自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

158 第120話 ファスコド島の地獄

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第120話 ファスコド島の地獄

1484年3月1日 午前7時 ファスコド島

昨日、ファスコド島に駐留しているシホールアンル軍部隊は、バルランド軍精鋭2個師団を相手に一方的な戦いを繰り広げ、
見事追い返していた。
バルランド軍を追い返したシホールアンル軍・・・・厳密に言えば、第75魔法騎士師団が戦果を独り占めにした形になったが、
彼らは緒戦の大勝利に沸き立っていた。
第75魔法騎士師団の将兵は、早くもアメリカ軍の上陸を待ち侘びていた。

アメリカ人達よ。早く来い。私達魔法騎士団の餌食にしてやる。
このファスコドの大地の養分にしてくれる。

彼らは、そう願っていた。彼らの脳裏には、必死に抵抗しながらも、次々と悲惨な死を迎えていくアメリカ軍将兵の姿がよぎっていた。
彼らの切なる願いは早々に叶えられたが、神様は全ての願いを聞き入れてはくれなかった。

第54任務部隊司令官であるジェフ・オルデンドルフ少将は、旗艦カリフォルニアの艦橋から、緑に覆われたファスコド島を双眼鏡越しに見ていた。

「綺麗な島だな。平時であれば、あの森の中をゆっくり散策できたのだが。」

オルデンドルフ少将は、心底残念そうな口調で呟いた。
洋上から眺めるファスコド島は、美しい緑に覆われている。この島にリゾート地を構えれば、方方から人が集まる事は間違い無しであろう。
その美しい森の島に向けて、戦艦カリフォルニアは14インチ砲の筒先を向けようとしている。
ファスコド島は、カリフォルニアの右舷17000メートルに位置している。
カリフォルニアは、右砲戦の要領で、右舷に全主砲を向けていた。

「観測機より通信。島上空の天気は晴れなり。北西30マイル付近は曇りであるも、しばらくは天候に影響なし。」
「天気は晴れか。いいピクニック日和だな。」

オルデンドルフ少将はそう言ってから、首を横に振った。

「いや、いい砲撃日和だ、と言ったほうが正しいか。」

TF54の戦艦はカリフォルニアだけではない。
後方には僚艦テネシー、ペンシルヴァニア、アリゾナ、そして機動部隊から増派された新鋭戦艦3隻が控えている。
この戦艦群も、カリフォルニアと同様、14インチ、16インチ、17インチの主砲をファスコド島に向けているであろう。

「司令、射撃準備完了しました。」

主任参謀が報告して来た。
オルデンドルフ少将はそう頷きながらも、美しい緑に覆われたファスコド島に視線を送り続ける。
(これから3日間、あの島は艦砲射撃や航空攻撃を昼夜分かたず受け続ける事になる。事前攻撃が終った後、あの島の森は、
綺麗さっぱり消し飛んでいるかも知れんな)
彼は名残惜しそうに、島の森を5秒ほど見続けていたが、やがて、その姿と決別するべく、双眼鏡を下ろした。

「全艦。撃ち方始め!!」

オルデンドルフの命令が下って3秒後に、カリフォルニアが主砲を放った。
ドドォーン!という射撃音が鳴り響いた直後、後続の戦艦群も次々と主砲を撃ち始めた。
アメリカ艦隊の射撃は、最初から容赦が無かった。
オルデンドルフ少将は、最初から斉射で射撃を行う事を決めており、この時点で14インチ砲弾48発、16インチ砲弾18発、17インチ砲弾9発。
計75発の大口径砲弾が、ファスコド島の南部一帯めがけて落下しつつあった。

少しばかりの時間が流れる。
やがて、ファスコド島の南部海岸付近に爆発が起こった。その瞬間、真っ白な砂浜や、森の中に大口径砲弾が落下した。
南部海岸には、撃破されたバルランド軍の輸送船が、そのまま乗り上げられている。
傍目から見れば駆逐艦並みの大きさはあるであろう。
その座礁船が、テネシーから放たれた、たった1発の14インチ砲弾で木っ端微塵に吹き飛んだ。
周囲の砂浜では、14インチ弾、16インチ弾が落下するや、巡洋艦の着弾とは比べ物にならぬ勢いで、土砂が天高く舞い上がった。
森の中に、アイオワの17インチ弾が落ちた。
その刹那、17インチ砲弾が炸裂し、その場に残っていた敵味方双方の死体を森の木々や土砂もろとも吹き上げた。
17インチ弾が命中した場所には直径20メートルほどの大穴が開き、その場にあった木々は全て薙ぎ倒されてしまった。
第2斉射が7隻の戦艦から放たれる。
14インチ、16インチ、17インチ砲の発砲音が一瞬にして重なり合い、まるで雷が間近に落ちてきたような轟音が、洋上に轟く。
またもや、沿岸部やその少し入った内陸の森に、75発の大口径砲弾が落下した。
海岸の真っ白い砂が、火山噴火の噴煙よろしく、高々と舞い上げられる。
その少し内陸では、こげ茶色の噴煙が吹き上がる。よく見ると、その噴煙の中に、バラバラに吹き飛ばされた木の幹が混じっている。
TF54は、砲撃を繰り返しながら、徐々にファスコド島に近付きつつあった。
7隻の戦艦が10回目の斉射を行ったときには、TF54とファスコド島との距離は12000メートルにまで縮まっていた。
ここでようやく、巡洋艦部隊が発砲を繰り返した。
TF54に配備されている重巡洋艦は、ミネアポリス、シカゴ、ルィスヴィル、クインシー、アストリア、ボルチモア、ノーザンプトンⅡの計7隻である。
このうち、ボルチモア級重巡洋艦のノーザンプトンⅡは、第2次バゼット海海戦で戦没したノーザンプトン級重巡のネームシップ、ノーザンプトンから
名前をもらっている。
7隻の重巡から放たれる63発の8インチ砲弾は、戦艦部隊が叩いた沿岸部目掛けて放たれた。
この砲撃に、軽巡洋艦のナッシュヴィル、モービル、サンアントニオの6インチ砲39門が加わる。
巡洋艦群が沿岸部を叩き始めたとき、戦艦群の弾着点は、沿岸部から内陸部にへと移っていた。
内陸から8キロ離れた地点に、着弾による噴煙が上がったとき、一瞬だけ赤紫色の閃光が煌くのをオルデンドルフは見逃さなかった。

