自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

231 外伝43

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tapper

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469 :外伝:2009/08/08(土) 21:47:31 ID:GB.Z00rQ0
来るべき大作戦に向けて決意を新たにするものもいれば、毎日の戦闘に牛乳配達のように臨む
ものもいる。
1944年8月6日、ハーロック大尉率いる第17戦闘飛行隊は、はフリトルマ上空一万二千
フィートをヘルフォウツに向って進撃していた。
ファントム・F・ハーロックJrは26歳。
ドイツからの移民で第一次大戦でドイツ空軍の戦闘機乗りだった父に倣い、胴体に一族の家紋
である髑髏の盾を描いた愛機を「わが青春のアルカディア号」と命名していた。
恥ずかしいことこの上ないセンスだが本人はいたって真面目である。
第17戦闘飛行隊の所属する第五混成航空団は、その名のとおりアメリカ人とアメリカで訓練
を受けた亡命ヘルベスタン人ほか各国志願兵で編成されており、航空団が持つ四つの戦闘機隊
はカーチスP-40ウォーホークのM型とN型を装備していた。
戦闘機としてはすでに盛りを過ぎた感のあるP-40だが、発動機を強化したK型以降のモデ
ルは中・低高度域ならばマオンド軍のワイバーンに十分対抗可能と見なされており、P-51
やP-47といった高性能機は対シホールアンル戦に優先的に投入されていることもあって、
レーフェイル大陸に展開するアメリカ陸軍戦闘機隊の中でカーチス戦闘機は依然として第一線
機の面目を保っていたのである。
「そろそろ合流地点のはずなんだが…」
「影も形もありませんわね」
ハーロックの言葉にウィングマンのカルラ少尉が相槌をうつ。
カルラは代々傭兵稼業を営んできたギリヤギナと呼ばれる部族の出身で、虎に似た耳と尻尾、
そしてアルベルト・ヴァーガスの描くピンナップガールに勝るとも劣らない見事なバストを持
つ大人の色香に溢れた女性であると同時に、徒手格闘においては第17戦闘飛行隊最強のパイ
ロットでもある。
この日第17戦闘飛行隊はロバニルを発進してヘルフォウツを空爆する第375爆撃飛行隊の
B-24リベレイターを護衛することになっていたのだが、予定時刻を過ぎてもカヌーに翼を
取り付けたような特徴ある四発爆撃機の編隊はいっかな姿を見せないのであった。
「大尉、二時の方向を見てください」
イエロー小隊三番機のウテナ少尉が通信を入れてくる。
「あれは土下座台地じゃないか!」
ハーロックは思わず声を高くした。
“土下座台地”
レーフェイル大陸三大奇景の一つに数えられるこの台地は石灰岩の地層が風雨による侵食を受
け、真上から見ると丁度orzのポーズに見えるため、付近を飛行するパイロットは皆このユニー
クな地形を航法のチェックポイントにしていた。
だが目の前に土下座台地があるということは第17戦闘飛行隊は本来のコースからたっぷり9
0マイルは南にずれていることになる。

470 :外伝:2009/08/08(土) 21:48:45 ID:GB.Z00rQ0
レーフェイル大陸ではよくあることだが、この日ヘルベスタン上空では異種類の風が異なった
高度で吹いており、ちょうど第17戦闘飛行隊が飛行していた高度域では、海から流れ込んで
くる強い南風が戦闘機の進路を横滑りさせる形で吹いていたのだった。
「不味いな…」
ハーロックの声は上擦っていた。
「不味いですわね」
カルラの背中を冷たい汗が伝う。
今回の作戦では「人種の垣根を越えて自由と民主主義のために戦うアメリカ軍」をアピールす
るため、第五混成飛行団を題材にしたプロパガンダ映画を製作する目的でハリウッドから招い
たスタッフを爆撃機に乗せ、第17戦闘飛行隊の空中戦での活躍をカメラに収めることになっ
ていた。
ランデブーに失敗し爆撃機、特に撮影隊の乗り込んだB-24が撃墜されるなどということに
なったら、混成飛行団の総元締めであるシェンノートから雷が落ちることは間違いない。
全速でヘルフォウツに向った第17戦闘飛行隊が第375爆撃飛行隊に追いついたときにはす
でにワイバーンの編隊が爆撃機に取り付いており、何機かのB-24は黒煙を吹いていた。
「全機突っ込め!」
戦闘機乗りは一斉に増槽を投棄し、スロットル基部のカバーを外すとレバーを通常の全開位置
よりさらに奥まで押し込む。
緊急出力の使用により更に三百馬力を上乗せされたP-40は尻を蹴られたような勢いでワイ
バーンに襲い掛かった。
この日遭遇したワイバーン部隊はたまたま戦意の低い隊だったのか、それとも戦力を温存する
よう命令されていたのかP-40の挑戦を受けようとはせず、一斉に退避にかかった。
ウテナ少尉は一騎のワイバーンに狙いを定めて機銃のスイッチを押したのだが、電気系統の故
障で右翼の機銃は全て発射不能になっていた。
左翼の三挺の五〇口径機関銃が火を吹くと偏った反動で飛行機のバランスが崩れ、P-40は
手のつけられないスピンに陥ってしまった。
「同志スターリン、私に世界を革命する力を!」
アメリカ留学中にマルクス・レーニン主義に染まったウテナの叫びが次元を越えてフサ髭の独
裁者に届いたのか、どうにか機体のコントロールを取り戻したウテナだったが空中戦の現場に
とって返すには高度を失いすぎていた。
不運なウテナ以外は全員狩りを堪能し、この日の第17戦闘飛行隊は撃墜確実13騎、不確実
6騎を報じた。
(戦後判明したマオンド側の記録では同じ戦闘での損害は行方不明(被撃墜と同義)4名、負
傷7名となっている)
第375爆撃飛行隊の方は、2機が基地に辿り着くことができずモンドーの戦闘機用滑走路に
不時着したものの、撃墜された機はなかった。

471 :外伝:2009/08/08(土) 21:50:07 ID:GB.Z00rQ0
その後隊員たちの日常生活を取材するため撮影班がキャンプを訪れることになった。
爆撃機の援護が遅れたためあやうく死ぬところだった撮影スタッフは正直いって最初は第17
戦闘飛行隊クルーにあまり良い感情をもっていなかったのだが、たまたま撮影班が到着したと
きにキャンプの近くを流れる川で行水をしていたカルラが当時のアメリカ人には原爆級のイン
パクトを与える大胆な水着姿を披露したことで、撮影班との関係は大いに改善されたのだった。
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