優しくしてくれるなら、いいかもしれない。
僕の居場所があるなら・・・それでいいのかもしれない。
――碇シンジ、14歳。後に、「人類の存亡」という、大きすぎる運命を担うことになる少年である。
355 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 01:20:53 ID:???
――キィィイイン、カンカンカン・・・・
第四使徒解体現場に響き渡る重機の音。
あたりを駆け回る影には、NERV技術部の赤い制服と白い制服、日重工の灰色の作業服、
戦自技術研究部の緑の制服に青い作業着など、鮮やかな色合いが重なっている。
「これが・・・使徒か・・・」
初めて肉眼で見る未知なる生命体、使徒。
これまでは特撮映画の怪獣のようにしか時田の目には映っていなかった使徒が、
今、目の前に、リアリティをもって存在している。
「それで、解析結果は?」
「今のところは全くだめですね。やっぱりうちのスパコンじゃ全然能力不足ですよ」
「やっぱりその辺はNERVのMAGIに頼るほかないか」
リツコたちより一足早く現場に到着した時田と加藤。
前回の使徒戦ではJAが使徒をほとんど原型をとどめたまま撃破したため、
NERV、日重工、それに戦自技研の三者共同で解析にあたることになった。
「なんだかうちの手柄をよそに取られてるみたいで、いやですね。戦自は別にいいですけど」
だが、現実問題、日重工の使徒解析能力はNERVのそれに比べれば足元にも及ばない。
演算能力が低いわけではない。日重工のメインフレームは超高速第六世代並列型有機コンピュータだ。
それでも、MAGIの能力は桁違いに高いうえに、元々工業技術者の集まりである日重工である。
彼らにとって、生体解析、といったものはもとより専門外なのだ。
そういうわけで、解析研究はNERVと提携、重機担当を戦自に依頼したのである。
「もうしばらくしたらNERVの赤木博士たちも到着するそうです」
「そうか。赤木博士にお会いするのはずいぶん久しぶりだな」
「なんだか時田さん嬉しそうですね」
356 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 01:37:43 ID:???
「い、いやぁ、そういうわけじゃないが。前は失礼なことをしてしまったからな」
「まぁこないだの合意以来、NERVは好意的ですし、今回も建設的な話題になるんじゃないですか?」
「俺もそれを願うよ。お互いの上げ足取りばっかりやっていれば、勝てる戦にも負けるかもしれないしな」
「やっぱり時田さん嬉しそうですよ」
「・・・いいからお前は黙れ。 俺は、午後にはまた第一研究所に戻ってJA-2の開発推進会議やら
何やらいろいろあるからな。午後のことは、加藤に任せる」
「あ、分かりました」
数十分後。
「お久しぶりです、赤木博士。先日はとんだご無礼を・・・」
「いえ、気にするほどのことではありません、時田主任。今日は敵生体”使徒”の解析作業ということで、
NERVの作戦部の人間を連れてきました。こちらは、NERV戦術作戦部作戦局第一課課長、
並びに使途迎撃作戦本部長の葛城です」
「はじめまして、作戦本部長の葛城ミサトです。このたびのジェットアローンによる敵殲滅、お見事でした」
「いえ、とんでもない。運が向いて勝ったような戦いばかりですよ」
「ご謙遜なさらずとも結構です。ですが、次使徒戦以降、戦略指揮は私の担当となります」
「・・・あなたが、作戦指揮官でしたか。NERVの手腕に期待していますよ。いえ、嫌味ではなく・・・」
「もちろん、そちらの期待は裏切りません」
やや気まずい雰囲気が流れる。どうも女性相手に話すのは苦手な時田だ。
「早速ですが、MAGIを使った解析入りたいと思うのですが」
「あぁ、すみません。解析室までご案内しますよ」
「いえ、そこまでして頂かなくとも結構です」
そのままリツコとミサトは言ってしまう。
「なんだか敵意丸出しって感じですね」
「あぁ、俺はもう少し建設的な話し合いが出来ると思っていたのだが・・・」
357 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 01:54:37 ID:???