「敵さんは魔法防御を敷いているようだな。」

彼は、これまで聞いて来た情報を思い出してから、その赤紫色の閃光が、魔法防御による敵弾阻止時の反応であると見抜いた。
その反応目掛けて、オルデンドルフは砲撃を集中させる。
14インチ、16インチ、17インチ、計75発の大口径砲が、オルデンドルフの指示した通りの場所目掛けて放たれた。
森の内部に、猛烈な噴煙が吹き上がる。
戦艦砲の弾着は、周りの木々を全て吹き飛ばし、運の悪い敵兵をバラバラにして、木々の破片や土砂と共に周囲にばら撒いた。
この時、先ほど同様、魔法防御発動の閃光が煌いたが、その閃光は、先のものと比べるとどこか弱々しかった。
次の斉射弾を撃ち込んだ時にも、魔法防御発動の閃光が発せられるが、それを最後に、赤紫色の閃光は見られなくなった。
戦艦部隊は、主砲のみならず、舷側に配置されている5インチ連装両用砲まで撃ち始めた。
この時になると、戦艦部隊はファスコド島の南から、西側に占位しつつあった。
ファスコド島の西側には海岸は無く、一面森に覆われている。
平時であれば、見るだけで癒されそうな美しい森が広がっているのだが、その森目掛けて、7隻の戦艦は容赦なく主砲弾、高角砲弾をぶち込んだ。
断崖にまで生えている珍しい木々の近くで、ペンシルヴァニア級戦艦から放たれた14インチ砲弾が、数発まとまって着弾する。
切り立った断崖の側面が、一瞬にして爆炎に包まれる。
爆炎が晴れた後、着弾部分から岩盤がごっそり抉れ、周囲の部分には盛大にひび割れが生じている。
その上面では、5インチ砲弾がひっきりなしに着弾し、木々が根こそぎ倒されるか、断頭された囚人のように途中から叩き切られる。
別の主砲弾が断崖の側面部分に命中した瞬間、その部分は崩落し、切り立った断崖は一瞬にして醜い荒れ模様の斜面と化した。
砲撃開始から20分が経過すると、艦隊に随伴している駆逐艦までもが、砲撃に加わった。
駆逐艦部隊は、各艦に取り付けられている5インチ単装砲5基を乱射する。
訓練で想定されている敵と違って、今度の相手は、全く身動きの取れない島である。
駆逐艦部隊は好き放題に砲を乱射した。一部の駆逐艦は、1800メートルの距離まで近付くや、40ミリ機銃を沿岸部に向けて撃ちまくった。

島の北部には、シホールアンル陸軍第515歩兵旅団が布陣していた。
旅団長のラフルス・トイカル准将は、防御線後方にある地下壕で、司令部の幕僚と共にアメリカ軍の艦砲射撃体感していた。
ドォーンという爆発が鳴ると同時に、ズズンと地面が揺れる。
1週間前に完成したばかりの司令部壕は、頑丈な作りになっているが、それでも心許ないと思えるような振動である。

「砲撃は、沿岸部及び、島の南部一帯に集中しています。」

主任参謀のトールファ・マクロヌ大佐は冷静な口調で言った来た。

「今のところ、わが旅団の防御地点に対しては、敵弾は落下して来ていませんが、敵艦の弾着は内陸部に向かいつつあります。
そのうち、旅団の戦区にも・・・・・」

マクロヌ大佐は最後まで言わなかった。
彼の言葉の続きを、トイカル准将を始めとする一同は言われなくても分かっていた。

「アメリカ軍は、本腰を入れてやって来たな。」

トイカル准将は、ため息を吐きながら、目の前に置かれていた1枚の紙を手に取り、改めて読み直した。
その紙には、木のてっぺんに登った観測兵が伝えてきた、アメリカ軍艦隊の陣容が書かれていた。

