自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

216 外伝39

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95 :陸士長:2009/05/03(日) 05:45:23 ID:eFhXRfYg0
エルネイル海岸での生還者の話 ~名前等は伏せさせて頂きます。

今思い出しても身震いするような戦いだった。あの戦いで負った傷が疼く位にな。
俺は当時北大陸の内陸で下士官をやってた。属州から徴発されて来たガキ共を一端の帝国兵にする為のしごきを務めていた。
様子が変わったのはあの戦いが始まる一ヶ月前だった。いきなり列車に小麦袋みたいに積み込まれてエルネイル海岸の近くまで移動させられた。
目を白黒されている俺達の手に渡されたのはスコップだったよ。それから戦いが始まるまで土木用ゴーレム達と一緒に沿岸の要塞化をしていたさ。
それからやたらと俺達と同じ様な部隊が増えて、お偉いさんがやたらと視察に来て、視察がぱったりと止んだ頃に奴らは来たんだ。
あの時の長い警報は忘れられねぇ。ガキ共が慌てて起こしに来たんでぶん殴った後、俺は自分のトーチカから海の方を覗き込んだ。
……海が埋まってたのさ。鋼鉄の船でな。噂じゃ聞いてたが、腰を抜かしそうになるような戦力だった。
同時に数日前に来て「米軍など精強たる我が軍の防衛戦術によって南大陸に叩き返される」って叫んでた外務の役人の顔が浮かんだよ。
俺は思ったね。この戦力を前にして同じ事言えるかこのオカマ野郎って。生きて変えれたら軍法会議覚悟で野郎を殴ってやるとも。
後は……省略させてくれよ。本当に怖いんだ。見えるだろ、俺の欠けた手がガクガク震えるのが。今でも夢に見るんだ。
まぁ、語れるトコだけ語るよ。連中は滝のような砲撃を沿岸一帯に加えた後、すげぇ数の兵力を海岸に上げてきた。
最初は何とか生き残ってた砲台や要塞が食い止めてたさ。でも焼け石に水だったよ。
俺の陣地も最初は頑張って魔導銃撃ちまくってたけど、敵はどんどん近付いてきやがる。
あの……戦車だっけか。アレが揚陸されてからはもう手がつけられねぇ。俺の隣の壕なんざ戦車が飛ばしてきた火柱で火達磨にされてたよ。
ひでぇ悲鳴が聞こえてから、ガキ共の様子がおかしくなった。御国なまりでゴソゴソ喋ったり、蹲ってブツブツ喋り始めたんだ。
俺が「何喋ってやがる。さっさと撃て!」って叫んだ瞬間、俺は背中を切られてもんどり打って倒れていた。ガキ共のリーダーに切られたんだよ。
「これ以上付き合えるか!お前等本国の人間だけでやってろよ。俺達は生きて祖国に帰るんだ!!」ってガキ共は言っていた。
そして床で呻いている俺をほったらかしにしてガキ共は壕の外に出て……蜂の巣になった。両手を上げたまんまでな。
「こいつらなんか手を挙げてたな」「俺達をママと勘違いしたんじゃないか? ママ、ママ、見てみて、僕手を綺麗に洗えたよってな!」
米兵共の笑い声が聞こえて、俺は今出て行っても殺されると解ったんで大人しくしてた。
そしたら念を入れたんだろうなぁ……壕の中に爆弾が投げ込まれて……俺はこの様さ。
それから半日して、後からやって来た米軍の降伏勧告が行われてる時に壕から何とか這いだして助かった。
それが20年近く前に俺が体験した事だよ。本当に悪夢の様な……出来事だった。
……酷い様だろ。まるで……あのくそったれな戦争で零落れきった俺の祖国みたいに。

1965年『あの戦争の真実・北大陸で何が起こったのか?』のインタビューより
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