男ばかりの現場を歩く美人女性二人。さすがに周りの目を引く。
「それにしてもミサト、ずいぶんと敵意をむき出しにしたわね?」
「そうかしら?あんたこそ、随分とクソご丁寧に言ってたじゃない」
「あら?私こそ普通に対応したつもりだけど」
「よく言うわ・・・」
彼女達に反して、他のNERVの技術部職員たちは、日重工や戦自技研の人間と仲良くやっているようだ。
もとから日重工は兵器企業として技術面で戦自技研とパイプが太いので、二組織間での仲はよい。
が、それ以上に、根っからの理系男達にとって、未知の物に対する好奇心は
NERVや日重工や戦自技研といった、ささいな組織の壁など微塵も関係ないのだ。
もとより同じ大学の出身者も多い面子でもある。作業中の雑談の話も自然と広がる。
「ったく、うちの技術部の男どもにはライバル心ってものがないのかしらねぇ」
「屈託のない心というのも大切よ、ミサト。仲良くなってから闇討ちぐらいがいいのよ」
女のひねくれ具合は三十路前に極大値をとる、というのも概ね事実のようだ。
「さてと、・・・これが日重工の解析したデータね」
「へ~、あの農協集団でもできるんだ、解析なんて」
「その言い方辞めなさいよ、ミサト。あら、でも、確かに農耕集団としては随分と解析が進んでるわね」
「・・・」
端末画面に、使徒の固有波形パターンやコアの構造などが所狭しと並ぶ。
「でも、やっぱりMAGIがないとこの辺が限界なのねぇ」
「そうね、それでもよく頑張ったほうかしら。
・・・それにしても、ホント理想的なサンプルね。コア以外は原型をほぼ留めているわ」
「ふーん。んで?何かわかったわけ?」
「まぁ待ちなさいよ、今ハイパーチャネルをMAGIに接続したところだから」
358 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:13:02 ID:???
”データ転送中”の文字がしばらく表示され、その後に、”解析中”の表示。
そして、
ピー
「なにこれ?601?」
「解析不能を示すコードナンバーよ」
「つまりわけわかんないってこと?」
「ま、そういうことね。さて、これを彼らにも見せてあげなくちゃね」
「え~?いいんじゃない?あの農協じゃ一生解析なんて無理よ?」
「そういうわけにもいかないのよ、ミサト。それに、こんなところでアドバンテージ稼いで勝っても面白くないわ」
「・・・そりゃそうね。もっと徹底的にやりたいわ」
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端末に向かうリツコを囲む時田と加藤。ミサトはやや後ろに下がってその様子を見つめている。
「つまり使徒の構成物質は、今の段階では全くの未知のものといっても過言ではありません」
「MAGIをもってしてもそうですか。・・・それで、例の光球についてですが」
「コア――NERVではあの光球をコアと呼んでいますが――をMAGIに解析させたところ、
84.6%の確率で使徒の動力源と予測しています」
「すると、そのコアがやはり使徒の弱点と?」
「間違いないと思われます。おそらくS2機関を内蔵しているか、それに相当する役割を果たしている
と思われますが、コア自体の原理はやはり不明です」
先ほどと同様、リツコは何の情も込めずにただ淡々と説明していく。
「S2機関?主任、なんなんです、それは?」
「あぁ、かつての日本のある教授が提唱した新領域物理エネルギー理論の一つ、S2理論によって導かれる、
半永久的に動作可能とされる動力機関のことだ。機関の実用化は愚か理論の裏づけもまだと聞いているが・・・」
未知の敵に未知のテクノロジー。技術者である時田にとってはあまりに現実を飛躍した話だ。
359 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:26:32 ID:???
再びリツコが話を続ける。
「NERVではすでにS2理論によるS2機関の存在は確認しており、S2機関こそが使徒の一連の動力プロセスと推測しています」
「そう、ですか。なにぶん私は技術者ですので、そのあたりは専門ではありませんが・・・。
S2機関の実用化、そしてエヴァやJAへの搭載は可能なんでしょうか?」
「今のところはイエスともノーともいえません。ですが、エヴァへの搭載の可能性はあります」
「というと?」
「エヴァはロボットといえども生体をベースにしたものですから」
「なるほど」
よく分からないがそういうものなのだろう。
未だにエヴァを見たことがない時田と加藤は、とりあえずそれで納得する。
「いずれ、NERV支部のどれかのMAGIで解析すると思います。もちろんその結果もそちらに通達しますので」
「そうですか。ありがとうございます」
「また、今回の構造解析で、使徒の情報伝達物質に値すると思われる部分が明らかになりました。
人間で言えば遺伝子の役割を持つDNAに相当する部分です」
リツコがキィをたたくと、画面に複雑なパターン模様と文字が現れる。
「この部分の固有波形パターンは、人間のDNAのパターンと非常に酷似しています。
構成物質こそ違いますが、その信号の一致率は99.89%にも上ります」
「99.89%・・・」
「この数値が何を示しているのかは私達にはまだ分かりません。が、使徒が我々が認識している”生命”とは
大きく異なるとはいっても、別の次元において、やはり”生命”と呼ぶべき存在であるのは確かです」
「我々のジェットアローンなどを考えると・・・人類の知恵の浅はかさを思い知らされますね・・・」
360 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:41:03 ID:???