「戦艦7隻、巡洋艦、駆逐艦30隻以上。アメリカ軍は、本気でこの島を叩き潰すつもりだぞ。」

彼がそういった瞬間、遠くでダァーンという炸裂音が響いた。音は今まで聞いた物よりやや大きかった。
トイカル准将は一旦言葉を中断させたが、音が鳴り止んだのを確認してから続けた。

「このうち、戦艦1隻は識別表に無い、かなり巨大な艦であると書いてある。恐らく、会談場所に使われたというアメリカ新鋭戦艦かもしれないな。
その戦艦までもが、この島に向けて砲弾を撃ち込んできている。」
「この砲撃はいつまで続くのでしょうか。」

魔道参謀が、不安気な表情で言い放つ。

「バルランド軍は、1時間半かけて入念に砲撃を行ったが、アメリカ軍も同じ時間をかけて、砲撃を行うかも知れんな。」

マクロヌ大佐が確信したように言う。だが、トイカル准将は否定した。

「いや、もっと時間をかけて行うかも知れんぞ。」
「といいますと・・・・・どれぐらい?」
「う~ん、敵さんが何時間砲撃を続けるかは、俺にも分からんが。恐らく、かなり長いだろうな。」

彼は確信していた。あの敵艦隊が、このファスコド島を徹底的にたたきのめすだけを目的に配備されたと言う事を。

「敵艦隊は、輸送船団を伴っていない。恐らく、敵将は輸送船団が島の近くに来るまで、砲撃を続けるのだろう。」

輸送船団が島の近くに来るまで・・・・・
その言葉に、幕僚達は顔を青ざめさせていた。いや、そう言ったトイカル自身も、緊張と恐怖で血の気がサッと引くのを感じていた。

「その間、我々は、散々に撃たれっ放しになると言うことですね。」
「そうだろうな・・・・もしかしたら、1日中、砲弾の嵐を叩きつけられるかも知れんな。」
「1日中・・・・・奴らはどれだけ、大砲の弾を持っているんだ。」

幕僚の1人が、驚愕した表情で呟いた。

「我々も危ないですが、私としては、南部地区の第75師団が心配で仕方ありません。」

マクロヌ大佐が、本気で心配したような口調でトイカル准将に言った。

「彼らは優秀な将兵でありますが、そのせいで思い上がり、まともな防御陣地を作っていません。その彼らが、アメリカ軍艦艇の
この異常とも言える砲撃に耐え切れるか・・・・」

「耐え切れんだろうな。」

トイカル准将はすっぱりと言い放った。

「第75師団は、師団長を始めとして、全員が自分を過信しすぎている。君も分かるだろう?我々と一緒になって、防御陣地を作りませんか?
と言ったら、馬鹿にした目付きで拒否して来たあの若造の顔を。」

トイカル准将は、深いため息を吐いた。

「今更助けようとしても、こんな砲弾の雨の中ではそれもできまい。恐らく、大部分の者が、砲撃のショックで使い物にならんだろうな。
彼らの強靭な精神力を有していれば、ショックも一時的なものに収まるだろうが・・・・・・」

彼は、脳裏の中で、砲弾の雨嵐の前に、無様に逃げ惑う魔法騎士団将兵の姿が見えたような気がした。

ズダアァーン!!という耳に直接捻じ込んだような大音響が森の中で連続して轟いた。

「・・・・ああっ。そんなぁ!?」

第75魔法騎士師団第12特技兵連隊に所属している、ヘグ・レイビン少尉は、たった今まで、爆炎に包まれるまで魔法防御を張っていた
3人の仲間をいた辺りを見つめて、情けない声を出していた。
たった今まで、連隊の中では魔力に自身があるといわれていた女性兵3人が、魔法防御を展開して中隊に降り注ぐ敵弾を食い止めていた。
最初のはなんとか食い止められた。だが、落下してくる砲弾の威力は、半端な物ではなかった。

「アメリカ巡洋艦の砲撃ぐらい、へのツッパリにもならないわ。」

女性兵3人は、敵の砲撃開始前に、レイビンに向けて自信たっぷりに言い放っていた。

この3人はいつも一緒におり、夜中には色々と秘め事の類をしていると噂されるほどの仲であった。
そんな彼女達も、前日のバルランド軍との戦いでは大活躍している。
だが、今回ばかりは相手が悪すぎた。
沖合いの敵艦は、巡洋艦ではなく、戦艦であった。
彼女らは知らなかったが、7隻の戦艦は、魔法防御の発動時に起きる反応を見るや、その地点に集中して砲撃を行っていた。
14インチ、16インチ、17インチ弾、総計75発分の砲弾を叩き込まれたのである。
大威力砲弾による物量攻勢という、もっとも最悪なコンディションであったが、それでも、初撃を耐え切った事に関しては、流石は熟練魔道兵と言える。
(もっとも、魔法防御の守備範囲に落下したのは7発程度で、残りはほかの場所に命中して、別の味方部隊に損害を与えている)
しかし、それも最初だけであり、彼女らは第3斉射弾を耐え切れなかった。
この第3斉射弾には、アイオワから放たれた17インチ砲弾3発が含まれていた。
この3発のほかに、14インチ砲弾2発、16インチ砲弾4発が魔法防御に突き刺さった。
計9発の主砲弾が突き刺さった直後、17インチ砲弾3発が防御結界に阻まれて炸裂した。
その爆発エネルギーが、ただでさえ少なくなった魔力を全て消耗させてしまった。
残りの砲弾は、3人の女性兵の至近に着弾した。
平時であれば、街中の男連中の気を引くこと間違い無しの彼女らは、一瞬のうちに粉砕され、その破片はごっそりと抉られた大量の土砂に混じって周囲にばら撒かれた。
彼女らは文字通り、この世から抹消されてしまったのである。

「うそ・・・・・だろ。こんな事が・・・・こんな事が!!」

レイビンは、そのクレーターを見ながら絶叫した。
彼女らがいた場所には、ただのクレーターしか残っていない。肉片はおろか、血の跡すらも一切なかった。
またもや、砲弾の飛翔音が鳴り響いた。
レイビンは、すっかり意気消沈した表情をその砲弾の向かう先に見つめた。どう言う訳か、すぐ目の前を黒い塊が、上から下に飛び抜けた。

「・・・・あ」

口を開きかけた瞬間、大音響が響いた。やけにでかい音だなと思った時には、既に意識は無かった。

第75魔法騎士師団の防御戦区は、アメリカ戦艦の放つ大口径砲弾によって、隙間無くすき返されつつあった。
ドガァーン!という爆発音が鳴り響くや、弾着地点の木は根元から粉砕され、大量の土砂が上空に巻き上げられる。
第75魔法騎士師団の指揮官であるレソール・ホルゴ少将は、その恐ろしい光景を司令部のある天幕から見つめていた。

「とにかく、早く体が入るぐらいの穴を掘って、地面から体を隠すんだ!そうする以外に手は無い!」

ホルゴ少将は、焦燥の混じった表情を浮かべながら、魔法通信で各連隊長に指示を飛ばす。

「こんな状況下で穴なんか掘れないわよ!」

脳裏に、誰かの叫びが聞こえる。第5特技兵連隊の連隊長である、レアラ・トリフィン大佐だ。

「馬鹿野郎!防御地点を放棄したら、アメリカ軍が上陸した時に占領されちまうぞ!」
「その前に、防御地点ごと吹っ飛んでるわよ!とにかく、あたし達は後退するからね!!」

相手は一方的に魔法通信を終えた。その瞬間、爆発音が天幕の近くで鳴った。
地面が揺れに揺れ、テーブルに置いてあった書類等が下に落ちる。

「畜生、アメリカ人共め。好き放題撃ちやがって!!」

ホルゴ少将は、沖合いから一方的に砲弾を放って来るアメリカ軍艦船に向けて罵声を放った。
現在、午前9時20分。アメリカ軍が砲撃を開始してから、既に2時間が経っている。
彼の率いる魔法騎士団は、島の南側の防衛を担当している。
ファスコド島は、南北に10ゼルド(30キロ)、東西に13ゼルド(39キロ)ほどの大きさだ。