そのまま黙ってしまう時田と加藤。ミサトが彼らに近づく。
「それでは、私達はNERV本部に戻ります。今日はご協力ありがとうございました」
「あ、いえ、こちらこそありがとうございました。たいした力になれなくて申し訳ありません」
「いえ、実戦でご協力いただければ、それで結構です」
「・・・そうですね。 今後ともよろしくお願いします」
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「・・・なんだか随分と敵視されてましたね、俺達」
「そうだな。・・・まぁNERVはこの手の分野を専門にやってきた集団だ。
俺達や戦自がしゃしゃり出るのをあまり快くは思わないんだろう」
やっとのことで緊張状態から抜けだした二人。コーヒーを片手に先ほどの分析画面を見つめる。
「それにしても、まるで宇宙人ですね、これじゃ」
「宇宙人、か」
数年前、人類補完計画や使徒に関する諜報報告書に日本政府から極秘に通達された。
そこには、襲来すると予測される使徒のおよその大きさ、質量、そして、その使徒が生ずるという
ATフィールドの存在とその効果のみが記されていた。そして、その報告書を元に
ジェットアローン計画は日重工の通常業務の水面下で日本政府主導のもと行われたのだった。
「まだ使徒の発生やその目的は不明らしい。案外宇宙からやってきているかもしれないな」
「ま、第3新東京市を目指すと概ね分かってるだけでも、宇宙人よりマシかもしれませんね」
「・・・そういえばセカンドインパクトの前に、宇宙人が円盤でせめて来る映画が大ヒットしなかったか?」
「もしかして、”独立記念日”ってやつですか?」
「あぁ、それだ。懐かしいな。まさか将来、自分がこんなやつらと戦うことになるとはな。
現実は小説よりも奇なり、とは、よく言ったものだ」
361 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/05(月) 02:54:04 ID:???
そう、今、自分は、昔自分があこがれた、いわゆる”地球防衛軍”の一員なのだ。
そう考えると、使徒の解析不能のメカニズムも何だかふさわしいものに思えた。
「ま、この世はとかく謎ばかりだ。
さてと。これから旧東京まで行って来るから、その間の留守番たのんだぞ」
「分かりました。あと、JA-1の輸送はいつにするんです?」
「いつ使徒が来るとも分からないからな、今日中には第二に輸送するつもりだ。
できれば、例の武装系の装備実験の準備までやっておいてもらえるか?」
「了解。これで武装開発課の連中が報われますね」
「あぁ、彼らには長らく待たせてしまったな」
「自分も楽しみですよ。いよいよロボットらしくなりますね」
「そうだな」
先日の指揮権譲渡に伴い、国連で承認された日重工への開発推進予算。
その予算によって、前から議論され設計図まで完成していたジェットアローン専用の武装の製造が急ピッチで行われ、
ちょうど昨日の明け方、第二研究所に納品されたのだった。
また、今、旧東京にある第一研究所で、修復と改良を行っているジェットアローン一号機は、
第3新東京市郊外の第二研究所が政府の予算でJAが十分運用可能なレベルまで大幅に増築されたため、
今後本拠地を移すこともかねて、機体修復が終わり次第、第二研究所に輸送される手配になっている。
「いよいよか・・・」
今まで素手での攻撃に頼らざるを得なかったジェットアローンも、ついに武装を持つことになる。
日重工の職員の誰もが楽しみにしているジェットアローンの次なる姿。
新しい希望への期待を胸に、時田は旧東京への輸送ヘリに乗り込んだ。
[[第拾四話]]
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