第75師団は、このうちの半分を防衛している事になるが、同師団の防衛線は、たった2時間の砲撃によって、早くもずたずたにされていた。
特に沿岸部から10キロ以内の戦区は地獄同然とも言えた。
アメリカ軍は、戦艦は勿論の事、巡洋艦、駆逐艦も動員して砲撃を行っている。
巡洋艦、駆逐艦の砲弾が届きやすいこの10キロ以内の戦区には、第5、第12特技兵連隊が布陣していた。
彼らは海岸ではなく、海岸より約4キロほど離れた場所で、アメリカ側の新劇を待ち構えていた。
彼らは先のバルランド軍との戦闘で見せたように、退路と見られる場所には魔道地雷や、トラップ用の魔方陣を仕掛けている。
木や森の間には、幻影魔法で姿を消した兵が、獲物をが来るのをじっと待ち、やや後方には、巧みに偽装した兵が待機していた。
そして、待望の敵がやってきた。
だが、敵は敵でも、それは軍艦から放たれた“敵弾”であった。
最初の戦艦の砲撃で、戦区内が大雑把に叩かれる。
戦艦の砲弾が着弾するや、地面が円錐形にごっそり抉られ、その分の大量の土砂が盛大に噴き上げられた。
木々の枝に登って、幻影魔法で身を隠していた魔道兵が、爆風で吹き飛ばされ、地面に叩き落とされてしまった。
運の悪い者は、アイオワの17インチ弾に串刺しにされながら強引に地面へ叩きつけられ、その次の瞬間には、炸裂によって体ごと粉砕された。
戦艦の砲弾に混じって、巡洋艦や駆逐艦の砲弾も落下し始めた。
そのうち、戦艦の砲弾は内陸のほうへ移っていったが、今度は中口径、小口径砲弾が、まさに雨霰のごとく落下して来た。
重巡の8インチ砲弾が命中する。戦艦に比べれば、その危害半径はぐんと落ちるものの、それでも第12特技兵連隊の将兵達には脅威である。
8インチ砲弾が纏まって落下し、今しも逃げ惑っていた魔道兵5名が吹き飛ばされた。
派手に吹き飛ばされた魔道兵は、木々に体を叩き付けられるか、地面に転がされる。
一見、傷の少ない彼らは無事に見えたものの、内臓類や頭部を強打した彼らは、既に事切れていた。
ブルックリン級、クリーブランド級軽巡が、6秒おきに6インチ砲弾を、5秒おきに5インチ砲弾を叩きつける。
ブルックリンジャブと由来される、驚異的な速射の前に、戦艦砲によって痛めつけられた防御陣地が見る見るうちに、荒地にへと耕されていく。
せっかく、手間をかけて仕掛けた多数のトラップ魔法が、ほぼ隙間の無い弾着によって土ごと吹き飛ばされた。
あれほど生い茂っていた森の木々は、矢継ぎ早に落下してくる砲弾によってことごとく叩き倒され、森の面積は砲撃開始前と比べると著しく減っていた。
とある小隊は、6インチ砲弾、5インチ砲弾の落下をモロに受けてしまった。
一部の兵は、すかさず召還獣を呼び出して、盾代わりに使おうとする。
呼び出した召還獣はゴーレムの類であり、昨日の戦いでは、頑丈な体と、破壊的とも言える攻撃力でもってバルランド軍を圧倒していた。

そんな召還獣も、6インチ砲、5インチ砲の前にはただの脆い的でしかなかった。
1発の5インチ砲弾が召還獣の頭に着弾した。その直後、顔面部分が破壊された。
その2秒後には数発の5インチ砲弾が落下して、術者もろとも吹き飛ばされてしまった。
とある召還獣は、自分の体の特殊性能で持って術者を守りにかかる。
これまた、昨日の戦闘で活躍したスライム状の召還獣だが、この召還獣は、体の液体が強酸で出来ている。
おまけに、ある程度の硬さを持っているため、通常なら刺さった弓や剣を溶かして、逆に相手にダメージを与えられるという特性を持っている。
しかし、音速の壁を超える砲弾はそのような小細工は通じない。
冷静になれば、誰にでも考えられることであったが、彼らは冷静になれなかった。
当然である。
彼らは今、自分たちが体験した事の無い地獄に身を置いているのだ。
このような状況下で、冷静に対応できる人間は、いかな精鋭魔法騎士団とはいえ少なかった。
5インチ砲弾は、猛スピードでこのスライム状の召還獣を叩き潰し、そして炸裂した。
瞬間的な高温で、召還獣の体液である強酸状の液体が蒸発し、砲弾の破片が術者のみならず、他の仲間に突き刺さって多くの死傷者を出した。
この小隊は、僅か30秒で全員が砲弾の嵐の中で息絶えた。
その死体すら、次から次へと押し寄せてくる8インチ弾、6インチ弾、5インチ弾の前に吹き飛ばされ、大地の肥やしにすらならなかった。

砲撃開始から2時間半が過ぎた時、あれほどやかましかった島の喧騒は、唐突に収まっていた。
ホルゴ少将は、司令部天幕から少し南に下がった場所で、第12特技兵連隊が守備していた戦区を、呆気に取られた様子で見入っていた。
数時間前まで、その場所は鬱蒼とした森に覆われていた。その森の木々が、今では驚くほど少なくなっている。
立っている木はかなりあるのだが、それらの大部分は、いずれも途中で叩き折られるか、折れていなくても、生えていた小枝や葉っぱが
ほとんど吹き飛ばされていた。
そして、何よりも目立ったのは、穴だらけになった地面である。
彼は知らなかったが、アメリカ軍は、この2時間半の砲撃で、実に2万発の各種砲弾を叩き込み、駆逐艦部隊からは、1万発の40ミリ弾が
沿岸部に撃ち込まれていた。
この大量の砲弾を受けた事により、南部戦区に配備されていた第12、第5特技兵連隊はおびただしい死傷者を出していた。

「第12特技兵連隊、戦力3割喪失・・・・第5特技兵連隊、戦力4割喪失・・・・・か。」

ホルゴ少将は、やりきれない怒りがにじんできた。
アメリカ軍の砲撃は、一応バルランド側の砲撃よりも激しいであろうと思っていたが、まさか、これほどまでに壮烈なものとは思っても見なかった。
バルランド側は、本当に沿岸部のみを砲撃してきたが、アメリカ側は、沿岸部のみならず、内陸部にも砲弾をぶち込んできた。
各連隊とも、損害は出ていたが、特にひどい損害を出したのは、第12、第5の2つの連隊であった。
第75魔法騎士師団は、第5特技兵連隊、第8特技兵連隊、第7特技兵連隊、第12特技兵連隊の4個連隊、計14400名で編成されている。
そのうち、主戦力として期待できるのは第5、第12の2個連隊であった。
残りの部隊も猛者揃いではあるが、第5、第12連隊と比べればいくらか見劣りがする。
その期待の2個連隊が、敵の艦砲射撃だけで、早くも大損害をうけたのである。
前線からは、大なり小なり負傷した将兵が、よろめくように後退して来る。
負傷兵の中には、手や足といった四肢が欠け、仲間に支えられながら歩く者、両目から真っ赤な血を流してふらふらと通り過ぎていく者など、
数え切れぬほどの負傷兵が後方に向けて歩いていく。
一見、負傷兵じゃなさそうな兵もいるが、ホルゴ少将は、そのような兵も使い物にならぬと判断していた。

「くそ・・・・・アメリカ人共は厄介な問題を残していきやがったな。」

彼は、今しも通り過ぎていく、無傷の男性兵を見ながらそう呟いた。
その男性兵は、昔から滅法強い古参兵として知られている。
昨日までは、第12特技兵連隊では最も強い男と言われていた、そのヒゲ面の古参兵は、今では顔を涙でくしゃくしゃにしながら、
わけの分からない事を口走っている。
その古参兵は、先の砲撃で神経を徹底的に破壊されていた。
砲撃を受ける前までは、連隊で鬼として知られていた古参兵も、今ではただ泣きじゃくる情けない人間に変わってしまった。
古参兵は、アメリカ側で言うシェルショック(戦闘神経症)に罹っていた。
彼と同じ状態に陥った将兵は、後退してくる兵の中に少なからず混じっていた。
その時、北西の方角から聞き慣れぬ音が響き始めた。

「て、敵機来襲!!」

それを見つけたとある兵が、恐怖の叫びを上げた。ホルゴ少将は振り返ると、すぐにそれを見つけた。
北西の空に、幾つもの黒い小さな粒が浮かんでいる。その数が、これまた半端な物ではない。

「選手交代という訳か・・・・・!」

ホルゴ少将は、悔しさに満ちた表情でそう呟いた。

午前10時を回った。戦艦アイオワの艦橋から、艦長のブルース・メイヤー大佐は、艦載機に襲われているファスコド島に見入っていた。
ヘルダイバーの8機編隊が、一本棒となって島に急降下爆撃を仕掛けていく。
島からの反撃は全く無く、ヘルダイバーは甲高い轟音を撒き散らしながら、次々と爆弾を投下した。
すっかり開けた荒地となった大地に投下された1000ポンド爆弾が炸裂し、黒煙が吹き上がった。
艦爆隊が通り過ぎたタイミングを見計らって、逆ガル状の翼を持つ戦闘機が、猛スピードで突っ込んでいく。
目標を補足した4機のF4Uコルセアが、両翼から何かを撃ち出した。
撃ち出されたそれは、逃げ惑っていたシホールアンル兵の集団の周囲で炸裂し、あっと言う間に全滅させてしまった。
空母タイコンデロガから発艦したこのコルセア隊には、試験的に5インチロケット弾が搭載されていた。
5インチロケット弾は、つい最近開発が完了したばかりの新兵器であり、射程距離は約4000メートルほどだ。
コルセア隊は、このロケット弾を、陣地内に立てこもる敵兵や、慌てて逃げる敵の集団に向けて撃ちこんだ。
発射したロケット弾のうち、何発かは不発弾となったが、効果は絶大で、敵の地上部隊は瞬く間に駆逐されていった。
ちなみに、この空襲には、第57任務部隊より発艦した艦載機が参加している。
攻撃隊の内訳は、F6F48機、F4U24機、SB2C38機、TBF50機の計160機である。
この20分後には、第58任務部隊から発艦した200機の攻撃隊が、その更に30分後には、TF57からの第2次攻撃隊120機が、
ファスコド島上空に到達する予定である。

「艦砲射撃であれだけ叩きまくった上に、艦載機の猛爆を受けたんじゃ、いくら精鋭部隊とはいえたまらんだろうなぁ。」

ブルースは、敵に少しばかり同情した。
あの島・・・・特に南部辺りには集中して砲撃を行っている。このアイオワだけでも、実に500発もの主砲弾を放っている。
全体の発砲数を数えれば、最低でも2万の大台を突破することは間違いなしだ。
ブルースとしては、主砲砲身の磨耗の度合いがやや気になるが、今の所、さほど心配する必要はないようだ。

「航空隊の奴ら、派手に暴れ回っていますなぁ。」

側で、ブルースと同じように空襲の様子を見守っていた副長が苦笑しながら言って来る。
通常なら、戦闘機隊が機銃掃射を行い、艦爆隊や艦攻隊は爆弾を落とした後、さっさと退避するものだ。
だが、今回に至っては、戦闘機隊のみならず、艦爆隊や艦攻隊までもが、地上の敵を見つけるや、しつこく付け回して機銃弾を叩き込んでいる。

「度が過ぎなければいいがな。油断したら落とされるぜ。」

言った側から、森側から対空砲火が打ち上げられ、それに絡め取られた不運なアベンジャーがあえなく撃墜される。

「・・・・おいおい、どんだけ油断してるんだよ。」

ブルースは、あっけなく叩き落された味方機に向かって、悲しむよりも呆れた口調でそう言っていた。
報復はすぐに返される。
まだ、ロケット弾を発射していなかったコルセアが、魔道銃が打ち上げられた場所に向かう。
魔道銃は新たな獲物を見つけたとばかりに、このコルセアに向けて発砲するが、有効弾を与えられぬままコルセアに接近された。
コルセアの両翼から、4発の5インチロケット弾が吐き出された。
白煙を引いて放たれた4発のロケット弾が、森の奥に隠れている魔道銃座に殺到する。
3発が、魔道銃にたどり着く前に、生い茂っていた木々や枝にぶつかって炸裂するが、1発が魔道銃の至近に命中した。
おびただしい破片を浴びた銃座の要員が悲鳴を上げながらしばらく転げ周り、そして動きを止めた。
明らかに沈黙した魔道銃座に、更なる攻撃が加えられる。
別のヘルダイバーによって投下された1000ポンド爆弾は、その場に散乱していた死体もろとも、銃座を吹き飛ばした。

午前12時20分

「新たな敵機、南東方面より来襲!」

敵の第3次空襲から僅か15分後に、別の報告が入ってくる。
トイカル准将は、その報告にうんざりした表情を浮かべていた。

「艦載機か!?」

彼は、すかさず見張りの兵に問うたが、

「いえ、陸上機のようです!」

と、否定されてしまった。

「陸上機・・・・だと?」

トイカル准将はそう言いつつも、南東の方角に顔を向ける。

「どこにも見あたら・・・・・・」

彼は思わず言葉を失った。
最初、彼は敵がそれほど高くない高度・・・・2000グレルから3000グレルほどの高度で飛行しているのだろうと思った。
だが、彼が見つけたその敵機は、鮮やかな白煙を引きながら、ファスコド島の上空に到達しつつあった。

「スーパーフォートレスだ!!」

彼は思わず絶叫してしまった。
その言葉だけで、場の空気が凍りついた。
スーパーフォートレス。今年1月の初め頃から、シホールアンル側に存在を確認されて以来、ただの1機も落とせていない化け物爆撃機である。
アメリカが開発したこの新鋭重爆撃機は、5000グレル以上の高高度を悠々と飛行でき、機体の防御自体が硬く、その攻撃力も強大である。
現在、北ウェンステル領の連合軍占領地域に拠点を移したB-29は、ジャスオ領の南部にまで姿を見せ始めている。
シホールアンル軍からは、すっかり恐怖の象徴として定着したB-29が、大挙してこのファスコド島上空に現れたのだ。

「なんという事だ・・・・・全員に塹壕内に入れと伝えろ!」

トイカル准将は、慌てて旅団の全部隊に命令を発した。
命令を聞いた将兵は、また空襲かとうんざりしながらも、手早い動きで塹壕や、地下壕に入っていく。
アメリカ軍は、3次に渡る攻撃隊を繰り出し、旅団の戦区もかなり叩かれた。
アメリカ軍の爆撃は、対空部隊の半数を戦闘不能にし、陣地守備の将兵にも損害が出ていた。
しかし、猛烈な砲爆撃に対して、被害は意外と少なめであり、戦死者109名、負傷者198名を出したのみに留まっている。
(最も、先の砲撃が南部一帯に集中した事が原因ではあるが)
B-29の編隊が、そのままの調子でファスコド島上空を通過した直後、またもや爆弾の雨が降り注いだ。
この日出撃したB-29は計68機で、6機が途中で引き返した。
爆弾倉には20発の500ポンド爆弾を搭載している。
B-29は、高度9000メートル上空から、計1240発の爆弾を放った。
ファスコド島が再び揺れた。
弾着は、南部から始まった。すっかり開けた島南部の大地に、多数の爆発が沸き起こる。
爆発は、南から北に移った。
トイカル准将は、爆発音が近付いて来たな、と思った直後、司令部より思いのほか近距離で500ポンド爆弾が落下した。
司令部の入っている壕の真上で、いきなりドォーン!という大音響が鳴り響き、あまりの衝撃にトイカルを含む司令部要員が床を這わされた。
天井からザーっと埃が落ち、それを吸った何人かが、息苦しそうに咳き込んだ。
爆発の衝撃に立ち直る暇も無く、新たな炸裂音が近場で鳴る。爆弾が炸裂するたびに地面は揺れ続けた。

(まるで、終わりの無い地震に巻き込まれたかのようだ)
トイカル准将は、恐怖に震えながら内心思った。
B-29による空襲は、思いのほか短時間で終わった。トイカル准将は、気を取り直して司令部壕から出てみた。
周囲の光景は一変していた。
司令部壕の周囲には、半地下式の防御陣地や砲台等が設置されていたが、見た限りでは、入り組んだ塹壕は所々断ち割られ、砲台のあった場所には
大きな爆弾穴が開き、その側には、あれほど硬かった砲身を、アメ細工のようにぐにゃりと折り曲げられた大砲が転がっている。
トイカル准将は、一瞬旅団自体が、たった今の空襲で壊滅状態に陥ってしまったのと錯覚したほど、周りの光景は酷かった。

午後6時30分 ファスコド島

第515歩兵旅団第2歩兵連隊に所属する第2大隊では、艦砲射撃が終わったのを見計らって後始末を行っていた。
第2大隊長を務めるポルヌ・ジョクルド中佐は、若い兵と一緒になって、塹壕内に転がっている木の枝を除去した。
枝の下には、下敷きになった兵士が苦痛の表情を浮かべて事切れていた。

「おい、この死体をあっちに運んでくれ。」

ジョクルド中佐は、手持ち無沙汰に立っていた2人の兵を呼びつけて、戦死者の遺体を運ばせた。
彼は兵に死体を運ばせた後、塹壕の上に座って一休みすることにした。

「全く、酷い1日だった。」

ジョクルド中佐は、艦砲射撃によって破壊された味方陣地や、薙ぎ倒された木々を交互に見やった。
アメリカ側は、これでもかと思うほど執拗に艦砲射撃と空襲を行って来た。
B-29の空襲が終わった後、アメリカ艦隊は再び艦砲射撃を開始した。午後1時から3時にかけて行われたこの射撃では、北部沿岸や内陸が狙われた。
3時を過ぎた後、再びアメリカ機動部隊から発艦してきた艦載機が襲い掛かり、森の中に爆弾や白煙を引いて飛んで来る新兵器、そして機銃弾を叩き込んだ。
その後はまたもや艦砲射撃が始まり、午後5時50分まで砲撃が続いた。

この猛烈な砲爆撃で、ジョクルド中佐はアメリカという国がどういうものなのかわかったような気がした。
艦砲射撃は、昨日のバルランド軍の侵攻でも行われたが、それと今日の空襲を比べると、まるで蟻と怪物ほどの差がある。
彼のような現場指揮官でさえそう思うほど、アメリカ側の砲爆撃は徹底していた。
そのお陰で、ファスコド島の森は、たった1日でめっきり減ってしまった。
島のほぼ中央に立っていた、やや小高い丘に至っては、山の上部の形が変わったほどである。
この砲爆撃で、彼の第2大隊も少なからぬ被害を被っている。

「こんな状態が更に続けば、俺達は敵が上陸する前に全滅だな。」

ジョクルド中佐は自嘲気味に呟いた。
この時、前方から3人の兵が走りよって来た。

「大隊長!」
「おう、どうした?」

ジョクルド中佐は、覇気のある声で、走って来た部下に聞く。

「第75師団の奴らが多数北上して来ています。一部の兵は、この第2大隊の陣地に辿り着いています。」
「第75師団か・・・・・・」

ジョクルド中佐は怪訝な表情を浮かべた。
かれはしばし考えたが、考えるよりは見たほうが早いと思い、最前線陣地に向かい始めた。

ジョクルド中佐は、少し後に気付いたが、南部戦区防衛に当たっていた第75魔法騎士師団は、実に7割の戦力を砲爆撃によって失い、
師団としての戦闘力を失っていた。
この島に到着したとき、あれほど元気一杯で、時には第515旅団の将兵をあからさまに軽蔑していた精鋭魔法騎士団の将兵は、今や身も心も、
初めて経験する“本物の地獄”によって完膚なきまで打ち砕かれていた。
ジョクルド中佐は、そのあまりの変わりように、思わず目を背けてしまった。
第2大隊にやって来た魔法騎士団の将兵達は、もはや敗残兵も同然であった。

3月1日 第5艦隊司令部製作

事前砲撃経過報告

午前7時  TF54艦砲射撃開始
午前9時20分  艦砲射撃を一旦終了。
午前9時時50分 TF57より第1次攻撃隊160機、ファスコド島へ来襲。
午前10時20分 第1次攻撃隊攻撃終了
午前10時40分 TF58より第2次攻撃隊200機、ファスコド島へ来襲。
午前11時5分  第2次攻撃隊攻撃終了
午前11時40分 TF57より第3次攻撃隊120機、ファスコド島へ来襲。
午後0時5分  第3次攻撃隊攻撃終了
午後0時20分  第5航空軍よりB-29爆撃機68機(途中6機が不調で帰還)来襲
午後0時40分  空襲終了
午後1時     艦砲射撃再開
午後3時     艦砲射撃を一旦終了。
午後3時20分  TF57より第4次攻撃隊153機来襲。
午後3時52分  第4次攻撃隊攻撃終了
午後4時10分  TF58より第5次攻撃隊94機来襲
午後4時30分  第5次攻撃隊終了。
午後4時45分  艦砲射撃再開。
午後5時50分  艦砲射撃を一旦終了。

夕方までに来襲した航空機 789機
各種砲弾消費量 54982発
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